暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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本作のディアンは原作よりもかなり言動をしっかりさせています。

これはライザの仲間をライザと同格と認識しているからです。原作でさんをつけて呼ばない相手にもそうしているのは、それが理由です。


1、密林の村

ディアンも半裸だが、それもそうだろうと移動しながら思った。この辺りの暑さは酷く、森の中に入ってから更に加速して来た。

 

というよりも、これは。

 

思わず溜息が出てしまう。

 

湿度が原因だ。

 

雨が散々降るという話も聞いたが、それだけじゃない。なんでもディアンの話によると、森の中に巨大な湿地帯があるらしく、其処から大量に霧が流れ込んでいるという話である。

 

なるほど。

 

そうなると、去年交戦した王都近郊のフィルフサの群れがいたのと同じような場所だった、ということだ。

 

フィルフサですらなかなか攻略できないような、水の多い立地。

 

だからこそ、ある意味此処は、人間最後の砦になり得るかも知れない。

 

さっきの村も、色々な地方から来たらしい人々が見かけられた。

 

多分だけれども、五百年前の古代クリント王国の破綻。魔物の大攻勢にあわせて、それで様々な人々が彼方此方に散ったのだ。

 

サルドニカといい此処といい、その痕跡が彼方此方で見受けられるのだった。

 

「ライザ」

 

「はい、セリさん」

 

「恐らく、さっきディアンという子が言っていた地に、私が此方にくるのに使った門があると思う」

 

「!」

 

ディアンが先を歩いている隙にセリさんが爆弾を投下。

 

そうなると、これはちょっと見過ごせないか。

 

「アンペルとリラは、恐らくだけれども門の話を聞きつけたのね。 私が知っている状態なら、その門は恐らく無事だとは思うけれど」

 

「……そうですね。 しかし、状態を調べないといけないです」

 

「ええ」

 

「これは大事になったな……」

 

レントがぼやく。

 

同感だが、どこに門があっても不思議ではないのだ。ただこの地だったら、フィルフサが出たとしても簡単には制圧されまい。水に弱いフィルフサに取っては、年中高温高湿度のこの土地は、簡単に根付けない筈だからだ。

 

「ディアン、いいかな」

 

「なんだ?」

 

「この辺りに大災害の伝承ってある?」

 

「大災害? 大きな災いとかなら、百年だかに一度くらい竜風ってのが起きるぞ。 何もかも吹っ飛んじまうくらいの災いだそうだ。 俺は当然、見た事も無いけどな」

 

フェデリーカを除く全員が一気に緊張するのを見て、ディアンがどうしたんだと聞いてくる。

 

フェデリーカは困惑するばかりだ。

 

「なるほど、これは一旦扉どころじゃなくなったね」

 

「ああ。 どうもそうらしい。 ロマンは後回しだ」

 

クリフォードさんもぼやく。

 

まあ、それもそうだろう。

 

フィルフサとの戦闘は、此処にいるフェデリーカ以外全員が経験している。百年に一度フィルフサが出て来ている可能性はあまり高くは無いと思うが、それでも可能性がある以上、対応と調査はしなければならない。

 

一度此方に根付かれたら終わりなのだ。

 

今の人類に、こっちに出て来たフィルフサを片付ける戦力は無い。四回にわたってフィルフサの群れをつぶし王種をしとめたあたし達だって、条件が整わなければ正面からの戦闘は無謀だ。

 

ディアンがまた先に行く。

 

フェデリーカが、不安そうに言う。

 

「あ、あの……」

 

「サルドニカの南を滅ぼした魔物の話はしたよね」

 

「はい」

 

「もう話しておくか。 その魔物の名前はフィルフサ。 元々は異界の存在でね……」

 

軽く、フィルフサについての特徴を話しておく。

 

圧倒的な数。

 

魔術は通じない。

 

生体急所がない。

 

コアを砕かない限り死なない。

 

アリのような真社会性生物である。

 

装甲も非常に頑強で、あたし達の武器や爆弾にすら耐える事がある。

 

弱点は水。

 

これくらいか。

 

それらの説明を終えると、フェデリーカは蒼白になって考え込む。異界の門からなだれ込んでくる、悪魔の群れ。

 

あたし達が血眼になっている理由が、理解出来たのだろう。

 

「群島の奧の門に、あんなにライザさんほどの英傑が執着しているのがようやく理解出来ました。 そんな恐ろしい魔物が実在していて、いつ此方の世界に来るかも分からないというのなら……」

 

「サルドニカだってあの南の状態を見れば分かるとおり、一度更地にされるまで蹂躙されたんだよ。 ここだって、もしもフィルフサが出て来たらどうなるか知れたもんじゃない。 しかも此処には門があるってはっきりした。 だったら状態を調査するのが……対策できる手段と知識をもったあたし達の義務だよ」

 

「……分かりました。 覚悟は、決めておきます」

 

フェデリーカは頷く。

 

まあ、覚悟を決めておいてくれればそれでいい。

 

まずはフォウレ村だ。

 

いずれにしても、今すぐと言う事はないだろう。しかも、雨が降り始めた。すぐに大雨になる。

 

タオの話によると、スコールという現象だそうだ。

 

こういう地帯ではよく起きるという。

 

雨がどっと降った後、すぐに止む。

 

いずれにしても、これは雨を起こすのは難しくも無い。フィルフサを迎撃するのは、恐らく可能だろう。

 

ともかく竜風というものについて調べて。

 

どういう風に起きるのか。

 

その正体についても、調べておく必要がある。

 

「フィー!」

 

「うん? どうしたの?」

 

「フィーの奴、元気そうだな」

 

「そうだね……」

 

竜風、か。

 

何もかもが破壊されると言う話だったが、それはフィルフサにも共通はしている。だが、そうなると。

 

フォウレ以外の集落は、どうして平らにされていない。

 

それにフィルフサが出たのなら、どうして乾燥地まで一気に打通されて蹂躙されていないのか。

 

まだフィルフサが出て来ていると考えるのは早計。

 

更にエンシェントドラゴンの西さんの事も気になる。

 

何故竜風なのか。

 

それについて、しっかり調べておく必要があるだろう。

 

やがて、森の中に、ちいさな集落が見えてきた。

 

既に夕方だが、そういう季節なのかもう暗くなりはじめている。

 

彼方此方に灯りが点っていて、それは松明によるものではなかった。

 

ロミィさんに聞いたとおり、見かけよりもずっと文明的な村だ。ただ、灯りをじっと見つめる。

 

なんだこれは。

 

どちらかというと機械に近いな。

 

しかし、王都にたくさんある機械ともまた違う。

 

ちょっと見たいと思ったが、村の人間達が著しく非歓迎的な視線を向けてきている。

 

「ライザ」

 

「分かってる。 アンペルさんとリラさんの事もあって、よそ者を良く思っていないんだろうね」

 

「ばからしい話だ。 よそ者を入れないと村がやっていけないのに。 アレがダメコレがダメって、この村は窮屈でがんじがらめだ」

 

ディアンがぼやく。

 

レントが肩をすくめて、タオも苦笑い。

 

「どうしたんだ」

 

「四年前のあたし達もね。 住んでいる島が同じような事があってね」

 

「そうなのか!」

 

「その時も、世界が変わったのがアンペルさんとリラさんの到来が切っ掛けだったからね。 昔のあたし達がいると思ったの」

 

そっか、とディアンが呟く。

 

村の皆が見ているからか、笑顔は浮かべなかったが。

 

シンパシィを感じているのは、確からしかった。

 

 

 

村の奧に験者屋敷と呼ばれる。里長の家があるらしい。

 

案の場木造だが、奧に工房がある。簡単な工業機械が並べられているが、いずれもが動力がついているタイプではない。

 

こういうのを家庭内手工業とか分類するのだっけ。

 

タオがそんな事を言っていたな。

 

だが、さっきから村の中で、見た事も無い機械類を見かけた。あれは恐らくだが、ロミィさんが言っていた「機具」なのだろう。

 

だとすると、それを動かしている「種」とはなんだ。

 

ちょっと今の時点では、想像もつかない。

 

験者屋敷には長身の女性戦士がいて、雰囲気はアガーテ姉さんと同じく非常に鋭い。これはかなりの使い手で、というかこの村の中核の戦士だろう。

 

まだ若いが、身に纏っている魔力が研ぎ澄まされている。

 

王都辺りだったら、騎士なんかまとめて捻れるくらいの実力者だ。

 

この辺りは強力な魔物が多いと聞く(道中では遭遇しなかったが)し、鍛えられるというか……生き残る戦士も、多く無いし。戦士である以上、強くないといけないのかも知れない。

 

ただこういった場所では、最強の戦士が里長をする事が多い。

 

この人は、里長ではないのか。

 

「デアドラ姉、戻ったぞ」

 

「ああ。 それでその者達は」

 

「俺が負けたのがそこのおっきい奴で、レントっていう。 そっちの女の人が、ライザで、レントより強い」

 

「何……」

 

デアドラさんというのか。

 

何というか、名前については殆ど王都の人と印象が変わらないな。そうなると、変な風習を残している村というわけではなさそうだ。

 

そういう村だと変な風習と信仰の結果、生け贄の儀式とかが健在だったりする。そういうのがないかはまだちょっと分からないが。少しだけあたしも案内していた。

 

「ライザリン=シュタウトです。 錬金術師をしています」

 

「デアドラ=ノースフィルだ。 ディアンが強いと認めると言う事は、相当な使い手ということのようだが……錬金術師か。 つい最近も、怪しい錬金術師が悪さをしてな」

 

「ええと。 あたし達はちょっとある災厄について調査をしていまして。 此方のタオとクリフォードは、遺跡探索の専門家だったりします」

 

「俺はトレジャーハンターだが、まあそっちもできる」

 

クリフォードさんが自慢げに説明するので、デアドラさんも面食らったようだった。

 

いずれにしても、魔物対策などで役に立てると話をすると。

 

少し悩んでから、デアドラさんは奧に通してくれた。

 

「験者様」

 

「ディアンの声が聞こえていた。 入れ」

 

「はっ」

 

デアドラさんが、視線で促したので。あたしだけが入る。

 

奧にいたのは、屈強で四角い、しかし落ち着いた雰囲気の男性だった。ディアンもデアドラさんもそうだが、半裸に全身にペイントをしていて。この人も雰囲気的にはとても似ている。

 

ただ頭に羽根飾りなどをしていて、恐らくそれが最高責任者の証なのだろう。

 

王は王冠を被るように。

 

どんな場所でも、そういった責任者は証みたいなのをつけるということだ。

 

相手は験者と名乗る。あたしも名乗ったが。多分験者というのは襲名するものなのだろう。

 

本名を口にするのは、里長が避けている事なのかも知れない。まあ、神秘性などを担保するために、たまに見かける風習だ。

 

「大勢で何用かな。 おもてなしもできないが」

 

「ある災厄について調査しています。 この近辺では竜風というものが起きて、百年に一度だかに全てが吹き飛ばされるとか」

 

「良く知っているな。 それが近いという話があって、しかし村では色々問題も起きていてな。 頭を悩ませている」

 

「あたしは錬金術師でして。 手助けを出来るかもしれないです」

 

まずは信頼からだ。

 

錬金術師というのが、マイナスになるかも知れないが。

 

ともかくアンペルさんとリラさんが、あっさり捕まるわけもない。殺されそうになったら、地力で脱出するだろう。

 

だから、今は焦らず。

 

順番にやっていくだけだ。

 

「村の役に立てるというなら、早速やって貰いたい。 魔物の退治に、家屋の修復に、色々と頼みたい事がある」

 

「それでは、まずは空き地を貸して貰えますか」

 

「空き地だと」

 

「拠点が必要ですので。 誰も使っていないような場所でかまいません」

 

デアドラさんが、験者さんに耳打ちする。

 

そういえばこの験者さん、髭は生やしていないな。

 

こういう集落では、髭を生やす方が多い印象なのだけれども。

 

まあ、それはいいか。

 

「……分かった。 村の東に、以前魔物が出て潰された家の跡地がある。 本来は見張り所だったのだが、それも再建が出来ていない。 それ以降、魔物に対する哨戒も、我等にとって大事な種拾いも出来ていなくてな」

 

「ふむ、まずは盾になってくれと」

 

「言い方は悪いがそうだ。 それでもいいのなら」

 

「分かりました。 拠点は朝までに作ってしまうので、デアドラさんと一緒に見に来てください」

 

なんだとと、一瞬だけ動揺した様子の験者さんだが。

 

まずは力を見せておくべきだろう。

 

問題は魔物か。

 

まあ、それくらいはどうにでもなる。

 

そのまま、デアドラさんに案内される。村からちょっと出て、少し東に言ったところに、グシャグシャに潰された柵の跡。

 

何よりも、激しい戦闘があったのだと一目で分かる潰された家屋があった。

 

好都合だ。

 

土台があるし、広さも申し分ない。この様子だと、徹夜にはならないだろう。

 

「此処だが、構わないか」

 

「潰されている木々などはどけてしまってもかまわないですね」

 

「好きにするといい」

 

「分かりました。 それでは明日の朝に来てください。 騒がしくはならないと思います」

 

怪訝そうにするデアドラさん。

 

ともかく彼女が帰るのを見届けてから。あたしは釜を荷車から降ろす。そして、手を叩いて皆に言う。

 

アトリエを作成する時間だ。

 

都合五つ目のアトリエである。もう、あたしとしても充分に熟練している。今更困る事もない。

 

「よし、作るよ!」

 

「じゃ、まずは木をどける所からだね」

 

「任せろ」

 

レントが大剣を取りだすと、気合一閃木を吹っ飛ばす。

 

凄まじいパワーに、崩れて虫の住処になっていた住居の残骸が、ふっとんで一気に整地された。

 

頼もしい。

 

そのまま、粉々になった木を集めて貰う。

 

クラウディアがすぐに水を用意して、茶を淹れ始める。男衆には、あたしがどんどん部材を作るので、運んで貰う。

 

今回は石材や基礎を作る手間が省けたので、作るものは少数でいいし。

 

木材だったら、今レントが吹っ飛ばしたのを再構築するだけだ。

 

釜に突っ込んだ木材が合板になるのを見て、ディアンが目を丸くして、様子を見つめている。

 

口の端を引きつらせて、フェデリーカがディアンに言う。

 

「私も初めて見たときは、この世の技とも思えませんでした……」

 

「あの薬が出来るのもなっとくだ。 すげえ……」

 

「フェデリーカ、ディアン。 ランタンが其処にあるから、辺りを照らしておいて。 クラウディアが今音魔術で警戒してくれているけれど、それでも万が一があるからね」

 

「おうっ!」

 

セリさんが植物魔術を展開。

 

辺りに光を放つ花を出現させる。なんでも洞窟に生える、光る花だという。かなり光は弱いが。

 

すっかり空が暗くなり。

 

しかも星空が出ている訳でもないから、これは有り難い。

 

クラウディアは音魔術を更に練り上げていて、鼬などが嫌う音を研究していると言う。今、外に展開している音魔術がそういうものらしい。

 

あたしは黙々と調合を続けて、どんどん部材を作りあげていく。

 

柱を設置。

 

建築用接着剤で固定。

 

梁を作る。

 

レントとクリフォードさんとボオスが、連携してそれぞれ設置していく。

 

屋根、壁、窓、戸。

 

更には此処は魔物の攻撃を受ける可能性がある。魔術による防御も必要だろう。周囲に、柵を作るが。

 

それには対魔物用に、シールドの魔術を発動出来るように、魔法陣も組み込む。

 

全て頭の中で出来上がっているものを、現実に降ろしていくだけ。

 

だから、別に大した苦労はない。

 

淡々とやっていくと、やがて形になっていく。壁をはめ込む。それも部材をくみ上げられるようにしてあるから、建築用接着剤は最小限で済む。

 

扉もつける。

 

外から引く扉にするのは、魔物対策だ。

 

内側に開く扉だと、外にいる魔物に対して対策がしづらい。内部に踏み込まれることは此処では考慮しない。

 

ついでなので、物見櫓も作っておく。

 

アトリエとしての用途が終わった後は、フォウレの里に引き渡してしまってもいいだろうと判断しての事だ。

 

家の形が出来るまで二刻。

 

基礎がしっかりしているので、一刻は時間を短縮できた。

 

既に夜半か。

 

フェデリーカがかなり参っているようだが、クラウディアが茶を皆に配って、それを飲んで頑張る。

 

茶は目が覚める。

 

まあ、あまりにも効きすぎるのを飲むと、眠れなくなるが。

 

「俺も力仕事やる!」

 

「今回は見て覚えて。 灯りを持って哨戒するのも大事な仕事だよ」

 

「そ、そうか!」

 

「……」

 

正直で良い子だ。

 

正直者はあまりいい目をみないのがこの世のルールみたいな風潮もあるが。そういう風潮は確実に世の中を生きづらくする。

 

ほどなくして、窓がはまり。

 

内部への物資の搬入が始まる。既に音が鳴るような仕事はしていない。

 

というか、フォウレの里はずっと明るいままだ。

 

「ディアン、フォウレの里って夜も明るいみたいだね」

 

「機具のおかげなんだ。 ただ、機具も種も寿命があって、フォウレの里はずっと苦しんでる。 それなのに、貴重な機具を売って稼いだりして……」

 

「そっか」

 

「それに、外の血を入れる必要があるのに、一部の大人は外の人間を毛嫌いしていやがるんだ。 体がおかしい子供が何人も生まれてる。 従姉妹とか、酷い場合は姪とか甥とかと結婚するからそうなるってみんな分かってるのに。 可哀想なのは子供だってのに、どうしてあんなにみんな勝手で、それに外の事を知ろうとすることすらいけない事だってするんだよ」

 

ぼやくディアン。

 

これは相当溜まっているみたいだな。

 

だから、そのまま喋らせておく。

 

あたしは、そのまま作業を進めて。エーテルを一旦全てジェムに変換。釜を、アトリエに運び込む。

 

扉については、鍵もセット。

 

物理的な鍵では無く、魔術的な鍵だ。

 

全員分指を鍵に押し当てて貰って、鍵にそれぞれの魔力情報を覚えさせる。

 

そして、鍵は今登録した人間と。

 

あたしが手順を踏んだ人間しか、開けられないようにした。

 

これについては、信頼関係がフォウレの里と構築できたら、通常の鍵に変えてしまうつもりだ。

 

外には、畑などを作る場所も用意。セリさんのための場所だ。

 

内部には個室とまではいかないが、男女用にそれぞれ八人まで入れるようにベッドを作り、その間に仕切りも作った。

 

かなり広くなっているが、男女別にもしてある。

 

それに水周りも大丈夫。

 

すぐに湯を沸かして、疲れが酷い人間から順番に入って貰う。トイレも水洗のものにした。

 

水は近くに幾らでも湧いている場所があるので、そこから引いてくる。

 

水周りに必要だからである。

 

あたしが瞬時に湯沸かしをやってみせるのを見て、ディアンが更に驚く。

 

「すげえ。 熱魔術の使い手は何人も見たが、一瞬で人肌に出来るほど慣れてる奴は初めて見る」

 

「実戦を豊富に積んでいるからね。 じゃ、順番に入って。 あたしは彼方此方見て回って、それで最後の調整をしてから入るから」

 

「じゃ、私からお風呂使うね」

 

クラウディアがそう言って、先に風呂に。

 

順番に皆で風呂に入っていく。

 

予想よりだいぶ早く終わったとは言え、当然夜半は廻っている。

 

あたしはアトリエの外に出ると、すでに眠っているフィーを懐に感じながら、伸びをしていた。

 

さて、明日からが。

 

本番だ。

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