暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
原作でもサルドニカを二分している二つのギルド。保守代表魔石ギルドと、急進代表硝子ギルドですね。
原作ではライザはそれぞれのギルドに足を運んで中途半端に技術を身に付けています。まあそれでも短期間で未知の技術を身に付けているので充分すごいのですが。
本作のライザはちょっと違うアプローチを掛けます。
こっちのライザは、原作には無い強みがあるのです。
街道周辺の魔物のうち、大物はあらかた片付けた。最後に残っていた、巨大なヤドカリが、足下で死んでいる。
宿にしていたのは、誰かの家だろうか。
陸上性のその巨大なヤドカリは、非常にタフだったが、流石に全身をズタズタにされ。宿を壊されて、柔らかい部分にレントの一撃を受けたら、ひとたまりもなかった。
ただ腹を開けてみると、出るわ出るわ。
明らかに誰かの持ち物だったらしい品が、わんさか出て来た。
これは、食べられないな。
そう判断して、体内を解体。やっぱり魔力の結晶がある。これは回収させて貰う。そして、肉は焼き払ってしまった。
腹の中から出て来た遺品らしいものは、サルドニカに引き渡す。
これで報告があった大物は全部片付いた。これ以外にもいるだろうが、当面は縄張りの混乱などもある。
すぐに人里付近に、大物が出てくる事はないだろう。
一度アトリエに戻ると。
そこで、皆を集めて軽く話をする。
タオも丁度戻って来た所だったので、具合が良い。
まずは、タオが挙手をする。
「サルドニカの歴史について、だいぶ分かってきたよ」
「よし、頼むぜ」
「うん」
レントが促す。タオも、笑顔で嬉しそうに解説を始める。
タオはもう本職の学者だ。
一応来る前にサルドニカについても調べてはいたらしいのだが。それでもあくまで、二次資料以下のものにすぎない。
今回はサルドニカで一次資料に触れているのである。
それは、タオも嬉しいだろう。
「100周年の話が出て来ているけれど、実際にサルドニカという集落が出来たのは220年ほど前のようだね。 それまではちいさな集落で、やはり魔物に脅かされ続けていたようだよ」
「そんなに前からあったんですね……」
「うん。 それで、「旅の人」と呼ばれる存在がサルドニカを訪れた。 その人物は酷く疲弊しているように見えたとある。 既に中年男性になっていて、何かに怯えているように時々遠くを見ていたとか」
「……」
旅の人、か。
ともかく、話を聞かせて貰う。
その中年男性がサルドニカに来たのが、110年ほど前。
その男性は、周囲の魔物を戦士達と連携して駆逐すると。決死隊を募って、近場の遺跡に何度も遠征。
機械類などを、次々に持ち帰ったという。
機械の使い方なんて、とっくに失伝している中。
その人物は機械の使い方を知っていて。
次々に組み立て、動かして見せたという。人々は熱狂した。
「機械の技師だったのか?」
「いや、違うだろうね。 ライザが王都で機械を直していたときの話を聞いたけれども、古代クリント王国以前に作られた機械はそもそも錬金術が中枢に噛んでいて、技術だけではどうにもできないんだ」
「そうなると……」
「間違いない。 その存在は、錬金術師だったんだ。 そして恐らく……年齢、状況からいって。 アンペルさんが言っていた、ロテスヴァッサの王宮に集められた錬金術師の一人だったんだろうね」
そうか。
こんな時代、こんな状況で異世界への侵攻と略奪を目論んでいた連中。
アンペルさんを実験動物のように見て。
腕を潰した腐れ外道共。
それがこのサルドニカを発展させたのだとしたら。
何か目的があったのだろうか。
咳払いすると、タオが続ける。
「機械技術の発展とともに、魔石の鉱山も発見されたということでね。 人々は魔石をこぞって掘り出して、周辺の都市に売り始めた。 同時に旅の人という錬金術師が魔石の加工技術、それに硝子の加工技術も伝えたらしい。 硝子の加工技術そのものは、ずっと古くからあったらしいんだ」
「それについては、私も聞いています。 ただ、硝子の技術を更に発展させることに、二代前のギルド長が成功して……」
「それについては、もうちょっと研究しないとなんともいえないね。 おほん。 それで、魔石で潤うようになると、旅の人は閉じこもって研究だけをするようになったそうだよ。 それで……何年かそれが続くと、サルドニカの人達にとって、旅の人は邪魔者になった」
「おい……」
レントが流石に凄む。
フェデリーカさんが背筋を伸ばしたが。
彼女の責任じゃない。
ボオスが、大きく咳払いしていた。
「レント」
「分かっている。 だがなあ」
「流石に90年も前の話だ。 フェデリーカに責任はねえよ」
「ああ、それは分かっているんだがな」
レントは、三年の一人旅で、迫害の恐ろしさを身に染みた。
例え、ロテスヴァッサの王宮でおぞましい研究をしていた錬金術師だったとはいえ。
これだけの街の発展に貢献したんだ。
それが、なんの目的でやったのかは分からないが。
その後の手の返しぶりは、あまりにも酷すぎる。
確かにあたしも、それは分からないでもない。
「フェデリーカ。 いずれにしても、サルドニカの人達が過去に何かしらやらかしたとしても、貴方に関連性は無い。 仮に関連性があったとしても、貴方が謝るべきはあたし達じゃない」
「そうだな。 アンペルさんが此処にいたら、謝るべきかも知れないがな」
「……なんだか、本当にすみません。 申し訳ないです」
「タオ、続きを話して」
セリさんも、あまり機嫌は良くない。
続きを促す。
タオは頷くと。分かりきっていた結末を告げた。
「旅の人、錬金術師の伝承はそこで途絶えているね。 ただ、一つ。 錬金術師の世話をしていたらしい人の手記に、ちょっとだけ書かれているのを見つけた」
「聞かせてくれ」
「旅の方は、一人静かに去られた。 これは殺されたという意味かとも考えたんだけれども、いくら年齢を重ねていたといっても、ライザほどではないにしても近隣の魔物を倒せる実力者が、街の人間達に簡単に遅れを取るとは思えない。 多分だけれども、研究がしづらくなったと判断したのか、或いは他の理由か。 いずれにしても、サルドニカをその人物は去ったのだと思う。 サルドニカの人達も、もう用済みになったから、出ていってせいせいしたんだろうね」
胸くそが悪い話だ。
だが、或いはだが。
その錬金術師にとって、サルドニカなんてそれこそどうでも良かったのかも知れない。
単に研究を行うための地盤が必要で。
それを確保しただけという可能性もある。
タオは僕の調査は一旦此処まで、と告げる。あたしは頷くと、ボオスとクラウディアにも話を聞く。
ボオスは、サルドニカの権力関係について調べてくれた。
現在十幾つかあるギルドだが、それらは硝子派と魔石派に消極的な協力をそれぞれしているそうである。
ただし表だっての協力はしていない。
これはあくまで、ギルドはそれぞれ立場が同じという建前があるから。
それに、だ。
硝子ギルドがここ最近で台頭したように。
他のギルドにだって、可能性がある。何も相手の靴を舐める程に、媚態を尽くす必要は無いということなのだろう。
クラウディアも調べてくれた。
クラウディアは商人達を集めて、最近の動向について確認してくれたらしい。
どうも現在は、売り上げは硝子ギルド43、魔石ギルド41、残りは他ギルドというところで、硝子ギルドが若干有利であるらしい。
ただしコネという観点では魔石ギルドの方が強力で。
硝子ギルドが販路を開拓できない状況もあるのだとか。
「総合的な力は完全に互角とみていいわ。 それは街の設立100年の祭で、白黒をつけたいと考えるでしょうね」
「なんだか、皆さんもサルドニカの暗部に巻き込んでしまって、本当に申し訳がないです」
「いいのフェデリーカ。 それでライザ、どうするの?」
「約束を最初に取り付けたのが魔石ギルドの方だから、早速視察するよ。 クリフォードさん、セリさん」
二人が頷く。
二人は年長者だ。だから、此処からは魔物退治を頼む。
「レントとフェデリーカをつれて、街道近辺の魔物退治をよろしく。 一旦調査が終わったということだから、タオもそっちに合流して」
「分かった」
「頼まれたわ」
クラウディアとボオスはそのままサルドニカでの行動を続行。
まだまだ幾らでもサルドニカについては調べておくこともある。
それに、だ。
一番きな臭い事がまだ残っている。
フェデリーカのお父さん。
先代工房長の死の真相だ。
あたしは、明日から単独でそれぞれのギルドに乗り込んで、それでやり方を視察させて貰う事になる。
その後に、順番に話を進めて行く事になるだろう。
サルドニカも、一段落はさせておきたい。
少なくとも、この都市は数少ない、人間が発展している街であることに間違いはないのである。
不安要素を潰して、人間が魔物に対抗できる場所として、もっと未来を作らなければならないのだ。
人間同士で争っている場合ではない今。
そのためには、くだらないギルド同士の争いは止めさせる必要がある。
もしもそのまま続けていたら。
あの腐った井戸の底である、アスラアムバートと同じになるだろう。
外を知らないカエルがずっとゲコゲコ鳴き声を競っているだけの場所。
そんな場所になったら。
同じように、此処も腐っていくだけだ。
さっそくあたしは魔石ギルドに出向く。それを見て、フェデリーカが驚いていた。
フットワークが軽いというのだろう。
あたしにとって。
それは強みの一つだ。
魔石ギルドは、この街の初期から発展していただけの事はある。流石に重厚な造りの建物を本部としていたが。
いや、まて。
これは違う。
多分これは、100年前に一番力があった魔石ギルドが、見栄えがいい建物を独占しただけだ。
目を細めて、様子を見る。
これはひょっとするとだが。何かしらの施設だったのかも知れない。
でも、なんの施設かはわからない。
「フィー?」
「……そうだね。 入ろう」
不思議そうにフィーが懐で動いたので、あたしはそのまま施設に入る。
魔石ギルド本部に入ると、視察と言う事でさっそくアルベルタさんが出てくる。あたしは街の英雄扱い。
だから、賓客と言う事だ。
「さっそくで申し訳ないんですが、魔石を加工する様子を見せて貰えますか?」
「ああ、早速用意させよう」
何人かの職人が来る。
いずれも頑固者、という顔をしていた。
奧にはそれなりのスペースがあって、かなり広く作られている。天井に突き抜けるようにして煙突が出ているが。
あれは明らかに、後付けしたものだ。
なんというか、強引な造りだなあ。
そう思って、あたしは苦笑いしてしまう。
そして、周囲を見回していて。思わず口を押さえていた。
だいたい分かってしまったからだ。
此処は、恐らくは。元々この辺りにあった遺跡のものなのだろうが。多分コントロールルームだったのだ。
光学式の操作パネルは、多分錬金術師が外してしまったのだろう。
地下に何があるかしれたものではないが。
ここに来た時点で、錬金術師は気付いていた筈。何かあったとしても、取り除くか、沈黙させてしまったのは疑いない。
「どうした、錬金術師どの」
「いえ。 作業をそれでは見学させて貰います」
「ああ。 しかし見学だけでいいのか」
「問題ありません」
さっそく作業を見せてもらう。
魔石細工の作業は、本当に精密で。作業中は音を立てることは、ギルド長すら許されないということだ。
それについては、見ているだけで分かる。
全員が座り込んで、魔石を抱えるようにして作業をしている。
魔石をまずは大まかに削り取って、何かしらの形にする。この際に削りだした欠片は、それぞれが回収して、本来の用途……魔力が篭もった石として用いる。
要するに、こうやって削りだした魔石の方が、実際には利益を生んでいるということだ。利益にならなくても、サルドニカの街を動かしていると言う事だろう。
それぞれが、かなり鋭利なノミを振るって、そこからは石材を削っている。
石材にはそれぞれ癖があるらしく、その割れやすい場所に沿ってノミを走らせる事で、効率よく削る事出来るし。
意図しない形状にならないように。敢えて癖を殺す必要もあるそうだ。
これには魔石を掘り出した際に、そもそも癖を読むことも要求されるとか。
放置されている魔石について、音もなくアルベルタさんがゼッテルを見せてくれる。
あれらは、癖などに問題があって。持ち込まれはしたものの、どう扱うかを決めていないものだそうだ。
最悪、そのまま燃料として売ってしまうとか。
やがて、職人の一人が汗を拭うと。
年若い職人にそれを手渡す。
怪しい輝きを放つそれは、見事なドラゴンの像だ。
これから細かい部分にやすりを掛けて、更に丁寧に仕上げた後。幾つかの塗料を重ね塗りしていくのだという。
塗料を見せてもらう。
なる程、魔力流出を防いでいる、というわけだ。
この塗料、多分門外不出の品だろうなと、あたしは判断。
というのも、魔力流出を魔石から防ぎつつ。更には、この心を惑わせる怪しい輝きを消さないようにする。
それを両立させるのは、相当に大変なはずだからである。
ふむふむ、実に興味深いな。
あたしはついでなので、研磨の作業も見せてもらおうかと思ったが、既にかなり遅い時間である。
それを指摘されて。一旦は引き上げる事にする。
ギルドの入口で、アルベルタさんが感心していた。
「凄い集中力で驚いた。 錬金術の産物は幾つか既に見せてもらったが、あのように集中して作るのか」
「ええ、ものによっては」
「なるほどな……」
「そのベルト、少し傷んでいますね。 修理しましょうか」
アルベルタさんは少し考え込んでから、あたしに引き渡してくる。すぐに別のベルトを、恭しくまだ幼い職人候補らしい女の子が差し出して。ささっとベルトを締め直すアルベルタさん。
アルベルタさんは、どちらかというとフェデリーカと同じ東方の衣装に近いものを着ているが。色合いは赤く、単にコレは好みの問題らしい。
そもそも東方出身者は全員が肌が浅黒いというわけでもなく、単に日焼けをしやすいだけの体質という事もあるらしく。
更に血が複雑に混じったこともあって。
100年前の創設メンバー(タオの調査を聞く限り、恐らくもっと前からいた筈だが)の中にいた、肌が浅黒い体質の人々は、既に血として溶け合って、何処でいつ生まれてもおかしくないのだとか。
まあ、それについては今はどうでもいい。
肌の色だの目の色だので人間が差別されたり。階級が生じたりするような社会に興味はない。
そんなものは場合によってはあたしが拳骨で粉砕する。
翌日も、魔石ギルドに出向くが。
もう話を聞きつけたらしい。
早速サヴェリオさんが、途中で待っていた。
「錬金術師どの!」
「サヴェリオさん」
「硝子ギルドの視察はいつになるだろうか」
「今、魔石ギルドでの視察を続けています。 まあ数日もかからないので、その後になりますね」
少し考え込んでから。
サヴェリオさんは、差し出してきた。それは恐らくだが、靴だろう。ちょっと変わった形状だ。
女物かもしれない。
「魔石ギルド長の私物の修理をすると聞いた。 俺のも頼めるだろうか」
「分かりました。 これは……?」
「婚約者へのプレゼントだ」
「分かりました。 修復しておきます」
というか、恐らくはこれは。
一種の嫁入り道具だなと分析する。
今でも嫁入り道具というものが存在する事は知っている。一見すると良さそうな話だが、実際は価値がある品とともに、娘をその家に売るのである。嫁入り道具は一種の担保であって。
その結婚が上手く行かない場合も、嫁入り先は損をしない。
そういうことだ。
集落によっては、この習慣が極めて苛烈であり。
その結果、嫁入り道具を準備するために体を壊すまで働く親までいるそうだ。
クーケン島は違った。だが、遠征先でそういった風習がある集落は幾つも見た。サルドニカも、それに近いと言う事だ。
恋愛結婚がいいかというと、別にあたしはどうでもいいと思うが。
嫁入り道具を満足に用意できない家の娘はお断り、という風潮については、顔面を蹴り砕いてやりたいほどに不愉快である。
ただ、サヴェリオさんが婚約者のものを持って来た。
これは恐らくだが。その婚約者に本当に気があって、道具について裏から支援したいと思っているのだろう。
なるほどね。だとすると、女たらしだと既に報告を受けているサヴェリオさんは。あくまでそれは表向きの顔で。
裏は結構、誠実な部分もあるのかも知れない。
だが、それもあくまで人の一面だ。
硝子ギルドを躍進させているやり手として、実業家としてのサヴェリオさんは相応に怖い顔も持っている筈。
それだけで、相手を信頼するのは愚の骨頂と言えた。
ともかく、まずはアルベルタさんにベルトを返す。金具はゴルドテリオンで補修しつつ、幾つかの塗料で上品に色合いを仕上げた。
皮はかなり高級な蛇皮だったようだが。年月を経て傷んでいたこともある。
錬金釜で再構成し。
それで修復した結果、艶やかな輝きを取り戻している。
渡すと、完璧以上になって戻って来たベルトを見て、アルベルタさんは本当に驚いたようだった。
「これは……噂以上だ」
「身に付けてみてください。 実用性がなければ、調整します」
「う、うむ。 ……素晴らしい。 これは、文句のつけようがないな」
「それでは、視察を続けさせてください」
アルベルタさんの態度が、目に見えて軟化した。
だが、これ以上信頼させるには、まずは魔石細工を何かしらやってみせないといけないだろうなと思う。
何となく分かってきたが、アルベルタさんはしっかり一職人としてギルド長以上にストイックに振る舞っている。
ギルドでの約束事は、自分が率先して守る事で、全員に守らせている。
それは伝統が云々というよりも。
魔石ギルドが今後発展するためにも、鉄の掟を自分で守る事が大事だと思っているのだろう。
お子さんが二人いるらしいが。その二人は多分これはギルドにいないのだろうなと思う。
血縁では無く、実力のある次世代をギルド長に指名する。
それで、魔石ギルドの技術を担保しているというわけだ。
職人としてのやり方はそれでいいと思う。あたしも錬金術師。職人の一種だから、このストイックなあり方については、感心できる。
問題は、街での政略ごっこにうつつを抜かしていることで。
それについては、まったく感心できなかった。
フェデリーカがアルベルタさんとサヴェリオさんに困っている様子だったが。それでも二人の悪口を言わない理由がよく分かった。
二人とも、多分職人としてはがっちり誇りを守っているのだ。
だが、余計なことまでやっている。
それが問題なのだろう。
多分立場などもある。
それもあって色々と変な所を抱え込んでいるのだろうが。それは、あたしは無用だと思う。
さて、魔石の加工については、あらかた見せてもらった。
特に研磨は、数年がかりで行う事もあるらしく。本当に大変な作業であるらしい。
だが、あたしはやり方を覚えた。
空間把握で、仕組みも理解した。
それだけで、充分だった。
次は、硝子ギルドだな。そう思って、魔石ギルドでの視察許可に礼をいい。アトリエに戻る。
クラウディアに、硝子ギルドへの視察を明日から行う事を告げて。それで今日は休む。
フィーが懐から出てくる。
魔石が一杯あったのに、昂奮して騒ぐこともなかった。
立派だ。
余っている魔石をあげて、魔力を吸収させておく。たっぷりご褒美は上げておいた方が良いだろう。
戻ってくるセリさんとクリフォードさん。
荷車には、鼬の死体がたくさん積まれていた。
魔物の駆除は順調だそうだ。幾つかの地点では、既に魔物の姿が完全に消えたという。
どうせまた姿は見せるだろうが。今の時点では、それだけで充分。
二人にも、硝子ギルドの調査はすることは告げる。
クラウディアが、黒めがねみたいなのを用意してくれた。
「ライザ、これを持っていくか、解析しておいて」
「これは?」
「硝子は非常に高い熱と光が出る加工過程があるの。 多分大丈夫だとは思うけれども、もしもギルド側に何か悪意があった場合の事を考えて、自衛をした方がいいわ」
「なるほどね。 ありがとう」
眼鏡をかけてみると、かなり世界が暗く見える。
だが、これは確かに有り難い。
念の為に、釜で調整を掛けておく。
それに対して、クラウディアは何も言わなかった。