暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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地獄の跡地を処理した後は、サルドニカ安定のための手を打つ必要があります。

それには先代の意思をどうにかして掘り起こさなければなりません。

暮らしている人のために全てを擲った立派な人の意思は、サルドニカでは誰にも知られていないのです。


2、禁足地の奧へ

タオとボオスが見つけて来た門を確認。

 

クリフォードさんは門を既に知っていて、仕組みも理解している。故に、てきぱきと調査を皆で進めた。

 

結論は、問題なし。

 

門の劣化は起きていない。

 

聖堂も問題がない。

 

というか、よほど頑強に固めたと見えるが。

 

これはどういうことだろう。

 

まず不可解なのが。

 

周囲の状況だ。

 

これだけフィルフサが暴れ回ったのだ。仮にアーミーの総力を挙げて押し返したとして、どうやってその後門を閉じたのか。

 

門を閉じるにしても、それを出来る人間は残っていたのか。

 

考え込むあたしに、タオが仮説を述べてくる。

 

「フィルフサの王種を仕留めたのかもしれない」

 

「……神代の技術を考えると、出来る可能性はあるわね」

 

セリさんがちょっと忌々しげに言う。

 

頷いたタオが続けた。

 

「それで、フィルフサが離散した隙に、門をどうにかしたのかも知れない。 多分その可能性が一番高いと思う」

 

「いずれにしても、この門の先は後で確認しないとね」

 

「それはそう思う」

 

「ライザさん……」

 

不安そうにするフェデリーカ。

 

それはそうだろう。

 

自分が分からないものごとばかりなのだ。フェデリーカもいい加減頭がパンクしかねない。

 

「その、三百万人もいた都市を潰した化け物みたいな魔物がこの向こうにいるんですよね。 この……よく分からない渦みたいなものの向こうに?」

 

「そう。 その可能性がある。 だから、いずれは対処しないといけない。 これは聖堂という一種の封印なんだけれども、これが壊れたらまた出てくるからね。 その時に備えないとまずいわけ」

 

「確かに、ライザさんほどの豪傑がいる時じゃないと……厳しそうですね」

 

フェデリーカの目が死んでる。

 

これは、巻き込まれたら死ぬ。

 

でも、サルドニカの首長である以上、立ち会わないといけない。

 

詰んだ。

 

そう考えているのかも知れなかった。

 

いずれにしても、此処は今の時点では用はない。そもそも、此処に賊の類が住み着く事もないだろう。

 

水も食糧も周囲にないのだ。

 

タオが指摘したが、この辺りに湖を作るのが、順番としては先になる。何しろこの真っ平らな土地だ。

 

それが最大の難事になるだろう。

 

その後門を開いて、その向こうにいるフィルフサを王種もろとも潰す。ただ、王種が500年前の戦闘で仕留められているとすると。

 

この先は案外、平和な土地が拡がっている可能性も否定は出来ない。

 

ただ、そうだとしても、新しくフィルフサが進出してくる可能性はある。一定期間ごとに、調査は入れないといけないだろう。

 

一度アトリエに戻る。昼少し前だ。

 

昼食を皆で取る。

 

食欲がないらしいフェデリーカに、クラウディアがスープを勧めていた。味が薄めの、飲みやすいものだ。

 

いずれにしても、食べておかないと動けなくなる。

 

そう告げて。

 

泣きそうになりながらも、フェデリーカはスープを口にしていた。

 

なんだか嗜虐心がそそられるなこの子。

 

クラウディアがにこにこをずっと途絶えさせないのって、もしかして。

 

いや、それについては勘ぐりだ。

 

ともかく、次である。

 

タオにはサルドニカでの調査を続けて貰う。まだ何か、分かる事があるかも知れないからだ。

 

これからは、ボオスも禁足地の調査に加わって貰う。

 

昨日の時点で、威力偵察はした。

 

今日からが。

 

調査の本番だ。

 

 

 

鉱山に作られている、何重もの扉を開けて、奧に。矢倉があって、常に戦士が詰めているけれども。

 

それでも、この辺りから魔物が鉱山に散々侵入してくる。

 

露天掘りの鉱山でなかったら、更に被害が増えているはずだ。

 

だから、一度根を切る。

 

勿論別の魔物がいずれ来て、根付くだろうが。

 

それでも時間稼ぎにはなる。

 

禁足地に入ると、空気が変わる。

 

エサがきた。

 

魔物がそう認識して、動きを変えたのが分かる。常時、警戒態勢を取る。

 

どこから来てもおかしくない。

 

前後左右だけじゃない。

 

上下も警戒しなければならない。

 

全方位を警戒しろ。

 

そうリラさんに言われた事を思い出す。

 

「まだまだいるねえ……」

 

「来るぞ!」

 

山に入って視界が悪い。辺りには、普通見かけない植物がわんさか生えていて。それらから飛び出すようにして、かなり大きい魔物が次々と迫りくる。鼬や走鳥、それにラプトルという常連だけじゃない。

 

巨大な蛇が、蛇行しながら全力で向かってくる。

 

人間、殺す。

 

そう言っているかのような、凄まじい殺意だ。

 

セリさんが詠唱を終えて、魔術を展開。地面を突き破って出現した食虫植物が、飛びかかってきた鼬を腹側から喰い破り、上空に跳ね上げる。足下にも、大量の蔦が出現して、魔物の動きを阻害する。

 

レントとクリフォードさんが、片っ端から接近する敵を薙ぎ払い。二人が取りこぼしたのを、ボオスが斬り伏せる。

 

上空。

 

大型の猛禽が、急降下攻撃を仕掛けてくる。人間なんて、簡単に引っ張り挙げて持ち上げる程のサイズだが。

 

迎撃するクラウディアの矢が、容赦なくその全身を貫く。猛禽はくるくるとまわりながら地面に激突。直後には、他の魔物に踏み砕かれていた。

 

あたしは詠唱しつつ、接近しようとする魔物に熱槍を叩き込んで、始末。足下からも来る。

 

でっかい百足が地面を突き破ってこんにちわ、してくるが。

 

出会い頭にあたしが熱槍を叩き込んで、それでおしまい。百足は地面に逃げ込みながら焼け死んでいった。

 

フェデリーカは必死に舞っているが、とても皆への強化が追いつく状態じゃない。

 

魔物が次々仕掛けて来る。

 

ただ、これだけのサイズの魔物だ。

 

無限に来る訳じゃない。

 

そう言い聞かせながら、駆除を続行。

 

上空の敵、掃討完了。クラウディアが水平射撃に移る。頭から尻まで貫かれた鼬が、ばつんという音と共に爆ぜ割れる。

 

レントが、襲いかかってきた巨大蛇を、頭から喉まで、気合一閃斬り下げていた。

 

一刻ほど戦闘して、辺りが血の海になった辺りで、一度魔物の攻撃が止まる。周囲の空気はまだぴりついたままだ。

 

すぐに荷車の物資を確認。

 

負傷者の手当てをする。

 

じっと山の方を見ているクリフォードさん。

 

「クリフォードさん?」

 

「捕らえたぜ。 いる。 多分あれがこの山の主だな」

 

「流石だな。 いつもの勘の冴え、驚かされるぜ」

 

「ありがとうよ。 実力は多分あのフェンリル程じゃない。 ただ手強いのは間違いないぜ」

 

そうか。いずれにしてもターゲットの位置が分かったのは何よりである。

 

かなりの数の魔物を倒したはずだが、まだ奧に行くには早いな。そう判断したあたしは、魔物の死骸の回収と。

 

今日の撤退を皆に指示していた。

 

 

 

翌日。

 

再び仕掛ける。

 

昨日ほどの数では無いが、やはり魔物が次から次に出てくる。この先の山は、かなり緑が深いのだが。

 

全ての植物が異様な形状をしていて。

 

森が深い以上に、何だか闇が深い。

 

前に帰らずの森とも言える遺跡に出向いた事がある。

 

彼処は単純に対人トラップが仕込まれていた森で、故に誰もいないという奇怪な場所だったのだが。

 

此処はそれとは違う。

 

悪意を持って、大量の魔物がエサを待ち受けているという感じだ。

 

また一刻ほど戦闘して、襲い来た魔物をあらかた片付け。小休止をとる。今日は午前中から来ているから、昼食は此処で取ってしまうつもりだ。

 

血の臭いが凄まじい。

 

辺りには、魔物の血が川になるほど流れているが。そんなのは、いつものことだ。肉を食べられそうな魔物は解体する。

 

手際よく吊して皮を剥いでいると、フェデリーカが限界という顔をして物陰に。

 

「魔物に囓られないように気を付けてね!」

 

「は、はいっ!」

 

盛大に吐き戻している様子のフェデリーカ。

 

朝ご飯がもったいないなと思ったけれども、まあ仕方がない。必要分の投資だと考えるしかない。

 

魔物を処理した後、あたしが跳躍して、辺りの地形を見ておく。

 

なるほどね。

 

なんだかうねうねとくねった道だ。

 

こういう道、見覚えがある。

 

「あの、王都近くの遺跡に似た地形があったね」

 

「そういえばそうだな。 あれって多分、フィルフサを防ぐための精一杯の工夫だったんだろうな」

 

「うん。 まあフィルフサがもし出て来ていたら、あんな壁なんか全て物理的に排除されていただろうけれど」

 

「此処はそういえば、人の手が入っているのか?」

 

レントが見回す。

 

しばらく周囲の植物の声を聞くのに専念していたらしいセリさんが、レントに答える。

 

「この辺りは、一度人の手が入っているわね。 恐らくは800から900年ほど前だと思うわ」

 

「そうなると神代に近い時期だな」

 

「ええ……」

 

クリフォードさんも話に乗る。

 

そういえばこの辺り。地形だけではなく、植生もいる生物も色々とおかしいか。人間を狙ってくる魔物以外の、ちいさな生物があまり見当たらない。

 

なんというか、この辺り。

 

フェンリルがいた地点と、似ている気がするのだ。

 

だとすると、神代の人間が噛んでいた場合。

 

何かを隠していたのか。

 

「も、戻りました……」

 

「フェデリーカ、大丈夫? 無理なようだったら、少し休もうか」

 

「いえ、吐いたらすっきりしました」

 

「それよりも、本当にこの奧にあんたの親父さんは行っていたのか?」

 

ボオスがぼやく。

 

フェデリーカは、少し考え込んでから、頷いていた。

 

「此処に足を運んでいるという話だけ過去に聞いています。 何しろ私はまだ幼かったので、この先には行かせて貰えなくて」

 

「余程の腕利きが一緒だったのか、あんたの親父さんが相当に強かったのか」

 

「いえ、父に武勇の逸話は……」

 

「だとすると、どうやって。 此処がこんな有様だったのは、今に限った話ではないだろうに」

 

ボオスの疑念ももっともだ。

 

フェデリーカは困ったようにすんと鼻を鳴らして、分かりませんという。

 

やっぱりこれ、癖らしい。

 

別にまあ、どうでもいい。人の癖は人の数だけあるのだから。

 

レントが、肉の塊を荷車に乗せる。かなり巨大な猪を切り分けた結果だ。なお、しっかり火を通してある。

 

豚や猪の肉を生で食べるのは自殺行為である。

 

「だいたい片付いたな。 一度アトリエに戻って荷物を降ろすか」

 

「そうだね。 フェデリーカも、此処で昼ご飯は無理だろうし」

 

「……」

 

無言で頷くフェデリーカ。

 

別に良い。じきに逞しくなってくれればそれでかまわない。ただでさえパティみたいに野営の経験があるわけでもなさそうなのだし。

 

一度アトリエに戻る。

 

これは攻城戦だ。

 

この先は一本道であり、敵は容易に迎撃を行う事が出来る。魔物が揃って襲ってくるのも、前に経験があるし、今更驚く事もない。

 

とにかく、数を削る。

 

この先にいる魔物がどれだけ強いかは分からないが、サルドニカのためにも削り取っておくのは必須だろう。

 

どう考えても、現状では戦士が足りないからだ。

 

休憩を入れて、それからまた攻め上がる。

 

フェデリーカは残るか確認したが、ついてくると言う。それでいい。最初は誰でも足手まといだ。

 

フェデリーカの支援魔術はかなり強力である。実際戦っていて、かなり力に強化が掛かるのが分かる。

 

これで戦場の血の臭いさえ克服できれば、それで充分に戦力になる。此方としても守れば戦力が倍増するのだから、非常にありがたい戦略級の戦力だ。

 

再び、魔物を蹴散らしながら進み上がる。

 

坂は緩やかだったが、敵の防衛線を押し込む度にどんどん急になっていく。

 

それどころか、何度かU字路を通る事になる。

 

勿論それらの場所では、魔物が待ち伏せていた。激しい戦いを続けて、一進一退。

 

荷車に積んで来た薬が尽きる。

 

爆弾も。

 

仕方がないので、撤退。

 

勿論完全に空になるまでは戦わない。何度かの苛烈な戦闘で、次には尽きると判断したら撤退を開始。

 

戦闘に慣れているから、それくらいは普通にやる。

 

あたしだって、戦闘経験を積んで来ていないのだ。

 

アトリエに戻ると。

 

途中で回収してきた素材をコンテナに詰め込み。肉などは街に持っていって売り払ってしまう。

 

流石に人が入らない場所での戦闘だ。

 

魔物の腹に、人間の部品や遺品が入っている事も減ってきていた。

 

大型の魔物は、採れる肉も多い。

 

それが美味しいかは別として。

 

そして、普通に食べて美味しくなくても。あく抜きをしたり干物にしたりすると、普通に美味しくなったりもする。

 

こういうのは肉を売ると、それで分かったりすることもある。

 

故に、どれだけまずい肉でも、一応は売りに出す。

 

それでお金に換える。

 

クラウディアにこの辺りの商売は任せる。最悪の場合、バレンツに買い取って貰う。

 

同時に、移動時に回収した鉱石や薬草を使って、あたしはどんどん調合をしていく。

 

慣れたものだが。

 

新しい素材を入れて調合すると、新しい発見がその都度ある。

 

まだまだ腕は上がる。

 

それを実感しながら、調合を進めていく。

 

そうやって、数日かけて前線を少しずつ進め。やがて、何度もU字カーブする坂道を抜けていた。

 

そうすると。

 

其処には、不思議な色の高原が拡がっていた。

 

今までも、高原は足を運んだ経験がある。

 

オーリムでも此方の世界でも。

 

この高原は、そこまで高度は高くなく、空気もそれほど薄くは無いが。

 

それにしても、この色はなんだ。

 

木々もそれほど高くは無い。

 

また、此処がどうもこの山の最高地点らしく。下の方には、川が流れているのが見える。池のようになっている場所もあり、それほど深度はないようだが。

 

溜まっている水の色も青緑に近い。

 

其処には多数の結晶体が存在していて、それは青紫だ。

 

不可思議な色合いで、色々と目が痛くなってくる。

 

セリさんが、地面をさわさわしていた。

 

魔術を使っていると言う事は、植物を使って調査しているのか。それとも、植物操作魔術の応用で、土を調べているのか。

 

あたしはひょいと跳躍して、地形を確認する。

 

クリフォードさんは、熱心に地図を起こしていたので。それに色々と話をして。地図を更に完成させる。

 

何度目かの着地で、クリフォードさんが言う。

 

「奧の山が水源だな。 この辺り全域であの変な水が流れているようだが……」

 

「そういえば、この山の途中にも小川があったよな。 水はなんだか飲んじゃいけない雰囲気だったけどよ」

 

「うん。 麓までちろちろ行ってたよね」

 

「多分ですけれど、私の父はその水を使っていたのだと思います。 奥まで行く程の戦闘技量は勿論、護衛に戦士を連れて行くのも難しかったと思いますから……」

 

ただ、その麓まで来ている水はごく少量だった。

 

薄さという意味で、である。

 

多分だが、フェデリーカのお父さんは、その水を煮詰めたりして、濃度を上げていたのだと思う。

 

硝子も魔石も溶かす酸とやらの、である。

 

あたしも少し採集はしていたのだが。

 

調査するには、大量の水を回収しなければいけないと思っていたし。不純物も多すぎる。もっと濃度が高い水の現物が必要になるだろう。

 

「それでどうする。 あの池の辺り、多分溜まっているのは有毒ガスだぞ」

 

クリフォードさんが警告してくる。

 

確かに手をかざして見ていると、異様な形状の魔物が多い。有毒ガスに酸の水。適応しているのは、独自の生態を持っている魔物だろう。

 

あたしは頷く。

 

「分かった、その水の源流を探すまで、池の方は危険だから近寄らないようにしよう」

 

「了。 それでどうするね。 あの辺りから、恐らく水源に行けると思うが」

 

「随分と遠いね……」

 

クラウディアが手をかざす。

 

幸い、この山を魔物は相当に気合いを入れて死守していたようで。魔物が麓にわんさか、という訳では無い。

 

かなり数も減ってきている。

 

何より、坂を駆け上がってあたしたちとやり合うのは愚だと判断したのだろう。小型の魔物は、散って此方を見上げている状態だ。

 

そして此処から降りる道は、それほど坂も複雑じゃあない。

 

逆にそれが故に、この坂を下りて撤退するときは、相当に余裕を持たないと危ないだろう。

 

魔物の追撃を受けた場合、振り切る事が困難だ。

 

「クラウディア、今のお薬と爆弾の在庫は」

 

「七割ちょっとだね」

 

「分かった。 じゃあもう少し進もう。 幸い、門の状態は悪くなかったし、今の時点で攻撃を仕掛けなくても大丈夫だと思う。 こっちの調査に注力して、少しでも状態の改善を図ろう」

 

あたしが方針を決めると、皆がそれに沿って即座に動く。

 

移動しながら、セリさんが言う。

 

「分かって来た事がある」

 

「うん、聞かせて」

 

「水の性質、多分酸じゃない」

 

「!」

 

そうか。

 

確かタオが言っていた。

 

今の時代は、何だか溶かす液体を、みんな酸と呼んでいるが。実際にはそうじゃないものもあるという。

 

例えば動物の胃袋や口の中にある液体は、酸じゃなくてもものを溶かす。

 

それどころか、今「酸」と呼ばれているものどうしを混ぜ合わせると、酸ではなくなる場合もあるという。

 

古い言葉でアルカリと呼んでいる、ものを溶かす成分もあるらしいが。

 

残念ながら、現在ではアルカリを酸と区別できないそうだ。それに必要な技術が失われてしまっているらしい。

 

他にも、あたしも要素の最小を何度か見てきているが。

 

その過程で出た結論は、世の中の最小要素は、複雑極まりない、である。

 

しかもあたしが見ている範囲ですらそれだ。

 

更に小さい世界になってくると、もっと複雑になってくるのは疑いないところである。

 

フェデリーカは話についていけていないようで、困り果てているが。

 

いずれそれも分かれば良い。

 

坂を下る。途中で鼬がまばらに仕掛けて来るが、大した数でも質でもない。蹴散らして先に。

 

途中、足を止める。

 

「クリフォードさん」

 

「おう。 ちょっと皆、止まってくれ。 調べる」

 

「任せろ」

 

レントが大剣を振るって、躍りかかってきた鼬を拝み討ちに叩き潰す。あたしも、飛びかかってきた鼬を蹴り砕きながら、調査の時間を稼ぐ。ボオスが剣を振るって、次々に鼬を斬る。

 

基礎がしっかりしていたからだろう。

 

ボオスの剣術は、かなり安定してきている。鼬に剣をとめられても、即座にサブウェポンの短剣を振るって変幻自在に攻める。大物になるとそれでもとめられない場合もあるが、それはあたし達が支援すれば良い。

 

数体の鼬を仕留めた後、フェデリーカと一緒に死体を捌く。吊して内臓を出していると、クリフォードさんが。

 

道路に見えていた場所について、解析を終えたらしい。

 

「これはロマンだ。 分かったぜ」

 

「お願いします」

 

「これは道だった名残だな。 ここだけだと何ともいえないが、これは900年前くらいの道の跡だ。 つまり此処は、遺跡の一部の可能性が高い」

 

「ただのささくれた地面に見えるのに、そんな事も分かるんですね」

 

フェデリーカが青ざめながらも、そういう。

 

鼬の死骸を吊して血抜きをして、内臓をてきぱきとより分けていると。やはり視線は逸らしたくなるらしい。

 

皮を剥ぐコツを教えて、一気にずるりと皮を剥ぎ取る。

 

そして、皮をなめす。

 

皮の裏側についている血や肉、脂肪なんかを丁寧に処理しないと、皮が傷むのが早くなるのだ。

 

この皮のなめし方は、魔物によって違う。

 

だいたい試行錯誤をしながらなめすのだが。鼬はクーケン島近くにもたくさんいたから、もう慣れたものだ。

 

ちなみにやり方は、アガーテ姉さんに教わった。

 

「こ、こうですよね……」

 

「いいよフェデリーカ。 これだったら、もう少し怖がらなくなってきたら一人でやれそうだね」

 

「はい……」

 

泣きそうになっていて可愛いなもう。

 

パティは真面目で向上心が高くて、どんどん教えて腕を上げて貰いたくなったのだが。

 

フェデリーカは違う方向で可愛い。

 

こう、思わず舌なめずりしたくなるような。

 

変な門が開きそうと言うか。

 

まあ、それはそれだ。

 

やり過ぎるとダメになるから、少しずつ慣れて貰う。あたしも自分の嗜好で、相手を潰すつもりは無い。

 

魔物の処理を終えると、道路らしい残骸の位置も調べながら、坂を下りる。

 

やがて平野に出ると。池の方を避けながら、もう少し道を進んでいく。

 

この辺りに来ると、エレメンタルも多いな。

 

精霊王と違って話が通じる相手ではない。遭遇したら殺るか殺られるかだが。それでも、仕方がない。

 

片付けながら、奧へ。

 

また上り坂になりはじめた頃には。

 

クリフォードさんが探知していた、恐らく主と思われる魔物の気配が、近付いて来ていた。

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