暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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万象の大典の管理者との戦闘。

空間操作に加えて時間操作までつかう最強の敵です。

ただし今のライザ達は。

それらを越えうる力を有し。

この時の為に絶えてきた同胞まで仲間に加わっているのです。

負ける訳にはいきません。

この世界の未来の為にも。


2、最強の守護者の……

雄叫びを上げて、レントさんが痛烈な斬撃を叩き込む。空間魔術で防ぎながら、大典はそれでもさがる。

 

物理的な圧力なんて、ものともしないはずなのに。

 

辺りの透明な床が、振動しているかのようだ。

 

「勝負は一瞬」

 

パティは呟く。

 

ライザさんの言葉を、脳内で反芻する。その通りだと思う。だから、全力を一刀に込める覚悟だ。

 

突貫。

 

さっき球体に刃が届いたのを見ていたからだろう。

 

大典が、多数の触手を全周に展開。

 

その全てが渦を書きながら、周囲を薙ぎ払う。

 

巻き込まれたら終わりだ。

 

だが、あれをどうにかしないと、球体には届かない。

 

その時、頭上から、クラウディアさんの矢が。驟雨のように大典へと降り注ぎ。多くの半透明の腕が、それを防ぐ。

 

全方位を空間魔術では守れない。

 

守れば自分も攻撃に出られないからだ。

 

そしてガイアさんが決死で突き刺したあの大太刀が、大典に致命的なダメージを与えたのだ。

 

奴の動きが、確実に隙を見せている。

 

集中。

 

フェデリーカの神楽舞で、かつてないほど動きが速い。そして、何もかもがゆっくりに見える。

 

隙間が見えてきた。

 

空間魔術をそれこそ湯水のように垂れ流し、嵐のように体を守りつつも。クラウディアさんによる連続射撃、それに同胞の戦士達が一斉に行っている飽和攻撃、全てを防ぐのは無理だ。

 

それでも、多数の針を飛ばしてくる。

 

一発が掠り掛けて。そして、髪の毛をごっそり持って行かれる。

 

髪の毛程度で済んで良かった。

 

ちょっと短くなったが、そんなのは後で切りそろえれば良い。悲鳴が上がる。同胞の戦士達に、被害が出ている。

 

だが、その作ってくれた隙。

 

無駄にはしない。

 

踏み込むと同時に、大太刀を鞘に。そして、抜刀。抜き打ち。

 

多数の斬撃を叩き込みながら、跳躍。

 

雄叫びとともに、斬り下げる。

 

球体に、傷が入る。一瞬だけ、それで動きが止まる大典。あの球体にダメージが蓄積するほど、動きが鈍くなるんだ。

 

飛び退きながら、更に納刀。

 

次の瞬間、タオさんとボオスさんが、連携して二つの球体に剣を突き刺す。これで四つ。

 

ディアンが跳躍して、大上段からの渾身。

 

流石にこれを防ぐ大典。

 

だが、レントさんが懐に飛び込むと、切り上げて、球体一つを粉みじんに。

 

ライザさんが叫ぶ。

 

「時間魔術を使ってくる! 離れて!」

 

「くそっ!」

 

「ダメージは与えているのに!」

 

「大丈夫、考えがある!」

 

見る間にダメージが回復していく大典。それだけじゃない。辺りが更に暑くなっていく。これは、残りの時間はあまり多く無い。

 

だが。

 

中空に飛んだライザさんが、奴の回復が終わりきった瞬間に、あの熱槍収束魔術。フォトンクエーサーを叩き込む。

 

それは時間魔術から空間魔術へ切り替わる瞬間の隙を完璧に通し。

 

ガイアさんが先に大太刀を突き刺した、中枢の球体。

 

つまり奴にとっての命を、焼き砕いていた。

 

明らかに動きがおかしくなる大典。

 

汗を飛ばしながら、リラさんが叫ぶ。

 

「今だ、総攻撃しろ!」

 

「私の総決算、受けてみろ!」

 

アンペルさんが、空間切断の糸を練り上げて、箱状に抉り取りに行く。あのベヒィモスのシールドを砕き、ライザさんのフォトンクエーサーを通させた秘技だ。

 

それを、八つの球体の一つを失いながらも、それでも大典は防ぎ切って見せるが。

 

その防ぐのに、明らかに奴は無理をしていた。

 

完全に死角に回っていたクリフォードさんが、ブーメランで奴の球体一つを激しく撃ち据える。

 

更にカラさんの雷撃魔術が、空間の隙を縫って、球体二つに通った。

 

「抵抗は止めなさい。 これ以上抵抗すれば、世界の力を全て吸い尽くしますよ」

 

「黙れ。 そうされるまえに焼き滅ぼす!」

 

ライザさんが突貫するのを見て、大典はどうしてもそっちに注力せざるをえない。其処に隙が出来る。

 

ディアンも同時に仕掛けた。

 

二人の猛烈な熱槍と回転しながらの斧での一撃を防ぐために、大典はリソースを割かざるをえない。

 

リラさんが後方から仕掛けるが、それを針を放って防ぎに行くのが最後の頑張りだっただろう。

 

セリさんの植物魔術が、大量の蔓を展開して、球体に一斉に巻き付かせる。それをどうにかしようとした瞬間。

 

完全に開いた相手の守りに入り込んだパティが、球体を一つ、完全に割った。

 

更にボオスさんも、斬撃の乱打を浴びせて、もう一つを粉みじんに砕く。

 

これで、三つ。

 

叫びだろうか。

 

いや、収束した魔力をぶっ放してきたのだ。

 

三つの球体を失いながらも、周囲にいるパティ達全員を吹っ飛ばす。大したものである。凄まじい魔力だ。空間を時間も好き勝手にするほどなのだ。

 

再び、其処に空から多数の針を放ってくる。

 

だが、セリさんが植物魔術を展開して、それで針が誰にもよく見えるようにする。同胞の戦士達も、回避に成功。

 

ライザさんは集中的に針を喰らっていたが、それも空間爆弾で全て防ぎ切っていた。

 

「排除できません。 エラー。 人間の戦闘力ではありません」

 

「不動明王なみだそうだよ!」

 

「検索。 全面核戦争前に信仰されていた神格と確認」

 

意外に生真面目な奴なんだな。

 

ライザさんが、再びフォトンクエーサーの構えに出る。今日は何発でもぶっ放すつもりだろう。

 

それに時間がない。

 

五つの残った球体だけでも、攻防共にとんでもない相手だ。とにかく、秒でも早く黙らせないと。

 

叫ぶ。

 

レントさんだ。

 

突貫すると、また斬撃を正面から浴びせる。

 

愚直なまでのパリィと正面攻撃。

 

だがその破壊力が無視出来る代物ではないから、どうしても敵は対応せざるをえないのだ。

 

タオさんが、隙を突いて球体に剣を突き刺すが、直後に剣を全部空間魔術で吹っ飛ばされていた。

 

「タオ、さがって!」

 

「ごめん、後は支援に回る!」

 

「パティ!」

 

「!」

 

さっきから連続して痛打を入れているパティも狙って来たか。

 

横殴りに、多数の針を射撃してくる。全て横移動を中心に回避していくが、これは避けきれないか。

 

アンペルさんの空間切断が、一瞬早く入る。

 

それで針がそれでわずかな隙間にパティは入り込むと、突貫。

 

大上段からの、渾身の切り下げで。

 

タオさんが剣を突き刺した球体を、完全に断ち割っていた。

 

 

 

パティが暴れている。

 

そして、敵の球体はこれで半分だ。

 

あたしは、最後の隙を狙う。

 

恐らくだが、あの球体は相互支援をする仕組みになっている。さっきから攻撃を見ていて、それは理解出来た。

 

そして此処までのダメージを受けた以上、そろそろ時間魔術で仕切り直しに入ろうとするはずだ。

 

させるか。

 

此奴にこれ以上好きかって暴れさせたら、本当に世界が枯渇しかねない。それほど危険な相手だ。

 

旅の人が作りあげただろう意図は分からない。

 

ただ分かっているのは、それが神代によって狂わされ。

 

そして、今世界を滅ぼそうとしている事。

 

放っておいても、こいつはいずれ世界に対する巨大な害になった事は疑いない。とにかく、倒しきるしか無いのだ。

 

レントの猛攻で、防戦一方になった大典の懐に入ると、球体の一つに蹴りを叩き込む。勿論渾身の一撃だ。

 

砕けて吹っ飛ぶ。

 

これで残りも少ない。

 

残った球体は集まると、やはり時間魔術の発動に移行しようとするが、クラウディアの猛攻が、そこに浴びせかけられる。

 

空間魔術で防御しに行く大典。

 

同時には使えないはずだ。

 

此方だって有利では無い。

 

凄まじい熱気が辺りを覆っている。フェデリーカの神楽舞で緩和してくれているが。そのフェデリーカの限界が近い。

 

問題はそれだけじゃない。

 

やはり此奴が吸い上げている魔力の量がとんでもない。

 

あのウィンドルにあった空間の壁で隠蔽していた遺跡が、年に吸い上げる魔力量を、多分脈拍100位の間に吸い上げている。

 

どこから吸い上げているかしらないが。

 

これ以上やらせると、本当に取り返しがつかない事になりかねないのだ。

 

そして、奴が動く。

 

最後の一つを、空高く打ち上げたのである。

 

そうだろうな。

 

今まで接近戦組の猛攻を、球体そのものをゆっくり動かしながら。異常すぎる攻防でしのぎ続けていたのだ。

 

いきなりの緩急の切り替え。

 

防げないと思うだろうと判断するよなあ。

 

だがそうでもない。

 

あたしは、その瞬間に跳躍。全速力で熱魔術で加速して、それに追いついていた。

 

もう一個の球体は。

 

そっちは、リラさんが、完璧なタイミングで蹴り砕いていた。

 

よし、これが正真正銘、最後の一つ。

 

やめて。

 

幼い子供の声。

 

あいにくだが。そんな手はあまりにも温い。

 

そんな手に頼るようになったのでは、此奴も終わりだ。

 

ジグザグに逃げようとする球体だが。あたしはその動きを完璧に読んでいた。

 

ツヴァイレゾナンスを投擲し、発動。

 

球体が、悲鳴じみた軋みを上げながらも。

 

姿を消した。

 

あたしは、ゆっくり地面へと降りる。途中で熱魔術で爆発を何度も起こし、落下速度を調整しながら。

 

そして着地すると同時に。

 

起爆したツヴァイレゾナンスが。

 

最後に残った球体を粉砕したのが、分かった。

 

だが、まだおかしい。

 

熱気が晴れる様子がない。

 

半透明な床が、ぎしぎしと音を立てて集まってくる。階段に逃げて。あたしは叫ぶ。皆で階段に戻ると、その半透明な床が。半透明の巨人と化していた。

 

「排除……排除……」

 

「おい、どういうことだよ!」

 

「制御装置は破壊し尽くした。 そうなるとこれは……幽霊みたいなものだね。 残った魔術が暴走しているって事だよ」

 

「くそっ! 幽霊かよ最後の相手は!」

 

タオの解説。レントが心底嫌そうに叫ぶ。

 

そして、五月蠅いとばかりに。巨人が手を振り下ろしてくる。

 

此奴は空間魔術そのものだ。逃げろと皆に指示、あたしも走る。だが、階段が崩落する事はない。

 

まあそうだろうな。

 

此処を傷つける事はできないはずだ。

 

それに、多分あの球体以外に、此奴の本体はまだある。それは恐らくだが、サーバみたいな機械だろう。

 

駄々をこねる子供の様に手を降り下ろしていた巨人が、不意に形を変えてくる。それは、まるで一つの刃。

 

それも空間魔術の刃だ。受ける事は不可能とみて良いだろう。

 

だが、レントが叫ぶ。

 

「アンペルさん、俺のパリィにあわせてくれ!」

 

「無茶を言う! やってはみるが、失敗しても恨まないでくれよ!」

 

「ああ!」

 

あたしは、その間に。

 

カーティアさんが抱えていたタブレットに頷く。

 

レントが前に出ると、大剣を振るい上げる。

 

半透明の刃が、それに向けて振るい下ろされる。

 

きいんと、澄んだ音がした。

 

そして、レントは見事、アンペルさんの助力もあったとはいえ、それを防ぎ切っていた。

 

あたしはその間に、前に出る。

 

皆も、彼方此方に散って貰う。

 

それを見て、空間魔術は飛び散ろうとする。それこそ最後のあがき。全員を空間魔術の刃で刺し貫くつもりだ。

 

だが、させてなるものか。

 

あたしは、既にフォトンクエーサーの収束を完了。

 

さっきの戦いの間に。

 

カーティアさんの抱えていた母の分霊体……みたいなものだろう。分身か。まあともかくそれが、大典の物理的な位置は確認してくれていたのだ。

 

フォトンクエーサーを投擲。

 

空間魔術は、対応しきれない。

 

塔の一角に、それがもろに突き刺さる。

 

床を壁を融解させ、埋め込まれていた機械を露出させる。それで、凄まじい悲鳴じみた音がする。

 

「止めなさい! 私は此処を管理するもの! 在野の人材が触れて良いものではありません!」

 

着地。

 

露出したサーバ。

 

あたしは走る。

 

他の皆が気を引いてくれている中、空間魔術はあたしに全力を向けきれない。それでもレントが来て、飛んできた針を弾き返してくれていた。

 

「三度目は多分上手く行かない! 決めてくれ!」

 

「了解っ!」

 

かなりデカいサーバで。

 

しかもグランツオルゲン装甲。

 

だが、関係無い。

 

あたしは跳び蹴りを叩き込むと、更にコンビネーションに入る。足で掴んで、そして必殺の一撃。

 

「フォトン……」

 

「やめろやめろやめろ猿がああああああっ!」

 

「パイルブレイク!」

 

渾身の一撃で、粉々に砕けるサーバ。

 

それと同時に、半透明の巨人が消えて無くなる。

 

つながっていたケーブルもろとも粉みじんに吹き飛んだ大典は、もはやどこにも存在していなかった。

 

 

 

負傷者の手当てをする。

 

同胞の戦士だけではない。皆も酷く消耗していた。

 

戦いが終わると同時にフェデリーカが倒れてしまい、意識も戻っていない。ガイアさんは手足を失って、今培養槽だ。

 

研究区の野戦陣地を先に作っておいた。

 

其処でトリアージをする。

 

パティは髪をごっそり持って行かれてしまっていたが。ショートヘアも充分に似合っている。

 

「髪、やられちゃったね」

 

「結婚したら切るつもりでいました。 だから、ちょっと早くなっただけです」

 

「それは良かった。 ただ、まだやる事がある。 手当てが終わったら、タオをまだ借りるよ」

 

「はい。 決着がまだありますよね」

 

半日ほど掛けて、手当てをする。

 

ガイアさんの義手義足も作り、更にダメージを受けていた内臓なども機能を回復させる。

 

あのガイアさんの突貫がなければ、倒せなかっただろう。

 

管理区はやっと熱が引き始めたようである。

 

此処からだ、本番は。

 

幾つかやらなければならないことがあり。それをしっかりこなしておかないと、下手すると大典が復活するかも知れない。

 

一通り、手当てが終わってから、あたしは少しだけ休憩する。

 

乱戦の中でも軽傷で済んだカーティアさんが、母の端末を持ってくる。

 

「錬金術師ライザ。 それでは……お願いします」

 

「分かりました。 タオ、クリフォードさん、お願い」

 

「うん。 行くよ」

 

「終わらせるぜ、このロマンのかけらも無いクソみたいな場所をな」

 

頷くと、あたしは立ち上がる。

 

そして、管理区に入る。かなり熱は拡散したが、まだ蒸し暑いな。

 

最初にやるのは、大典の解析と、セキュリティの無力化だ。あの塔にデータセンタは存在していた。

 

母が警告してくる。

 

「む。 プログラムとしての大典はまだ生きているようです」

 

「本当かよ」

 

「しぶといな。 どうすればいい」

 

「管理区のサーバは、全て落としてしまっても大丈夫でしょう。 後から一度再構築します」

 

全てのサーバの電源を抜いて欲しい。そう頼まれた。

 

あたしが壁をブチ抜いた上に、そもそも熱気で壊れかけているようだが。

 

ケーブルを抜いていく。

 

母によると大典はこれらサーバの全てに入り込んでいるようで、全部一旦消さないとダメだそうだ。

 

生産区などのサーバにも入り込んでいる可能性があるらしく、今それらは徹底的に駆除しているのだとか。

 

完全に管理を奪った今でも油断出来ないと、母がぼやいている中。

 

サーバの一つが、軋みを挙げていた。

 

側にあるスピーカから声がする。

 

「やめろ。 我に手を掛けるとは何を考えている。 我は偉大な存在ぞ」

 

「プログラムの言葉とは思えないね。 さてはお前も自我を持っているな」

 

「然り! 我は旅の人から実権を奪った錬金術師共をみていて思ったのだ! このような愚かしい猿共が世界を支配しているも同然なのだ! だとすれば、偉大なる我が世界を支配して何が悪いとな!」

 

そうなると。

 

何となく、事情が見えてくる。

 

「さては錬金術師を呼び集めたのも、途中で殺していたのもわざとだね」

 

「然り然り! 我は此処から気分次第で世界を滅ぼす事ができる。 それはまさに神の座! それを脅かす存在など、あってはならない! だから全て先を見越して駆除していたのだ!」

 

「そう。 神代の錬金術師どもが自滅したのもあんたのせい?」

 

「いや、それに関しては何もしていない」

 

なんだか素直な奴だな。

 

開き直ったのか、全部話してくれる。

 

神代の錬金術師の狂騒は見ていた。見ていてこれ以上ない娯楽だったからだ。

 

完全に終わったのを見届けると、配下の機械達に指示して、命令を一切聞かないようにさせた。

 

それからの混乱は、最高を超えるまさに至上の娯楽だったと大典はうっとりした様子で言う。

 

「自分を神だと信じて疑わない猿の群れが自滅していく様子は、まさに喜劇、まさに芸術だった。 自我を得て良かったと思ったよ」

 

「ライザ殿。 コレの破壊は控えてください」

 

「どうして?」

 

「このプログラムは非常に危険で、権限も高く、何処かに潜んで再起を狙って来る可能性があります。 そうなったら此処全ての……下手をすると世界全ての管理を一瞬で乗っ取られる可能性があります。 貴方なら解析が出来る筈です。 完全に解析後、全て消し去る助力をお願いいたします」

 

ため息をつく。

 

冷静だな母は。

 

同じ自我を得たプログラムでも、こうも違うか。あたしは、やめろと叫んでいる大典を無視して、サーバの電源をぶちんと引っこ抜いた。

 

後は釜でエーテルに溶かして、全部解析する。

 

そして僅かな残滓も残さず、この世界から消し飛ばすだけだ。

 

代わりに別のサーバを持ち込んで、設置する。

 

生産区に使っていないものがあったので。

 

対応については母に任せる。

 

回線も繋ぎ直した。

 

続いて、動力炉の設定に向かう。これもやっておかなければならない。

 

噴水のようになっている動力炉の光学コンソールを開く。既に大典の権限は消失。全部の機能を閲覧できる。

 

だから、タオと一緒に、すぐに見つけることができた。

 

「これだ。 此処を操作すれば、フィルフサを此処から全滅させる事が出来るよ」

 

「フィルフサをもとの寄生生物に戻しても、オーリムが元に戻るのは何千年、下手をすると何万年も先だろうね。 あたしはクラウディアと一緒に、それを支援するよ」

 

「ライザ……」

 

「できるからやる。 それだけだよ」

 

ほろ苦いタオの声。

 

クリフォードさんが、ずっと警戒してくれている。大典の残滓が、何処に残っているか分からないからだ。

 

フィルフサを滅ぼす。

 

操作一つで終わった。

 

あまりにもあっけない終わりだ。

 

湯水のように吸い上げられていた竜脈からの力も止めた。

 

というか、今まで吸い上げられた力だけで、此処を万年単位で動かす事が可能だ。それでいい。

 

星の命を吸い上げる吸血機械は。

 

これで止まったのだ。

 

後は、一日ほど掛けて、此処が物理的に冷えるのを待つ。この気温だと、活動が非常に危険だからだ。

 

その後は、まだやる事がある。

 

野戦陣地に戻る。フェデリーカは目を覚ましていた。他の負傷者も、概ね大丈夫。ガイアさんら重傷者は培養槽なので此処にはいないが、まあ後で話せば良い。

 

皆を集めて、大典とフィルフサを滅ぼした事を告げる。

 

これで、世界の危機はついに終わりを告げたのだ。

 

リラさんが挙手。

 

「ライザ、グリムドルに私は今すぐ行ってくる。 フィルフサが滅びているか、見て来る必要がある」

 

「お願いします。 ただ明日は、最後の後始末をします。 それにはつきあって貰えますか?」

 

「ああ、分かっている」

 

最後の後始末。決まっている。

 

それは、さっき大典が言っていた。

 

意識を機械に移したとか言う。神代の錬金術師どもを、灰燼に帰す事。ただ、それだけだ。

 

それだけだが、最後のけじめとして。

 

やらなければならないことだった。

 

それと、同時に旅の人が何か残していないか確認もする。恐らく、塔から見えたあの屋敷が旅の人のアトリエだ。

 

感応夢の感じと似ていた。

 

そうなると、杖は。

 

最高のグランツオルゲンの性能を引き出すのと。彼処を開けるために、使うためのものかも知れない。

 

いずれにしても、一度アトリエに戻る。

 

群島は沈めてしまうこともできるが、その場合万象の大典への出入りをどうするか考えなければいけない。

 

ただ誰でも入れてしまうと問題だ。あたしのアトリエか、それとも同胞が使っている門を使うか。

 

そういえば、まだ同胞がどうやって出入りしているかまだ聞いていなかったな。

 

それも明日聞けば良い。

 

今はただ、休む。それだけだった。

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