暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
原作のイベントを拾っています。
こんな所で何やってる死にたいのかというような感じで依頼を受けるんですが。
本当に優しい世界でなかったらとっくに魔物のエサですね。
しかもこの人のいる島、髑髏マークの大型エネミーまでいるんですわ……
島の大きさは、ほぼクーケン島と同じだな。
周囲を回りながら、あたしはそう判断する。
ミーティングが終わってから起きだしてきたリルバルト先生を連れて、その密林に見える島に来ると。
先生は案の場、大喜び。
島に降りると、跳び上がっていた。
「素晴らしい!」
「此処はまだ足を踏み入れていないです。 先に進まないでくださいね学士殿」
「分かっておる! 見ろ、この明らかに不自然過ぎる森! どうみても自然のものではない! 神代の技術は、長い間潮に晒されても平気な森ににたオブジェクトを作れるほどのものだったのだな!」
なるほど、分析は確かだ。
早速サンプルを回収して、懐に入れ始める先生。
それはそうとして。
なるほど、フィーが警戒するわけだ。周囲に気配、多数。既にあたしは、戦闘態勢に入っていた。
「先生、少し下がって」
「何じゃタオ。 もう少しこの土ににたものをだな」
「魔物です。 それも、もう囲んできています」
「おおっ! そうかそうか!」
大喜びである。
急いでサンプルの土をかき集めると、言われた通りに戻……らないリルバルト学士殿。それどころか、目をきらっきらさせて辺りを見回し始める始末である。
レントが呆れて手を伸ばして、ひょいと皆の中に戻す。
「危ないからさがってろ。 流石に守りきれんぞ」
「なんじゃでっかいの。 わしは魔物に殺される事なんぞ、怖れてはおらんぞ」
「それは大したもんだな。 だが、殺されると困るんでな」
来た。
辺りの土が、一斉に盛り上がる。同時に地面を突き破って現れたのは、これはなんだ。
最初は蚯蚓かと思ったが、どうも様子が変だ。太さだけでも二抱えもあるそれが、地面から出てくると。先端部分をあたし達に向ける。
セリさんが、地面に手を突くと、覇王樹を大量に展開する。
直後。
それらが、炎上していた。
それも爆発的に、である。
蚯蚓らしいのが、一斉に覇王樹をブチ抜いて襲いかかってくる。
これは、此奴らの魔術。
いや、此奴らがぜんぶ一つの個体の可能性もある。
さっそく皆が迎撃を開始。
「蚯蚓の先端がこっちを向いたら、魔力が収束した! 蚯蚓の懐に入り込んで! フェデリーカ、舞い!」
「はいっ!」
フェデリーカはまだ接近戦は無理だ。
そう判断しているので、少し下がって貰う。あたしは前に出ると、こっちを向こうとした蚯蚓の半ばを蹴り砕く。
この感触。
やっぱり様子がおかしいな。
肉を蹴った感じがしない。多分中身が普通じゃない。ただ、蹴り砕いてダメージを与えてやった。
鋭い悲鳴らしい音を立てる蚯蚓。
レントに斬り伏せられ、クリフォードさんにブーメランで薙がれ。クラウディアの矢を受け。タオやボオスに切り裂かれて。
セリさんが。更に地面に魔力を流して、植物の根を一斉に張り巡らせる。
蚯蚓を根から切るつもりだろう。
それで、悲鳴を上げたのだ。
ダメージを受けた蚯蚓がさがる。
だが、同時に地面が小山のように盛り上がり、正体を見せる。
それは、鳥のように見えた。
走鳥に姿が似ているが、目が存在しておらず、全身からさっきの蚯蚓を生やしている。あたしの背丈の六倍、いや八倍はあるか。それが、棘だらけの口の中を見せて、とんでもない雄叫びを上げる。
「これが化け物の正体かよ」
「みんな、さがって!」
あたしがまずは爆弾を投擲。
ローゼフラムを二つ、時間差で炸裂させる。
灼熱に張り倒されて、巨大な鳥のようななんだかよく分からない魔物が飛びさがる。蚯蚓……いや触手も使っての、機敏な動き。
更に、触手をこっちに逃げながらも向けてくる。
セリさんがとっさに覇王樹を展開。
覇王樹が爆発炎上。
巨大な太い足で、鳥が走り始める。触手はその間もこっちを向き、恐らく熱魔術と思われるものを投射してくる。
その間も、リルバルト学士殿は大喜びで、目をきらっきら輝かせて、ひたすらに素晴らしいと叫んでいる。
そっか。素晴らしいか。
クラウディアが大量の矢を浴びせるが、動きがとにかく速い。
だが、クリフォードさんが、高く飛ぶと。
ブーメランを全力で投擲。
それは鳥ではなく、地面につきたった。そして、巨大鳥は、高速で走り回っていたのが災いし。
それに凄まじい勢いで直撃し。
横転したのである。
あたしがタイミングを合わせて、レヘルンを投擲。三つ束ねた奴だ。炸裂。氷山に包まれる鳥に、今度はプラジグを三つ束ねて投擲。
これも炸裂して、文字通り人工の落雷が、鳥の全身を貫いていた。
触手を振るって、無理矢理立ち上がる鳥。
其処に剽悍に躍りかかったタオとボオスが、数本の触手を根っこから無理矢理に斬り伏せ。二人を追い払おうとした鳥の脳天に、レントが渾身の一撃を叩き込む。
それでも鳥は、全身から熱魔術を放出。三人を吹っ飛ばす。辺りが一気にあの去年旅した砂漠を思い出すほどの暑さになるが。
クラウディアの放った矢が、鳥の胸を直撃。
揺らいだ所を。
あたしが踏み込んで、熱槍一万を束ね、総力で投擲していた。
絶叫する鳥。
シールドが出来る。触手も残っているのを束ねて、防ごうとする。だが、それらを熱槍は無慈悲に貫通。
一瞬、世界から音が消え。
そして、炸裂していた。
内側から焼かれた鳥の魔物は、流石にひとたまりもなかった。
死骸を調べて、中身を回収する。やはりだ。この魔物、走鳥をベースに、複数の魔物を無理矢理継ぎ合わせている。
肉もこれは食べない方が良いだろう。
どんな毒があるかしれたものではない。
それにだ。
サルドニカの方で見た、あのトレントみたいな魔物。
アレみたいに、体内に金属の部品が埋め込まれている。これは、動くだけでも全身が痛かったのではあるまいか。
リルバルト学士殿は死体を解体する様子を、目をきらっきらさせてメモでとり続けている。
もう言葉すら発しないほどに昂奮して、感動しているようだった。
「肉は焼却処分で良いんだな」
「うん。 この魔物、この間のと同じだよ多分。 他の島にも、こういうのが潜んでいても不思議じゃないね」
「だけれど、どうしてなんだろうな。 そもそもあの石版も……」
「しっ」
レントに、あたしは口を閉じるように促す。
リルバルト学士殿は、知能が劣悪な訳じゃないのだ。今話している事も、聞いていてもおかしくは無い。
肉をそぎ落として、焼き尽くしておく。
その後は骨を調べるが、彼方此方に骨格を補強するためだろうか。金属が仕込まれているのが分かった。
しかもかなり高品質の金属だ。
剥がして集めておく。後で溶かして、成分を分析するのだ。
内臓についても、これは。
恐らくだが、魔力を収束するための器官だ。魔物も魔術を使うのは当たり前の世界なのだが。
それでもこれは、ちょっと大きすぎる。
かなり複雑な構造をしている。タオが構造をメモに取っていた。
「見た事がない構造だよこれ」
「まったくだ。 今までどんな遺跡で見た大型よりも内部がユニークな構造をしておる!」
リルバルト学士殿も、メモを取っている。
この目の輝きっぷり。
宝石を前にしたクラウディアより凄いな。
そうあたしも思う。
周囲の警戒をしているクラウディアが、大丈夫とハンドサインを送ってくる。まだ此奴の同種がいてもおかしくは無いからだ。
足も調べる。
足は特に金属の比率が多く、骨が殆ど金属に置き換わっていた。
それだけじゃない。
頭は半分吹っ飛ばしてしまったのだが。
その内部も、かなり金属部品が入り込んでいた。
「これは、魔物をどういう風に弄ったんだろう……」
「お前でも見当がつかないのか」
「うん……」
ボオスに言われて、そう返す。
そもそもだ。この魔物をあたしが作るとして。どうやったら良いのかが、ちょっと分からないのである。
生物として、根本から弄るのか。
しかし、この金属を埋め込むのは。
魔物を切り刻んで、金属を埋め込んで、それで元に戻すのか。
いや、まて。
そもそもこの魔物。
最初から、一体だったのか。
蚯蚓の魔物はそれはそれで、別の存在だったのではあるまいか。
だとしたら、これは生物兵器として作られたときに、多数の魔物を組み合わせたのかも知れない。
そうとすら、あたしは思う。
もう色々と、人倫云々以前の問題だ。これをやった奴は、完全に頭が狂っていたとしかいえない。
無言で死体を調べて行き。
金属部品は全て回収して、後は燃やす。内臓などにも使えそうなものはなく。羽根などもそれほど綺麗でも魔力が篭もっているわけでもない。
蚯蚓の方も調べたが、これは何だか光を収束させるような器官がついていた。
まさか。これ。
さっき燃やされた覇王樹を調べて見る。
やはりだ。
とんでもない高熱で、焼けている所とそうでない所の差が激しい。
あたしも熱魔術を使うから分かるが。
これは細い線のように超高熱を収束させて、一瞬で焼き払ったのだ。覇王樹が間になければ、あたし達も即死だっただろう。
死体の処理を終えた後、島を調べる。
この島は、なんだ。どうしてこんな生物兵器を、しかも土の中に配置していた。クリフォードさんとタオが散って、彼方此方を調べて行く。
魔物の気配があるかも知れないから、クラウディアはずっと音魔術を全開状態である。その間は、ひたすらメモを取り続けているリルバルト学士殿。あたしは無言で、どこかに行かないように見張りだけしていた。
それだけじゃない。
フェデリーカがかなり参っている様子だったので、ちょっと先に休んでいて貰う。今のと同等の魔物がいつ出ても不思議ではないのだ。
「はいこれ栄養剤」
「ありがとうございます。 ライザさん、健脚でタフですね……」
「またそんなこと言ってるね」
「私も、彼方此方に交易に出ていたと思ったんですが」
フェデリーカが苦笑い。そして薬を飲むと真顔で無言になって。それでも吐き戻さないように努力していた。
今の話が本当だとすると。
ギルド長達は邪魔なフェデリーカを彼方此方にやって、それで自分達の権力拡充を目論んでいた可能性も高い。
まあアンナさん達がそうさせないように、裏で動いていたのは確定なのだろう。
それに、だ。
今はもう、ギルド長達はすっかり静かになった。そう悪さもしないだろう。
タオが来る。
急いで其方に向かうと、石碑だ。
ただこの石碑、見た所普通と違う。魔物制御用のものでは無さそうである。
「タオ、解読出来る?」
「いや、専門用語だらけだ。 見た事もない単語しかない。 それも……今では恐らく、失伝した意味の言葉なんだと思う。 ちょっとこれは、触ると何が起きるか分からないだろうね」
「そうか。 場合によっては蹴り砕こうと思ったんだけど」
「止めた方が良いね。 この群島はそもそも巨大な力で浮上して、それで何かの目的があって此処に留まってる。 下手な事をすると、爆発するかも知れない」
それも、この辺りが綺麗に消し飛ぶほどの爆発が起きるかも知れないと、タオは言う。
そうか。
だとしたら、今やる事は。この石碑を砕く事ではないな。
他の場所も調査して、探査しておく。
特にこれと言って珍しいものはない。木に見せたレプリカ。草に見せたレプリカ。それらが点々としている。
見栄えだけは美しいが、虫も鳥もいない。
鳥も此処に来るようだが、すぐに様子がおかしいことを察して飛び去ってしまうようだ。土も、これは作物が出来るような土じゃない。
一度、皆で集まる。
クリフォードさんが、挙手して。最初に話し始めた。
「この島を丁寧に調べて確信できたぜ。 この群島、全ての島の環境やら構造やらを、意図的に変えていやがる」
「そうね……確かに自然というものに敬意を払わず、自分達で好き勝手に作ったように感じるわ」
「神代の連中は何を考えていたのか。 それが問題だね」
一応、つれて歩いていたリルバルト学士殿を見る。
こっちの会話には興味が無い様子で、焼却処分した神代の魔物の死骸のスケッチに、ああでもないこうでもないと注釈をつけているようだった。
ちょっとだけ見たが、絵は抜群に上手い。
絵師でも食っていけるレベルである。
才能がある人間であるのは間違いない。
ただ、あたしもそうなのだが。
才能があると言う事は、偏っていると言う事だ。
リルバルト学士殿は、間違いなく才能が。それも絵だけではなく、学者としての緻密な頭脳など、複数の才能がある。
だが、それが故に。
問題が大きい性格。
危機に対する行動のちぐはぐさなど。
偏りもそれだけ大きいのだろう。
「とりあえず、学士殿にはもう帰ってもらおう。 これだけ調べられれば、多分充分だろうと思うし」
「そうだね。 僕からも説得する。 ただ、基本的にそれほど心配はしなくても大丈夫だと思う」
「うん?」
「今、ああやって念入りに調査しているでしょ。 大きな収穫があると、リルバルト先生は夢中になって研究を始めて、当面は自分の研究室から出てこないんだ。 今回も、スキップしながら帰って研究を始めると思うよ」
苦笑い。
そっか、スキップしながら帰るか。
だが、タオはこう言うとき、揶揄している様子はない。
それもまた、あの人の良さなのだろうから。確かに、研究に政治闘争を持ち込んで。あからさまに間違っているような理屈を無理に通してしまうような学者よりも、ずっとましかも知れない。
ともかく、リルバルト先生を連れて、アトリエに戻る。
他の島も調査しておきたいが、まずは先生を帰らせる所からだ。
殆ど何も目に入っていないようだが、王都に戻る手配をするというと、有難うと答えてくれた。
一応、聞こえてはいるらしかった。
クーケン島につれて戻り。バレンツで護衛などの手配をしている間も、学士殿はずっとああでもないこうでもないと呟きながら、メモに注釈を入れている。
船は幸い今停泊しているので。
後は帰ってもらうだけだが。
手続きを終えて、船に乗って貰う時。
学士殿は、あたしを見もせずに言う。
「錬金術師ライザどの」
「え、はい」
「今回は研究の協力感謝する。 礼といっては何だが、一つわしの知っているとっておきを教えておくよ」
「……お願いします」
まだメモを続けている。
というか、この人。
ひょっとして、全部話を聞いていたのかも知れない。だとすると、いわゆる並行思考を得意としているのか。
ちょっと侮れないな。
いわゆる変人であるのはあたしも同じだ。だから、馬鹿にするつもりはないのだけれども。
それでも、ちょっと驚かされていた。
「神代の中でも、一部のグループが魔物に対して悪さをしていたのはほぼ間違いないとわしは考えておる。 だがな、それがどうして古代クリント王国の時代になって、急に暴れ出したのか。 まだ研究を続けているのだが、仮説があってな」
「伺いたいです」
「気にくわなかった」
「え……」
学士殿が顔を上げる。
あたしは、初めてこの人の目を見たかも知れない。
其処には、無邪気な目はなくて。
闇を見て来た、暗い目があった。
「神代の人間の一部……特に今の世界に大きな影響を与えたのは錬金術師だ。 これは声高に言わなくても誰もが周知の事実としている事だな。 彼等は傲慢極まりなく、自分達以外の存在を人間と考えていなかった。 「聞き苦しい言葉を喚く猿」。 それが彼等が、錬金術師以外の人間を呼んでいた言葉だ」
「不愉快極まりない連中ですね」
「そうだな。 そんな連中は、自分達の理屈で世界を動かす事だけを考えていた。 魔物の一部を作りあげたのは神代の錬金術師のその集団だと考えて良いだろう。 だとしたら、どうしてあんな魔物を作る」
リルバルト学士殿は、再びメモに視線を落とす。
そしてぶつぶつ呟きながら、激しく注釈をつけていたが。
そうしながら、また不意に話し始める。
ちょっと話していて疲れるが。
この人がタオの才覚を見抜いているというのは、確かなのだとよく分かった。
「わしは長い間色々な魔物を見て来て確信したのは、強力な魔物は戦闘力と同時に、独自の無駄があると言う事だ」
「無駄、ですか」
「そうだ。 つまり神代の錬金術師集団は無駄を承知で生命を弄った。 つまりその無駄は連中にとっては必要だった。 何故必要だったか。 わしはそれは、連中にとっての美意識だったと思っている」
「美意識で、命を好き勝手に弄る……」
あり得る話か。
確か、クラウディアに聞かされた。
バレンツでは愛玩動物を扱っているのだが、そういった動物の中には、明らかに不要な形質を持たされている者がいるらしい。特に犬などが顕著だそうだ。
そういった性質はどうして持たされたか。
「見ていて可愛い」とか、そういう理由からだ。
つまり美意識で生物を弄るのは、今の人間でもやっているという事である。
そうか、それは盲点だった。
確かに古代クリント王国の錬金術師どもが模倣した最悪の集団、神代の一部錬金術師どもだったら、それをやっても不思議じゃない。
「それだけじゃあない。 恐らくわしは、神代の一部錬金術師達が魔物を作ったのは、気にくわない生き物全てを排除するためだと考えている。 世の中には虫やらを気持ち悪いと言う理由だけで殺して廻ったり、自分が気にくわない生き物を皆殺しにしようと思う輩がいるだろう。 この世の生態系で邪魔な生き物なんて人間くらいなんだがな」
「そうですね、一利あると思います」
「特に強力な神代の魔物は、どう考えても自然のバランスを破壊するほどの戦闘力を持っている。 あれらが作られた理由は、神代の錬金術師にとって見目麗しい世界を実現するためだった……そのために気にくわない生き物を、自分達以外の人間も含めて皆殺しにするため……そう考えているのさわしは」
思った以上の学説だ。
あたしは思わず、考え込んでしまった。
確かにそれは大いにありうる。
どうしようもない下衆集団である事は理解していたのだが。想像を更に超えていたのかもしれない。
まてよ。
フィルフサも、体を弄られている形跡がある。
だとすると、ひょっとして。
フィルフサも、同じような目的で、体を弄られたというのだろうか。
いや、いずれにしても全ては仮説だ。まだ、そう決めつけるのは早いか。
「ライザ殿。 どうして古代クリント王国の崩壊後、魔物が世界中で暴れ出したのかとか、まだ分からない事は幾つもある。 だが、神代に心を掴まれてはならんぞ。 神代は文字通りの呪われた時代、人間が全てを滅茶苦茶にしながら、嘲笑っていた最低最悪の時代だ」
「……そうですね」
その通りだと思う。
ただ、技術に罪はない。
使う人間が、あまりにも愚かすぎたのだ。
今、神代の技術を復興して、思うままに与えたとしても、どうせ人間に使いこなす事は出来ないだろう。
それはあたしもはっきり結論出来る。
だから、一旦全てを解明したとしても。
まずは人間そのものをどうにかしないとダメだ。それについては、既に決めていた。
勿論皆殺しにするつもりはない。
やるとしたら、世代をかけてゆっくり人間という生物を刷新していくことくらいだろうか。
いずれにしても、何千年もかけてやる事になるだろう。
「では失礼する。 本当に助かったよ」
「此方こそ。 失礼があったらすみませんでした」
「何、あれだけのものを見られた。 それで充分だ。 さて、帰ったら論文にまとめるぞ、うひひひひ」
今までの聡明さが何処へやら。
タオが言っていたように、スキップしながら船に乗り込むリルバルト学士殿。
やはり苦笑いしてしまうが。
しかし、考えさせられる。
やはりこの人の結論、間違っていないと思う。
あたしも、今までたくさんの遺跡で、神代の連中に関係する残留意識を見て来た。というか、古代クリント王国の時代ですら、人間はその悪影響を受けていた。更に古い時代は、古代クリント王国と同レベルの精神性、残虐性を持った連中が、好き放題に暴れていて。覇を競っていた。
もっと古い神代の人間となると。
どれだけ傲慢だったのか、あまり想像したくないほどだ。
足首を深淵から伸びてきた触手に掴まれている。
そう感じる。
だが、あたしは顔を上げる。
このまま放置は出来ない。
神代の連中がカスなのは事実だ。そして、群島の奥にある扉は、連中に誘導されているのもまた事実だろう。
だからこそに、あたしは全てを解明し。
場合によっては蹴り砕く。
ただ、それだけだった。
船が行く。
リルバルト学士殿は、台風のように何もかもを掻き回していったが。
ただ、あたしには、大きな影響を与えていった。
それもまた、事実だった。
学士殿の発言は、覚えておくと良いかも知れないです。
タオが認めている程の学士だけあるのです。