暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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ライザも言及していますが、ライザの仲間達は既に世界屈指のスペシャリスト集団です。

この集団だったからこそ最後に打ち勝てたとも言えますし。

逆にこの集団でなければ無理だったでしょうね。





3、安全確保

ギルド長達を送り届けた後、フェデリーカさんとともに打ち合わせする。

 

フェデリーカさんはちょっとそわそわしているようだった。

 

「どうしたの?」

 

「その……羨ましくて」

 

「錬金術が?」

 

「い、いえ、そうではないんです。 私は今も、ギルド長達の操り人形で、それで。 あれだけ計算して動いて、一歩も引かない様子を見ると、凄いな、大人だなって」

 

咳払いすると、フェデリーカさんは背を伸ばす。

 

ボオスが、頭を掻きながら言う。

 

「そうやって面と向かって相手を褒めるのはやめとけ。 ライザもそういうのは警戒する」

 

「あ、すみません。 他意はなくて」

 

「分かってるよ。 それはそうと、まずやるべきは魔物の駆逐かな」

 

「そうですね。 それはボオスさんに方針として聞いています。 街の近くにいて、危険度が高い魔物から、でしたね」

 

頷く。

 

このアトリエ近辺ですら、戦士達が舐められている。それくらい、魔物がたくさん彷徨いている。

 

魔物と人間は、家畜もそうだが。基本的にベタベタ仲良く出来るものではない。

 

生物としてあり方が違う。

 

もしも共存するのなら、一定の距離を取る必要がある。

 

相手に人間並みの知恵があるのなら、知的生命体として、それぞれが知恵を出し合って、妥協点を探せるのだろうが。

 

残念ながらエンシェントドラゴンでもない限り、相手は所詮畜生である。

 

畜生とは、相応に距離を取るしかないのだ。

 

それは畜産でも同じで。

 

あたしも畜産を経験しているから、それは良く理解出来ている。

 

「フィー」

 

「ん、どうしたの?」

 

「あ、そういえばその子……」

 

「フェデリーカさんには正式に紹介していなかったね。 フィー。 なんとかの精とかいうらしいけれど、それ以上は不明。 骨格はドラゴンに似ていて、あたし達が言ってる言葉や会話の内容くらいは理解出来ているよ」

 

ドラゴンと聞いてちょっと身構えたフェデリーカさんだが。

 

フィーがつぶらな瞳で見つめて、近くを飛ぶと、それだけで表情が緩んでいた。

 

「さ、触ってもいいですか?」

 

「人間の子供くらいの知能はあるから、そういう存在だと思って触ってね。 あとエサは魔力だから、魔力を放出すると喜ぶかも」

 

「は、はい……」

 

触って抱きしめると、フィーは頭をすりつける。

 

可愛がられる方法を、フィーは最近どんどん覚えている。

 

まあ、今の所悪意は感じられないから、それでいいか。

 

ともかく、最悪の場合は。

 

あたしが責任を取って処分する。

 

それには、今も代わりがない。

 

「よろしくお願いします、フィー。 フェデリーカです」

 

「フィッ!」

 

片手を上げて挨拶するフィー。

 

年も近いし、パティと合流できたら仲良く出来そうだな。

 

そう思って、目を細めて見守る。

 

さて、それはそれとして。

 

本題だ。

 

クリフォードさんが地図を拡げる。

 

サルドニカを中心とした近辺の地図だ。咳払いすると、皆で地図を囲む。まずは、アトリエの位置を丸で囲み。

 

それから、フェデリーカさんが順番に×印を付けて行った。

 

「現在、これらの箇所に魔物の巣が確認されています。 主にラプトルと走鳥が中心ですが、この辺りはエレメンタルが多数。 ここから先は危険すぎて入れないので封鎖しています」

 

「この先って、森があるのかな」

 

「はい。 私の父が研究していたある特殊な川が存在していて……そこで父が亡くなってから、封鎖されました」

 

「そっか」

 

よくある悲劇だ。

 

それで、サルドニカが二大ギルドを中心に割れたとなれば。そこは呪われた土地にもなる。

 

それが何世代も経たら、多分タブーになり。

 

魔物が入り込んでやりたい放題をするようにもなるし、何よりも非常に危険な土地になるだろう。

 

あたし達が、駆逐しなければならないだろうな。

 

そう判断していた。

 

だが、その前に。

 

フェデリーカさんが印をつけた地点を見る。

 

×を二重につけているのは、集落があった場所らしい。

 

クリフォードさんが聞く。

 

「そこにフェンリルがいるのか」

 

「はい。 今の時点では、此処にいて動く様子がありません。 此処には以前、サルドニカから都市を拡げようと駐屯していた戦士達とその家族が住んでいたんですが、フェンリル一匹に皆殺しにされてしまって……」

 

「それは厄介だな」

 

「何とかしないと、この方面は危険すぎて進めません。 今まで何人もの戦士や騎士が返り討ちにされていて」

 

悲しそうに目を伏せるフェデリーカさん。

 

まあ、それもそうだろう。

 

とりあえず、まずは順番に、問題を解決する事にする。

 

「では、順番に一つずつ、この印を回って駆除作業をしよう。 サルドニカは人が集まりすぎてる。 それを狙って、魔物が集まってきている。 今の時代、魔物の方が人間より戦力が高い。 エサが多くなれば、当然魔物が集まるのは自明の理だよ」

 

「はい、それは分かっています」

 

「今回私達が駆除して回るけれど、多分時間をおけばまた魔物が集まってくると思う。 その間に、戦士の育成を進めて欲しいの。 そうしないと、街を拡げても、いずれ魔物に押し切られるよ」

 

こくりと頷くフェデリーカさん。

 

本当に根が素直で話が早い。

 

順番に、フェデリーカさんに装備を渡していく。

 

ベルトや腕輪。それに手袋も。指ぬきの手袋をしてみて、そのフィット感にフェデリーカさんは驚いたようだった。

 

「これは……」

 

「裏地に大物の鼬の毛皮を使っていてね。 肌にとても優しいようにしているんだ」

 

「こ、これはさっと作られた品だとは思えません。 王族や貴族が家宝にするような品に思えます。 しかも全身が温かいのは、多分強化魔術ですよね」

 

「錬金術が凄いだけだよ。 靴もそうだけれど、今渡したものは体力の自動回復と、防御の強化、肉体能力の強化が同時に全部掛かるようになってる。 内臓とかの機能も強化してあるし、毒もある程度は自動で解毒できるようになっているよ」

 

四年で、装飾品作りも進歩したのだ。

 

以前と同じ機能に見せて、少しずつ全てを強化してある。

 

フェデリーカさんには参戦して貰う。

 

魔物の撃破を、工房長が参加して、実施する。

 

それに大きな意味があるからだ。

 

今の時点で分かっているが、フェデリーカさんは今の時点ではサルドニカの事実上の支配者の操り人形に過ぎない。

 

実質上の支配者は、硝子ギルドのアルベルタさんと、魔石ギルドのサヴェリオさんである。

 

この二人を黙らせるには。

 

多分職人としての技術だけではだめで。

 

街の長としての実績がいる。

 

それには、街を脅かしている魔物の駆逐に、先頭に立って対応した。その実績が必要だ。

 

それを説明すると、フェデリーカさんは頷く。

 

それに、渡した装飾品には魔力の自動強化の機能もある。

 

これらも含めて、相当に戦力は上がっているとみて良い。

 

後はタオが加わってくれれば申し分ないのだが。

 

それは、まだ待つしかないだろう。

 

タオにとっては人生の転機なのだから。

 

まずは、最初に出向いたのは。アトリエのすぐ近くである。巨大な鉱山地帯が拡がっていて、そこには露天掘りされた巨大な窪地が出来ている。

 

トロッコが放置されているが、その辺りにわんさか魔物がいる。

 

見た事がない奴だ。

 

なんだか石が寄り集まって、浮いているかのようである。

 

セリさんが呟く。

 

「あれは……」

 

「セリさん、知っているの?」

 

「ええ。 あれは私達の世界にいるエレメンタルに近いわ」

 

「そうなると、セリさんの所ではあれがエレメンタルなのか」

 

こくりと頷くセリさん。

 

フェデリーカさんは何の話だろうという顔をしていたが。あたしは咳払いして、強引に意識を戻させる。

 

敵の数は相応。

 

しかも未知の相手だ。

 

「油断しないで。 どうやら此方を敵だと認めたみたいだよ」

 

「あれは中心のコアを砕かないと倒せません。 しかも、体の全てを活用して、飛ばして殺傷してきます。 投石の達人並みの威力で、それで多くの犠牲者が出ています」

 

「上等。 全部受けきってやるぜ」

 

レントとクリフォードさんが前衛に。今回はボオスも来ているので、当然ボオスも前衛に出る。

 

ちなみにこの辺りでは、土精とあれを呼んでいるそうだ。

 

なんでも土のある所には幾らでも湧いてくるから、だそうで。

 

なるほど、確かにそれもまた名前としては良いだろう。

 

大きいのを中心に、数十体の土精が集まり始める。

 

その前に、あたしが仕掛ける。

 

詠唱開始。

 

それを敵対行動とみたのだろう。

 

相手も即応。

 

一斉に、投石を開始。セリさんが、覇王樹で壁を作るが、ドスン、バキンと、凄い音が響く。人間の投石の比では無い威力だ。

 

レントとクリフォードさん、それにボオスがそれらを弾く中。

 

クラウディアが、精密に矢を放っていた。

 

コアを吹き飛ばされた土精が、文字通り消し飛ぶ。地面に石が散らばって、動かなくなる。

 

なるほど、これは面白い。

 

続けて多数の石が飛んでくるが、守りは任せる。

 

クラウディアが立て続けに矢を放ち、次々にコアを撃ち抜く。必死に守ろうとする土精だが。

 

その守りごと、クラウディアの矢がコアを撃ち抜く。

 

多少逃れようと関係無い。

 

今、スナイパーとしては。

 

クラウディアの技量は、多分この世界随一である。

 

ちょっと動こうが、避けられないし。

 

更に言えばクラウディアの矢はオートホーミングもする。情け容赦なく、コアを撃ち抜いて行く。

 

フェデリーカさんが、舞っているのが分かる。

 

それと同時に、全身の魔力が一気に高まる。

 

「さあ、これでどうですか! ふるべゆらゆら、ゆらゆらとふるべ!」

 

たんと、地面を踏むフェデリーカさんが。

 

体をくるんと回すと、

 

爆発的に、皆の魔力が高まる。

 

レントの動きが加速。更に凄まじい勢いで、大剣を振るってつぶてを叩き落とす。クリフォードさんも、ひゅうと呟きながら、ブーメランを自由自在に振り回して、つぶてを寄せ付けない。ボオスは二つの剣を自在に操り。長剣を中心に、時にサブウェポンの短剣も振るって、それで石を弾き落とし続ける。

 

クラウディアも多数の人型を出現させると、敵を狙撃して片付ける速度を一気に倍加させる。

 

あたしも、詠唱を終えていた。

 

五千の熱槍を収束させると。

 

踏み込んで、全力投擲。

 

でかい土精が、周囲の土精全部をまとめて盾にする。巨大な岩盤が、まとめて盾になったに等しい。

 

だが。

 

「……はあっ!」

 

あたしが気合とともに、投擲後の熱槍を操作。更にそれが加速して、数秒の抵抗後。敵の守りをぶちぬく。

 

コアを貫く。

 

同時に、大炎上した土精が。

 

燃え上がりながら、地面に落ちていく。

 

キュルルルと、凄まじい音を立てているが、これは悲鳴だろうか。セリさんが、危険を察知して、全員の前に覇王樹を展開。

 

直後。

 

土精が爆発四散していた。

 

ふうと、あたしは額の汗を拭う。

 

まずはこれで一つ。

 

フェデリーカさんが、笛を鳴らす。そうすると、近くで様子を見ていたらしい戦士がこっちに来る。

 

「目標地点Fの魔物群、掃討しました。 すぐにトロッコ、線路、復旧を開始させてください」

 

「分かりました、工房長」

 

「お願いします」

 

怪我の確認を、その間にあたしはしておく。

 

前衛にいたレントとクリフォードさんは多少貰っていたが、まあこのくらいは大丈夫だろう。ボオスは腕に一つ痛打を受けていた。あたしが傷を見せろと言って、すぐに薬を塗り込む。

 

一応、痛みの声一つ挙げないのは立派だった。

 

「どう、痛みは引いた?」

 

「ああ。 流石だな」

 

「どういたしまして」

 

この近くにも、まだ魔物の大規模な群れがいる。

 

復興のための戦士と職人が来て、働き始めた。武装したフェデリーカさんを見て、ひそひそと話しているが。

 

あたしが敢えて大声で言う。

 

「工房長、あの舞い助かったよ。 魔力の増幅で、詠唱を早く終わらせる事が出来た」

 

「い、いえ……」

 

「きっちり戦えるね。 次も頼むよ」

 

「分かりました」

 

意図を理解したのだろう。フェデリーカさんも顔を上げる。

 

そして、次に向かう。

 

複雑な地形だ。

 

とにかく手当たり次第に掘ったのだと分かる。そして、水抜きに彼方此方に水路が作られている。

 

それらに魔物が集っていて、明らかにその数が過剰だ。

 

「これ、水路のもとって……」

 

「お察しの通り、進入禁止の地域です。 この魔物は、其処から来たようで……対処しかできません」

 

「ある程度ブッ殺して、残りはわざと逃がすかな」

 

「いえ、何度かそうしたんですが、中途半端に賢い様子で、何度でも来ます。 しかも、人間に敵意を今では隠そうともしていません」

 

なるほどね。

 

結構大物の鼬と、それの群れか。

 

サルドニカに来る途中でも交戦したが、この近辺の鼬は、どうも二種が混合するらしく。大型種が小型種を使役する。

 

小型種は使い捨てにされているようだが、それでも大型種と一緒にいる方が天敵を退けやすいのだろう。

 

鼬は各地で繁殖している魔物だが。

 

繁殖するのに色々な方法を試して、それで柔軟に対応することで、それで繁殖できている節がある。

 

だからこそ、人間に対する潜在的な危険性も高いのだが。

 

鼬の群れが、顔を上げる。

 

じゃあ、仕方がない、皆殺しにするか。

 

シャアッと鋭い威嚇の声を鼬が上げる。レントが前に出て、剣を抜く。ボオスとクリフォードさんも壁を作る。

 

同時に、多数の鼬が、一斉に躍りかかってきた。

 

 

 

街道を完全に封鎖している走鳥の群れをまとめて片付けて。死体の処理をしていると、フェデリーカさんが呼んだ戦士達が来る。

 

やたらツラだけはいい男性騎士が来て、其処を取り仕切り始めるが。

 

なんというか、戦士としてはこいつ随分頼りないな。

 

騎士試験は、貴族の子弟は別枠だとパティは言っていたっけ。少なくとも此奴が、アガーテ姉さんと同じ試験を突破したとは思えなかった。

 

だとすると、こいつは。

 

貴族の子弟か、或いは何かしらの訳ありかも知れない。

 

「随分と頼りないのが来たな」

 

「王都の貴族の愛人だったという噂があって……」

 

「ああ、なるほど」

 

納得した。

 

しかもこれ、多分、同性愛者の方の愛人だろうな。

 

なんとなく、そういうのもあたしは分かるようになってきた。自分自身の恋愛には興味ゼロなのだが。

 

生物としての発情期とかは、畜産業を経験しているからなんとなく分かるし。その延長線で、交配とかそれに関する云々も理解出来るのだ。人間の恋愛関連も、それの延長線である。

 

いずれにしても貴族に尻を掘らせて騎士になったような人間が出向いてきても、前線では迷惑なだけだ。

 

あたしはぱっぱと血抜きや肉を燻製にして、作業を済ませる。

 

フェデリーカさんは、手際を見て呆れていた。

 

「一体どれだけやったらそれほど熟練するんですか?」

 

「日常的にやってたもんね」

 

「まあそうだな」

 

「此奴らは、俺もそうだが。 もとから護り手って言う自警団体で腕を磨いていて、こういう技術も其処で基礎を叩き込まれたんだ。 だから、出来るのは当然と言う事だ」

 

ボオスが説明して。コツをフェデリーカさんに説明する。

 

さっき鼬の皮のなめし方を教え込んでいたが。

 

今回は、走鳥の肉のそぎ方を仕込んでいる。

 

美味しい肉だが、人間を食ったかも知れないし、まずは腹を開けるとか、そういう基礎知識も叩き込んでいて。

 

ボオスの面倒見の良さが、凄く分かりやすい。

 

作業を進めていると、やっと声が掛かる。気配でわかっていたが、タオだ。

 

「タオ、合流したか」

 

「ごめん、ちょっと遅れた」

 

「どうだ、王都の方での用事は」

 

「全部終わったよ。 これで学術院の博士号も取得した。 今回は長期の研究と言う事で、しっかりアリバイも作ってきたよ」

 

なお、パティの合流はしばらく後になるそうだ。

 

タオにフェデリーカさんを正式に紹介。

 

丁寧にタオが礼をして、フェデリーカさんもそれを受ける。

 

まずは魔物の退治から、という話をすると。

 

タオが苦笑いしていた。

 

「ライザならそうするだろうなと思った。 そもそもこの街の近く、結構魔物が多いもんね」

 

「そういうこと。 あたし達にとって出来る事で、人命に関わることから順番にやっていく。 それだけの話」

 

まああたしも、今では凶賊とか殺してもなんとも思わなくなったが。

 

ああいうのはそもそも人間じゃないので、どうとも思わないだけだ。

 

ともかく、走鳥の大きな群れは撃退した。ボスの腹の中からは、案の場人間の手足の残骸が出て来たので、丁寧に焼いて埋葬する。

 

此奴に食われた人の事を考えると、早めに倒せて良かった、としか言えない。

 

頭の巨大な飾り羽は貰っておく。

 

肉は、食べるのはやめておいた方が良いだろう。

 

頭の飾り羽は、魔力がとても強いので、何かしらの役に立てるかも知れない。

 

次は街の北側だ。

 

既にこれで五箇所、魔物を駆逐してきたが。まだまだこの様子では、駆除を急いだ方が良いだろうと思う。

 

後処理を済ませると、街の中に入る。

 

人が忙しく行き交っていた。さっき大量に肉や毛皮が持ち込まれたからだろう。既に競りが始まっているようだった。

 

「革細工ギルドはかき入れ時かな」

 

「はい。 それにライザさんの技量を見て、皆発憤しているのだと思います」

 

「良い刺激になれば良いんだけれどね」

 

「なります。 職人って、そういう生き物なんです」

 

熱弁するフェデリーカさん。

 

なるほど、職人である事に本気なタイプなんだな。

 

こう言う人が主導している間は、職人ギルドは大丈夫だろう。

 

だけれども、その内経営を重視する奴がギルドのトップになったりする。そうなると悲惨で、技術力は見る間に落ちていく。

 

それは王都で実際にみた。

 

仮に経営を重視する人間でも、現場の職人を大事に思っているのなら大丈夫だ。だけれども。

 

得てしてそろばん勘定しか知らない人間は、職人を低く見る事がとても多いのである。

 

これはクラウディアから聞いた話だが。

 

ただ、あたしも王都で似たようなものは散々見たので。

 

事実であることは理解していた。

 

今、このサルドニカは。

 

恐らく岐路に立っている。

 

もしもこの先、硝子ギルドと魔石ギルドの対立が解消できなかった場合、数世代もしないうちに、技術より金がものをいう。

 

そうなれば、サルドニカの発展は終わりだ。

 

周囲では、硝子の擦れ合う音が凄い。

 

多分革細工ギルドがかき入れ時になるだけではなく、他にも経済活動で色々動いているのだろう。

 

あたしが駆逐した魔物。

 

その影響は色々あるということだ。

 

通れなかった道が通れるようになる。

 

その結果、手に入れられなかった素材が手に入れられるようになる。

 

そういう意味で、一つの作業が大きな影響を与える。

 

それが、こういう街のあり方だ。

 

あたしは金を自分で蓄える事にあまり興味は無いのだが。

 

金が動く事には興味を持って欲しいと、クラウディアに以前言われた事がある。それを覚えているので、気を付けるようにはしている。

 

「そういえばフェデリーカさん。 ネックレスの模様なんですけれど」

 

「ええと、それらしい古い資料は見つけておきました」

 

「話が早いね。 タオ、解読頼めるかな」

 

「百年前の資料でしょ。 ちょっと物足りないかなあ……」

 

実際、百年前となると、違う言葉が使われていたわけでもない。

 

下手すると千年前の資料を調べているタオにしてみれば、ちょっと物足りないかも知れないが。

 

それでも、やるのは専門家の方が良いだろう。

 

度肝を抜かれているフェデリーカさん。

 

スペシャリストの集団に混じったことを、今更気付いたのかも知れない。

 

あたしは自分がスペシャリストだとは思っていないが。

 

少なくとも、あたしの仲間は。

 

みんな、得意分野ではそれぞれ、世界のトップクラスにいるスペシャリストなのだ。

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