暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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「悪魔」の行動はライザの様子に混乱してのものです。

今までこの群島に招かれた錬金術師は、神代のもつ錬金術の魅力に脳がやられていて、それこそ神代を神格化しているものばかりでした。

ライザは違う。

だから「悪魔」は混乱しているのです。


二度目の挑戦
序、また様子が変わる


あの悪魔みたいなのがまた姿を見せた、と言う事もある。

 

皆で警戒しながら、群島最奧の島に。

 

相変わらず外からは構造が把握しづらい島だ。前と同じ地点から上陸。此処も、セリさんが以前と同様に、植物でタラップを作って、上がりやすくする。

 

そのまま島に上陸するが。

 

嫌な気配がビリビリした。

 

クリフォードさんが、しっと口元に指を当てる。それだけで、最大級の警戒を、皆でする。

 

それもそうだろう。

 

クリフォードさんの勘は、誰もが知っているのだ。

 

あたしもそのまま無言で上陸して、全力で警戒する。力は上がっている。それは確信できているが。

 

それでも、油断すれば死ぬ。

 

それがこの世界の理だ。

 

レントが最前衛で、そのまま進む。擬似的に作られた密林は、また様子がだいぶ違っていた。

 

前にほぼ全部調べたのに。

 

魔物がたくさんいる。

 

どれも水陸両用の魔物ばかりだが。

 

それでも厄介な事に代わりは無い。特に大きめの鼬がいて、それが既に警戒心を全開に此方を見ている。

 

それで、多数の鼬が集まってくる。

 

どれも大きい。

 

それだけじゃあない。

 

上空から降りて来たのは、多数の……なんだろう。

 

見た事がない魔物だ。

 

半分浮いているが、エレメンタルとはちょっと違う。あれは人型をしていた。いや、これはひょっとして。

 

サルドニカでみた、セリさんが本来の意味でのオーリムでエレメンタルと呼んでいる存在だろうか。

 

石で作られた。鉱物の浮いた集合体。

 

それが、多数。

 

まだまだ出てくる。

 

奧から這いずってきたのは、溶けかけている巨体だ。人間のようにも見えるけれども、全身がゼリー状である。

 

呻きながらこっちに来るそれは、赤黒い体色で、見ているだけで痛々しくなってくるほどだ。

 

フェデリーカに、舞うように指示。

 

頷くと、舞い始めるフェデリーカ。

 

それが合図となったのだろう。

 

一斉に、多数の魔物が襲いかかってきた。

 

「総力戦!」

 

「少し前に掃除したばっかりだってのにな!」

 

「上を見ろ」

 

クリフォードさんが言う。

 

あたしは見た。

 

あの悪魔だ。

 

最初、群島に近づいた時も、あれが多数の魔物を指揮していた。それを思い出して、歯を噛む。

 

あの時は、アガーテ姉さんとあたしだけで、思わぬ魔物の混成軍と物量を前に不覚を取ったが。

 

今回は、同じようにはいかない。

 

真っ正面から、激突する。

 

セリさんが、広域魔術で多数の魔物をまとめて食虫植物のエジキにするが。空から、多数の石弾を放ってくるエレメンタル。それをあたしが、熱槍で迎撃。全部中途で蒸発させた。

 

機敏に突貫してくる鼬。

 

それを、クリフォードさんが更に強化しているブーメランを飛ばし、振るい、順番に片付けて行く。

 

レントは最前衛で当たるを幸いに切り倒し続け。

 

脇を抜けたりした奴は、ボオスとタオが丁寧に戦って仕留める。

 

鍵のせいで力が上がっていると言う事もある。

 

フェデリーカが舞う事で、更に皆の力が増幅されていると言う事もある。

 

かなりの数の魔物が集まっているが、それでも。

 

前線を維持し、更に押し返していく。多数の魔物が次々に屍になっていく。

 

大きな鼬が前に出てくる。

 

中空にいる悪魔が槍を向けると。

 

鼬が、かあっと吠えて。それで全力で突っ込んでくる。

 

これは。

 

今まで見た鼬の中でも、図抜けて動きが速い。大きさはもっと危険なサイズのものを見た事があるのだが。

 

レントが、真正面から突貫を受け止めるが、かなりずり下がる。

 

更に跳躍した鼬が、回転しながらレントに突撃。凄まじい回転は、火を噴きそうで。レントも大剣で受け止めるが、刃で毛皮を傷つけられていない。

 

あれは、違う。

 

鼬本来の力でも、戦い方でもない。

 

あの悪魔が、多分媒介になって力を与えている。

 

あたしは熱槍を収束。

 

詠唱する時間を稼いでと、周囲に頼む。

 

エレメンタルが多数の石隗を飛ばしてくるが、クラウディアが全部迎撃、撃墜する。その間に、更に突貫してくる鼬を、セリさんがまとめて覇王樹で地面から空に突き上げ。更には、鋭い植物を生やして、落ちてきた所を串刺しにした。

 

その植物の間から、赤黒い人型が入り込んでくる。巨体で、それも柔軟極まりないというわけだ。

 

額にタオが刃を突き刺すが。それでも人型は呻きながらタオを手で追い払う。ボオスが腕ごと切り落としに掛かるが。ざっくりえぐれた傷口は、すぐに塞がる。

 

舌打ち。

 

仕方が無いか。

 

人型が、口を開ける。口の中に、光が収束していく。

 

その光が放たれる前に、あたしが踏み込んで、収束熱槍を叩き込む。消し飛ぶ人型の頭。人型が大きく体を反らすと、急速に体が回復していく。

 

骨も内臓もない。

 

あれは、全部で一つの魔物ではないのか。

 

だとすると、話は簡単だ。

 

懐から取り出した爆弾。

 

以前から研究していた、四属性複合型の爆弾である。

 

これを人型が呻いている中に放り込む。

 

人型は、複雑な形をした爆弾を、軟体の中にそのまま取り込み。吐き出そうとしたが、既に遅い。

 

起爆。

 

セリさんが、気を利かせて覇王樹で壁を作ってくれたが。

 

爆発と同時に、もの凄い悲鳴があがったように思えた。

 

熱し、即座に凍らせ。雷撃を走らせ。そして爆風で吹っ飛ばす。

 

その四つを全て一瞬で叩き込む最強の爆弾だ。火力はまだ向上の余地があるが、これを至近で受けて生きている生物なんていない。ドラゴンだって死ぬ。

 

人型が消し飛ぶ。ふうと、あたしは息を吐いて。空を見る。

 

悪魔はもういない。

 

同時に鼬も信じられないくらい弱体化して。レントが、雄叫びを上げて一転攻勢に出る。

 

「逃がしたか……」

 

「同時に魔物も弱体化したようね」

 

「まあいい。 片付けるぞ!」

 

ボオスが声を掛けて、皆が一斉に反転攻勢に出る。残った魔物が、明らかに逃げ腰になっているが。

 

運が悪かったとでも思って諦めてもらうしかない。

 

しばらくは、掃討戦を続ける。

 

悪魔のような何者かが去ってしまうと、後は魔物も脆かった。元々かき集めて来たような連中だったのだ。

 

殆どは島に屍をさらし。

 

残りの鼬の僅かな数は海に逃げ込んだが、血の臭いに誘われたサメや大型の魔物が待ち受けていて。

 

それらの牙からは逃れられなかった。

 

あたしはそれを見送ると、すぐに死体の処理を始める。フェデリーカは血の臭いで気絶しそうになっていたので、タオに任せる。タオはクリフォードさんと組んで、周囲を調査。以前の状態と同じか、調べる仕事がある。

 

あたし達は総出で魔物の処理。

 

粉々に消し飛ばしてしまった人型はもう残骸もないが、鼬はそれなりに毛皮とか肉とか取れる。

 

腹を開いて、皮を剥いで。

 

肉を燻製にして。更には、駄目そうな部位は、海に群れている魔物に放る。

 

魔物がばしゃばしゃと海で昂奮してエサを食っているのを一瞥だけする。帰路も邪魔になるようなら、熱槍で吹っ飛ばすだけだ。

 

肉を煙で燻し。皮を剥いで吊るし。死体の処理を手際よくやっていても、数が数である。

 

エレメンタルの残骸みたいに、傷まないのはまだ楽で良いのだが。内臓や肉は、生物の種類によってはとても足が速い。要するにすぐ傷む。

 

燻製にして処理していると、フェデリーカが戻ってくる。タオが何か見つけたと言うことだった。

 

あたしも出向く。

 

なるほどね。

 

宮殿の内部。此方には魔物がいない事は分かっていたのだが。壁の一角が開いていて、そこに何か光の壁みたいなのが出来ている。

 

無言のまま、鍵を出して見る。

 

鍵と、その光の壁が砕けるのは同時。

 

かなり激しい衝撃があったので、ちょっと驚いてしまった。

 

「そ、その鍵が砕けるなんて」

 

「いや、これは……多分だけれど。 まあいいや。 ともかく、此処、前に来た時はなかったよね」

 

「上手く壁に偽装していたみたいだね。 みて。 階段が下に続いてる」

 

「……探査は後回しだねこれは。 セリさん呼んで、一旦壁を作っておこう」

 

また、死体の処理に戻る。

 

処理が終わった肉などを、順番にアトリエに運んで行く。アトリエに運ぶ最中に、エアドロップにサメが近付いてくるが。

 

あたしが視線を向けると。

 

何故かびくりとして、さっと逃げていった。

 

サメは陸上で活動できるようになってから、魔術を使う個体も出現したり。知恵を付けた個体もいると聞いている。

 

魔物は基本的にどれもこうして追い払えるのは、とても有り難い。

 

まあ、力に差がある個体限定だが。

 

「ライザさん……その……」

 

「どうしたの?」

 

「サメを視線だけで脅かして追い払うのは、ちょっと見ていて怖いです……」

 

「大丈夫、その内フェデリーカも出来るようになるよ」

 

無言になるフェデリーカ。

 

何故か失神しそうになったようだが。

 

相変わらずこの子は嗜虐心を誘うなあ。まあ、それは別にいい。

 

ピストン輸送で、一日がかりで大量の魔物の肉やら皮やらをアトリエに運び込む。これは後で分別して。多分肉類は殆どクーケン島に納品してしまう。皮の一部は、クラウディアがチェックしている。

 

バレンツで買い取ってくれる、ということだ。

 

コバルト色のかなり美しい皮だから、なめせば売れるという事である。まあ、鼬の皮なんてどこにでもある。

 

鼬の群れはそれだけ人の里の脅威と言う事で。

 

それだけ、各地で討伐されているのだ。

 

討伐できなかったらどうなるか。

 

それは、その里が滅ぶだけ。

 

そういう状況に、今人類はいる。

 

リルバルト学士殿の話を思い出す。

 

魔物の多くは、神代に改造されたものの可能性が高い。それも、ただ気にくわない生物を排除するためだけに。

 

サメは考えて見れば、おかしい。

 

魚の中にも、浅瀬で活動できるものは少数いる。だがそれにしても、サメの陸上適応はいくら何でも異常だ。

 

あんな風に陸上を泳げるなんて、魚がどれだけ環境に適応すれば出来るようになるのか、見当もつかない。

 

他にもおかしな生物は幾らでもいる。

 

それらが全部神代の錬金術師による畜生研究によって生じたものとまであたしは思わない。

 

だが、そうやって誕生した魔物は多い筈だ。

 

下手をすると、人間に対しても神代の連中は似たようなことをしていた可能性が高い。

 

神代の錬金術師達が、自分達以外の人間をどう呼んでいたか。

 

それは、極めて侮蔑的というか。

 

そもそも人間と見なしていないのが明白だったからだ。

 

ともかく、島を綺麗にした後は、夕方になっていたこともあって、一旦は撤退。

 

まずは。あの地下について調べるべきだろう。

 

それが終わって、余裕があったら扉を調べる。

 

そうミーティングで決めて、後は解散とした。

 

夕食を適当に腹に入れながら、軽く考えをまとめておく。

 

宮殿の奧にあったあの扉。

 

まあ、此処にあたしたちが来た経緯。更には扉である以上「開けさせようとしているもの」であるのは確定であるだろう。

 

ただ、問題は彼方此方に人間を排除するための仕掛けを用意しているということだ。

 

これが、どうにもわからない。

 

まさかとは思うが。

 

選別のつもりか。

 

今の時代は、人間の数がとにかく減ってしまった。だから、それもあってくだらない弱肉強食論は殆ど説かれなくなったと聞く。

 

どんな人間も必要なのだ。

 

それでもサルドニカなどの安定した都市では、ばかげた派閥闘争が起きるし。クーケン島だって、閉鎖的な風潮でつるし上げみたいなことが起きる。

 

しかし、そういった事をしていると、魔物につけ込まれる。

 

それが分かっていても止められないのが人間なのだろう。

 

ただそれでも、馬鹿馬鹿しい弱肉強食論を唱えるのは、僅かな人間になってきて。腹の中に抑え込んでいるという状態にはなっているらしいが。

 

あの悪魔の発言も気になる。

 

何か、神代の連中は。性根が腐っていた以上に、何処か決定的におかしかったのではないのだろうか。

 

そう、あたしには思えるのだ。

 

精神の病とか、そういうものではないのだろう。

 

実際、四年前にアンペルさんがつるし上げを受けている時には。狂騒に染まった人々の目を、あたしも見た。

 

あれは尋常じゃ無かった。

 

人間は簡単にああなる。

 

「フィー……」

 

「ああ、今日はもう寝るよ。 心配させてごめんね」

 

フィーが側にいる。

 

この子はだいたい人間の言葉は理解しているし。あたしがいざという時は処分するつもりだと分かっていても慕っていてくれている。

 

あたしも、それに随分助けられたように思う。

 

皆、眠り始めている。

 

あたしも、そうすることにした。

 

 

 

翌朝。

 

宮殿のあった島は、昨日のように魔物を揃えて迎撃という気配はなく、ごく静かな場所になっていた。

 

蠅やゴキブリの類も見かけない。

 

昨日、綺麗に魔物の死体を片付けていったからだろう。

 

ああいう生物は、確かに生理的嫌悪感を覚えるかも知れないが。

 

腐敗した死体や汚物なんかを、短時間で分解してくれるという、非常に大きな役割を持っている。

 

そういう意味では貪るだけ貪り。

 

喰らうだけ喰らう人間より、よっぽど世界に貢献していると言える。

 

無言で、宮殿に。

 

内部で防衛機構が働いている気配はない。

 

まず、階段の入口をタオとクリフォードさんが調べる。その間に、レントが外から、石柱を持って来ていた。

 

「そんなのどこから持って来たの?」

 

「島の隅で転がっていた。 或いは前は何かしらの装置だったのかもな。 もう捨て置かれていたし、いいだろうと思ってよ」

 

そして、いざという時のために、レントが入口のつっかえにする。タオとクリフォードさんも、それを見て頷いていた。

 

「下に転がると危ないから、俺は此処で見張る」

 

「分かった。 タオ、クリフォードさん、大丈夫そう?」

 

「うん、問題ないだろうね」

 

「降りるか」

 

二人を先頭に、階段を下りる。クラウディアも居残り組。セリさんは、宮殿の外にて見張りである。

 

あたしとボオス、フェデリーカと。

 

タオとクリフォードさんで、地下に降りる。

 

ボオスが、階段の様子を見て、冷静に呟く。

 

「殆ど埃も溜まっていないな」

 

「そうだね。 こういう遺跡だと、どうしても埃は溜まるんだけれども」

 

「あれだね」

 

あたしが天井を視線で示す。其処から風が出ている。

 

おそらくだが、あれは空気を循環させる装置だ。どういう仕組みなのかは、ちょっと見当もつかない。

 

階段はかなり深くまで続いていて、その深部は、不意に開けていた。

 

展開して、周囲を警戒。

 

灯りは、問題ない。

 

どういうわけか、暗くないのである。

 

去年、「北の里」という遺跡に出向いたとき、深部は普通に暗かった。遺跡を蘇らせるまではだ。

 

此処は遺跡としてずっと生きていると言うことだ。

 

しかも、灯りの出所が分からない。

 

ヒカリゴケとかそういうものじゃない。この空間が、地下にもかかわらず、満遍なく明るいのだ。

 

「この空間……」

 

「ああ。 俺たちの前には、恐らく足を踏み入れた奴はほとんどいない。 いや、足跡を見つけた。 皆、前に出ないでくれ。 俺が検分する」

 

クリフォードさんが、何やら粉みたいなのを床に振りかけて、ふっと噴きかけると。足跡が浮かび上がる。

 

おお、これは凄い。

 

「それ、凄いですね」

 

「ただの細かい砂だよ。 ただな、ヴォルカー卿に頼まれて、事件現場をこうやって何回か検分してな。 その時に、靴跡とかを調べるために用意したのさ」

 

「なるほどね……」

 

やっぱりこの人、スペシャリストだな。

 

タオと二人でしばらく足跡を調べていた二人だが。やがて。奥の方で止まり、手招きして来た。

 

足跡を消さないように慎重に歩く。

 

奧にあったのは。これはなんだ。骨か。円筒形の水槽の中に、骨が浮かんでいる。

 

それは、人間のもののように見えた。

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