暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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4、最後の準備へ

アトリエに戻ると、文字通りの必殺だと分かったツヴァイレゾナンスを増やしておく。弱体化していたとはいえ、エンシェントドラゴンを打ち破ったほどのものだ。恐らく、母が怖れていた「大典」も打ち破る事ができるだろう。

 

だがそれが、どんなガーディアンを繰り出してくるか分からない。

 

だから、最後の最後まで、油断は出来ないし。

 

何よりも、薬も出来るだけ作った方が良いのだった。

 

「フィー!」

 

「分かってる。 適当な所で切り上げるよ」

 

フィーが警告してくるので、ちゃんと忠告を聞く。

 

この子は立派だ。

 

あたしがもう取り返しがつかない事を理解していても、最後まで一緒にいるつもりでいる。

 

だが、あたしはもう万象の大典で、フィーの同族の卵とかが見つかるかは微妙だと判断している。

 

最悪、あたしがフィーの一族を調合するしかない。

 

同じように、オーリムの生物を再生していくしか無いだろう。

 

オーリムに飛来するエンシェントドラゴンは、更に別の世界から来るのだと聞いている。それらエンシェントドラゴンが、此方の世界に来る時に災害が起きないように。

 

フィーの一族は必要だ。

 

勿論、「現状の」フィルフサが全て滅びたあとのためにも。オーリムには動植物の再生がどうしても必要なのだ。

 

或いはフィルフサが取り込んだ生物の要素を解析するのもありか。

 

フィルフサの残骸や母胎を調査して、其処から生物を再生する。

 

今のあたしなら、出来る筈だ。

 

ただ、一人では無理だな。

 

調合を止めて、夕食にする。

 

淡々と食べながら、それで思考を進めていく。

 

あたしがやろうとしているのは、作られし神であっても、どんな混沌の時代の神よりも慈悲深く、世界に対して真摯であった本物の神。旅の人の後継だ。

 

同胞にも協力を願うつもりだ。

 

母にも。

 

クラウディアも手伝ってくれる。

 

同時に、あたしは。

 

人間を置き換えていくつもりだ。

 

冬の時代を経ても、人間は醜悪な性根を変える事がなかった。今後もまず変わる事はないだろう。

 

だから変える。

 

あたしが力尽くでだ。

 

ホムンクルスをあたしが新しく作って、其処に設定を仕込む。

 

エゴを最優先する性質の抑制。

 

悪事にばかり頭を使う性質の抑制。

 

ホムンクルスはあたしも解析した。みため普通の人間とまったく変わらないように出来る。

 

そうして、混血を進めさせ。

 

それら抑制要素は絶対に遺伝するように調整して、世界にいる人間を根本的に置き換えるのだ。

 

幸い今、此方の世界の人間は、今までの歴史で類を見ない程数が少ない。いや、冬の時代直後よりはましか。いずれにしても、置き換えができる現実的な数字だ。

 

勿論魔物も順次駆除して行く。

 

神代の錬金術師がばらまいたような魔物は、存在するだけ生態系を破壊するだけだ。

 

そういった魔物そのものは犠牲者だが。それでも残念ながら、世の中には駆除しなければならないものもある。

 

あたしがやる。

 

それと、同胞やクラウディアにも手伝って貰う。

 

とにかく、順番にやるしかないだろう。

 

後は。

 

ボオスを一瞥。

 

流石に疲れきった様子で、寝床に消える。

 

キロさんと一緒になれるのは最低でも十年後か。だが、今から準備はしないといけないだろう。

 

アンペルさんとリラさんはどうなんだろう。

 

リラさんはその気のようだが、アンペルさんは明らかに乗り気ではないようにも思うが。それでも準備はいる。

 

クリフォードさんとセリさんについても同じ。

 

一応先に確認したのだが、セリさんは別にかまわないそうである。まあセリさんもアーベルハイムに傭兵として雇われていたわけだし。ずっと一緒にいたクリフォードさんは別に嫌ではなかったのだろう。

 

リラさんとセリさん。二人が、二人の子が。

 

不幸にならないように、今から準備がいる。

 

その後くらいに、ボオスとキロさんについても。その子についても。同じ処置が必要だ。

 

錬金術は、的確に使えば、世界を改革もできる。不幸を取り除く事もできる。

 

旅の人はそれをやっていた。

 

神代はそれを悪意でねじ曲げた。

 

あたしは旅の人とは違う方向から、世界を変える。

 

この世界に最早これ以上の破綻は許されないからだ。

 

寝床に潜り込むと、ぱちんと意識が落ちた。体の制御が、更に上手くなって来ている。

 

ただ、感応夢はこの状態でも見る。

 

何処かに閉じこもっている、ホムンクルスの面影がある女性。

 

外で何かが喚いている。

 

開けろはしため。

 

早く開けないと、……の街を焼け野原にするぞ。

 

さっさと我々の子を産め。

 

全員分の子を順番に産め。

 

貴様のようなはしためにそれを拒む権利があると思っているのか。我等の偉大な血統を保存するための肥やしになっていろ。

 

その声だけで分かった。

 

これは旅の人の記憶だ。

 

彼女は頭を振ると、何かを手にとる。

 

それは硝子のように透明な剣だった。

 

思考が入ってくる。

 

このままだと、全ての知識を悪用される。

 

あらゆる悪用と暴虐を見た。もう自分にはどう止めていいか分からない。だから、こうするしかない。

 

世界を救えなかった。

 

多くの助けた人々には、感謝してくれる人もいた。だけれど、全員がそうでもなかった。

 

考えが甘いと気付いたのはいつだったのだろう。

 

でも、自分にはこれしかできなかった。

 

普通には死ねない。

 

だから、こうするしかない。

 

今、これを見ている人。

 

できれば、私と違う方法で世界を救って欲しい。

 

そこで、感応夢は途切れた。

 

目が覚める。

 

半身を起こして、なるほどなと呟いた。

 

旅の人はやはり自害したのか。それもあの透明な剣、きっと自身の存在を抹消するためのものだ。

 

恐らく限りなく不死に近い体だから、ああでもしないといけなかったし。

 

体の一部でも残したら、それでどれだけの災厄が起きるか分からなかったという理由もあったのだろう。

 

その願い、引き継いだ。

 

やり方が間違っていた。だからやり方を変えて欲しい。

 

それが旅の人の意思だという事も理解出来た。

 

だったらあたしが。

 

それを成し遂げるだけだ。

 

 

 

(続)







旅の人の感応夢。

ライザに託された最後のものです。

それを胸に。

ライザは最後の……本当に最後の決戦に挑みます。
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