暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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エピローグ、星を見上げて

宇宙開発センターにて、エントはロケットの打ち上げを見守っていた。

 

エントは知っている。

 

自分の先祖は、アインと呼ばれていた。

 

アインの素性も知っている。

 

どういう運命を辿ったかも。

 

アインの一族は、ずっと同胞と呼ばれる世界の管理組織の者に見守られてきた。悪行を犯す者もいたが、そういう輩は容赦なく駆除された。それは他の犯罪者も同じ。

 

ただアインの一族はそれほど多くは無くて、エントの他にどれくらいいるのかはよく分からないが。

 

それでも十数人程度、ということだった。

 

カウントダウンが行われ。

 

そしてロケットが打ち上げられる。

 

轟音とともにロケットが空に伸びていくのを見て、喚声を挙げる人々。

 

既にこの世界の資源は尽き掛けている。

 

まずは火星と金星を目指し、更にはアステロイドベルトを目指す。

 

混沌の時代には、その辺りまでは探査衛星を飛ばせていたらしいが。人間そのものは月にまでしかいけていなかったらしい。

 

だが、今後は違う。

 

科学と錬金術が高度に融合した今なら。

 

きっと、星々の海にまで、人間は出られるだろう。

 

エントはここの一職員。

 

アインの遺言は、一族に伝わっている。

 

私は、偉大な人に助けられた。偉大だけどとても怖い人だった。でも、自分の感情で相手を決めてはいけない。だから怖くて苦手だったけれど、最後まで敬意を払った。

 

優しいお母さんとその一族の人がずっと助けてくれた。

 

だけれども、ずっと幸せに生きていたわけじゃない。

 

愚かな人に全てを一度滅茶苦茶にもされた。そこから助けて貰ったのだ。

 

今いるのは、周囲の偉大な人達のおかげ。

 

でも、周囲に愚かな人達も常にいることは忘れてはいけない。

 

だから、せめて自分だけは善であろうと心がけなさい。

 

周りがどれだけ邪悪であって、それが普通であっても、迎合してはいけません。

 

私を助けた人達は、みんなそんなおろかな「普通」を憎んでいたし、迎合もしていなかった。

 

だから、誇り高くありなさい。

 

同時に、何を為したとしても、自分が一番偉いなどとは、絶対に思わないように。

 

そんな言葉だ。

 

アインという人は大往生を遂げて。

 

そして今も血が継がれている

 

エントにだ。

 

ロケットの試験は成功。次は月にコロニーを作り、植民を開始する。その後は火星、金星。

 

そしてアステロイドベルト。

 

順に進んでいく事になるだろう。

 

打ち上げの宴を終えて、自宅に戻る。

 

そうすると、招集があった。

 

バレンツ財団から、科学者が集められているという。エントにも、一応声が掛かっているそうだ。

 

すぐに出向く。

 

世界的な科学者ばかりだ。

 

なんの招集だろうと待っていると、現れたのはライザさん。此処にいる人間なら誰もが知っている、この世界の黒幕の一人。

 

でも、この人が救ってくれなければ、世界に今はなかった。

 

若々しい姿だが、既に千年以上も生きているという話である。

 

今ではホムンクルスの存在は公然の秘密だから、別に誰も驚かない。

 

「宇宙進出、おめでとうございます。 今日直に姿を見せたのは、そろそろオーリムとの交流プロジェクトを本格的に行うべきだと判断したからです」

 

「ついにですか」

 

学者のリーダー格である人物が立ち上がる。

 

タオの生まれ変わりとまで言われる程の俊英だが、果たしてそれはどうか。あっちはあらゆる学問に精通し、この世界の統一政府の法の元になった「アーベルハイム法」を整備までした偉人の中の偉人だ。

 

学者の中では、オーリムの存在は公然の秘密。

 

今までも物資のやりとりくらいはしていたという噂があるのだが、本格的に始めるとなると話が違う。

 

いわゆる神代に、多大な迷惑を人間がオーリムにかけたと言う話である。

 

色々と軋轢が予想される。

 

だが、資源枯渇が目前である今。

 

オーリムと協調するのは必須だろうとも、エントは思う。

 

「プロジェクトの支援はあたしとクラウディアから行います。 此処にいる学者陣は、バレンツが準備する経済チームと連携して、オーリムとの交流プロジェクトの具体的な立案をお願いいたします」

 

「分かりました。 ただちに取りかかります」

 

「人類の近縁種であり、あらゆる点で優れているオーレン族か。 直に交流を持てるのは光栄であり、なおかつ興味深い!」

 

「技術的には此方が優れているようだが、彼方の方が優れている点も多い。 交流には慎重にならないとな」

 

みながわいわいしている中。

 

紹介されるのは、ちいさな生物だ。

 

フィーというらしい。

 

首に掛けているちいさな道具は翻訳装置らしく、言葉を翻訳してくれる。

 

「オーリムの大使として選ばれたフィーです。 ライザ母さんとともに、皆を支援させていただきます」

 

「ライザ殿の知り合いなのですか」

 

「神代の手によって滅ぼされた僕の一族を復活させ、世界に起こる竜風を最大限軽減してくれたのが母さんです。 以降、交流プロジェクトに参加させていただきます」

 

そうか。

 

滅ぼされた存在が、こうして手をさしのべてくれる。

 

それはとても嬉しい事だと思う。

 

エントは早速、積極的な意見交換に参加させて貰う。フィーさんはとても賢くて、学者達もたじたじだ。

 

話によるともう千年近く生きていると言う事で、博識なのも当然かも知れない。

 

別に人間は世界で一番優れて等いないのだ。

 

それを理解しただけで、人間はずっと上手に世界とやっていけるようになっている。

 

幾つもの案が出る中。

 

ライザさんは嬉しそうに場を見やると、いつの間にか姿を消していた。

 

後は任せて大丈夫だと思ったのだろう。

 

悪には文字通り一切容赦しない人だが。

 

それでも、あの人は自身で悪を為す事はしない。

 

任されたのだ。

 

少しでも、世界のためになることを自分でもしよう。

 

エントはそう決めると。

 

フィーさんと意見交換をしながら。

 

具体的なオーリムとの交流プロジェクトについて、案を出していくのだった。

 

 

 

(暗黒錬金術師伝説、暗黒!ライザのアトリエ3・完)








はい。これにて終幕となります。

一夏の冒険から始まって、世界を滅ぼした悪党の始末までしっかり終えたライザ。

原作では神代の連中は勝ち逃げのような形で勝手に滅びていて直に鉄槌を下せなかった事もあり(しかも何人かはのうのうと生き延びてその後も歴史に干渉したくさい)、本作ではその辺りの始末をライザがやれるように色々と手を入れています。



全作を通しての所感ですが。ライザのアトリエシリーズはライザのデザインばかり有名で、ライザの容姿しかしらない人間の書いた二次創作を多く見ます。

実際に原作を遊んでみると分かりますが。原作のシナリオはかなり暗く、田舎の人間関係の陰湿さや、人間の悪意の深さを描写したやり応えのあるものです。

本作ではそういったライザのアトリエのシナリオに出来るだけ忠実な描写をしつつ、更に戦闘を大規模に派手に描いて見ました。

勘違いしないように言っておきますが、原作でも神代の錬金術師(原作では士ですが)は本作のと大差ないくらい身勝手で邪悪極まりない連中です。むしろ最大級の負の遺産(生物兵器化フィルフサと万象の大典)をおきっぱなしにして責任も取らなかった上に報いも受けなかったぶん、本作よりタチが悪いかもしれません。

敵役の悪意の描写が凄まじいと思われるかも知れませんが、原作で直接的に描かれていないだけで、神代は原作でも本作と同等の悪意とエゴで世界を踏みにじった極悪集団です。それは全くの事実なので、勘違いしないようにしてください。



まあ色々書きましたが、ライザの豪快な戦闘スタイルは、自分でも書いていて楽しかったです。

擁護の余地がない悪党を容赦なく蹴り砕くライザの戦い、最後まで楽しんでいただけたのであれば何よりです。



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