暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
パミラは、既に貰った肉体を塵に返してしまった。プディングを食べられないのはちょっと残念だけれども。
本来は、これが。
精神体としての存在が、本当の意味での観測する神としてのあり方だ。それは幽霊と呼ばれるものと近い。
場合によっては滅びてしまう事もあるが、パミラの本体は世界と接続していて、それで何度でも作り直すこともできる。
まがりなりにも神である。
そして、神であるからこそ。
あまり苛烈な干渉はしてはならない。
神にも色々だ。
別の世界であった神は、責任をもって救った存在の面倒を見た。結果として、9兆という途方もない回数の繰り返しの果てに。どうにかそれを成し遂げた。
ただ、そのあり方をパミラは真似しない。
あれは神だからできる事ではあったが。
同時に、世界に強烈な秩序を敷く事でもある。
全て正しいのは論理的にも明らかなのだが。パミラはもう少し緩やかに世界とともにありたい。
ただそれだけだ。
勿論本来は他の存在と対立するつもりもない。
この世界ではあまりにもあまりにも人間が醜すぎた。だから、手を出さざるをえなかった。
それに今後、世界の、人間の改革はライザがやる事になるだろう。
ライザは無意味に斬り捨てることはしないし。
何よりも旧人類を捨てて、新人類を作るような事もしないだろう。だったら、任せて見守るだけ。
安定したら次の世界に行く。
ただそれだけである。
パミラが高次元空間から状況の推移を見ていると。
声を掛けて来た者がいる。
既に命を失い、精神体となったエンシェントドラゴンだ。
ライザには、西さんと呼ばれていた存在である。
「おや、観測の神よ。 肉体を失ったのか」
「凄い子が現れたからねー。 もう私は、必要ないと思って、見守る事にしたの」
「もう少し手伝ってやっても良かったであろうに」
「ダメよ。 もうできるのだから、自分達で掴み取って貰わないと。 甘やかすことは、あの世界の人間のためにならない。 あの子が……旅の人が、略奪の限りを尽くされたようにね」
西さんが、ため息をつく。
この古代竜が、ライザに支援したことを、パミラは知っている。
ライザが羅針盤を使って残留思念を読んだとき。
この古代竜は、敢えて意識を飛ばして、残留思念を増幅したのだ。その結果、ライザは古代クリント王国など模倣者に過ぎない事。
真の邪悪が存在する事を知った。
エンシェントドラゴンを無意味に殺戮した神代の錬金術師に対するささやかな意趣返しでもあったのだろうが。
死して精神体になったエンシェントドラゴンは、既にこの世界の神の一柱でもあったからだろう。
世界をダイナミックに改革するものへ。
自分なりの、必要なだけの助力をしたと言うわけだ。
「ライザリンは急激に人間をやめておるのう。 神となるつもりはないようだが、そのあり方は……」
「強いて言うなら原初の荒神。 不動明王と称されたようだけれども、それよりも更に古い神々のあり方に似ているかもねー」
「まあ、良かろう。 ライザリンのやり方であれば、あの腐りきった世界も、少しは叩き直されるであろうからな」
「そうねー。 とりあえず、私ももうダーティーワークはしなくて良さそうだわー」
ロテスヴァッサの錬金術師達を皆殺しにしたとき。
最後に斬った奴が、ほざいていた。
神代の錬金術師のように、何もかも手に入れたい。それは偉大なる存在として、当然の欲求だ。
世界の摂理は弱肉強食。弱者なんか、我等の肥やしになっていればいいんだよ。
そうほざいた相手を、パミラは首を刎ねて終わらせた。
弱肉強食を口にしながら、それを否定した文明の利益を貪るな。そんなに弱肉強食が良いなら、密林で裸で暮らせ。
そう思ったのはパミラも同じ。
ライザも同じように考えている。
あの子もパミラが色んな世界で見てきた超級錬金術師達と、人間にこだわらないという点では同じだった。
異常な人間原理主義を持ち上げて。
ありのままの人間が素晴らしいとか抜かすようでは、それまでだ。
そうならなかっただけでも、よくやれていると思うべきなのだろう。
「さて、わしは大いなる意思と一つになるとするよ」
「行くのねー」
「ああ。 この世界に来る後続が不安で見守っていたが、以降は放っておいても大丈夫であろうよ」
「ふふ。 ライザの力は、今まで見てきた超級錬金術師達と並びつつある。 まあ私が見た最強の子はちょっと次元違いで追いつくのは無理だろうけれど、それでも世界を変えるには充分な程よ」
見送る。
やがて光になって、竜の魂は消えていった。
さあ、後は見ているだけでいい。
ライザはこれから、あの愚かな神代の錬金術師達の負の遺産を一掃していくだろう。それはとても素晴らしい事だ。
そして自我を得たAIである母はそれを支え。
ホムンクルス達と連携し、同志とも連携して、世界をダイナミックに変革していくこと疑いない。
本来は人間が自力でそれをやらなければならないのだが。
残念ながら、人間にはそれをやる能力もなければ、意思もなかった。
何処の世界でも人間はそんなものだ。
それを肯定しているようだから、人間は自分を世界ごと焼き滅ぼしてしまう。
人間であることにこだわらない存在の出現。
パミラが。
観測の神が見ている限り、それが世界の変革のトリガーに思う。
人間が万物の霊長であると言う愚かしい妄想を捨てたときこそ。
人間は、次に進む事ができ。
そうでない場合は。
万が一宇宙に出ても、其処で限りなく悲劇を繰り返すだけだ。
此処はもう大丈夫だ。
ライザが勝つのを見たら、この世界を離れよう。
そうパミラは、考えていた。
(続)
ライザ達が敵の深奥に肉薄する中。
既にパミラさんは本来のあり方に戻っていました。
これはパミラさんが本来の役割から逸脱しすぎた、というのも理由としてあります。
これ以上の干渉をしなくても良いのなら、即座にそうするべき。
神というのは、そういう存在なのです。