暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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原作では3でやっと人間らしい反省イベントが起きたザムエルさん。

毒親パラダイスなクーケン島の毒親筆頭だったこの人も、相応の理由があって毒親になっていました。まあ育児放棄に暴力と擁護はできませんけど。

この章は原作のイベントをちょっと前倒しして、ザムエルさんの反省イベントです。


3、狂戦士再起

竜脈を見つける。

 

あたしは改良型の鍵をかざして、魔力を集める。群島には、島一つにつきほぼ一つは竜脈がある。

 

竜脈がない場合もあるが。

 

それは恐らく、どうでもいい島だったのだろう。

 

そして、あの扉と同じ竜の紋章が、彼方此方で散見された。

 

あれは神代の人間による自己顕示か。

 

それとも、何かしらの意味があるものだと判断して良いのだろう。

 

ともかく、鍵を作って見ると。

 

はちきれん程の魔力を封入した鍵は、それぞれが凄まじい力を持っていた。

 

勿論鍵を使うと、壊れてしまうのだが。

 

その壊れる過程で、様々な効果を発揮できる。

 

力を何倍にも引き上げたり。

 

魔力を何倍にも引き上げたり、効果は様々だ。

 

これは応用が効く。

 

また、一種の装飾品としても持ち運ぶことが可能だ。そうすることで、永続的に強化魔術を掛けられる。正確には、それとほぼ同じ状態を作りあげる事が出来る。

 

幾つか、皆の為に強化魔術をかけたのと同然の状態にする鍵を作る。

 

特に前衛組にはこれは必須だ。

 

また、アトリエを構えた塔のある島で作れたのだが。魔力を増幅できる鍵も作る事が出来た。

 

生体魔力に変換できるということだ。

 

なるほど、これは神代の錬金術師達は、それぞれが偉そうに振る舞えたわけだと思う。

 

素の力を下手すると何十倍、何百倍にも跳ね上げられたのだろうから。

 

そして力に飲まれた。

 

特に、当時は欲望に忠実である事を良い事であるとするような風潮があったようなのだから。

 

連中は一度力を手に入れてしまうと、それこそ歯止めが利かず。最終的には自己神格化という最悪の道を爆走してしまったのかも知れない。

 

この鍵ですら、連中にとっては恐らくまだ力の一端に過ぎない。

 

これで勝てると思うのは危険だ。

 

だから、このまま準備を続ける。

 

島を巡って、細かく調査をする。その過程で、やはりというか。強大な魔物と何度も遭遇することになった。

 

また、エアドロップで潜水して彼方此方を確認すると。海底から続いている形で、切り立った島に入り込む事が出来た。

 

内部は迷路みたいな構造になっていて。

 

幽霊鎧が大量に彷徨いていたが。どう見ても、かなり新しい形式の幽霊鎧だ。

 

つまり、あの宮殿のあった島と同じで。

 

後から来た。呼ばれた錬金術師が、嫌がらせにおいていったものだとみて良いだろう。

 

ここに来た錬金術師のかなりの数が、何も為せずに戻ったのだろう。

 

そして、元々錬金術師は性根が腐っていた。

 

この腐った性根は、神代からずっと引き継がれてきたのだろう。

 

だから、後続にこうして嫌がらせを残していったというわけだ。

 

あたし達は、とにかく丁寧に幽霊鎧を全て排除して廻る。

 

最奥には研究施設らしいものがあって。其処には多少の書物が残っていた。此処を研究用の拠点としていた錬金術師もいたと言うことなのだろう。

 

内容の解読はタオに任せる。

 

群島の内、後北の方に切り立った壁みたいな島があるが。あれについては別に急がなくても良いだろう。

 

一旦アトリエに獲得した戦利品を持ち込んで、調査に入る。

 

此処での調査は、どれだけ慎重でも手ぬるいくらいなのだ。

 

アトリエに戻ると、連戦で疲れ果てたフェデリーカがへたり込む。

 

まだ、体力が足りていない。

 

「す、すみません。 お手数をお掛けします……」

 

「良いんだよ。 体力は少しずつつけていこう」

 

「はい……」

 

「ただ、ミーティングにはそろそろ加わってね」

 

真っ青になるフェデリーカ。

 

まあ、いつまでも甘やかしてはいられない。

 

勿論潰れるようなストレスをかけるつもりもない。フェデリーカは、前は力尽きてベッドで死んでいた。

 

今はへたりこむくらいですんでいる。

 

だったら、そうして順番にやっていくだけの事である。

 

「それでライザ。 そろそろ宮殿の島を再調査する時期か?」

 

「そうだね。 他の島はこれで調べ終わったと思うし、もう一度アタックする頃合いかな」

 

「その強化した鍵でやるんだな」

 

「うん」

 

ボオスが、鍵を自分でも手にしてみせる。

 

あたしが作った装飾品による強化もあるが。この鍵による強化で、更に強さが重ね掛けされている。

 

だが、今まで戦闘してきた魔物にそれで楽勝かと言えば、そうでもないだろう。

 

直撃を貰えば危ないような場面は幾らでもあるだろうし。

 

何より、もしこれから神代の更に強力な魔物が出てくるとなると。

 

今まで以上の危険を考えなければならないかも知れなかった。

 

「扉の所に石碑があったよね。 鍵を作るとしたら其処で?」

 

「そうなるね。 問題はこれであの扉が開かなかったら、一旦アンペルさん達に意見を聞きたい所だけれども。 そもそもこの群島とあの宮殿、ものすごい悪意を感じるんだよね色々と。 扉を開けたくらいで、解決するかどうか」

 

「こうすればきっと上手く行く、みたいに楽観しないのは重要だと思うよ」

 

「分かってる」

 

タオにそう返すと。あたしは一度クーケン島で物資の補給や休憩をすることにして。それでミーティングを終える。

 

それぞれ解散。

 

あたしは。クーケン島に用事があるので、ボオスとクラウディアと一緒に戻る。クーケン島で、護り手用に武器を要求されていたのだ。

 

だからクリミネアで武具を作って、それで所定分納入する。

 

同じクリミネアでも、四年前のあたしとは作れる武器の質が違う。

 

だから、それで充分である。

 

アガーテ姉さんは遠征中でいなかったが、丁度此処を任されていた若手の戦士に、随分と感謝された。

 

クーケン島にいる間は、手伝いをする。

 

そう告げてもあるので。

 

今の時点では、声が掛からないと言うことは、そこまで危険な事態は起きていないという事なのだろう。

 

ただ、アガーテ姉さんに言づてをされていたということで、それを預かっておく。

 

それによると、なんでも近々クーケン島を中心に、幾つかの孤立している集落を束ねた情報網を作るらしい。

 

当然魔物対策の為だ。

 

今回の武器も、敢えて多めに蓄える事で。そういった孤立集落にいる戦士に武器を支給するための意味もあるらしい。

 

クーケン島はある程度自衛に余裕が出てきたと言う事もある。

 

それもあって、色々とやれることが増えてきている。いずれ、サルドニカみたいに、発展している都市として認識される日も来るのかも知れなかった。

 

後は、学校にも足を運んでおく。

 

王都で仕入れてきた本を、幾らか納品しておく。

 

錬金術の才能がありそうな子がいないか調べると言う事もあり。頼まれていることもあって。学校で少し算数やらを教えているのだ。たまにだが。

 

そうしている内に、先生方に頼まれたのだ。

 

本があるなら、集めて来て欲しいと。

 

王都では活版印刷の機械が復活した事もあり、急激に本が出回り始めているのだが。

 

あたしはその中から、勉強に使えそうな本を、幾つか仕入れておいた。

 

それを学校に入れておく。

 

まあ、簡単な算数などの解説書だ。学校で教える勉強としては、これで充分。四則演算が出来るだけで、随分と違うのだ。

 

「ライザ、ありがとう。 本当に助かるわ」

 

「いいえ。 しばらくは授業はやれないと思うので、その代わりです。 お願いします」

 

「心配だわ。 ライザがそういうと、本当に危ない場所に首を突っ込んでいるようだから」

 

「ふふ、そうですね」

 

島の人間はみんな知っている。

 

あたしがやっている事を有り難くも思いながら、一方で古老達があたし達を良く思っていない事も。

 

クーケン島だけでもそうだ。

 

四年前の大騒動でも、あたし達が中心にいたことを知らないクーケン島の民など存在していない。

 

だから、同年代や少し年上の親しい人間は、みんなあたしを心配しているようである。

 

とはいっても。全員がそうではないのだが。

 

学校を出ると、さてと呟く。

 

後は、ザムエルさんだな。

 

ザムエルさんの様子を見に行く。

 

旧市街の一部はすっかり水が引いて、彼方此方に家が露出し始めている。島の傾きが収まり、戻ったからだ。

 

ザムエルさんは、その一角にいた。幼い頃に住んでいた家のある辺りだ。

 

すっかり潮で駄目になってしまった家屋の辺りに、ぽつりと座り込んで。

 

あたしが渡した耳当てをつけて。腕組みして、考え込んでいた。

 

座り込んでいても、あたしの胸くらいに頭が来ている。

 

本当に凄い背丈だなこの人。

 

そう思う。

 

ザムエルさんは、あたしに気付いていたようで。耳当てを外す。その指先が少し震えているのを、あたしは見逃さない。

 

酒を断っている。

 

酒臭くないし。

 

だけれども、体をずっと酒で満たしていた。

 

だから禁断症状が出ている、ということだ。

 

「ライザか……」

 

「どうですか、体の方は」

 

「そうだな……やっぱり酒を抜くのは難しい。 酒が美味いと思って飲んでいた事は一度もないんだがな」

 

「……」

 

来る前に、父さんに聞いた。

 

ザムエルさんは、若い頃はそれこそ殆ど酒を飲まなかったらしい。

 

飲むようになったのは、傭兵として彼方此方で魔物退治をするようになってから。

 

それからのザムエルさんは、加速度的に酒量が増えていった。

 

そして、精神も少しずつおかしくなっていった。

 

ただ、それでも。

 

ザムエルさんは、暴力を振るわない相手もいたらしい。

 

それがあたしとか父さんとか母さんとか。それに、此処にはいないザムエルさんの奥さんとか。

 

酒に酔っていたのでは無い。

 

酒に逃げていたのだ。

 

それはほぼ、間違いなさそうだった。

 

「それで、手紙は分かりましたか」

 

「……そうだな。 恐らく分かったと思う」

 

ザムエルさんも歴戦の傭兵だ。

 

酒さえ抜けば、今でもレントと互角に近い力くらいはあるだろう。

 

経験で言うとザムエルさんの方が上。

 

そう考えると、分からない方がおかしいのだ。

 

答えは、酔い覚ましだ。

 

酒を分解する薬なんて、民間療法的なものから、あたしが作るような即効性の高いものまで、幾らでもある。

 

あの手紙は、そのうち。

 

よく使われる、臭いが強い薬草のものが焚きつめてあった。

 

手紙に臭いが染みつくほどに。

 

それにも気付けないほど、ザムエルさんは深い酩酊に沈んでいたのだ。そうしないと、自分を保てなかったから。

 

どんなにごつくて歴戦を重ねていても。

 

心には傷がついていくのだ。

 

それは、あたしも見て知っている。

 

レントだって、三年であんなに心が折れてしまったのだ。

 

そんな惰弱なのは男ではないだの、そういう理屈は害悪である。

 

誰だって傷つくし。心にはどんな形で罅が入るか分からない。

 

それが、現実なのである。

 

「妻に会いに行く」

 

「!」

 

「レントには今更謝っても謝り切れん。 まずは妻にあって、何もかも決着を付けてくる」

 

「もう、よりを戻すのは無理だと思います」

 

レントのお母さん。

 

ザムエルさんの奥さんは。

 

元々腕がいい回復魔術使いだった。固有魔術で、強力極まりない回復魔術の使い手であったと聞いている。

 

今も現役で、各地の集落で人々を救って廻っているそうだ。

 

レントもこの事件が始まる少し前に、あった事を手紙であたしに送ってきていた。

 

偶然、傭兵として魔物を退治して廻っているときに顔を合わせたとか。

 

かなり老け込んでいたそうで。レントも驚いたという。

 

それだけ苦労をさせていると言う事だ。

 

クーケン島に一時期はいついていて。

 

エドワード先生の病院でも、かなり活躍していたと言う事だから。

 

戻って来てくれれば、それはそれでとても助かる。

 

だけれども、各地で医療魔術師として活動しているのなら。

 

それは、もう此処に戻るのは無理かも知れない。

 

ましてや、ザムエルさんとよりを戻すのは、厳しいだろう。

 

「分かっている。 全て、決着を付けるためだ。 俺はずっと酒に逃げてきた。 だから、それだけでも妻に謝っておきたい」

 

「これ、渡しておきます」

 

「ん」

 

作っておいた薬だ。

 

まあ、指くらいだったら吹っ飛んでもすぐつければ直る。

 

それくらい強力な薬効はつけてある。

 

セリさんが、色々な薬草を提供してくれるので、回復薬はどんどん強化出来ているのである。

 

「後、護身用にこれも」

 

幾つか、身体強化用の装飾品も渡しておく。

 

難しい事は必要なく、身に付けるだけで身体強化出来る品だ。

 

いずれも型落ちなのは、新しく作っている余力が無かっただけ。

 

ただ。ザムエルさんだったら、余程の事がない限り、遅れを取る事はないだろうが。

 

身に付けると、しばらく手をぐっぱしていたが。ザムエルさんは、充分だと判断したのだろう。

 

立ち上がって、大剣を手にとるザムエルさん。

 

量産されているようなくたびれた大剣だが。ザムエルさんの巨体でそれを握って振り回すと、凄まじい音がした。

 

ぐおん、ぐおんと風が掻き回されるようだ。

 

これで全盛期ではないというのだから。

 

全盛期では、魔物ですらザムエルさんの目の前に立ったら、たじろいだのではないかと思う程の迫力である。

 

「多少、若い頃に近付いたような気がするな。 レントが幾つかつけていた玩具、こういう効果があったのか」

 

「体力の自動回復もつけてあるので、歩くのも苦にならないと思います」

 

「そうか。 何もかもすまないな」

 

「いってらっしゃい。 それで、決着を付けてきてください」

 

金については心配は無い。

 

ザムエルさんは若い頃にたくさん魔物を倒したと言うこともある。金だったら、普通に死ぬまで飲めるくらいは蓄えているそうである。

 

ザムエルさんが、港に行く。

 

それを見送ると、レントに声を掛ける。

 

「出て来たら?」

 

「相変わらず鋭いな……」

 

「最近は探知はクラウディアに任せっきりだけれど、熱魔術についてはちょっとしたもんなんだよ。 周囲に隠れているくらいだったら、丸わかり」

 

「かなわんな。 それに……母さんの分も、礼を言うよ」

 

頷く。

 

それと、もう一つ。

 

レントがこっちを伺っている少し前に、ザムエルさんに聞かされた事がある。

 

「ザムエルさんの話によると、家の裏手の物置だってさ」

 

「なんのことだ」

 

「昔使っていた剣がある。 必要なら使えって」

 

「そうか……」

 

レントが嘆息した。

 

やっと、この親子は。

 

和解が出来たのかも知れない。

 

いずれにしても、レントがその剣を手にとるかどうかは分からない。それはあたしが決める事じゃないからだ。

 

仮にその剣を手に取ったとしても。そのままだと多分使えないだろう。

 

「使うならあたしの所に持ち込んで。 使えるように強化しておくから」

 

「分かった。 とにかく、色々と手間を掛ける」

 

「いいんだよ。 今更なんだから」

 

レントと別れると、最後の用事だ。

 

アトリエに戻ると、セリさんと話をしておく。

 

研究を少しずつ進めている。

 

人間がどうやったら出来るのか。

 

それについては、人間の体の部品なんかを錬金釜でエーテルに溶かして、分析を続けていた。

 

これも、少しずつ時間を見てやっていたのだ。

 

セリさんが仲間に加わってからは、髪の毛などの部品を貰って、それをエーテルに溶かしていて。

 

それで結論出来た。

 

だから、先に話しておく。

 

セリさんはアトリエの側に作った畑で、薬草の管理をしていた。色とりどりの草が生えている。それの全てが薬草というわけでもないのだろうが。ともかく、セリさんは丁寧に世話をしているのがわかった。

 

最悪の場合、植物操作の魔術で格納してしまうのだろうが。

 

「どうしたのライザ」

 

「先に話しておくことがあります」

 

「……続けて」

 

「あーおほんおほん」

 

周囲に人がいない。

 

それを確認してから、順番に話を進めて行く。

 

人間との交配についてだ。

 

人間とオーレン族の合いの子が作れる事は理解出来た。分析の結果、それは間違いが無いことが分かった。

 

そしてはっきりもしたのだ。

 

人間とのオーレン族が交配すると。

 

母胎に大きなダメージが行くと。これはどっちが母側でも同じである。

 

此処までは分かっていた。

 

ただ、実証データが欲しかったのだが。

 

それも、エーテルで要素を分析した結果、人間やオーレン族の構成最小要素を確認して。それで確認できたのである。

 

「今、この場にいる女性のオーレン族はセリさんだけです。 だから、先にこれは話しておきます」

 

「今の時点で子供を作る相手はいないし、子供を作る気も無いわ」

 

「それは分かっています。 ただ、もし子供を作る場合は極めてハイリスクだと言う事を先に知っておいてください」

 

「そうね……」

 

セリさんが、ぼんやりと空を見上げた。

 

勿論、人間なんぞと子供なんて作るかという拒絶が確かにある。

 

だけれども。

 

最近セリさんは、あたし達と接する事で、少しずつ。少なくとも、あたしや仲間に対しては、雰囲気が柔らかくなっているのだ。

 

だから誰かしらと、いつの間にかくっつくことがあるかも知れない。

 

ただそれが悲劇を生むことは、知っておいた方が良いだろう。

 

「今後、何十世代掛かるか分かりませんが。 オーリムからフィルフサを駆逐して、此方の世界の人間をどうにかマシにして。 それで、両世界の交流を図ることをあたしは考えています」

 

「貴方が主導するのなら上手く行くかも知れないけれど、それはそれで気が遠くなるような話ね」

 

「……だけれども、オーレン族にとってはそうでは無いはずです」

 

「……」

 

セリさんも、無言になる。

 

人間の世界とオーリムでは、時間の感覚も違うのだ。

 

仮にあたしが人間という生物を改変する方法を見つけたとする。どう改変するのかはまだちょっと分からないが。

 

多分社会のシステムやら変えただけではダメだろう。ましてや精神論なんてのは論外である。

 

或いは人間に生物として手を入れるのか。

 

だとしても、それには何百年も掛かる。

 

だけれども、オーレン族にはその何百年は、それほど長い時間ではないのである。

 

「今、交配時の母胎側のダメージを緩和する方法を考えています。 いずれオーレン族と人間が、神代の愚行によって生じた亀裂を修復できた、その先の未来の為に」

 

「貴方は、随分先の事まで考えているのね。 どうも老化が止まっているようだけれども、それも先を見越しての事かしら」

 

「ええ」

 

「分かったわ。 今の時点で、人間との子供なんて作るつもりはないけれども、覚えておく」

 

セリさんは、リラさんと同じで大変にグラマラスだから、それで視線を集めることも多かっただろう。

 

自衛能力が非常に高いから、人間の男なんて相手にもならなかっただろうし。実際、匪賊の類を刈り取っていたようなこともあると聞いている。クズ錬金術師も討っていたくらいなのだ。

 

ただ、今後はそれとは状況が異なる。

 

あたしは恋愛には疎いからなんとも言えないが、クリフォードさんがどうもセリさんに気があるような気がするし。

 

更に言うと、セリさんも別にクリフォードさんを嫌っている節がない。

 

他の人はどうかはわからないが。

 

いずれにしても、セリさんには先に今の話はしておくべきだと判断したのである。

 

「ちなみに母胎へのダメージ対策は何かしらの方法を採るとして、具体的にどうするつもりかしら?」

 

「薬を考えています。 今考えているのは、人間側が母胎の場合は子供の成長を促進、逆にオーレン族側が母胎の場合は子供の成長を鈍化させる薬ですね」

 

「オーレン族の妊娠期間は10年程よ。 それだけの期間、人間が胎にいても大丈夫なのかしら」

 

「大丈夫じゃないので、今研究中です」

 

人間の構成最小要素を調べていて、それについての可能性も調査している。

 

エーテルで全部溶かして解析しているので、そういうのは色々と分かるのである。

 

ただ、分かるのと出来るのは話が別。

 

実は、成長鈍化は、促進よりかなり難しい。

 

つまり問題は、オーレン族が母胎側になった場合だ。

 

下手をすると命を落とす可能性もある。

 

だから、セリさんに話しておいたのである。

 

「なるほど、色々問題があるのね」

 

「はい。 だから、もしも誰かしらと結婚なりなんなりを考えているのなら、その時は話してください。 研究を前倒しで行いますので」

 

「……そうね。 そういうことがもしもあったら、話しておくわ」

 

セリさんが薬草の管理に戻る。

 

面倒な話だが。

 

とりあえず、周囲に誰もいないときに出来て良かった。

 

嘆息する。

 

そして、釜に向かう。

 

幾つかエーテルに溶かして、それで調べておくことがある。人間の構成最小要素については、殺した匪賊などからも色々と資料は採ってあるので、別に今更必要ない。オーレン族の要素についても。今はセリさんが側にいるので、髪の毛や羽毛、場合によっては爪などを切ったときに貰えればそれで充分だ。

 

釜でエーテルの中で色々な要素を組み合わせていて、分かる事も多い。

 

いま生きている生物は、体内に設計図みたいなのを持っていて、それにそって体を作っている。

 

これは余程細かい生物以外はだいたい同じで。

 

その設計図を基にして、ある程度の生物を作り出せる。

 

研究を進めて、今は生殖に必要な最小要素なども作れるようになってきていて。それで実験をしているのだが。

 

やはり、成長の鈍化が一番難しい。

 

様々に試していると、もう夜が来ていて。

 

フェデリーカが、料理を作り始めているのが分かった。フィーが、袖を引く。そろそろ、一旦休もうというのだ。

 

「フィー!」

 

「んー。 ちょっと待ってね。 今良い所なんだけれど」

 

「フィー、フィー!」

 

「分かった。 一旦切り上げる」

 

あたしもフィーの懇願にはちょっと弱い。だから、一度切り上げる。

 

ただ。研究の内容について、フェデリーカには話さない方が良いだろう。

 

食事が出て来たころには、皆揃っていた。

 

一旦、群島の調査は一段落した。

 

これで、明日は。

 

例の宮殿に乗り込む。

 

宮殿の奥にある扉について、今できる事を試してみる。ただ、それだけではどうにも終わりそうに無い事も話はしておく。

 

フェデリーカ以外の皆は、覚悟は決めているようだ。

 

「ライザさん達でも、そんなに手こずる程の厄介な場所なんですか?」

 

「一季節は最低でも掛かると僕は見てるよ」

 

「……」

 

タオが笑顔のままで言うけれど。

 

確か前にも似たような事は言っていたはずだという、無言の圧力もあった。

 

まあ、タオもこういう風に厳しくはなってきていると言うことだ。

 

別にそれは悪い事ではないだろう。

 

そのまま、軽く打ち合わせはしておく。

 

前もガーディアンがいたのだ。

 

扉を開ければ、何か飛び出してきてもおかしくは無いのである。

 

それについて、備えはしておく。

 

全員ぶんに既に鍵は分配した。

 

ただこの鍵、制御出来ないような代物になられると困る。今後更に解析をしておく必要があるだろう。

 

神代なんて時代を作りあげた錬金術師集団だ。

 

どんな罠を仕掛けているか、知れたものではないのだから。

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