暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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皆が別れて数年後。

それぞれの人生が、それぞれの時間で過ぎていきます。

時を捨てたライザとクラウディアを除いて。


1、数年後

王都に出向く。

 

既に王都ではないのだったか。

 

去年、ロテスヴァッサ王国が、正式にロテスヴァッサ国に代わった。それもいずれ、更に名前を変えていくつもりのようだ。

 

既得権益層を大掃除して、それで今元々あった学園を利用し、政治を行える人間の育成を進めている。

 

その間ヴォルカーさんが非常に精力的に働いていて、政治を殆ど見ているようだが。

 

これは三人目を身ごもっているパティの負担を減らすためかも知れない。

 

タオは彼方此方精力的に調べて周り。

 

政治のための情報を集め。

 

ウィンドルでも生態系復活のための調査などもしてくれている。パティもそれに同行することも多い。

 

それでいながら三人目か。

 

まあ、二人とも生真面目だし、こうなることは分かりきっていた。

 

パティも三人目がおなかにいても、体型は殆ど崩れていない。おなかは多少大きくなり始めているが、それだけだ。

 

ちなみに先の二人はどっちも出来が微妙だという。

 

血縁で次の世代には権力を渡さない。

 

パティはそう明言しているらしく。ヴォルカーさんと話に行くと、それを愚痴られる事が時々ある。

 

今日は、同胞を交えて、アーベルハイム家の面々と話すためにきた。

 

あたしだけじゃない。

 

アインもつれて来ている。

 

アインは培養槽から出られるようになってから、あたしが調整したこともある。みるみる元気になって、今では剣も魔術もある程度使える。

 

残念ながら錬金術の才能はゼロだが。

 

それが何の問題になろうか。

 

あたしにも、少しずつ心を開いてくれているようだが。

 

内心では反発しているのも分かるのだった。

 

旧アーベルハイム邸で話す。

 

メイド長が子供二人を連れて行く。居間で話をするが。すっかり厳しい雰囲気が板についたパティが、衰えが目立ちはじめているヴォルカーさんの仕事を、どんどん肩代わりしているそうだ。

 

なお子供を産むのは結構現状の医療だと命がけなので。

 

あたしが薬を渡して、母子共に負担が小さいようにはしている。

 

軽く世間話をした後。

 

パティが切り出していた。

 

「ライザさんは全く姿が代わりませんね」

 

「寿命がなくなって、成長が止まったからね。 今後はフードとか被って、この姿をクーケン島の住民にはみせないようにするつもりだよ」

 

「私は、どうやらこのまま国に身を捧げることになりそうです」

 

「それも生き方だ。 それも誇れるね」

 

実際、あたしは真似しようとは思わないが、パティの生き方は立派だ。誰にも後ろ指を指す資格は無いだろう。

 

それどころか、パティがいなければ。いや、これは他の誰もが同じだが。万象の大典で勝つ事はできなかった。

 

だから、あたしは心底から感謝している。

 

「ライザくん。 それはそれとして、幾つか問題があってな。 クリフォードとセリが外れたから、手が足りていない。 少しだけ手伝ってくれるか」

 

「話を聞かせてください」

 

「うむ……」

 

とくに目尻の皺が増えているヴォルカーさんに、説明を受ける。

 

元王都近郊の魔物に随分と苦労しているらしい。

 

なんでも生活区域を確実に拡大して、今まで都の外に追い出されていた人達も囲い込んで。アスラアムバートそのものの規模を大きくするつもりのようなのだ。

 

その過程で、今までアンタッチャブルであった地域にも討伐隊を出している。

 

おなかに子供がいる上に、政務に忙しいパティ。

 

色々調べごとが多く、彼方此方を飛び回っているタオ。

 

この二人にはどうしても手が回らず。

 

レントは既に此処を離れて久しいので。どうしても戦士が足りないらしいのだ。

 

同胞の戦士は元騎士だのなんか問題にもならないくらい強いそうだが、とにかく手が足りていない。

 

あたしは頷くと、立ち上がっていた。

 

すぐに出向いて、処理に行く。

 

アインは子供達と話したいというので、此処に残していく。パティもアインに対しては好意的で、自ら子供達の所に案内していた。

 

出来が悪くて国政が任せられないのと、子供として可愛いのは別の問題であるらしい。

 

それはそれで、しっかり切り替えが出来ていて立派だ。

 

問題は子供が不相応な野心を抱いた場合だが。

 

まあその時は、あたしが最悪手を下す。

 

魔物の駆逐は、難しくも無い。

 

あれから数年。

 

更に腕を上げたあたしは、超ド級にも今なら単独で勝てる自信がある。ましてやこの辺りの戦士が苦戦する程度の相手なら、問題にもならない。

 

出がけの駄賃に全部始末して、現場の戦士達に引き渡す。

 

腐敗しきっていた騎士制度も根本的に改革したらしく、少しずつ有能な騎士が育ち始めているそうだが。

 

それでもまだ魔物の相手を最前線でするには厳しいのも現実。

 

あたしや同胞が。

 

少しずつ頑張らなければならなかった。

 

 

 

アスラアムバートの仕事が終わってから、サルドニカに出向く。

 

数日は彼方此方を行脚することになる。サルドニカでは、クラウディアと合流する。クラウディアと此処で合流するのには意味がある。

 

掃除のためである。

 

第四都市から流れてきた犯罪組織が、近くに来ている。同胞が第四都市で連中を駆除したのだけれども。

 

生き残りが彼方此方に散って。その中で特に危険な連中が、近くに潜伏したことが分かっているのだ。

 

サルドニカ担当の同胞も動いているが、それでも駆除が追いついていない。

 

サルドニカに根を張られる前に、全部片付けなければならない。

 

だからクラウディアが来ている。

 

まずはギルド長の邸宅で合流。

 

フェデリーカは綺麗になったが、硬質の美貌だ。男につけいられないための、処世術として身に付けているようだ。

 

前は可愛いしなんならとにかく美味しそうなくらい嗜虐心を刺激される容姿だったんだが。

 

まあそれはいい。

 

フェデリーカも当事者だ。

 

軽く話す。

 

「第四都市の犯罪組織が壊滅した話は既に聞いています。 危険な薬物を売りさばいていた、論外の者達だったとか」

 

「アンナさん達ももう対策で動いているんだっけ」

 

「はい。 ただサルドニカ周辺はとにかく未整備な地帯が多く、幾つかの入植地までは手が回っていません。 そういった場所は以前から山師の類が入り込む事が多く、それらによる犯罪が後を絶ちませんでした」

 

フェデリーカが現実を話してくれる。

 

勿論同胞も活躍してくれているが、それだけではダメだ。

 

以前パティが来てくれて、指導してくれたらしいのだが。それでも戦士の質はあまりたかくない。

 

レントを雇いたいくらいだと、フェデリーカがぼやく。

 

心に鋼鉄の鎧を作ったみたいだけれど、こう言うときには隙が出来る。

 

まあ、それをつこうとは思わないが。

 

「それでクラウディア、どう?」

 

「うん、もう見つけたよ」

 

「えっ!?」

 

フェデリーカが思わず立ち上がる。

 

クラウディアはにこりと笑うと、音魔術で全て聞き取ったと言質をくれた。

 

なんでも入り込んだ人数は十人ほど。

 

やはり新規の入植地の一つに入り込んで、其処の人間を暴力と恐怖で支配しているという。何人か私刑で殺したらしく、住民は怖くて逆らえないのだとか。まあそんな法が及ばない土地で、逆らったら殺される状態では、誰も逆らえなくなる。

 

ボスらしい人物は狂犬そのものの男で、その上頭もある程度キレる最悪のタイプだ。全てをクラウディアは音魔術から得られる情報で分析し終えていた。

 

ま、これは生かしておいても無駄か。

 

「消すよ。 いい? どうせ反省なんかしないし、捕まえておくだけ無駄だよ」

 

「分かりました。 仕方がないです」

 

「じゃ、やっちゃおうか」

 

クラウディアが外にでると、ひょいひょいと路地裏に。身軽に跳んでいく様子を見て、ぎょっとした職人が一瞬だけ見送ったが、フェデリーカとあたしが出ると、すぐに礼をしていた。

 

あたしに感謝している人間はサルドニカにもまだまだ多い。あれから数年。各地で集めた錆びだらけの機械を騙し騙しつかっていたのを、あたしが全部直した。勿論それを既に忘れているのもいるが、人間はそんな程度だから、別に何も思わない。最初から期待していない。感謝する人間にしても、表向きだけの事もある。

 

クラウディアのいる路地裏に出向くと、クラウディアは難しい顔をしていた。

 

「知り合いが揉めてる」

 

「うん、どういうこと?」

 

「アスラアムバートにいた義賊の三人組だよ。 極悪人がいるってことで、旅をしている途中に聞きつけて退治に来たんだろうね。 例の狂犬が殺すように指示を出して、三人に一斉に襲いかかった。 反撃してるけど、ちょっと分が悪い。 このままだと殺されるだろうね」

 

「じゃ、早速」

 

「うん」

 

クラウディアが速射。

 

二秒もしないうちに、カス十匹が即座に串刺しになった。

 

今のクラウディアは、音魔術と遠距離からの狙撃を極めている。音が遅すぎると時々ぼやいているほどだ。

 

適当に撃ってもホーミングして獲物を射貫くその矢は。

 

各地で悪徳や商人、犯罪組織の者を、同胞からも逃げ延びていたような奴も。容赦なく刈り取ってきた。

 

クラウディアがやっているとは知られていない様子だが。

 

破落戸の間では、既に死の矢として怖れられているようだ。

 

「終わったよ」

 

「すぐに捕り手を出します」

 

「うん。 あとはそっちで処理してね」

 

クラウディアに聞かれる。

 

義賊の三人組の様子を見に行くかと。

 

あたしは、肩をすくめて首を横に振る。

 

あの義賊の三人組は立派な人間だ。

 

いい年をした大人なのに、義賊なんて本気でやっている。それはクリフォードさんの生き方に似ている。

 

クリフォードさんほどの戦闘力は無いが。人間の本性を散々見ている筈なのに、それでも生き方を変えていないのは凄い事だ。

 

よく悪も人間の側面だの言って、邪悪が蔓延るのを肯定する輩がいるが。

 

その結果が神代であり。

 

その前の混沌の時代の結末だったことを考えると。

 

そうやってくだらない妥協をする生物である時点で、人間はダメなのだ。

 

フェデリーカが手配した同胞の戦士と、街の若手の戦士が現場に向かう。まあ首謀者は全部ブッ殺した後だし、その後は任せてしまっていい。

 

フェデリーカと、もう少しだけ話す。

 

「サルドニカの発展は上手く行きそう?」

 

「……もう少し規模が大きくなった所で、一旦引き締めを行おうと思います。 各地で大物の魔物がいなくなってきていますが、だからこそ無闇な拡大政策は避けるつもりです」

 

「それが正解だろうね」

 

実際、さっきクラウディアが撃ち抜いたような連中が、入り込んでくる。

 

ああいう連中は改心だってしないし、どれだけ殺してもなんとも思わない。

 

それの駆除が追いつかなくなると。

 

ましてや国家や組織の中枢に入り込んでくると。

 

全ては終わりだ。

 

「フェデリーカはとてもしっかりしてきているね。 もうあたしが手伝わなくてもサルドニカは大丈夫そうだ」

 

「いえ、同胞の戦士達とライザさん、それにバレンツの支援がないと、まだまだとてもダメです。 サルドニカは、これからやっと……という所ですね」

 

それでいい。

 

謙虚さを忘れたら人間は終わりだ。

 

後は少し話して、サルドニカを離れる。

 

まだまだ、あたしは各地でやる事がある。

 

 

 

フォウレの里に出向く。

 

一緒についてきているのは、同胞の戦士だが。戦闘力よりも、浸透を目的とした戦士である。

 

つまり、計画は既に始めている。

 

人間の品種改良計画だ。

 

ホムンクルスの中に仕込まれている良性。悪逆を行わず、エゴを優先せず、世界のために生きる。

 

それを他の人間に絶対的要素として浸透させる。

 

混沌の時代には、これを優性遺伝とか顕性遺伝とか言っていたらしい。例えば金髪と黒髪で混血すると、黒髪の人間の方が生まれやすくなるとかそういうレベルのものは実際にあるそうだ。絶対では無いらしいが。

 

別に優れている形質が遺伝する訳でもないらしく、それで顕著に出現する遺伝と言う事で、顕性遺伝という言われ方が採用されるようになったそうだが。

 

実際親と子供の性格が真逆になるのはよく見ている。

 

悪い方が顕著に出やすいのが人間の特徴だ。

 

もしも混沌の時代に言われていたような、淘汰の末に優れた存在だけが生き残るなんて言葉が真実だったら。

 

人間のスペックは際限なく跳ね上がり続けていただろう。

 

だが実際は、混沌の時代には、万の時を越えて文明を構築しながら、利害の調整が上手く行かなくて世界を焼き滅ぼす程度の存在でしかなかったのだ。

 

だから、現れる性質として。

 

人間に無理矢理それを刻み込んでいく。

 

今の人間を全部置き換えるまでに千から千五百年程度はかかるだろうと母が既に試算を出している。

 

上等である。

 

ありのままの人間が素晴らしいとか。

 

本能のまま殺戮と暴力を繰り返す人間が美しいとか。

 

そういう寝言を繰り返していたから、混沌の時代に人間は世界全部焼き尽くしたし、その後は神代にオーリムまで巻き込んで世界を滅ぼしかけ。古代クリント王国時代にも同じ事をやった。

 

だから品種改良する。

 

その計画のためだ。

 

フォウレの里に出向くと、既に験者になったデアドラさんと、種拾いの一番槍になったディアンが出迎えてくれた。

 

前の験者は引退。

 

既に楽隠居をしているそうだ。

 

デアドラさんはまだ子供がいないらしい。

 

これは忙しいというのもあるが、或いは子供ができにくい体質なのかも知れない。夫婦仲は悪くないそうだ。

 

ディアンも交えて軽く状況の確認をした後、連れてきたホムンクルスの戦士を紹介する。新しい血が入るのはとても良い事だ。

 

男女それぞれ二人ずつつれて来ている。

 

既に各地に種まきを始めており。

 

顕性で人間の悪性を押さえ込める性質を強引に遺伝させるホムンクルスは、百人以上がいる。

 

更に彼等彼女らの子孫は既に百五十人を越えており、今後もっと増えるだろう。

 

そして、試験的に彼等彼女らだけの集落も作って、運用が上手く行くか、外圧に対応できるかも試している。

 

嘘を見抜く方法。

 

人間の悪性に対応する方法。

 

それも全て仕込んでいる。

 

だから、今の時点では問題が無いだろうが。いずれにしても、少しずつ試して行くしかない。

 

「新しい血が入るのは此方としても歓迎だ。 ライザ殿が此処に帰化してくれれば一番いいのだがな」

 

「そうもいきません。 ディアンにも話しましたが」

 

「ライザ姉は、もっとでかいことをずっと続けているんだ。 デアドラ姉も、それは理解してやって欲しい」

 

「そうだったな」

 

今は験者屋敷で話しているから、こんなだが。

 

最近はディアンもすっかり貫禄がついて、髭を生やすことを検討し始めているらしい。外ではしゃべり方も落ち着いて来ていて、戦士としても完全に円熟したようだ。

 

この間ちらっと魔物退治する様子を見たが、全く危なげもなかった。

 

あたしがわざわざ出るまでも無い。

 

フォウレで活動している間に、危険なのは全部片付けた。

 

例の大人しい超ド級も、基本的に何もせず大人しくしているようだ。あれは、この地でいずれ人々と上手くやれるかも知れない。

 

神代の生物兵器としては失敗作だったかも知れないが。

 

それがむしろ、世界と一緒にいきられるのだから、不思議な話である。皮肉とも言えるだろうか。

 

「去年は竜風が来たそうですね。 大丈夫でしたか」

 

「警告を無視して様子を見に行った観光の連中が数人吹っ飛んだが、それくらいだ」

 

「ああ、やっぱりバカは出ましたか」

 

「ライザ殿が警告した通りのタイミングで来たからな。 里の人間は、むしろ言う事を良く聞いて、しっかり大人しくしていたよ」

 

それは良かった。

 

バカが吹っ飛んだことに関してはどうでもいい。自業自得だ。

 

いずれにしても、竜風の被害も、かなり抑えたし。以降は問題なくやっていけるだろう。

 

ディアンも近々結婚するらしい。

 

そう聞くと、多少は嬉しくなる。

 

「結婚だなんてな。 俺なんてまだガキも良い所なのによ」

 

「それが分かっているのなら大丈夫。 世の中には性欲にまかせて後先考えずに子供を作った挙げ句、虐待して死なせるような親がなんぼでもいる。 ディアンはまだ自分が未熟だって分かっていて、性欲に任せて行動するようなことはしていないんだね」

 

「ああ。 たまにきれいな女は見るけど、それでも我慢はできる」

 

「だったら大丈夫。 混沌の時代には、人間を際限なく美化して万物の霊長だとか抜かして。 その悪逆も全肯定する風潮まであったようだけれど。 そんなものは歴史のゴミ箱に捨てて、さっさと終わらせる。 今度連れてきた四人といずれ生まれるその子供を大事にしてあげて」

 

後は、軽く外に様子を見に行く。

 

種の扱いと、機具の扱いについては、全員が熟達しているようだ。

 

これならば大丈夫だろう。

 

あたしはどうしても駄目そうなのを、まだ残っているアトリエに持ち込むと、そこでぱぱっと修理してしまう。

 

種に使っている動力は、数百年でももつ代物だ。

 

これでまだまだ使って行けるだろう。

 

機具の種類も増えている。

 

引退した先代験者が考案したものらしく。簡単な作業を行うものだけではなく、洗濯を自動でするものや、掃除を自動でするものまであるそうだ。

 

フォウレの里は、いずれ産業の新しい中心地になるかも知れない。

 

見回った後、ディアンに験者屋敷で頼まれる。

 

「そうだ、ライザ姉」

 

「うん?」

 

「今有望な子供がいるんだ。 孤児なんだけど、多分あれは凄い伸びる。 ライザ姉の所で、鍛えてやってくれないか」

 

「可愛い子には旅をさせよ、だね」

 

頷くディアン。

 

ディアン自身が、あたし達と旅をして、色々な事を知ったという事がある。実際に様子を見に行く。

 

ディアンは昔のデアドラさんがそうだったように、孤児達の面倒を見て暮らしているようなのだが。

 

その中に一人、黙々と素振りをしている子がいた。

 

なるほど、戦士としての適性は高い。

 

ただしやっているのが内向きの武芸だ。

 

パティが最初やっていたのに近い。

 

これは外からの情報をがっつり取り入れて、世界を知る事で、伸びるだろう。

 

ディアンがその子をあたしに紹介する。

 

この子、多分だけれど。

 

あまり出自が良くないな。

 

何となく分かるが、親の血が近すぎる。孤立集落がおおい今の時代では、こういう子はどうしても出る。

 

血を入れ替える作業はパティがアーベルハイム主導で進めているが、まだまだ手が足りていない。

 

こういう子はどうしても出てくる。

 

「旅をしている間に親がこの里で死んでな。 うちで引き取ったんだ」

 

「分かった、面倒を見るよ。 それと……」

 

「内臓とかに問題があるんだろ。 何となく分かる」

 

激しい運動をした後とかに、不調を訴えることがあるらしい。

 

それは自己努力でどうにかできる問題でもない。

 

分かった、一肌脱ごう。

 

ただ、あたしが連れて歩く訳にもいかない。同胞の戦士達と混じって暮らしてもらい、各地で一緒に働いてもらう事になる。

 

別に同胞もダーティーワークばかりやっているわけではない。

 

各地での開拓や、汚染地域の復興なども仕事になる。その過程で、まともな人間がたまにみつかりもする。

 

この子には、そういう広い世界を見る事が大事だろう。

 

この様子だと、孤立集落がやっていけなくなって、各地で物乞い同然にして彷徨っていたのだろう。

 

人間の悪徳しか見ていないのだろうから。

 

つれて来ていた同胞の戦士の一人。この地に根付く予定がない戦士に紹介する。

 

後は、つれて行って貰って、時々様子を聞くだけだ。

 

他の人間がいる時は口調まで変えているディアンだが、あたしの別れ際には、昔のような子供っぽい所作で手を振ってくれた。

 

あたしもそれを受けながらフォウレの里を去る。

 

この里は、多分ディアンがいる間は、大丈夫だろうな。

 

そう思った。

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