暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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万象の大典の最深部、管理区へ準備を整えて入り込みます。

其処は、想像以上に荒れ果てた土地でした。

分かりきってはいたことです。

問題は、やっかいな管理システムが生きている事ですが。


1、大典

瓦礫だらけの場所を進む。所々、死蝋化した死体が落ちているが。機械にでも殺されたのだろう。

 

ぐちゃぐちゃに破損しているケースが多かった。

 

或いは大典にやられたのかも知れない。

 

ただ、稼働しているロボットやらは見た所ほとんどいないようだ。瓦礫も片付いていない。

 

生産区や研究区が、ある程度は。特に研究棟などの清潔さが求められる地点はロボットが綺麗にしていたことを考えると。

 

これはやはり、異常事態なのだろう。

 

瓦礫が折り重なっていて、凄まじい有様だ。

 

大きな建物があったのだろうが、完全破壊されている。

 

中にあったのはなんなのか、それすらも分からない状態だ。ただ、彼方此方にトラップが生きているようなこともない。

 

なんとなく、此処だと分かった。

 

クリフォードさんが、気を付けてくれと促してくる。

 

あたしも、頷いていた。

 

それは噴水のように見えた。

 

あたしは前に進み出る。周囲には、皆が探知の魔術を展開してくれているし、クリフォードさんが側についている。

 

この人の対奇襲能力は間違いなく世界最強。

 

もしもそれを突破されるようだったら。

 

誰でもダメだ。

 

しばし、周囲を観察して回る。この噴水、やっぱり竜脈から魔力を吸い上げている。しかし、どうやってだ。

 

制御装置は何処にある。

 

いや、これだ。

 

あたしは、噴水の縁に触る。

 

埃を被っていたそれが、ふっと光り、光学コンソールが出現する。

 

「ようこそ錬金術師様。 ご命令を」

 

喋りはするが、神代の錬金術師と同じだな。あたしは無視して、タオを呼ぶ。操作してもらう。

 

できない事もないが、神代の言葉がわからないから、二度手間になるのだ。

 

空間把握ができるのと、言葉が読めるのは別の問題である。

 

しばしタオが操作して、光学コンソールを多数展開する。

 

あたしは指示を出す。

 

やがて、タオがそれを見つけていた。

 

「あった。 竜脈からの力の吸い上げだ。 ええと……あれ」

 

「どうしたの」

 

「ロックがかかってる。 多分神代の錬金術師が勝手に触らないように、旅の人が制限を掛けたんだ。 最上位権限で固定されていて、いじれないようになっているね。 最上位権限は、多分大典というのがそうだよ」

 

「そうなると、ますますまずいな」

 

大典とやらが此処をろくに管理していないのはよく分かった。

 

瓦礫の中などには、レーザーとか言う殺戮の光が張り巡らされている場所もあるが、侵入者対策のトラップなんかはない。

 

そうなると。

 

あたしはタオに離れて貰う。

 

熱槍を出現させる。

 

これはグランツオルゲンを混ぜた合金でできているが、これは危機として認識するはず。

 

さて、出てこい。

 

熱槍を、動力炉の上でどんどん火力を上げていくと。

 

やがてそれが、横殴りにかき消されていた。

 

「万象の大典動力炉への危険行為を確認。 排除に移行します」

 

「来たぞ! 全員備えろ!」

 

「……でも来ないね」

 

アラームが鳴り響いている。

 

だけれども、何も現れない。

 

これは、さては。

 

恐らく、万象の大典とやらは、自分だけを守るしかできない状態なのだな。そう判断する。

 

いずれにしても、操作ができないなら後回しだ。

 

万象の大典がどんな機械だか知らないが、戦闘のために竜脈から垂れ流しで力を吸い上げたりするかも知れない。

 

それは、されたらまずいのである。

 

「アラームの発生源は彼方此方にまだかろうじて生きている機械類からだね。 問題はそれを発した場所だけれど」

 

「いや、見つけたぞ。 何か目覚めたようじゃ。 熱源がある。 今までは眠っていたのだろう」

 

カラさんが、こっちじゃと指さす。

 

同胞の戦士達が前衛に立ってくれた。

 

皆で進む。

 

瓦礫だらけの道には、彼方此方に死蝋化した死体があった。いや、それだけじゃない。

 

白骨化しているものもある。

 

これは、酷い死に方をしているが、神代の衣服じゃないな。

 

連れてこられた錬金術師か。

 

そうか、此処で末路を迎えたのか。

 

此奴らは神代の錬金術師と同じメンタリティの連中だったが。それでも後悔しながら死んで行った。

 

だとすれば、此奴らの犠牲者も、少しは浮かばれただろうか。

 

走る。

 

カラさんが、この先じゃと叫ぶ。

 

瓦礫がうずたかく積もっていて、乗り越えないとまずいな。見た所、例のレーザーとかが張り巡らされている。

 

危ない。

 

あたしはクラウディアと連携して、レーザーだかを出している機械を、全てまとめて焼き切る。

 

防衛装置が消えた。

 

五月蠅いアラームはずっと鳴り響いているが、ガーディアンが出てくる気配はない。

 

やはり、もういないと見て良かった。

 

「ライザ、これ多分だけれど、爆弾による自主的な破壊だよ」

 

「爆弾?」

 

「うん。 ライザが作る奴ほどじゃないけど、かなりの火力の爆弾。 多分だけれど、破滅に向かう100年の間で……ヒステリーだのなんだので、生きる事も逃げる事も満足にできなくなった錬金術師達が、効果もよく分からない爆弾を使って、互いに殺し合ったんだ」

 

そうか。

 

効果も分からない爆弾を使ったのだとすれば、自分も巻き込まれたんだろうな。

 

急激に数を減らしたのは、それも理由だったんだろう。

 

タオは遺跡探索のスペシャリストだ。

 

だから破壊の形跡から、何が起きたのかを推察できる。

 

此処は間違っても自然な劣化が起きる様な遺跡では無い。

 

それに、瓦礫の有様からも、それが結論として出るのだろう。

 

瓦礫を乗り越える。

 

見えてきた。

 

長い階段があって、塔みたいなのが見える。

 

階段の途中にも、引きずられてきた錬金術師らしいのが死んでいる。白骨化すらせず、死蝋化してだが。

 

ただそれよりも問題なのが。これは殺されたと言うよりも。

 

クリフォードさんがぼやく。

 

「逃げ出して、転んで階段で首を折って死んだんだな……」

 

「神代の錬金術師共は、大典とやらに何を命じていたんだ?」

 

ボオスが、死体を見て呻く。

 

それについては、本人に問いただすしかないだろう。

 

階段の途中にトラップはなし。

 

先にある塔は全く無事だ。そういえば、少し離れた所に、空間魔術で守られている家屋みたいなのがある。

 

あれが、もしかして。

 

いや、それはいい。

 

あたしは、旅の人の杖を取りだす。

 

ひょっとすると、これで大典を無力化出来るかもしれない。

 

階段を上りきる。

 

其処は透明な床が何処までも拡がっている、不可解な空間だった。此処だけは綺麗にされているようだ。

 

いや、違う。

 

透明な床は、今展開されたんだ。

 

塔の中から、何か巨大なものが出てくる。

 

それは星図に見えた。

 

何かを中心殻にして、多数の色の球体が回転している。ただ星図なだけはない。極めて高度なからくりだ。

 

あたしは、旅の人の杖を向ける。そうすると、明らかに反応を見せていた。

 

「錬金術師を確認。 検索に該当なし。 在野の錬金術師と判断します」

 

「貴方が大典?」

 

「はい。 当機は此処、世界管理センター万象の大典「後に命名されました」の管理システム、大典となります」

 

妙なしゃべり方だな。

 

後に命名されたと言う事は、まあ神代の錬金術師が名付けたのだろう。

 

万象の大典なんて大それた名前、身の程知らずかバカでもなければ自分の家につけようとは思わない。

 

そして、旅の人がそうだったとはとても思えない。

 

「此処に連れてきた錬金術師達はどうしたの? そもそもどうして錬金術師を呼んだの」

 

「当機は「後から命令を受けました」行動に従って、在野に存在する都合が良い肉体を集めるために呼びかけを行っていました」

 

「肉体だって……」

 

「一部の錬金術師は、、その意識を機械に移しました。その新たな器として、優秀な肉体が必要だったのです。 錬金術が使える事、それも最低限の才能が存在することが条件として求められました」

 

ああ、なるほど。

 

全部、何もかも合点がいった。

 

ボオスが言う通り、此処にいた連中は万象の大典とか抜かしていた奴らだ。全てを知っていて、何でもできると思っていた。

 

そんな連中が、在野の人材なんて招くのはおかしい。

 

だったら、そんな連中がすることは。

 

生け贄の肉を欲することだったわけだ。

 

「命令の上書きはできる? 旅の人の杖はあたしが手にしているけれど」

 

「できません。 貴方が旅の人と呼ぶ原初の存在は、信頼出来る錬金術師にだけ管理権を与えました。 最後に管理権を持っていた錬金術師は1811年前に生命活動を停止しています。 血統をつぐものであれば錬金術師であれば命令の上書きも許されますが、それも1220年前に全てが絶えました。 それである以上、最早当機の命令は更新されません」

 

「そう。 じゃあ残念だけれど破壊するしかないね」

 

「それは当機に対する宣戦布告と判断します。 排除形態に移行」

 

来るよ。

 

あたしが叫ぶ。

 

全員が展開。万象の大典は、回転する多数の球体という不可解な姿から、形を変えていく。

 

それはなんというか。巨大な蜘蛛だろうか。

 

恐らくエーテルで構成されている多数の腕が、球体を守るようにして出現している。

 

半透明の腕は高濃度のエーテルで揺らめいていて、美しいと言うよりも明らかに禍々しい。

 

からくりや機械というよりは、まるで邪神だ。

 

球体の数々は、蜘蛛の体を構成する節や、或いは目に見える。

 

おぞましい姿だが。生物的では無い。

 

生物を弄くり回して作り出した、神代の錬金術師ご自慢の生物兵器とはこれは違っている。

 

神代の錬金術師があれほど馬鹿にしていた神代鎧の技術と、奇しくもこれは似ていると感じた。

 

正解はこっちだったのだろう。

 

目の前にいるのは、多分旅の人が作成に関わった、最強の錬金術の産物。錬金術製の邪神と言って良い。

 

だが、上等。

 

こちとら魔王たらんとしている存在だ。

 

邪神なんぞ今更怖れるものか。

 

まずは挨拶代わりだ。

 

あたしはノータイムで蹴りを叩き込む。

 

半透明の足の一本が、それを防ぐ。

 

やはり、ぐにゃりと空間がねじれる感覚。空間魔術使いか。

 

今までの総決算の戦いになるな。

 

あたしは、そう感じた。

 

 

 

フェデリーカは、心に罅が入った事を感じていた。

 

分かっている。

 

今までも、悲惨なものをたくさん見てきた。

 

それは何も、ライザさんと一緒に旅をして、神代に関わり始めてからではない。

 

魔物の爪に掛かると、文字通り吹き飛んでしまう人の命。

 

幼い頃に死んでしまった婚約者が生きていてくれたら、こんな事にはならなかったのだろうかとも思うが。

 

それ以降だって、やれ魔物が出たと話が来ると。

 

それは人が死んだとセットであったし。

 

視察に行けば、グチャグチャに殺された人の死体なんて、幾らでも見る事になった。

 

神代の錬金術師という諸悪の根元の存在を知って。

 

そいつらがやってきた悪逆非道の数々を見て。

 

それでもフェデリーカは、悪を押しつけて全てそいつらのせいだったとは思えなかった。ライザさんも言っていたが、はっきりいって神代の錬金術師の愚行の数々は、その辺にいるチンピラと大差なかったからだ。

 

違うのは、テクノロジーを持っていたかどうか。

 

テクノロジーをもったチンピラというだけで、人間とは違うとまで、フェデリーカは思わなかった。

 

だからこそ、それで何もかもが壊れて行くのが辛かった。

 

そいつらのせいで、世界を復興しようとした、多分人間でも最大の偉人が無惨に死ぬ事になったことも。

 

世界が復興しなかったことも。

 

それどころか其奴らが考える美しい世界のために、再度滅茶苦茶にされたことも。

 

異世界オーリムにまで多大すぎる迷惑を掛けたことも。

 

それらが確実に心を蝕んでいた中。

 

ライザさんが、決定的に壊れた。

 

それも、フェデリーカの言葉が切っ掛けになったのは明確だった。

 

神楽舞の精度が上がれば上がるほど分かる。

 

クラウディアさんも、もう人間を止めている。

 

話を聞いてはいたのだが、本当に異質だ。

 

そして、ライザさんも。

 

ライザさんは神ではダメで。魔王になる必要があると言っていた。

 

それはもう、納得して体が受け入れてしまっている。

 

そんな恐ろしい言葉でも。

 

今、フェデリーカは。

 

最後の関門の前で、神楽舞を続けていた。

 

ホムンクルス同胞の戦士達と。ライザさん達が勝つ方が何百倍もマシ。このまま行けば、世界はまた此処を抑えた存在の気まぐれで滅ぼされる。

 

ライザさん達は、恐らく人間を品種改良するつもりだ。

 

此処から悪党の類を今まで誰も出来なかった精度で見つけ出し、誰も裁けなかった其奴らを確実に殺して行くだろう。

 

世界は救われる。

 

だけれども、ライザさんもクラウディアさんも、もう人間じゃない。

 

人間を最高の存在だと思うのは、フェデリーカだって疑問がある。

 

それでもこの結末は、恐ろしくて、それ以上に悲しいのだった。

 

たんと音を立てて、踏み込む。

 

そして舞う。

 

最後のガーディアンである「大典」の恐らく戦闘形態なのだろう。それが、凄まじい数の腕を伸ばして、皆と戦っている。

 

仲良しになれたパティが言っていたっけ。

 

フェデリーカの目が死んでいると。

 

そうだろうなとフェデリーカも思う。

 

色々起こりすぎて、心に罅が入ったからだ。このまま行くと、きっと本格的に壊れるだろうな。

 

そうも思う。

 

一通り攻撃を受けてまるで無傷だった大典が、反撃に出る。

 

多数の針みたいなのを飛ばしてくる。

 

ノーモーションで飛ばされたそれが当たるとまずい事は誰もが分かったのだろう。フェデリーカも分かった。

 

回避する。

 

しかし、回避しきれなかった同胞の戦士が、擦っただけで腕を飛ばされていた。

 

「がっ!」

 

「後方に! 支援要員を連れてこい!」

 

「妙です! まるで傷口が切り裂かれたようのではなく、体がなくなったような」

 

「空間魔術だ。 それも不思議じゃない!」

 

とにかく、負傷者を連れてすぐに同胞の戦士がさがる。

 

大典が、ノーモーションで連続して針を飛ばしてくる。なる程、これはもしも抵抗を挑んだとしても。

 

今までここに来た錬金術師なんか、とても歯が立つ相手ではなかっただろう。

 

床が砕ける様子がないのは。

 

それも空間魔術だから、かも知れない。

 

セリさんが、大量の食虫植物を魔術で呼び出し、一斉に襲いかからせる。四方八方から大典を包み込んだそれが、内側から微塵に切り裂かれる。

 

「なるほど、あのたくさんの腕そのものが空間魔術なんだ。 それを更に可変させて、攻防に利用してきている!」

 

「おいおい、あんなのどうやって攻めればいい!」

 

「攻めの時に比べて守りはどうも空間を圧縮して壁にしているだけの気配がある! 此奴も万能じゃない! ただ……」

 

熱槍を叩き込みながら、ライザさんが暑くなって来ていると言う。

 

そういえば。

 

フェデリーカが、神楽舞を切り替える。

 

あたりの空気の温度を下げた。

 

それでだいぶ戦闘での疲弊が減るはずだが、それでもかなり厳しい。

 

また針を飛ばしてくる。

 

防御も叩き落とすのも無理だ。

 

ディアンを突き飛ばした同胞の戦士が、ごっそり足を持って行かれて。血をぶちまけながら倒れていた。

 

「エンディラ!」

 

「おい、大丈夫か!」

 

「私は良い、戦ってくれ! 這ってでも安全圏に離脱する!」

 

歯を噛む。

 

また、針が来る。

 

だが、ライザさんが仕掛ける。

 

以前、空間防御で守られていた遺跡をこじ開けた爆弾をセット。それに大典が反応。大量に腕を展開して、防ごうとするのが見えた。

 

起爆。

 

空間の壁が、ふっと……ばない。

 

代わりに大典の腕が全部消し飛んだが、即座に再生する。

 

そして、フェデリーカにも分かる。

 

辺りがまた、暑くなっていた。

 

「おかしいぞ。 また暑くなってきやがった!」

 

「分かった。 此奴、動力炉と接続して、世界から際限なく力を吸い上げているんだ。 此奴に魔力切れの概念は無いよ。 なんぼでも空間魔術を使ってくるとみていいだろうね」

 

「冗談じゃねえぞ!」

 

レントさんが叫ぶ。

 

パティが斬り込んで、背後から一瞬の隙を突いた。

 

球体の一つを、見事に真っ二つにして見せる。

 

おおと声が上がったが。

 

それが、即座に再生されていくのを見て、パティも多数の腕の迎撃を必死にかわしつつ、さがる。

 

あれは恐らく時間魔術だ。

 

動力が無制限に使えるから、やりたい放題ができるのだ。

 

とんでもない相手である。

 

空間魔術と時間魔術を両方使える相手なんて今まで見た事がなかった。それも過去になった。

 

だが、それでも。

 

此奴を打倒しない限り、世界はまだまだ滅茶苦茶にされる。

 

それに戦闘が長引くだけで、世界はすべて吸い上げられて、干涸らびかねない。

 

タオさんとパティが同時に仕掛けて、速度を武器に攪乱。

 

大量の半透明の腕を展開している大典。

 

それだけでも、どれだけ力が世界から吸い上げられているか分からない。

 

そこに、ガイアさんが突貫した。

 

ガイアさんの腕と足が、円形に抉られる。

 

それでもガイアさんが勢いを殺さず、中央にあった球体に、ライザさんが作りあげたグランツオルゲンの大太刀を突き立てる。

 

それで、初めて。

 

相手に痛打が入ったのが分かった。

 

おぞましい軋みが辺りに響く。

 

弾かれたガイアさんを、カーティアという同胞の戦士が受け止める。すぐに後方に。叫ぶライザさん。

 

フェデリーカは、その時。

 

ふつりと何かキレた。

 

やりたくなかったけれど、やる。

 

これ以上、全てに被害を出させるわけにはいかない。

 

神楽舞は出力を上げると、体に反動でダメージが出る。

 

元々神を体に宿す舞いだ。

 

昔は薬を入れてやっていたと言われている。

 

今は普通に舞えるけれど、それはライザさんが作った装備品の支援があっての事が大きいのだ。

 

それでも反動が限界を超えるまで、舞う。

 

「皆さんを最大限強化します! できるだけ短時間で、彼奴をやっつけてください!」

 

「排除対象の強大化を確認。 排除形態を強化」

 

大典が何かほざく。

 

そして、無数の腕が、体の方へと集まっていく。そして、蜘蛛から、クラゲみたいな形態に変わる。

 

その中心の球体には、ガイアさんが命がけで突き刺した刃が残ったままだ。

 

それが、恐らく奴の動きを阻害している。

 

ライザさんが、熱槍を叩き込む。

 

カラさんも続けて、多数の雷撃魔術を叩き込む。

 

全て弾き散らされるが、クラゲはこっちに触手を向けてきて。それの幾つかが欠損しているのが分かる。

 

つまりダメージが入っていて、空間魔術の制御が少しずつ上手く行かなくなっているのだ。

 

「あの球体、合計八つかな。 全てを破壊するよ! それも此処からはできるだけ短時間で! 最悪あいつ、時間を戻して自分だけ再構築しかねない!」

 

「分かった!」

 

「あの空間魔術にやられたら一巻の終わりだ。 勝負は一瞬だな……」

 

「速さ勝負は得意です。 行きます!」

 

フェデリーカの全身が熱くなってきた。このままだと自壊しかねない。

 

ライザさんが、こっちを見て、頷いた。

 

フェデリーカも頷く。

 

できるだけ早く終わらせてください。

 

それができると信じています。

 

世界に絶対に正しいものなんてない。なぜなら、人間なんて生物が正しいとは程遠いからだ。

 

旅の人ですら間違った。

 

善意と無償の愛の人ですらだ。

 

それ以外の人間が、どう正しいとあれるだろう。

 

だから、フェデリーカは。

 

少なくともまだマシな、ライザさんが勝つために、命の全てを擲つ。

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