暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
どんな分野にも職人芸というものは存在します。自分も何度か見たことがありますが、それをやる事に人生賭けているような職人芸は確かに凄まじい代物ですね。
ライザは錬金術でその職人芸と違った方向から技術にアプローチしていく事になります。
ただライザが使っている錬金術は才能依存のものなので、ある意味職人芸に近いものではあるのですが。
フェデリーカには、皆と一緒に魔物狩りに出て貰う。特に例の露天掘り鉱山周辺は、その奥にある森林地帯から湧いてくる魔物が出るので、重点的に。
昨日も、その辺りで鉱夫が襲われる事態があったそうだ。
幸い救援要請をクリフォードさんが即時で見つけて救援に出向いたため、死者は出さずに済んだそうだが。
少し遅れれば、出稼ぎに出て来ている鉱夫達が、十人以上は殺されていただろうということだった。
危うすぎる。
あたしはそう思いながら、まずは硝子を作り出す。
釜にエーテルを満たして、素材を投入。順番に要素を分解していく。
硝子というのは、個体に見せて。
実は液体に性質が近い。
それを、あたしは理解していた。
これは以前、アンペルさんに教わった事なのだ。ガラスはどうみても個体にしかみえないのだが。
幾つかの条件を満たすと、液体に近い事が理解出来る。
それを見せてもらって、なるほどとあたしは感心した。そして理解してしまうと、扱いは難しく無い。
更に、硝子ギルドで技術の最先端を見せてもらった。
熱して溶かして動かしている最中の、赤熱した硝子ではなくて。それ以降の冷え固まった硝子でも。
あたしは、相応に扱う事が出来る。
理解したからだ。
このあたしの、空間把握の力は、才能なのだろう。
そして才能を、此処では生かさせて貰う。
ちょっとずるいかも知れないが。
そもそも、その才能に依存して、この世界は。神代の頃には発達した。だから、負の遺産を全て潰すのにも。
きっと才能が必要だと判断して良いだろう。
黙々と鉱物を釜に足す。エーテルで溶かして、混ぜ合わせていく。不純物は綺麗に取り除く。
そして、順番に、色とも混ぜていく。
やがて、エーテルから引き上げたそれを。何度か釜に戻して、微調整を行う。
先に戻ってきたのはタオだ。
見せると、おっと眼鏡を直していた。
この眼鏡も、王都で作る為の機械を直したっけ。
他の街にも少数しか存在していないらしく。タオの眼鏡も、実は二回再調整した。
「これが例の硝子?」
「うん。 どう、タオから見て」
「まずはフェデリーカに見てもらおうよ」
「そうだね。 とりあえず、完成品一号はこれということで」
タオも、またすぐに狩りに戻る。
幾つかの地点を重点的に周り。
遊撃のタオとセリさん。
後のメンバーは纏まって、鉱山の辺りを念入りに魔物をしらみつぶしにする。
それでまずは一旦、一日過ごす。
それであたしが作るものの様子を見る、ということだ。
続いて、魔石細工。
これについては、はっきり長所と弱点がわかっている。
あたしもエーテルの内部であったら、極小の世界を散々観察している。それの操作もしている。
今やっている錬金術は、ものの最小単位まで分解する事を要求されるものも幾つもあるのだ。
今以上に高度な爆弾を作るとなると、その技術が絶対に必要になってくる。
それもあって、あたしはものの極小を、エーテルを介して見ている。
決してそれは楽な作業ではなく。調合の度に激しく消耗するが。
逆に言うと、その観点では。
どうしても「目」に頼らざるを得ない魔石ギルドの職人達よりも、あたしは高度な事が出来るのだ。
そのまま調合を続けて行く。
フィーが、あたしの服を引っ張る。
そろそろ、時間か。
「フィー!」
「うん、分かった。 ちょっと待って。 この作業が終わったら食べる」
「フィーフィー!」
メシをしっかり食べないと、人間は倒れる。
それはあたしも分かっている。
きりが良い所で一旦手をとめて。
出る前に、クラウディアが準備してくれたサンドイッチをぱくつく。ちょっと作ってから時間が経過していても、問題なく食べられる。
うん、おいしい。
甘いのも作ってくれていたので、それも遠慮なくいただく。
やっぱり調合をしている際には、頭をフル回転させる事になる。
そうなると、どうしてもやはり疲弊が溜まってしまうものなのである。だから、甘いものを脳に入れる。
ただアンペルさんほどの甘いものジャンキーになるのも問題だ。
適度にしておかないといけないだろう。
無言で食後に少し休憩を入れる。フィーが此方をじっと見ているので、頭を撫でてあげる。気持ちよさそうにするフィー。
あれから、大きくはなっていない。
性格も変わっていない。
多分、ずっと時間を掛けて成体になっていく生物なのだろう。
ドラゴンと種が近いのだとしたら、それが正しい生態なのだ。
しばし、ゆっくりした後。
調合に戻る。
集中して、最後のスパートを掛ける。そして、調合が終わった頃には、夕方になっていた。
フェデリーカが戻ってくる。
かなり激しくやりあったらしく、服が何カ所かぼろぼろになっていた。レントがぼやいていた。
「鉱山の方で大きめの戦いがあってな」
「呼んでくれれば行ったのに」
「いや、俺たちでどうにか出来る範囲だった。 ただ、凄い数の鼬の群れが出て来てな。 全部始末するまでに、例のメイドの一族も出て来ての大乱戦になった。 死者は出なかったが、貰っていた薬は全部使っちまった。 補充を頼む」
「分かった。 今すぐ使える分は、あっちの棚にあるから、持っていって」
フェデリーカは別室に連れて行って、クラウディアと一緒に服を脱がす。
きゃっとか可愛い悲鳴を上げたので、ちょっとあたしもひくりと口の端が引きつる。
そういえば、クラウディアも最初はそうだったっけ。
とにかく、服を貰うと、すぐに錬金釜に放り込んで補修をする。
服の造りはかなり複雑だ。
これは貫頭衣と呼ばれる、本来は一つの布だった服か。
それを色々と調整した結果、このような折り重なった不思議な作りになっていると。
生半可な職人では、これを織るのは無理だな。
そう感心しながら、調整して直す。
かなり長い間、よそ行きの服として調整してきたんだな。そう思って、丁寧に丁寧に補修して。
そして仕上がったので、フェデリーカの所に持っていく。
毛布を被っていたフェデリーカに、新品そのものになった服を渡して、着替えて貰う。フェデリーカは、もう言葉もない様子だった。
「な、何度も繕って、その度に色々妥協しなければならなかったんですが……」
「ふふ、他にも直したいよそ行きの服があったら見せて。 あたしが直すから」
「はあ……はい……。 そうさせていただきます……」
「少し疲れているみたいだね。 夕食を食べて、それからお風呂に入って、横になろう」
クラウディアが子供に対するみたいにそう諭しているので、ちょっと複雑である。あんまり年齢は離れていない筈なんだが。
それに、フェデリーカだって、ろくでもない大人の権力闘争に巻き込まれまくっている。多分田舎の同年代の人間よりも、ずっと人生経験は豊富なはずだ。
それが完全に子供扱いか。
多分あたし達の中で、一番悪い意味での大人に近いのはクラウディアなんだろうなと、あたしは思う。
ただ、それでも。
クラウディアが一番の親友である事に代わりは無いが。
食事と風呂を済ませて、リラックスしたところで。完全に力尽きたフェデリーカは眠ってしまったので。先に皆に成果物を見せておく。
ボオスが呆れ果てた様子で、あたしが作ったものを見る。
「お前、錬金術師じゃなくて魔法使いじゃねえのか」
「ま、褒めて貰ってもいいけど。 これは錬金術で作ったものだよ」
「空間把握能力だったかしら。 それにしても、ちょっと凄まじいわねこれは」
セリさんが何度も、魔石細工を手にして驚く。
勿論、簡単に壊れないようにしてあるのだが。それでも、セリさんには触るときには幾つかの注意を告げてある。
まあ仮に壊れても、修復は可能だ。
「クラウディアはどう。 仕事柄、こういうのは見ているでしょ」
「独創的すぎて、言葉も出ないわ。 王都の貴族に売れば、とんでもない値段が出てくる筈よ」
「そっか。 俺にはなんか凄そうとしか分からないな」
「多分ライザは、凄いと言う事だけを見せるためにデザインしたんだと思うよ」
レントにタオがそう告げる。
クリフォードさんは、じっと見ていたが。
ロマンがあるなと、一言だけそういう。
クリフォードさんの場合、ロマンがあればそれで満足する。そして、満足したのだろう。ロマンの定義が今でもよく分からないのだが。満足してくれたのであれば、それで充分である。
「じゃ、本番は明日だね。 フェデリーカに見せて、それで問題無さそうだったら、ギルド長を二人とも呼ぼう」
「分かった。 それでだ。 ライザ、お前の残りのサルドニカでの目標は技術の取得と紋章の調査、だったよな」
「それにはギルドが二つとも協力的でないとね」
「そうか、確かにそれもそうだ」
ボオスがぼやく。
あたしは咳払いすると、皆に明日は忙しい事を告げて。
休むように促す。
年長者ほど、さっさと休みに入る。
休める時に休んでおかないと、いざという時に動けなくなる。
歴戦の人間ほど、それを良く知っている。
睡眠に関しては、脳を半々ずつ使って寝るらしいオーレン族のセリさんだけれども。それでも、最近は両方脳を休ませて、ぐっすり眠っている。つまり、あたし達を信頼してくれているということだ。
あたしも休む事にする。
さて、明日。
己の技術こそ正義で。己こそ最高と信じているギルド長達に。現実を見せておく必要が。
今こそあるのだった。
フェデリーカは。成果物を見て。それで顎が外れたように口を開けっ放しにしていた。やはり、間違いない。
あたしの観察は間違っていなかったのだ。
「ど、どうやったんですかこれ……!」
「錬金術だよ」
「……細工という観点からは、はっきりいって未熟も良い所です。 でも、技術という観点からは……これは人間がやったのだとは思えません。 私も神代のものは見た事があるので、そういうものに見えます」
「それはそうだろうね。 神代に栄えていた錬金術は、それまで栄えていた科学を上回った。 ライザのは、まさにそれを単独で、しかも四年程度で再現した結果だよ」
タオが告げると、フェデリーカはまた貧血になりそうに。
そして、あわててあたしが落とそうとした硝子細工をキャッチしていた。
平謝りするフェデリーカ。
だけれども、その気になればなんぼでも作れると告げると、もうそのまま卒倒してしまった。
泡を吹いている様子を見て、ちょっと可哀想になる。
フェデリーカも、やはり常識の範疇内で生きてきたのだ。
そして常識というのは場所によって違ってくる。
あたし達のクーケン島では、その常識が窮屈極まりなかった。だから、ずっと飛翔したかった。
飛翔した今は、こうして各地で歪んだ常識を幾つも見ている。
フェデリーカの見て来た常識は、硝子と魔石の常識だが。
それも今、あたしが崩したということだ。
とにかく、横になって貰って。冷やしたタオルを頭に置く。まあ、しばらくすれば立てるだろう。
意識は程なく戻ったので、それで軽く話をしていく。
ギルド長達は納得するだろうか。
そう聞くと、フェデリーカは頷く。というか、倒れないか心配だという答えが返ってきていた。
今、ボオスとクラウディアが、二人を迎えに行っている。
いや、多分何往復かする筈だ。ギルド長だけではなく、ギルドの主要人物にもこれは見せておく必要がある。
他のギルド長にもだ。
なんなら、作成を再現してみせる必要もあるかも知れない。
いずれにしても、ここからが本番である。
一刻ほどで、ボオスとクラウディアが二人のギルド長を連れてくる。アルベルタさんもサヴェリオさんも、最初は興味津々……実際にはあたしの腕前を酷評でもするつもりだったのだろう。
だが、アトリエに案内して。
現物を見せると、全く表情が変わった。
まず、魔石細工だ。
あたしが作ったのは、複層構造の魔石の女神像。それぞれに違う色合いの魔石を使っており、奧に入る程色合いが濃くなっている。しかも強度が相応にあるので、揺らすとからりと音がする。
その音も、上品に鳴るように調整している。
それだけじゃない。
一番奥には、ルジャーダの魔石を用いた、鈴状に加工した魔石が入っているのだ。
飛びついたアルベルタさんは、女神像を触って確認する。
魔石は、どこも切り離していないし、接合もしていない。
そう。
魔石細工は、基本的に一つの魔石をどう掘り出すか、の作業なのだ。この色合いが異なる複数種類の魔石を複層構造で作りあげ。
更にはそれを切断も接合もしていない。
これは、現在の魔石加工技術では作れない。
「し、しし、信じられん……!」
「こ、これはどうやったんだ!」
一方、サヴェリオさんも硝子細工について、呆然としていた。
あたしが作ったのは、硝子ではどうしても出せない色合いの一枚板の硝子。それも、殴った程度では壊れない。
強力な強度を持つ硝子というのは、どうしても現在の硝子ギルドの技術では作る事が出来ない。
しかし、硝子が実は流体に近い事。
そしてその極小の構造。
その二つを理解すれば、ちょっとした工夫で、殴った程度ではびくともしない硝子をこうして作れるのだ。
それにこの色合い。
絶対に硝子ギルドでは出せない。それを理解した上で、着色している。手袋をしたサヴェリオさんが、目の色を変えて硝子を触っている。
勿論表面は極めて滑らかである。
アルベルタさんは言葉を失って、魔石細工を置くと。
何度もため息をついて、頭を振って。
それで、混乱しているようだった。
サヴェリオさんは完全に目の色が変わっていて。解析したいと、顔中に書いている有様である。
あたしは、助け船を出す。
「条件を呑んでくれれば、これは譲ります。 あたしとしても、作るのにそれほど手間は掛かっていませんので」
「ほ、本当か!」
「頼む。 なんとしても欲しい!」
今までに見た事がないものを見た時。
平均的な人間は拒否反応を示し、そして破壊する事を考える、だったか。
あたし達はそうではなかったが。
クーケン島の悪ガキ集団であり。
変わり者揃いだったことを考えて見ると。普通ではなかったことは、それだけ良かったのかも知れない。
そして、この二人は。
職人として、全うだった、ということだ。
保守を極めると、職人は先人のものをトレースするだけになると聞いている。保守的な魔石ギルドであっても、常に新しいものを目指して腕は磨いていた。新しい技術に貪欲だった。
それだけは、あたしから見ても良いことだと思ったし。
先進的な硝子ギルドでも。
あたしが作って見せた超高硬度硝子の技術には、感動して調べたいと思っていた。
つまり、二人は腐りきっていなかった。
だけれども、本当に腐りきっていない人間が、偶然ギルド長につけたのだろうか。やはり、あのメイドの一族の影がちらつく。
ともかく、それはいい。
二人に、先にギルドの主な人間を連れて来て貰う。
先に来たのは、硝子ギルドの職人達だった。露天で見てもらう。誰もが驚いていた。神々しいものを見るようにしている職人もいた。
だが、これはただの技術だ。
錬金術による再現性のあるもの。
科学を凌いで、才能に依存するものであっても。
少なくともあたしは再現出来るものにすぎないのである。
硝子ギルドに、超高硬度硝子は譲る。皆で、本当に大事そうに持ち帰っていった。
続いて魔石ギルドの職人達が来る。
女神像を触って、彼等は完全に無言になった。
どうやってこれを。
皆がそう呟いた。
アルベルタさんも、それについてはまったく分からないと答えていて。あたしを明らかに畏怖の目で見る職人もいた。
それでいい。
ともかく、これで職人達は。
サルドニカの経済と政治を回している者達は、あたしに一目も二目も置くようになる。
これで、準備は整う事になった。
皆を帰らせる。
女神像も譲った。
そして、昼過ぎ。
食事を終えてから、フェデリーカに話を聞く事にする。
フェデリーカのお父さんが考えていた。ギルドの不和を解消するための案。
それについて、話して貰う。
現実的だというのなら、それでいい。
サルドニカのやり方で、サルドニカを変えられるのなら。
あたしもそれに、協力する。
それだけの話だ。
しばらく待って、熱を出してしまったフェデリーカが落ち着くまで待つ。この子は意外と繊細なんだなと、あたしは思った。
だが、まあ若いうちから背負うものが多かったのだ。
繊細だったのは、それはまた、仕方が無い事だったのだとも言える。
しばしして、フェデリーカが起きだす。
まず、頭を下げられた。
「ごめんなさいライザさん。 やはりどこかで、私はライザさんを疑っていたようです」
「あんなものを作れるとは思っていなかった、だね」
「はい。 どこかに驕りがありました。 硝子や魔石に関しては、世界一だと。 狭い見識が、迷妄だったことが分かりました」
「あたしだって全能でなんかないし万能でもないよ。 まだ技術だって未熟。 ただ、違う技術に出会っただけ。 そう思って」
頷く。
フェデリーカは泣き出していた。
感動して、ではないだろう。
自分が如何に傲慢だったか、それに気付かされての涙だ。誇り高い涙だと言っていい。それを笑うべきではない。
しばらくフェデリーカが落ち着くのを待って。
それから、話を聞く。
しばしして、落ち着いたフェデリーカが、順番に話してくれる。
「私の父は、二つのギルドの融和を考えていました」
「二つのギルドは技術の方向性が完全に違う。 それなのにか」
「はい。 二つのギルドは、恐らく百周年の祭の時に、対立がピークになる。 故に、そのタイミングまでに研究を終わらせようと、体に鞭を打って……」
なるほどな。
それで結果的に命を縮めたわけだ。
それにしても、技術の融和か。
ちょっとどうするつもりだったのか、今の時点では見当がつかない。
フェデリーカが、顔を上げる。
そして、乱暴に目を擦っていた。
「しばらく二つのギルドは身動きをとれないと思います。 だから、その間にやっておきたいことがあります。 ライザさん達の手助けを受けないと、きっと出来ないと思います」
「なに。 言ってみて」
「立ち入り禁止地域の奧に、非常に強い酸の水を流出させている温泉があります。 父が調べていたのは其処なんです」
「酸……ね」
硝子の特性。
それはどんな酸でも閉じ込めておける事だ。
金や白金ですら、ある種の酸は溶かしてしまう。王水という、最強の酸だが。
特殊な酸というと。どういうものなのだろう。
「それは王水ほどの強さはないのですが、それでもある特性があります。 硝子と魔石を、ともに溶かすんです。 父はこれを発見して、どうにか細工に活用出来ないか、制御する方法を調べていました」
「……なるほど」
「魔石と硝子の両方のギルドが、ともに百周年のモニュメントを作る。 それが父の夢であり、願いであり。 サルドニカの未来の為に必要な事です。 それには、危険な魔物がたくさんいる森の奥への侵入が必須なんです。 ライザさん、お願いします。 手を貸してください」
フェデリーカは、すっと地面に座り込むと。
頭を下げていた。
土下座か。
分かった。だとしたら、こっちも受けなければならないだろう。首長がしっかり頭を下げられる。
それは立派なことだ。
ロテスヴァッサの無能王族にも、見習って欲しい姿である。
「顔を上げて、フェデリーカ」
「話を、聞いてくれるんですか」
「うん。 ただし条件がある。 その竜の紋章について分かりそうな資料を、タオに全公開出来る?」
「……そうですね。 門外不出の資料が幾つかあります。 それを、開示させていただきます」
決まりだ。
あたしはフェデリーカに手を貸して、立たせた。
そして、ぐっと親指を立てて見せる。
「護衛、承りましたフェデリーカ。 時期を見てあたし達が何をしているのかも、話していくよ」
「え?」
「俺たちは俺たちで、相応に面倒な敵を抱えていて、それと戦っているんだよ。 つまり、ライザはフェデリーカ。 あんたを仲間として認めたってことさ」
「……っ」
口を押さえるフェデリーカ。
意外と感動家なのかもしれない。
ともかく、これで目的は達成出来そうだ。
あの群島の奧の扉。
あれがなんなのか、調べる必要がある。それには、もっと綿密な調査が、絶対不可欠なのだから。
かくして、頼りになる仲間が一人加わる。
まだ戦闘面では未熟な所も多いが。
そんなのは、経験をこれから積んでいけば良い。
人材は生えて等こない。
誰だって最初は未熟だ。
あたし達だってそれは同じ。リラさんとアンペルさんがいなければ、ずっとクーケン島であたし達は腐っていただろう。
そういうことなのだから。