暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

42 / 200



神代の使いとの遭遇で、その性根を見せつけられたライザ。

今までにない全力でブチ切れますが。

それはそれとして、やるべき事はやらなければなりません。

大人ですので。


1、学士登場

一度アトリエに戻り、タオが分厚いメモを調べ始める。多分あの悪魔が言っていた言葉を、調べているのだろう。

 

ちょっと集中させて欲しいと言う事だったので、回収出来た本などはクリフォードさんに回収して貰う。

 

その間、ワイバーンの肉などの分別を行い。

 

クーケン島に持っていっていいものは、荷車に積み直した。それに、リルバルトさんだったっけ。

 

王都でタオが認めている珍しい学者が、タオに会いたがっている。

 

それを連れてきた方が良いだろう。

 

あの悪魔の言動が気になる。

 

あたしとボオス、それにクラウディアでクーケン島に残るが。セリさんに、警戒を頼む事にする。

 

「最悪の場合は即座にエアドロップで逃げてください」

 

「分かったわ。 それにしてもあの翼持つ魔物……」

 

「ごめんなさい。 本当に、古代クリント王国のその更に前から、この世界の人間はどうしようもない程に腐敗していたみたいですね」

 

「それが分かっているのならいいわ。 それに貴方は、自分の意思でその腐敗に拒否を突きつけた。 だったら、貴方は私達の同胞よ。 オーリムに戻った時に、私がオーレン族の長老と便宜を図るわ」

 

そうか、有り難い。

 

セリさんがアトリエの周囲にもこもことよく分からない植物を生やして、防御壁を作り始めている。

 

一種の結界というわけだ。

 

ともかく、一度クーケン島に戻る。ワイバーンに襲われているとは思わないが。あんな石版は、木っ端みじんにするしかない。蹴り砕いたことに、あたしはなんの後悔も覚えていなかった。

 

戻る途中に、ボオスが聞いてくる。

 

「それにしても、景気よく蹴り砕いていたな」

 

「何の未練もないし」

 

「そうだろうな……」

 

「ライザはそれでいいんだよ。 ね」

 

嬉しそうなクラウディア。

 

まあ、クラウディアが嬉しそうなら何よりだ。

 

クーケン島に戻るまで、大した問題は起こらない。聖堂を途中でボオスが一瞥したが。行くかと聞いたが、首を横に振られた。

 

まあ、それはそれでいいか。

 

「そういえばボオス、お金貯めてる?」

 

「なんだ、どうしてそう思う」

 

「いや、普段よりも随分と節約しているように見えるからさ。 服とか小物とか」

 

「ちっ。 腐っても幼なじみか。 ちょっと金が必要でな。 ただ気を遣ったりはするなよ。 これは俺が自分で貯めないといけない金だ」

 

そっか。

 

或いはだけれども、ブルネン家の跡取りとして何かするのかも知れない。

 

まあ、それはどうでもいい。

 

ボオスがやる事は、ボオスがやる事であって。

 

あたしとは関係がないからだ。

 

他人の事は尊重するのが基本。

 

あたしとしても、それに対して異論は無い。

 

クーケン島に着くと、まずは護り手の詰め所に。ワイバーン肉を分けると、アガーテ姉さんは喜んでくれた。

 

「これは助かる。 すぐに島の共有倉庫にこの分をしまえ。 これはブルネン家に運んで……」

 

「後はお願いします」

 

「分かっている。 丁度お前の家のはす向かいの新妻が、そろそろ子供が出来てもおかしくない。 他にも数名、今年の冬場で子供が出来そうでな。 ワイバーン肉の貯蓄があるのは、とても有り難い」

 

エンシェントドラゴンの西さんと話した事もある。

 

だからあたしも、ワイバーンを殺すのはちょっと気が引ける。

 

積極的に狩りに行くのではなく。

 

身を守るために必要なだけ殺す事にしてはいるが。

 

それでも、ちょっとほろ苦い思いをしてしまう。

 

他にもバレンツに寄って、幾らかのワイバーンの素材を納品しておく。竜の鱗はそれだけで相当な金銭的価値がある。

 

当面の分のインゴットやゼッテルなどは既に納品済なので、しばらくは納品しなくてもいいが。

 

こういうものを納入しておけば、それだけ恩を売る事も出来る。

 

クラウディアが、ぱぱっと計算してお金に換えてくれる。相当な価値がついた。ボオスには、その場で分け前を渡しておく。

 

あたしにはそれほどお金に興味が無い事もあって。

 

そのまま、人数で等分だ。

 

それを見て、ボオスが何か言いたそうにしたけれど。

 

とにかく、受け取らせる。

 

ボオスは嘆息すると、それで受け取っていた。

 

後は、例の学者先生だ。

 

宿にいると言う事で、様子を見に行く。

 

クーケン島みたいな僻地でも、一応客は来るので、宿は幾つかある。特に最近は旧市街が復旧してきているので、沈んでいた辺りに幾つも建物が建てられて。其処が宿になったりしているのだが。

 

その学者先生は、物価が違う王都にいるからか。

 

結構豪華な宿に泊まっていた。

 

様子を見に行くと、小柄で気むずかしそうな老翁だ。髭を胸の辺りまで伸ばしている。頭は半分禿げているが、六十は超えているだろう。それも仕方が無い事だ。

 

露骨に警戒心剥き出しの視線を向けられたので、タオが忙しいので迎えに来たというと。

 

ふんと鼻を鳴らされる。

 

「タオが女を寄越してきたあ? こっちでもあれはもてるのか」

 

「違います」

 

「学士殿、此奴はタオが話していただろう豪傑だ。 タオは此奴の子分みたいなもんだ」

 

「仲間です」

 

胡散臭そうに見られたが。

 

まあいいとか言われた。

 

「リルバルトだ。 タオは何処にいる」

 

「出現した群島で、今調査をしている所です」

 

「わしを迎えに来られないほど忙しいというのか、あの若造が。 博士になったからといって、調子に乗っておらんか」

 

「あーおほんおほん。 さっきワイバーンを仕留めてきたところでして。 それの解析もしていましてね」

 

黙り込む学士殿。

 

あたしが王都に出向いて、ワイバーンを倒した時。数年ぶりの快挙だと言われていたのを思い出す。

 

王都の戦力なんてそんなものなのだ。

 

この学士どのも、その意味は理解したのだろう。

 

ついてくるように促す。

 

ボオスの事は何処かで見た事があったのか。以降は、あたしから視線を外して、ボオスにずっと絡んでいた。

 

「タオの奴、王都でももてていたが、こういう田舎でもそうなのか」

 

「いえ、こっちにいたころはさっぱりでしたね」

 

「しかし周りにたくさん……いやそうでもないのか」

 

「どういう意味ですかね」

 

あたしが笑顔を向けると、リルバルト学士殿は黙り込む。

 

明らかな怯えが顔にあったので、まあ怯えさせるのもまずいかと思って。威圧するのはやめておいた。

 

そのまま、アトリエに。

 

途中で学士どのは、何度も驚きの声を上げていた。

 

荷車には興味津々。

 

車軸もなんども見つめて、凄い凄いと跳び上がって喜んでいたし。さわさわしては、何度も頷いて勝手に感心していた。

 

まあ、褒められれば悪い気分はしないけれども。

 

それだけじゃあない。

 

エアドロップを膨らませると、奇声を上げて跳び上がった。

 

「こ、これは。 タオが言っていた豪傑とは、貴様の事だったのか!」

 

「はあ、そう言っていたんですか」

 

「当代の豪傑だとな。 神代の技術のようだ。 或いはそれを凌いでいるのではあるまいか」

 

「ええと、リルバルト学士殿は、確か魔物を研究しているんですよね」

 

エアドロップに乗って貰うと、左様と胸を張る小柄な老人。

 

そして、唾を飛ばしながらまくし立てる。

 

「魔物を知るには、神代を知らなければならん。 面倒だから歴史に関する博士号はとっておらんが、神代については相応に知識はある。 様々な不思議の道具が当たり前のように飛び交い、空に都市まで浮かんでいた時代。 学者であれば、興味を刺激されないだろうか、いやされるに決まっている!」

 

いきなり繰り出される反語に、ボオスが度肝を抜かれている。

 

タオがこれでは色々と苦労していただろうなと思った。

 

側を通っていく巨大なサメに、目をきらっきら輝かせるリルバルト先生。クラウディアが音魔術を使って音を消して、魔物を刺激しないようにしているのに。

 

この人、いつか研究中に魔物のエサになるんじゃないのか。

 

でもそうなったら本望そうだなとさえ思う。

 

更に言うと、この人がタオの客だとして。

 

この人の護衛をすることにでもなったら、苦労どころじゃない。ただ、あたしとしても、この辺りは念入りに調査はしておきたいと思ってもいたのだ。

 

仕方が無い。

 

ごねたとしても、護衛はしておくか。

 

フェデリーカの技量を、少しでも早く上げなければならない。それを考えると、困難な護衛ミッションは、むしろ望むところだと言える。

 

アトリエに到着。

 

アトリエを守っている植物の結界を見て、ぴょんぴょん飛び跳ねて大喜びするリルバルト学士。

 

頭を抑えてげんなりするボオス。

 

クラウディアは珍獣を見る目でリルバルト学士を見ている。というか、現在クラウディアは明確な美人であり、あたしみたいなルックスが平凡な女とは立ち位置がかなり違う。そんなクラウディアに見向きもしないというので、それはそれでこの人も筋金入りの変人なのだろう。

 

まあ異性関係のトラブルを起こさないのなら、それでいいが。

 

「タオ。 先生連れてきたよ」

 

「えっ」

 

「おお、タオではないか!」

 

「は、はあ。 お久しぶりです、リルバルト先生」

 

タオが手帳をしまうと、丁寧に礼をする。

 

同じ博士であっても、相手はベテラン中のベテラン。それにこの人は、あたしが残留思念やら遺跡の状況証拠、何より魔物を解体して中身を見て辿りついた、一部の魔物は神代に作られた生物兵器ではないのかという結論に。地力で辿りついた人物だ。

 

学者としては、この人の方がある程度格上であるのだろう。

 

「この建物はお前が建てさせたのか」

 

「いえ、ライザが作りました」

 

「あれはそんなに凄いのか。 そういえば、王都が一時期騒がしかったが……」

 

「去年のことだったら、台風の目になっていたのはライザですよ。 王都にあった壊れた機械類もあらかた直してくれました」

 

なんとと、オーバーリアクションをする先生。

 

見ていて面白くはある。

 

ただ、出来れば側にいて欲しくない人ではあるかなとも、あたしはちょっと素直にそう感じてもいた。

 

ともかく、タオが今かなり面倒な翻訳をしている事を説明すると、リルバルト学士殿は、咳払いした。

 

「この群島の調査をしにきた。 わしとしても、いつまで体がしっかり動くか分からないからな。 明確に神代のものと確信できる場所にいる魔物を、研究しておきたいんだ」

 

「しかし、いまちょっと此処は危険でして……」

 

「神代の遺跡が危険なのは当然だろう」

 

ボオスが下手に出てちょっと大人しくしていろと釘を刺そうとするが。釘は跳ね返されてしまった。

 

手に負えないと困り果てているボオス。

 

こんなに困り果てている様子のボオスは滅多に見ないので、ちょっと色々と新鮮である。

 

フェデリーカをリルバルト先生が見る。

 

「お前さんは小間使いか。 茶でもださんか」

 

「えっ!」

 

「先生、その人はサルドニカのお偉いさんです」

 

「なんと、サルドニカにも愛人を作ったのかお前は」

 

タオが真っ青になり。

 

フェデリーカが絶句して固まる。

 

この人の脳内ではタオはモテモテで、此処にいる女性の何人かは愛人とでもいうのだろうか。

 

タオが珍しく本気で怒る。

 

というか、怒っていてもタオは声を荒げたりはしていないが。

 

「僕にそんなものはいません! というか婚約者がいて、婚約中なので、そういう発言は控えてください!」

 

「なんと! こんなに周りが女だらけで、婚約者もいるのか!」

 

「婚約者は今王都です!」

 

「なんだ。 よく分からん集団だのう。 とりあえず、分かった分かった。 茶は自分で淹れて飲むとする。 それで、魔物の調査だが……」

 

どうしようと、視線を向けてくるタオ。

 

これは、多分魔物をしっかり調査しないと、この人は帰ってくれそうにないな。

 

レントがつまみ出してこようかと視線を向けてくるが。

 

この人は王都でそれなりのキャリアがある学士だ。

 

タオがまだ新米の博士であることを考えると、無碍にするのは色々とまずいだろう。今はもうみんな大人で、それぞれ自分の人生を送っている。皆、それを手伝うのが筋というものなのだ。

 

クリフォードさんが、学士どのの所に。

 

そして、座り込むと、手帳を見せた。

 

「まあまあ。 俺が今まで集めて来た魔物の資料でもみるかね、学士殿」

 

「なんじゃそなたは。 おお……?」

 

「これでも各地の遺跡を廻って来たトレジャーハンターでな。 そこらの学士よりも、現物に当たっていると思うぜ」

 

「み、見せてくれ!」

 

クリフォードさんナイス。

 

さっそくクリフォードさんの手帳にかぶりついて、ああでもないこうでもないと話し始める学士どの。

 

クリフォードさんが、今のうちに対応を決めろと視線を送ってくるので、頷く。

 

すぐに皆で外に出て、対応について話をする。

 

「強烈なお爺さんだね。 本当に子供みたいだわ」

 

「しかもタチが悪いクソガキだ。 ただ、そういう精神の持ち主だから、学士として大成しているんだろうな」

 

疲れ果てた様子のボオス。

 

まあ、気持ちはよう分かる。

 

あたしも咳払いすると、タオに提案。

 

「あっちの島。 ちょっとした森みたいになってるでしょ」

 

「そういえば、魔物がもう住み着いてるみたいだね。 あの森も多分作り物だと思うし、調査はしておいた方が良さそうだね」

 

「そういうこと。 彼処を調査して、それで満足して帰ってもらおう」

 

「私もまだ守られる側なので何とも言えないんですが、大丈夫でしょうか……」

 

不安そうなフェデリーカ。

 

セリさんが、無慈悲な提案をする。

 

「最悪の場合、私が睡眠効果のある花粉を浴びせて眠らせるから、それで逃げ回られたりして邪魔にはならないわよ」

 

「そ、そうですか……」

 

「頼みますねセリさん」

 

「まあ、あの先生は逃げ回ったりはしないと思うよ。 前に護衛したときも、どんな大物が出ても一歩も引かなかったから。 臆病者ではないんだよ。 間違いなく」

 

まあ、それはそうなのかも知れないが。

 

ともかく、一度アトリエに戻る。

 

クリフォードさんと意気投合して、色んな魔物についての話をしている学士どの。互いにメモを披露して、それで情報を交換している。

 

タオの話によると、悪魔や、あの石版のあった島から回収してきた本の解析に半日くらいかかるそうである。

 

あたしはあたしで、新しく作った鍵をもう少し色々と試験しておきたい。

 

ならば、明日までリルバルト学士殿をどうにか大人しくさせておかないといけないだろうか。

 

まあいい。

 

クソガキみたいな精神の持ち主ではあるけれども。

 

学士としては立派なはずだ。

 

タオの話によると、解析を完了させた魔物も何種類かいるとかで。危険な特質が先に図鑑に記されたそうである。

 

それだけでも、かなり価値があることなのだとか。

 

まあ確かに、本が貴重な今という問題はあるが。

 

先に誰かが調べておいてくれれば、後続の人間の手間が減るのもまた事実ではある。そういう意味では、学士として人類に貢献してくれていると言えた。

 

「それで、問題は学士殿が帰ってくれるか、だけれど」

 

「それは多分問題なし。 というのも、あの人って野外研究をある程度すると、戻ってしばらくは部屋に缶詰でそれをまとめるんだ。 あの島一つ調べて見せれば、それで充分満足するだろうし。 最悪でももう二三個島を調べれば、それで充分だと思うよ」

 

「……問題は大物がいるかも知れないって事だね」

 

「それについては、もう僕達で守るしかない」

 

まあ、そうなるな。

 

とりあえず、方針は決まった。

 

フェデリーカが、先生に茶を淹れようかと提案してくるが。クラウディアが、笑顔で私がやるから大丈夫、と応じていた。

 

まあ、それでいいだろう。

 

相手が誰だろうと平気な顔をしている点は、あの先生は大物だ。

 

それについては、学者にとっては、大事な素質だろう。

 

其処は評価できる。

 

あたしもそう思った。

 

 

 

朝、ミーティングをする。タオが、解析した本について説明してくれる。なお、リルバルト学士どのは、老人だが朝はぐっすり。まあいびきが五月蠅くないし、それで良いだろう。

 

「どの本も後代のものだね。 古代クリント王国時代のものらしいのもあったよ」

 

「やはり遺跡についてのものか」

 

「うん。 中には……あの石版を大絶賛しているのもあった。 この手記、600年ほど前の……古代クリント王国時代のものだけれど。 東の地の蛮族に、これで魔物をけしかけて掃除できるとか書いてる。 酷い内容だよ」

 

「そうなると、今東の地で魔物が酷い発生をしているのは……」

 

可能性はある。

 

この群島に魅せられた錬金術師も、単独で来た訳ではないだろう。

 

国で立場がある存在だった可能性もあるし。そうだったら、恐らくは成果を報告していたかも知れない。

 

何よりだ。

 

古城で、あたし達は見ている。

 

ドラゴンをフィルフサにけしかける石碑をだ。

 

あれの元となる技術が。あたしが蹴り砕いた石板だったのではあるまいか。

 

「いずれにしても、あれは破壊する他無かった。 それにあの悪魔野郎の言葉も納得がいったぜ」

 

レントが頷く。

 

あたしもそれには同意見だ。

 

「続けるよ。 どうも古代クリント王国の人間にとって、此処は宝の山に見えていたらしいんだ。 かなりの規模のアーミーを動員して、徹底的に調べていったようだね。 ただもとのものを調べても、回収は絶対にしないように厳命していたらしい。

 

「それは、どうしてでしょうか」

 

「神格化していたからだよ。 ちょっと翻訳するのが難しくてなんとも言えないんだけれども、神とか、崇拝すべきものとか呼んで、これを作った神代の錬金術師達を絶賛している。 いや、絶賛どころか、狂信が近いだろうね」

 

「反吐が出る」

 

あたしが吐き捨てると。

 

同感だと、クリフォードさんがぼやく。

 

ロマンのかけらも無いと。

 

「僕は王都であれからも色々調べたんだ。 去年のこともあったからね。 それで分かってきた事が幾つもある。 古代クリント王国でも、やはり欲を持つ人間は優れているという風潮があったらしいんだ。 優れている人間は錬金術師で。 だから錬金術師は優れていて、強欲であっていいとも」

 

「なんだか、子供が考えた三段論法みたいないい加減さだな」

 

「その通りなんだけれども、当時は錬金術師を頂点とする社会階級が絶対になっていて、誰もがそれで「納得」してしまっていた。 だから錬金術師は、それがおかしいとも思わなかったんだろうね。 そんな錬金術師達が神として崇拝したのが神代なのだから、色々と狂っていたんだよ」

 

フィルフサを従えられると思ったのも。

 

それで更に欲を充足させられると思ったのも。

 

欲を充足させるために、オーリムに住む人達を騙して、皆殺しに良いと思ったのも。

 

そのくだらないエゴのせいだ。

 

強い者は何をしてもいい、か。

 

だったらお前達より強いフィルフサに殺されて、なんの悔いもないんだな。

 

そう面罵してやりたい。

 

だが、もう死んだ相手だ。

 

今更、面罵もできないか。

 

「いずれにしても、独善的で何の価値もない手記だね」

 

「うん。 技術的な内容がぽつりぽつりとあったから、それだけはメモしておいた。 ライザ、後で何かの役に立てて」

 

「分かった。 心得た」

 

「さて、問題はそうなると学士先生だな」

 

レントがそう言うと、ボオスやフェデリーカがげんなりした。

 

いい夢でも見ているのか、学士先生がなにか呻いていたが。あれは明らかにまだ眠っている。

 

「出来るだけ、早くすませよう」

 

「そうだな……」

 

ボオスがそうぼやく。

 

フィーが、懐から出て来て、周囲を飛び始めたのは、その時だった。

 

「ん、どうしたフィー」

 

「フィー! フィーフィー!」

 

「何かあると見て良さそうだね」

 

クリフォードさんが声を掛けると、明らかに昂奮している様子のフィー。あたし達の言葉は理解出来ているのだ。

 

だとすれば。

 

恐らくは、今日調査しに行く島に、何かある。

 

それは確定と判断して良さそうだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。