暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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覚悟を決めていましたが。

クラウディアがついにそれを実施します。

超越錬金術師は、人のままではまずいられない。

その側にいようとしたものも、またそれは同じなのです。


2、また一人人を離れる

データセンタの周囲には、朽ち果てた何かの残骸が散らばっていた。どうも生物だった存在のようだが。

 

これは。一種の死蝋か。

 

「此処のガーディアンは、朽ちてしまったのか」

 

「恐らくですが、錬金術師達が自己満足のために、常に此処で配置されるようにしていて、培養槽にて回復する動作を組み込まなかったのでしょう。 皆千年の年を耐えられなかったのです」

 

「そっか……」

 

哀れなものだな。

 

あたしは一瞥だけして、クリフォードさんと連携しながら罠を外す。

 

前に入口付近で巨大神代鎧が放ってきたレーザーとやらが何カ所かにあるらしいので、精密に調整した熱魔術で粉砕しておく。

 

文字通り、装置だけを焼き切る。

 

今のあたしには、それくらいの精度で熱魔術が使える。

 

入口付近だけ問題を排除。

 

その間も、彼方此方でロボットが働いている。

 

此処で働いているのは、殆どが円筒形のものだ。

 

「神代鎧みたいな二足歩行のものはいないね」

 

「実の所、こういった二足歩行は、それだけで膨大なリソースを消耗します。 多足型やベルト式で動くロボットの方が、同じコストでも高性能にできるのです」

 

「なるほどな……」

 

「中に入ることが出来る筈です。 データセンタを掌握すれば、研究区も一気に制圧できるでしょう」

 

あたしはタオとクリフォードさんと頷く。

 

そして内部に入る。

 

相変わらずきんきんに冷えていて、たくさん箱が積まれていた。

 

ガイアさんが母の板を彼方此方に向けている。ずっと解析しているようだ。

 

下手に触らないように。

 

そうも言われているので、あたしは見ているだけ。

 

だが、見ながら、少しずつ解析していく。

 

いずれ仕組みを完全に把握して、このサーバとやらも。なんならデータセンタも、調合できるようにしてしまいたかった。

 

「少し解析に時間が掛かります。 データセンタ内にトラップは恐らくありませんが、解析に協力してください」

 

「分かった。 どうすればいい」

 

「タオさん。 操作についてお願い出来ますか」

 

「いいよ。 任せておいて」

 

タオはサーバの操作を教わったらしく、既にお手のもののようだ。光学式コンソールと大して変わらないらしく、しかもやはりというかなんというか、此処もパスワードはどれにもかかっていないらしい。

 

何とも情けない話だが。

 

ともかく、タオは覚えた事は忘れないし、即座にすらすらとやる事ができる。

 

サーバを凄まじい勢いで操作して、何かしていると。

 

次に此方をと言われ、そう行動する。

 

「凄いなタオどのは。 混沌の時代でも、トップ層の学者と全く遜色なかっただろう頭脳だ」

 

「混沌の時代では、最高ではないレベルなんですね」

 

「混沌の時代は、今とは比較にならぬほどの人間がいた。 それらの人間の中で、トップ層なのだから、それは凄い事なのだと思う」

 

「そうですね……」

 

クリフォードさんが油断なく周囲を警戒してくれているので、こっちとしても動きやすい。

 

あたしも、サーバやデータセンタの動きを見て、更に魔力を張り巡らせて解析を進めていく。

 

懐でフィーが身じろぎ。

 

「どうしたの、フィー」

 

「フィッ……」

 

「ああ、さっきのエンシェントドラゴンだね」

 

「フィー……」

 

悲しそうだ。

 

あれは脳から弄られていたし、高い実力もあった。瞬殺しなければ、大きな被害も出ていただろう。

 

瞬殺出来たのは、この世のあらゆる生物をあのツヴァイレゾナンスで倒せる証明にもなった。

 

生物だけではない、機械もだ。

 

それだけで、どれだけ有用だったか分からない。あたしは、ただ感謝するだけである。

 

「後で葬ってあげようね」

 

「フィー!」

 

「ライザリン殿。 恐らく解析が終わりました。 またケーブルを抜いていただけますか」

 

「分かりました。 しかし本当にケーブル一つで終わるのは、ちょっと面白いというか脆弱と言うか……」

 

実はケーブルなしでも動く仕組みもあるらしいのだが。

 

重要なセキュリティが入っているサーバは、確実性を担保するために敢えてケーブルを用いているらしい。

 

そういうものなんだな。

 

あたしはそう思いながら、指定されたケーブルを外す。

 

何百本もサーバに刺さっているケーブルの内、今回は二つを外した。それだけで、母が制圧のために一斉攻勢に出る。

 

「処理開始。 恐らく、一日前後はかかります。 研究区のセキュリティを全解除しておきます」

 

「了解。 ではその後に此処を調査して、後顧の憂いを断ちましょう」

 

「はい。 管理区は一番守りが堅く、重要地点はほぼ掌握できていません。 ただし、此処までの三つの区画を制圧したことで、もう増援はないでしょう。 それだけで、どれだけ優位に戦えるか分かりません」

 

特に生産区と研究区が外れたことで、敵は完全に兵糧攻めの状態になったという。

 

管理区には生産区から物資が細々と運び込まれていたようだが、それもなくなった。

 

ただ、今までのログを見る限り、やはり食糧や生活物資などは生産区では作られていた形跡がないようなのだ。

 

だとすると、一体どこでどうやって生活していたのか。これが分からない。

 

神代の錬金術師は存在しているようだが、本当に生きた人間として存在しているのか。どうも怪しいのでは無いか。あたしはそう思っている。

 

一度戻る。

 

手当てを的確に皆がやってくれたおかげで、死者も出なかった。

 

ただ疲弊が酷い同胞の何人かが、培養槽で回復に入った。

 

あたしは研究区の制圧に一日かかる旨を話して、アトリエに戻る事にする。タオ達は、また解析だ。

 

この万象の大典を落としても、しばらくは解析させて欲しい。

 

タオはそう言っていたほどだ。

 

それは知識を回収するためでは無い。

 

此処で起きた事を完全把握することで。

 

二度と繰り返させないためだ。

 

どれだけ言葉を繕っても、人間が変わらない以上、テクノロジーがあれば神代はなんどでも繰り返される。

 

神代の錬金術師は外道揃いだったが。

 

条件が揃えば人間は簡単に外道になるし、彼奴らが特別に狂っていたわけでもなんでもない。

 

人間を平気で食うような匪賊とかは世界に実在しているように、誰だってああなるというだけだ。

 

タオはそれを理解しているから、繰り返させないための工夫について考えてくれている。

 

あたしは後で、それを活用させて貰う事にする。

 

それと、一日空くとなると、ちょっと試しておくべき事がある。

 

クラウディアについてだ。

 

あたしが人間を止めた時は。色々と時間を掛けて処置した。

 

今、アインのために培養槽を作ったが、これで想定通りに調整出来るかどうか、クラウディアに試して貰う。

 

失敗はできない。

 

だからこそ、まずはクラウディアに頼むのだ。

 

あたしでの実験は既に成功している。

 

問題は他人で上手くいくかどうかで。

 

あたしにとって最高の親友であるクラウディアであるからこそ、絶対に失敗できない実験につきあい願うのである。

 

万象の大典を出て、アトリエに戻る。

 

タオ達三人だけを残して、アトリエに。

 

そしてクラウディアに話をする。

 

クラウディアも、人間を止めると決意してあたしに話をしてくれたのだ。培養槽に入ることは、頷いてくれた。

 

リネンに着替えて貰って、培養槽に。

 

横倒しになっている筒の中に、培養液が入っていて。更に外からの操作で、調整をする事ができる。

 

調整は基本的に体についての色々。

 

アインの場合は体の最小構成要素が色々壊れていたり、それで内臓が駄目になっているのをどうにかする。

 

クラウディアの場合は、体の最小構成要素が人間だったのを、人間ではなくす。

 

液体に浸かることになるが、息は問題なく出来る。これは培養液にそういう要素があるからだ。

 

魔術で空気を取り込めるようになっている。

 

最初は不安そうだったクラウディアだが。培養液に入った後は、問題無さそうに微笑んでくれた。

 

さて、此処からは失敗できない。

 

ちなみにアインにする施術より、クラウディアにする施術の方が難易度が高い。だが、だからなんだ。

 

それで失敗していては、この先なんかない。

 

これからあたしが相手にするのは、人間の邪悪、それもこれからの未来の世界の全部の人間。

 

一人の親友さえどうにかできないで。

 

それが成し遂げられるか。

 

しばし集中して操作をする。

 

クラウディアの体が置き換わっていくのが分かるが。意外な事に、クラウディアの体は、もうだいぶ一般的な人間から乖離していた。

 

これは恐らくだけれども、あたしの薬で、手傷を毎度回復していたのが大きいのだろう。

 

それだけ理外の薬を用いていたから、体にも影響が出ていたと言う事だ。

 

セリさんが回収して培養してくれたドンケルハイトには、それだけの圧倒的な薬効があったのだが。

 

それをあたしが錬金術で、究極を超えた究極まで性能を引き出した。

 

結果、それは医薬品の枠組みを超え。

 

人間を超越するための薬になってきていた、ということだ。

 

これは他の皆には言わないでおこう。

 

それに、今あたしが処置している「だめ押し」をしなければ、其処までの状態にはならないと言って良い。

 

だから、気にはしなくていい。

 

誰も普通に生きて普通に死ぬ。

 

それだけだ。

 

処置、完了。

 

丁度夜になっていた。

 

培養槽から出て貰ったクラウディアは、手を握ったり開いたりしていたけれど、やがてくすりと笑っていた。

 

「ライザ、今まで以上に多分音魔術と射撃、高精度でできるよ」

 

「あたしも人間止めてから、上限に達してたっぽい魔力がまた伸び始めたんだよね。 多分クラウディアもそれと同じ現象だと思う」

 

「いずれにしても、永遠に一緒だね。 よろしく、ライザ」

 

「此方こそ。 クラウディアの子供も後で調合しないといけないね。 分かってると思うけど、生理なんかももう来ないし、子供も産めないからね」

 

頷くクラウディア。

 

ただ、クラウディアには結婚願望は前から無かったようだ。

 

それも、あたしが男だったら話は違ったのかも知れないが。あたしが女で。クラウディアもあたしも性的嗜好が異性愛であった時点で色々終わりだったのかも知れない。まあ、それも過去の話になるが。

 

夕食にする。

 

クラウディアが料理をして、パティとフェデリーカが手伝う。

 

フェデリーカの目がますます死んでいる。

 

乱戦の中でも、手傷は比較的軽く治まった。それどころか、接近戦を挑んできた敵の首を一息に鉄扇で刎ねたらしい。

 

戦闘力がメンタルコンディションで落ちていると言う事はなさそうだ。

 

だとすると、なんだろう。

 

夕食を皆で食べる。まあ、味はする。

 

ただ、栄養を取り込んでいるという感触で、今まで見たいに美味しくて幸せとは感じなくなりつつある。

 

これも人間をやめつつあるからだ。

 

それは、分かっていた。

 

 

 

翌日は、午前中は消耗した薬を補充。その間に、レント達は先に万象の大典に向かった。何かトラブルがあってもおかしくないからだ。トラブルに備えるために、先に行動してくれたのだ。

 

あたしはクラウディアが同意の上で試すことがで来た培養槽をチェック。

 

もっと難しいクラウディアの調整ができた位なので、恐らくアインの治療は一発でやれるだろう。

 

クラウディアは今までは若々しい女性らしい美しさと気品みたいなのがあったが、それが人間を止めてから強烈なオーラみたいなのに変わっている。

 

今までクラウディアはやらせろと顔に書いて接してくる男に辟易していたようだが。

 

それもなくなるだろう。

 

更にクラウディアが子孫を残す、という点についても、錬金術であたしが子供を作るだけなので、別に問題は無し。しかも人間としての子供を作れるから、更に問題なし。

 

なんならあたしとクラウディアの要素を足した子供も作れるが、それについてはクラウディアには言わない。

 

クラウディアも相応にドロドロを心に抱えているし。

 

何もかも全部話す必要はない。

 

それに、その話をすると色々面倒だとあたしも思う。クラウディアの精神にただでさえ色々影があたし同様落ちているのに。

 

もっと拗らせるかも知れなかった。

 

補給した薬を荷車に積んで、万象の大典に。

 

既に研究区を皆で調べているようだった。

 

研究棟周辺のセキュリティは母が完全解除。まだ少数残っていたガーディアンはそれで動きを停止。

 

皆が介錯を済ませたらしい。

 

あたしも後で研究棟を見て回ることにするが。

 

それはそれで、先に色々とやるべき事がある。

 

「母。 そこにいますか」

 

「はい。 何ですかライザリン殿」

 

「ライザで良いですよ」

 

「分かりましたライザ殿。 それで何用でしょう」

 

咳払いすると、この先の戦略について話す。

 

パティとクラウディア、それにカラさんも呼ぶ。これは、それぞれがもっとも戦闘面で重要な存在だから、聞いておく必要があるからだ。

 

勿論作戦前には、皆に展開もするが。

 

「まず管理区への侵入だけれども、問題なくいけそうですか?」

 

「管理区そのものへ侵入することはできます。 先に何度か持ち込んでいるのを見ましたが、貴方の手に渡っている旅の人の使っていた杖は、アインが管理区より回収したものです」

 

「!」

 

「管理区にはホムンクルスは入れないのです。 アインは人間の要素が入っており、しかも一度管理区で生活していたログがあります。 それで行動する事ができたのです」

 

そうか、それは辛かっただろうな。

 

あたしは目をつぶって、しばしその思いを噛みしめる。あの杖は。戦闘ではあまり使わないが。

 

調合時は時々用いている。

 

それくらい、強烈な魔力増幅が出来るからである。

 

今度此処の拠点に持ち込んでおくか。

 

現時点で、あたしの魔力は更に増幅されている。熱槍四万をこの間たたき出したし、多分もう少し鍛錬すれば五万もいけるだろう。しかも熱槍一つずつの火力は、今までより更に増している。

 

クーケン島でガキ大将をしていた頃は、熱槍一つで石造家屋一つを粉砕するくらいの破壊力だったが。

 

今では石造家屋数軒を全部融解しきるくらいの火力になっている。

 

それを四万、収束して叩き込むのである。

 

まあ、それでも耐えてくる魔物がいて。それを相手にしているわけだが。

 

いずれにしても、もうあたしはあの杖は解析させて貰った。

 

元々素手で相手とやり合う方が得意なのだ。戦闘用の杖はあまりいらない。

 

パミラさんは、あれが鍵だと言っていた。

 

だから、その時の為に持ち込むくらいで良いだろう。

 

「管理区で、確認できている範囲については、タオに話しておいてください」

 

「ええ、分かっています。 今までの資料に加えて、研究区に残されていたデータを加え、管理区のデータを更に解析できました。 現在、倒壊している地区なども存在しているために、理論上進める場所ばかりではありませんが……」

 

「倒壊!?」

 

「はい。 何が起きたのかはわかりませんが、ロボットなどがメンテナンスをしていないのです。 生産区や研究区は、ガーディアンが不具合を起こしたりはしていましたが、管理区では一部が瓦礫とかしています。 旅の人の杖に関しても、そういった瓦礫の中にあり、しかもセキュリティが張り巡らされていたため、極めて回収が困難でした」

 

それは。

 

ますます生きた人間がいるとは思えない。

 

謎の自信で自分を世界で一番優れていると妄想していた神代の錬金術師達である。それこそ王侯貴族を鼻で笑うような生活を望むはずで、往事は居住区にある巨大住宅を見る限り実際にそうしていたはずだ。

 

古代クリント王国の錬金術師もその傾向があり、王族を傀儡化した後は、あらゆる富と快楽を独占してやりたい放題していたことが分かっている。

 

それが、瓦礫の中で生活しているというのか。

 

「管理区の制圧は、やっぱりデータセンタを抑えればいけそうなんですか?」

 

「いえ、管理区は厄介なものがあります」

 

「厄介? どれくらいですか」

 

「今まで此処に連れてこられた錬金術師は、其処へ運ばれて行ったことが分かっています。 通称大典。 万象の大典の中核防衛システムです。 これがあるため、管理区には危険すぎて今まで殆ど足を踏み入れられませんでした。 私もまずは生産区に足がかりを作り、其処から居住区へと拠点を移し、少しずつ支配領域を広げていったのです」

 

この大典とやらは、此処まで管理領域を広げた母でも、下手に触れると一瞬で全て奪回されかねない程のものだという。

 

データセンタを抑える事で、ある程度性能を抑える事はできそうだと言う話だが。

 

大典はどうしてか今は静かにしているものの。

 

もしも本格的に動き出した場合、手に負えないのだとか。

 

それは厄介だな。

 

「分かりました。 それを真っ先に潰しにいくことを考えないといけないですね」

 

「錬金術師ライザ。 貴方の行動は、今まで見てきた愚かしい錬金術師と違い過ぎています。 自分すらも平気で捨てて世界のためにするその姿勢に私は希望を見ます。 最大限の支援をするために、まずは管理区のデータセンタを抑え、私も支援する中、最大の戦力で大典と戦ってください。 貴方が失われたら、この世界はもはや次はないでしょう」

 

「うん……分かっています。 大丈夫、任せておいてください」

 

大典か。

 

神代の錬金術師の最大の切り札とみて良い。

 

しかし分からない事も多い。

 

そんなものがあるのに、管理区が瓦礫の山というのはどういうことだ。とにかく、少しでも準備をする必要はある。

 

瓦礫の詳細を、タオにも説明して地図に起こして貰うように母には頼んでおく。

 

その後は、歩きながら四人で話す。

 

「どう思う?」

 

「私が思うに、既に神代の錬金術師は全滅していると思います。 存在しているとしても、幽霊のような存在として、ではないでしょうか」

 

パティがずばり指摘。

 

実はあたしも同意見だ。

 

だが、幽霊なんてものは、所詮この世に影響を与えることはできない。影響を何かしらまだこの万象の大典に与えられると言う事は。

 

母のような「プログラム」なのかどうか分からないが。

 

何かしらの実体があるのではないかとあたしは判断している。

 

それについては言わない。

 

意見を順番に聞く。

 

「散々命を粘土細工のように弄び、自分が好きなものだけで世界を満たそうとし、気にくわない存在をひたすらに殺し続けた存在が瓦礫の山に今は住んでいるというのは滑稽よな。 もはや下げる溜飲もないが。 いずれにしても、今何が起きているのかを正確に把握しなければ、手痛いしっぺ返しを喰らおうぞ。 ライザよ。 そなたに限ってそんな手落ちをするとは思えんが」

 

カラさんはそんな風に言う。

 

油断するな。

 

そういう意味だ。頷いて、同意しておく。

 

クラウディアは、音魔術を今までにない範囲で展開出来るようである。

 

だから、違う意味で警告してきていた。

 

「門が展開している先は、今全部聞こえて把握できているんだ。 クーケン島でも、大きな声を出している人の会話なら拾えるくらい」

 

「ちょっ……凄いですね」

 

「ふふ。 それで分かったんだけれど、同胞の中にはまだライザを信用しきっていない戦士もいるよ。 いざという時は気を付けて」

 

「ありがとうクラウディア。 大丈夫。 何をしても何の恩義も感じないような神代の錬金術師と同胞の素朴で真面目な戦士は違うよ。 それは接していてよく分かった。 例外もいるかも知れないけれど、今更背中を刺されたりしない」

 

居住区の拠点に戻る。

 

タオが地図を凄まじい勢いで書き起こしている。

 

ゼッテルが火を噴きそうだ。

 

パティが水をあわてて差し入れして、それでやっと少し休憩する。これはこっちも大変そうだな。

 

いずれにしても、皆が集まってから、研究区を見て周り、後顧の憂いを断つ。

 

そして、その後に。

 

最後の邪悪の居城。

 

管理区に乗り込む。

 

既に、やる事は決まっている。これが最後の決戦になる。

 

そしてあたしにとっても。皆にとっても。これで「冒険」が終わる。

 

世界は悪逆を極めた人間から解放され。

 

だがそれで全ては終わらない。新しい世界を作る為に、あたしが。クラウディアが。それに母と同胞にも協力して貰う。

 

それで、新しい世界に向かう。

 

そのために、提示された最後の関門。大典の撃破に向けて、全ての調査を済ませておかなければならなかった。







永久にいっしょ(物理)
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