暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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ライザ達は気付いていませんが、それなりの電子戦が裏では行われています。

「母」はそれらを常に最高のパフォーマンスで実施するために、リソースの全てを割いているのです。


1、誘引撤退そして撃破

指定された場所で門を操作し、鍵を刺す。そして、固定。座標についても問題はなし。

 

ガイアさんは考えた後、首から母の端末をぶら下げた。

 

別にこれを壊されても問題は無いらしい。

 

母は自身の中核となるプログラムを各地に分散しているだけはなく、特に重要な部分は既に制圧したデータセンタに移行しているそうである。

 

それだったら確かに声を出して指示をして来るだけの端末の一つや二つ、壊されても問題はないだろう。

 

門は固定されている。

 

頷くと、あたしは声を掛けていた。

 

行くぞ。

 

同時に、全員が一丸となって飛び込む。

 

既に分かっていたが、かなりの数の魔物が集結している。恐らくは、生産区を落とされたことで。

 

警戒度が上がっているのだ。

 

それでも、パティが出会い頭に複頭を持った奇怪な人間のような大柄な魔物を斬り倒していた。

 

人間を二人つなげたようなおぞましい姿だ。

 

いや、実際そういう生物兵器なのだろう。

 

あたしも熱槍を叩き込んで、構造体を破壊しないように、魔物を排除。わっと殺到してくる魔物。雑多なのも多い。大きいのもいる。だが、構造体の破壊を警戒しているのか、それほど派手な攻撃はしてこない。

 

血路を開く。

 

「遅れたら死ぬよ!」

 

「突破だ突破ぁ!」

 

ガイアさんが叫び、また一体斬り倒す。

 

押し包んでこようとする魔物を、カラさんの雷撃が横殴りに薙ぎ払い。あたしが前に立ちふさがろうとした巨大な牛っぽい魔物を蹴り砕いていた。牛に人間の素での蹴りなんか通用しないが。

 

あたしの場合は、かかっている倍率が違う。

 

牛の首も、一撃でへし折れるだけだ。

 

血路から抜けて、予定通りレントが最後衛で防御しつつ、皆が走る。追いすがって来る魔物は凄まじい数だ。併走しようとしてくる頭が良いのもいるが、それらはパティが加速して、背後を取って貫いたり。

 

一息で首を刎ね飛ばしたり。

 

獅子奮迅の活躍で、追い払い倒し続ける。

 

あたしも前に塞がろうと高速で進んでくる魔物を、熱槍で焼き払い、追い払いながら舌を巻く。

 

流石だ。

 

クラウディアが狙撃を続けながら、叫ぶ。

 

左2、右5。

 

魔物が先回りして襲ってくる数だ。

 

タオがその先を右にと叫ぶ。

 

ナビは完璧。

 

地図を頭に入れてくれている。

 

まだ半ば。

 

ボオスが重量級の奴に連撃を叩き込み、リラさんが竜巻みたいな蹴りを叩き込んで、吹っ飛ばす。

 

同胞の戦士達も見事な連携で戦っていて、負傷者は内側に庇い。負傷者も即座に薬を使って復帰して、再び前衛に戻る。

 

此処までは順調か。

 

だが、彼方此方の研究棟から、どんどんガーディアンとなっている生物兵器、まあ魔物が出てくる。

 

魔物の定義に全てが合致しているから、それでかまわない。

 

予想以上に、敵の数が多い。

 

レントはほぼ完璧に追撃の敵をしのぎながら下がって来ているが。これは或いはだが。戦いやすい場所に追い込まれているのはこっちか。

 

だが、それでも。

 

全力を出せるのも事実。

 

其処で戦えるなら、如何に罠に誘いこまれたとしても、より高い勝機が生じるとみていい。

 

懐でフィーが身じろぎする。

 

「フィー!」

 

「強敵?」

 

「フィッ!」

 

フィーが認識する強敵となると、恐らくはドラゴンを改造した生物兵器か。熱槍を連射して相手を追い払いながら走る。

 

一番走って体力を使っているパティを支援して、タオもガイドをしながらよくやってくれている。

 

転がってくる巨大なダンゴムシを、気合一閃ディアンが打ち砕いていた。

 

なに、フィルフサの群れに比べれば全然戦いやすい相手だ。今の時点では、だが。此処にいるガーディアンが、全て弱いとは限らない。

 

生産区はそもそも錬金術師が足を踏み入れなかったし、二線級のガーディアンを配置していた可能性も高い。

 

管理区は、もっと手強いのが多くて不思議ではないのだ。研究区も、総合的な戦力は生産区より低くても、単騎の強さでは上のがいても不思議では無い。

 

見えてきた。

 

あれか。

 

廃棄された資材と言われているものの正体が、此処からも見える。

 

大量の屍だ。

 

骨が山のように積まれている。人間のものもたくさんあるとみて良い。怒りは、まだとっておけ。

 

跳躍すると、追いすがってきている魔物の大軍に、フォトンクエーサーを叩き込む。

 

構造体を破壊しないように拡散型だが、それでも多数の魔物が瞬時に燃え尽きた。着地。そして、すぐにきびすを返して走る。

 

遅れている同胞の戦士を、クラウディアが支援。すぐにとって返したボオスが時間を稼ぎ、包囲下にあったその戦士を救出。手傷を酷く受けているが、自力で走れる。セリさんも連続して覇王樹や蔓で敵の浸透を防いでいるが、どんどん敵の攻撃が粗っぽくなり、防ぎきれなくなってきている。

 

広場に到達。

 

よし、此処でなら全力でやり合える。

 

セリさんが走り込むと、周囲に今までの比では無いサイズの覇王樹を林立させ、また蔓で上空もガードする。

 

野戦陣地を作る間。

 

今までレントが防いでいた魔物どもに、痛烈な逆撃を入れる。

 

だが、これまではあくまで小手調べだ。

 

多分本命がこれから来る。

 

「パティ、レント、栄養剤! 手傷も回復しておいて!」

 

「分かりました!」

 

「これからが本番だな!」

 

多数迫ってくる雑魚は、いずれもが滅茶苦茶に生物を継ぎ足したような奴ばかり。本当に命を粘土細工にしていたんだと分かる。

 

それらを倒し、楽にしてやる。

 

ずっと培養槽で生かされていたのだろう。

 

人間の頭部がたくさんつなぎ合わされた、多数の蜘蛛足が生えた魔物が突撃してくるのを見て、フェデリーカが口を押さえる。

 

舞ってフェデリーカ。

 

叫ぶ。

 

頷くと、フェデリーカが全力で神楽舞を始める。あたしは。突撃してくる魔物を作るのに、どれだけ神代の錬金術師が人を殺したのか。そう思いながら、ぎりと奥歯を噛みしめていた。

 

とにかく敵をひたすらなぎ倒す。

 

此処でならフルパワーが出せる。

 

こっちに迫ってくる小山のような大百足に対して、あたしは前を開けてと叫んで。

 

床を踏み砕きながら、フルパワーでのフォトンクエーサーを叩き込む。

 

多数の魔物を蒸発させながら、それは大百足を直撃。防御魔術を喰い破って、瞬時にトーチに変え。爆散させていた。

 

まだまだ来る。

 

消耗させるつもりだ。

 

だが、こっちは薬をなんぼでも持って来ている。まあ尽きないわけではないが、それでも荷車三つ分。

 

ちょっとやそっとで負けるものか。

 

トーチカが構築されたので、負傷者と荷車を内部に庇って貰う。あたしは栄養剤を飲み干すと、なんぼでも懸かってこいと、魔物の群れに叫ぶ。

 

挑発に応じたか、今まで以上の勢いで迫ってくる。

 

本当に何世代にもわたって、粘土細工で命を弄んでいたんだな。それが、迫ってくる魔物の異形ぶりで分かる。

 

まだ神代の錬金術師の数が揃っていた頃は、人間を多数さらっては、此処で材料にしていたのだろう。

 

罪悪感なんてなかった。

 

ある者は不適格者として追放された。

 

だから此処には、本物の極悪人しか残らなかった。

 

だが、それは混沌の時代も同じだったのではないのか。それが分かっているから、あたしはただ戦うだけだ。

 

一刻ほど戦い続け。

 

そして見る。

 

消耗を充分とみたのだろう。

 

敵が本命を繰り出して来たのだ。

 

フィーが感じていたのは此奴か。まあ、そうだろうな。

 

降り立ったそれを見て、一目で理由がわかる。

 

それは、明らかにエンシェントドラゴンだ。やはり改造されたエンシェントドラゴンがいたのか。

 

他にも超ド級が来る。

 

超ド級のプロトタイプはやはり此処で作られたのだろう。東の地で子鬼と呼ばれていたその幼体も姿が見える。

 

大丈夫、総力戦には慣れているし。

 

まだまだ余裕はある。

 

雑魚も、さっきまでと遜色ない数が来る。

 

「総力戦用意! 此奴らを倒せば、この区画は安全になる! 此奴らが万が一解き放たれでもしたら、世界が終わる!」

 

相手も、受けて立つといわんばかりに。

 

全身にグランツオルゲン装甲を施されたエンシェントドラゴンが吠え猛る。

 

彼奴の相手はあたしだ。

 

だが、もう一人くらい支援が欲しい。

 

パティが進み出る。

 

「ライザさん、私も支援します」

 

「よし……頼んだよ!」

 

二人同時に、地を蹴る。

 

それと同時に、体をプロテクターで守られた青い巨大なドラゴンが。跳びさがりながら、ブレスを吐いていた。

 

 

 

連続して着弾するブレス。凄まじい火力だ。あたしはサイドステップを繰り返して、少しずつ距離を詰める。

 

完全に中空を保ちながら、エンシェントドラゴンはブレスを乱射して、まずは此方の体力を削るつもりだ。当たるとは相手も思っていないようである。適切な戦術だ。やられると一番困る。

 

横。

 

突っ込んできたのは、全身が槍みたいな魔物だ。だがそれは、更に横から飛来したクラウディアの矢に串刺しにされ、地面に墜ち果てていた。

 

クラウディアが周囲全方位を支援し続けている。あたしだけ支援してくれたわけではない。

 

でも感謝だ。

 

あたしとパティは、示し合わせるでも無く左右に跳び別れる。勿論改造エンシェントドラゴンも、それは想定済だろう。

 

すっと、上空に移動すると。

 

詠唱を開始していた。

 

仕掛けないと、全域を空間魔術で吹き飛ばすぞ。そういう意図が感じ取れる。それだけじゃない。

 

勿論仕掛けたら、空間魔術で防御なりカウンターを入れてくるだろう。

 

手強い相手だが。

 

あたしも、そこまで読んでいるのは同じである。

 

加速。

 

中空に出ると、フォトンクエーサーの態勢に入る。それに対して、パティは相手の真下に向けて疾走。

 

二手に分かれたな。

 

エンシェントドラゴンはそれを即座に見て取ると、何か発動した。

 

あたしはぐるんと世界が上下したのを理解する。

 

即座に状況を把握。

 

空間魔術を展開したエンシェントドラゴンが、辺りを「ねじった」のだ。

 

それで何もかもがあべこべになった。

 

あたしは熱魔術で爆発を引き起こしながら態勢を立て直す。だがその数秒の間に、エンシェントドラゴンは、今までとはレベル違いのブレスを叩き込んでくる。

 

下から上に薙ぎ払うように、あたしとパティに向けて。

 

それも構造体を破壊しないように。

 

器用な事をやってくれる。

 

パティは、回避してくれているとみるしかない。

 

あたしは即時で対応。

 

最大火力の熱魔術で、それを相殺しつつ同時に回避。

 

ただそれで高度はゼロになり、着地しつつずり下がる。舌打ちしながら、即座に走りつつまだ飛んでいるエンシェントドラゴンを見やる。

 

辺りの光景が歪んでいる。

 

空間魔術によって、万華鏡みたいに世界がねじれている。

 

もともとエンシェントドラゴンは世界間に穴を開けるほどの存在だ。あの程度の空間魔術、むしろ手加減つきなのだろう。

 

走る。

 

ブレスが次々着弾。

 

接近してもグランツオルゲン装甲で身を守っている。

 

今あたしの作るグランツオルゲンよりも性能は落ちるとしても、簡単に突破はさせてくれないだろう。

 

それにあのねじれた空間。

 

そもそもまっすぐ飛ぶかも怪しい。

 

虚空に向けて吠え猛るエンシェントドラゴン。

 

立て続けの大魔術。

 

今度は火球が隕石群のように降り注ぐ。更に、また空間をねじってくる。跳びさがりつつ、面倒なものは撃墜。

 

近づけないし、何より攻撃が苛烈すぎる。

 

飛来する攻撃を裁いているだけで、余波で体力と魔力がどんどん削られていく。直撃なんかしたら、腕くらい吹っ飛ぶだろう。

 

それに対して相手は余裕綽々。

 

超ド級ですらあれほどの魔力は。

 

いや、まて。

 

エンシェントドラゴンで、あの程度か。

 

しかもあれは色々弄くられているはず。本来以上の力を引きずり出されていないのか。どうも妙だ。

 

そうか、分かってきた。

 

踏み込むと、走る。

 

どう空間をねじったのかは。今の攻撃を捌きながら理解した。

 

空間把握力はあたしの強み。

 

そのまま無視して疾走する。

 

エンシェントドラゴンは冷静に迎撃。あの様子だと、パティもまだ無事だ。二人して、別方向からエンシェントドラゴンに迫るが、中空を維持しつつ、ブレスの雨、それに火力の滝で的確に牽制してくる。

 

今度は雷撃を展開して来る。

 

続いて烈風か。

 

いずれも直撃を避け、受け流し、必死に距離を詰める。手傷を幾つも受けるが、それらは回復魔術で即座に治す。走る。

 

よし、此処だ。

 

あたしは地面を爆破すると、中空に躍り出る。

 

エンシェントドラゴンはねじりまくった空間を、あたしが難なく突破したのを見て、流石に焦ったようだが。

 

それでも冷静にさがろうとして。

 

背中に刃を突き立てられていた。

 

パティだ。

 

頭から血を流しているが、猛攻を耐え抜いて。今の隙に、距離をゼロにしたのだ。

 

そしてパティの手にしている現在世界最強の大太刀は、エンシェントドラゴンの装甲と鱗の隙間を、確実に通していた。

 

凄まじい雄叫びを上げて、暴れるエンシェントドラゴンに。

 

あたしは避けろと叫ぶ。

 

勿論パティに対しての言葉だ。

 

今、パティは奴の背中に貼り付いているし。警告は必要だ。

 

詠唱を終えたフォトンクエーサーを、全力でぶっ放す。

 

一転収束型の熱魔術の究極。

 

それを見て取ったエンシェントドラゴンは、冷静に空間魔術を展開し、その全てを弾き散らす。

 

虚空に消える、破壊の烈光。

 

だが、その次の瞬間、エンシェントドラゴンが、世界から消えていた。

 

最初の犠牲者には相応しい相手だ。

 

空間を隔離して、その中で、熱、冷気、雷撃、烈風。それぞれの究極爆弾の火力を最大限に叩き込む。

 

ツヴァイレゾナンスを、あたしは起爆したのだ。

 

直後、空間の歪みが全て消えた。

 

ずるりと落ちてきたエンシェントドラゴンは、既に完全に動かなくなっていた。

 

呼吸を整える。

 

パティは、へたり込んでしまっていた。

 

これほどの戦士が。

 

即座に駆け寄り、薬で手当てを開始。彼方此方酷く手傷を受けている。あたしを見て、悔しそうに苦笑いしていた。

 

「嫁入り前なのに……我ながらまだまだですね」

 

「タオはそんなこと気にしないよ」

 

「分かっています。 私が悔しいんです自分に」

 

手指を失っているようなことはないが、火傷が酷い。火傷のダメージは、皮膚の何割かを超えると死に到るほどのものだ。

 

嘆息して、やっと楽になれた改造エンシェントドラゴンを見やる。

 

こいつ、恐らく相当に弱体化されていたんだ。

 

恐らくは、操りやすいようにするために。

 

超ド級などの魔物を多数けしかけて捕らえた後は、空間魔術を研究するために弄くり倒して。

 

弱り切った体を生体兵器として改造するも。

 

そのままだと操りきれないから弱体化させた、か。

 

乱戦はまだ続いている。

 

出現したのは、フロディアさんだ。ざっくり肩口から斬られているが、まだまだ動けるようである。

 

パティに肩を貸すと、門を通って戦線離脱。

 

門から数名の同胞の増援が来る。

 

あたしは顔を叩くと、戦線に復帰。

 

大乱戦で、被害も大きい。

 

最強の爆弾の実地試験ができた。それだけ今は可とするべきだろう。弱体化しているとはいえ、エンシェントドラゴンですらまともに受ければひとたまりもなかった。それが分かれば充分過ぎる。

 

ボオスと、多腕の魔物が、凄まじい勢いでやりあっている。

 

その横っ腹から、蹴りを叩き込み。

 

均衡が崩れた多腕の魔物が、即座に首を飛ばされていた。

 

呼吸を整えるボオスの礼もそこそこに聞きながら、一番乱戦が酷い場所を探す。セリさんを守りながらクリフォードさんが奮戦しているが、多数の鳥の魔物に集られて、苦労しているようだ。

 

熱槍を炸裂させて、まとめて叩き落とす。

 

次。

 

振り向き様に、襲いかかってきた巨大な犬型を蹴り砕く。多分紅蓮から作り出したフェンリル型のプロトタイプだったのだろう。手応えがなさすぎる。首が折れた犬型を弾き飛ばすと、そのまま熱槍を乱射しながら乱戦に加わる。

 

そして、戦いが終わるまで、ひたすら暴れ狂った。

 

 

 

負傷者を下げる。

 

研究区での抵抗は排除成功。

 

へたり込んでずっと黙り込んでいるタオに肩を貸して、ガイアさんがさがっていく。野戦陣地では、レントがトリアージを開始していた。

 

あたしも薬を使って、即座に手当てを始める。

 

リラさんが、太ももをざっくりやられていた。骨まで行っているが、それでも戦い続けたようだ。

 

状況が少しよろしくない。

 

即座に手当てに入る。

 

動脈が切れかかっている。

 

太ももには結構大きな動脈が走っていて、これが損傷すると命に関わるのである。それでも戦いを続けたのは、皆を守るためだった。それを分かっているから、あたしは何も言わない。

 

あたしの薬を重点的に使って、ダメージを受けている筋組織や血管などを修復、傷も埋める。

 

火傷しているパティは鎧などを脱いで貰って、全てを治療する。

 

野戦病院は地獄だ。

 

何度も経験しているから分かっている。

 

同胞の戦士の一人は危うく首を飛ばされかけたようで、首に酷い傷を受けていた。

 

深い傷から順番に治療していく。

 

頭をざっくり切られていた人もいる。

 

もう少し深く入っていたら、頭蓋骨を割られて即死だっただろう。当世具足を着た戦士だったが、兜は破壊されてしまっていた。

 

その兜のおかげで助かったのだと今は好意的に考える。

 

手当てをして、血の臭いで鼻がおかしくなりそうには……ならない。

 

そういうのも、どんどん平気になって来ている。

 

少し前に精神的に一線を越えたからだろう。

 

今は冷静極まりなく、全てに対処できるようになっていた。それでいい。あたしは自分に言い聞かせながら動く。

 

「フィー!」

 

「分かってる。 この人は後はこの薬で手当てを。 お願いします」

 

「承知した」

 

同胞の戦士の手傷はかなり酷い人もいたが。

 

それで理解する。

 

どうやら、同胞にも戦士としてではなく、医療班専門で動いていた人がいるらしい。

 

これは恐らく、同胞としてフィルフサや東の地の大物とやりあううちに、専門がそれぞれできていったからなのだろう。

 

勿論戦士としての力量もあるのだが。

 

同胞の違いは経験しか存在していない。

 

ホムンクルスで、スペックが全て同じだからだ。

 

故に、自分でできる事を考えて、それぞれに特化すると言う事を自主的にしていったらしい。

 

立派だと思う。

 

多様性と言う観点では、体に問題は抱えていると思うが。

 

この人達は、心に関してはとても立派でしっかりしていると思う。少なくとも、神代の錬金術師なんぞよりよっぽど。

 

フィーに呼ばれて、手当てをする。

 

順番に手当てを終えて、毎回血を新しく組んできてもらった桶で洗い流して。それでやっと終わった。

 

研究区はこれであらかた抵抗が片付いた筈で、そういう意味では生産区よりらくだったかも知れない。

 

あのエンシェントドラゴンが最強のガーディアンだったのだろう。

 

後から聞くと、生産区の方はあのサイクロプスという奴がそうであったらしい。

 

皆に、先に一休みしてもらうが。

 

あたしはタオとクリフォードさん。

 

それにしぶとく乱戦の中で老獪に立ち回り、まだ余力を残していたガイアさんとともに、研究区に戻る。

 

安全確保と、データセンタの制圧のためだ。

 

「研究区と管理区の掌握は他に比べて進んでおらず、安全地帯に関しては非常に限定的にしかわかりません。 データセンタについても、場所しか分からないので、常に警戒してください」

 

「分かったぜ、任せておきな」

 

「クリフォードどののその勘はどこで養ったのだ」

 

「伊達と酔狂で生きてきたからな。 それで培ったんだよ」

 

ガイアさんに、そんな風に返すクリフォードさん。

 

それで呆れられていたが、クリフォードさんはそれで本望なのだろう。

 

セリさんと結婚するつもりらしいが、当のセリさんはまだ何も返してくれていないらしい。

 

それについては、あたしの知る事では無い。色恋はそれぞれで好きにやれば良い。

 

クリフォードさんが、稼働している罠について幾つか即座に見つけてくれる。ガイアさんが抱えている板越しに、母が記録し、ガイドをしてくれる。

 

此処を確認して調査するのは後だ。まずは、防御を無力化しなければならない。








改造されはてたエンシェントドラゴン。

世界すら渡る偉大な獣さえ、神代の錬金術師にとっては我欲を満たすための道具に過ぎませんでした。

ちなみに原作でも万象の大典にはボスとしてエンシェントドラゴンが登場します。

まあ描写から考えて、生物兵器で間違いないと思いますね原作の方でも。
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