暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
船が帆を張る。風が出てきたので、それによって速度を上げるためだ。
この辺りで数隻の船と合流して移動する事になっている。艦隊を作る事によって、魔物の襲撃を避けるため。
また、危険な魔物が出現した場合は、生き残る可能性を少しでも上げるためである。
見えてきた三隻の船。
光信号……とはいってもランタンを用いた簡単なものだが。それで船同士で通信をしている。
船が音魔術の使い手を乗せている場合は、その魔術で連絡をするらしいのだが。
クラウディアは敢えてそれを言い出していない。
つまり、船の側で出来ると言う事で。これ以上航海のコストも上げたくないのだろう。だから放っておく。
やがて、三隻の船と合流し。
そのまま、航路を行き始める船。途中で更に二隻合流するらしいと、船員達の話から分かる。
かなりの規模の艦隊だが、それも途中でそれぞれ別れていく。それぞれの船に航海の計画がある。危険地帯を出来るだけ一緒に行くのが艦隊を組む目的なのだ。
今の時代は、海は特に危険な人間の領域ではない場所だ。
川や湖でもそうなのである。
海ならなおさらであろう。
あたしも、それは分かっている。だから、いつでもいざという時に対応できるようにはしていた。
船でそれでも、調合をして色々と試す。
フラムとレヘルンは大丈夫。
ルフトもこのままでいけそうだ。
問題はプラジグで、どうしても電気の出力を上げることがこれ以上出来ない。何度試しても、どうしても電気が分散してしまうのである。
腕組みして、考え込んでいると。
船室で飛び回っていたフィーが、頭に乗ってくる。
「どうしたのフィー」
「フィ!」
「ん……」
嫌な予感がする。手をとめて外に出ると、いきなり空が真っ暗になっていた。夜になった訳じゃあない。
前の航海の時も、天気がコロコロ変わったのを思い出す。
フェデリーカが、あわててこっちに来た。
「ライザさん! 嵐に直撃します! 今、帆を船員が下ろしています。 出来るだけ船室に入って、身を固定してください!」
「フィー、流石だ。 気付いていたんだね」
「フィー!」
フェデリーカが小首を傾げるので、フィーが気付いていたらしいことを言うと、なる程と感心された。
まだフェデリーカとしては、フィーが殆ど言葉を理解出来ていると言う事が、ぴんと来ていないらしい。
それ以外にもフィーができる事は結構色々ある。普通の子供よりも、もう賢いかもしれなかった。
かといって、まったく成長するそぶりがないのもまた事実だ。
フィーの居心地が良い空気は、時々トラベルボトルに入ることで補給はしているのだけれども。
まあ、ドラゴンの亜種だというのならば。
成長が遅いのも当然だろうし、それは別に不思議な事ではあるまい。
ともかく、船室に。
ものを全部固定して、更にはエアドロップを出しておく。すぐに皆に連絡をしておく。最悪の場合は、エアドロップを使うと。
エアドロップは海もいけるが。これは此処一年で実験済だ。
ただ海の魔物を刺激しない方が良い。汽水域であるエリプス湖ですら、湖底付近まで潜ると、信じられないくらいでかい魔物がいたのである。
湖ですらそれだ。
海だとエサが豊富に取れる事もある。
魔物の大きさは、汽水域なんかとは比較にもならないだろう。
最悪の事態に備えた後、後は船室でじっとする。
ボオスはただでさえ船酔いするのだったか。
無言で、じっとして、揺れが通り過ぎるのを待つ。
一晩ずっと揺れが続いたが。
朝になったら、すっかり静かになっていた。
船室から出て甲板に上がると、すっかり凪の海だ。
昨晩はあれほど荒れていたのにな。
そう思って、伸びをする。
流石に昨晩は眠りが浅かったので、軽く体を動かした後は。今日は無理をしない事に決めた。
まだ数日、ネメドにまでは掛かる。
到達してからも、アンペルさん達が身動きできないとなれば。確定でトラブルが起きていると判断して良いだろう。
だったら、船を下りたらすぐに動けるように備えておく必要がある。
問題があるのなら。
全て解決しておかなければならなかった。
(続)
ネメドに向かいます。現地でやらかして捕まったアンペルさんとリラさんを救出に行くためです。
今作ではフィーが同行しているため、要所要所でライザの役に立っています。
人間の言葉くらいなら理解出来るので、相応に役には立てるのです。