暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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各地への生命線になる経路すら危険な状態を、ライザは解決していきます。そして近場の超大物も撃破に向かいます。

ずば抜けた武力があるから出来る事です。

これはアンペルさんとリラさんを助けるためが目的ではありません。

助けられる人は助ける。

それがライザの普通です。

隔世の豪傑であっても、そういった点での倫理は普通の人間よりしっかりしているのです。


1、悪臭の王

農村への道は、もうほぼほぼ安全になった。大物があらかた消えた事による縄張りの変遷。それが一段落したのだ。

 

見境なしに仕掛けて来るような雑魚はいなくなり、人間に対して距離を取る魔物が増えてきたということである。

 

勿論子供一人で行けば食われるだろうが。

 

この辺りの戦士が複数護衛につき。時々魔物を一斉駆除していけば、人が襲われることもなくなるだろう。

 

これでいい。

 

今後はまた別の戦略が必要になるだろうが。これで南にある農村は一段落出来る。

 

状況が一段落すれば、畑などを守る事に戦士が注力でき、畑の生産力を回復する事が出来るし。

 

そうなれば漁村の方とも活発に作物をやりとりして、人も行き来させることが可能になるだろう。

 

農村の方では、畑が荒れていて。

 

それを見て、あたしもちょっと悲しかった。

 

農家の娘なのだ。これでも。

 

だから、父さんのように畑と会話する境地にいなくても、畑が荒れているのを見るとそれは悲しい。

 

それに、だ。

 

南の方に、明らかにオーバーテクノロジーな産物である灯台が見えている。

 

あれは多分だけれども、古代クリント王国か、もっと過去の産物だ。神代のものかも知れない。

 

この辺りがある程度落ち着いて来たら、様子を見に行くべきだろう。

 

午前中にこの辺りの作業が終わったので、次はフォウレの東の魔物の掃討を本格的に行う。

 

昨日の二度の威力偵察で、かなり面倒なマンドレイクの亜種がいることが分かってきているので。

 

先に皆にマスクを配る。

 

更につけていて不快感がなく、臭いを完全遮断するのではなく、ある程度分かるところまで抑え込む。

 

不衛生な空気も吸い込まなくなる。

 

それだけ優れた性能のマスクだ。

 

「懐かしいな、これ……」

 

「うん……」

 

レントとクラウディアが口々に言う。

 

ディアンは不思議そうにしていたが。フェデリーカは何となく理由を察したのか、遠い目をした。

 

ともかくマスクを皆でつけて。ラフレシアだとかいう臭いが凄い植物が密生している場所にいく。

 

やはり、この辺りだ。

 

昨日マンドレイクをかなり退治したが、それでも気配が消えていない。

 

大物がいる。

 

クラウディアが今日は反応が早い。

 

「いるよ! みんな、さがって!」

 

次の瞬間。

 

爆風が、辺りを薙ぎ払っていた。

 

あたしがとっさに熱魔術で爆破して、爆風をある程度相殺したが、もし直撃していたら全滅していた可能性も高い。

 

相殺したと行っても、ある程度は貰ったので、全員吹っ飛び。受け身を取ってそれぞれ体勢を立て直す。

 

頭がガンガン痛むが。

 

ともかく立ち上がって、頭を振る。

 

見えてきた。

 

時々セリさんが植物操作魔術で呼び出している食虫植物。魔物を食うほどでかい食虫植物の、親玉みたいな奴だ。

 

巨大な横に裂けた口は、牙がずらりと並んでいる。

 

植物だが自走可能で、恐らくはマンドレイクが極限まで成長した個体なのだろう。全身からガスを放ち。周囲が歪んで見える程だ。歪んで見える。

 

なるほど、そうか。

 

今のは体内に蓄えている悪臭ガスを、指向性を持って放ちながら着火したのか。

 

「くっそ、耳が聞こえづらい!」

 

「また来る!」

 

「対応する」

 

セリさんが植物魔術発動。恐らく地面の下から根で攻撃してこようとしたのだろうが、セリさんが地面に手を突いて、先に魔術を発動。

 

ドガンと凄い音がした。

 

多分大量の根が、地面の下で激突したのだ。

 

辺りが地震のように揺れる中、あたし達は動く。レントが先頭に、ディアンが続き。

 

タオとクリフォードさん、ボオスはそれぞれ左右に展開。

 

フェデリーカはもう少しさがるようにあたしは指示、後方で舞いを踊って貰う。

 

鞭のように、巨大マンドレイクの蔓が唸る。大木ほどもあるそれが、皆を薙ぎ払いに掛かるが。

 

レントが大剣を振るって、蔓を弾き返す。

 

柔軟性が強い蔓を弾き返すのは、流石である。

 

だが、巨大マンドレイクは巧みにさがりながら、蔓を振るって皆を牽制しつつ、またあの爆発を引き起こそうとしている。空気を吸い込みながら、周囲のガスも一緒に取り込んでいる。

 

あたしが爆弾を投擲。

 

雷撃が、巨大マンドレイクに炸裂するが。同時に、ガスが起爆。

 

爆発の中で、巨大マンドレイクは蔓を振るって、即座に火の粉を払った。

 

元々あの爆発を投射してくるだけの事はある。

 

こいつ、熱には相当に強いということだ。

 

タオが果敢に懐に入り込むと、双剣で数度斬り付けるが、分厚い植物の皮はとにかく固い。

 

弾き返されて。更にカウンターで潰され掛けて、タオが残像を作ってさがる。

 

クリフォードさんのブーメランが、蔓を切り裂くが、それでも千切れるほどではないし、蔓も再生している。

 

ならば、こっちならどうか。

 

再び投擲するのは、レヘルンの改良版。

 

一度溶けてから、周囲をえげつない冷気で凍らせる。通称メルトレヘルン。レヘルン数個分の……いや十倍以上の火力がある、実戦投入は初になる爆弾だ。

 

皆が飛び離れる。ディアンは、レントが抱えて。

 

巨大マンドレイクが、一気に凍り付いて。一瞬だけ動きが止まるが、即座に全身を揺すって動き出す。

 

だが、動きが鈍った。

 

やはりな。

 

熱帯の生物。

 

冷気には耐性が無いか。

 

ついでにいえば、体内が殆ど水だから、熱魔術には強いのかも知れないが。それも限度があるはず。

 

次の瞬間、巨大マンドレイクに、クラウディアの矢が突き刺さる。

 

例のバリスタみたいな奴だ。

 

更にセリさんの植物魔術が、一瞬の拮抗に押し勝つ。錐みたいな根が突きだして、巨大マンドレイクを四方八方から貫いていた。

 

悲鳴を上げる巨大マンドレイク。

 

凄まじい物理的な圧力すらそれは伴っていて、辺りが爆圧で吹っ飛ばされる。

 

またか。

 

だが、今見えた。

 

急激に空気を吸い込む点がある。

 

人間で言う所の肺だ。

 

頭を抑えながら、立ち上がる。マスクがなかったら、これは多分悪臭との二重攻撃で、もう動けなくなっていただろう。

 

五感を攻め苛み、更には苛烈に物理的にも攻めてくるか。

 

生憎、五感を攻めてくる相手は既に交戦経験済みだ。そう簡単に、負けてやるものか。

 

詠唱開始。

 

それを見て、レントが果敢に攻めこむ。ボオスもそれに続いた。

 

ディアンが跳躍すると、例の野性的な旋回しながらの斧での打撃をたたき込みに掛かる。一見すると植物に強そうに見えるが、木を切り倒すというのは非常な熟練がいる。斧が木に強い訳ではないし、ましてや此奴は柔軟に体をしならせる化け物だ。

 

立て続けにディアンとボオスを蔓で薙ぎ払って吹っ飛ばし、レントに集中打撃を浴びせる巨大マンドレイク。

 

巨大な口をかっとあけて、レントにかぶりつこうとするが、そこはクラウディアが狙撃して動きを止める。

 

巨大マンドレイクも、口に飛び込んでこようとした矢を、蔓で防ぐが。蔓が爆ぜ飛ぶ。

 

限界が来始めた。

 

さっきの冷気爆弾を、もろに喰らったからである。

 

更にもう一発、メルトレヘルンを叩き込む。

 

さっきのだ。

 

そう気付いたのだろう。

 

巨大マンドレイクは跳躍して、後方に思い切り跳ぶと、蔓を地面に叩き付けて。地盤を砕いて岩の壁を作る。

 

こんなパワープレイも出来るのか。

 

だが、炸裂するメルトレヘルンは、広域を凍らせる。岩の壁ごと、巨大マンドレイクを一気に凍結させる。

 

ただ、それでも直撃を避けた。

 

巨大マンドレイクが、岩盤を吹っ飛ばしながら、氷を粉々に砕いて再び動き出す。このタイミングにと、クリフォードさんがブーメランを叩き込むが。それをそのままで受け。激しく傷つく巨大マンドレイク。

 

ああ、これは何かやってくるな。

 

離れて。

 

全員に叫ぶと、あたしも飛び退く。

 

次の瞬間、あたしを狙った。収束爆破が、炸裂していた。

 

吹っ飛ばされる。

 

地面で何度かバウンドして、思い切り木に叩き付けられた。

 

一瞬意識が飛んだが、すぐに目を覚ます。

 

あったまきた。

 

全身が痛い。大量に出血しているな、これは。

 

それでも立ち上がる。

 

巨大マンドレイクは二度の凍結で、全員がボロボロ。そんな中、中軸になっているあたしを見抜いて。

 

今の渾身の攻撃を叩き込んできた。

 

傷つくことも想定済で、である。

 

レントとタオが激しい攻撃を浴びせているが、動きが鈍くなっている巨大マンドレイク。傷ついた蔓を振るって二人を追い払うが、その時。

 

フェデリーカが、叫ぶ。

 

「冬をどうぞっ!」

 

舞いが終わったのだろう。たんと踏み込むと、鉄扇を振るう。

 

同時に、辺りに拡散していたメルトレヘルンの冷気が、再びマンドレイクに収束。それを、凄まじい咆哮で吹っ飛ばしたのが。最後の頑張りだった。

 

マンドレイクの肺の位置は、既にクラウディアに知らせてある。

 

音波が止んだ直後。

 

その肺を貫いた巨大なバリスタ矢。

 

それでも、必死に体を再生させ、更に音波攻撃をしようとしてくれるマンドレイクは、見ただろう。

 

あたしが、空に出現させた、二万を超える熱槍を。

 

それが、あたしの手元へ収束していく様子を。

 

そこで、逃げようとするのがいかにもこいつらしい。だがセリさんが植物魔術で、マンドレイクの全身を拘束。

 

パワーそのものはセリさんの魔術で出した植物より巨大マンドレイクの方がある。

 

だが、拘束は一瞬出来ればそれでいいのだ。

 

地盤を踏み砕きながら、あたしは収束熱槍を投擲。

 

それがマンドレイクの、二度の凍結で痛み。更にフェデリーカの舞いで冷気を更に浴びせられ。

 

鈍っていた体を貫通。

 

直後、粉々に消し飛んでいた。

 

 

 

マンドレイクのしがいを漁って、内部を調べる。

 

出るわ出るわ。

 

誰かの遺品だったらしいものが、多数出て来た。

 

この手の巨大食虫植物というのは。消化する能力が動物に比べて著しく問題があるらしく、定期的に食ったものを吐き出すらしい。

 

だが体がそもそも動物と構造からして違っているのだ。

 

それもあって、巨大マンドレイクの体内には、フォウレの里の戦士だったり。或いはこの辺りの戦士だったりした人か。

 

或いはそうですらない、ただの通りすがりか。

 

食われた人のものらしい遺品が、山ほどあった。

 

これは相当な人がやられたんだな。

 

そう思って、先に遺品はより分けておく。生々しく未消化の髪の毛なども残っていたが。これは最近に食われたものでは無さそうだ。色からして変色してしまっている。誰のものか分かるか。

 

そう聞いてみるが、ディアンも首を横に振るばかりだった。

 

「この辺りで随分行方不明者が出たって話は聞いてる。 だけど、こんなに食われていたなんて……」

 

「傷の回復、問題ない?」

 

「ああ……」

 

ボオスがぼやく。

 

蔓で何度か直撃を貰って、また骨をやられてしまっている。レントが手際よく直すが。そのレントも全身に激しい傷を受けていた。

 

手当てに一刻ほど掛かり。

 

マンドレイクのしがいの始末も終えて。

 

それで、遺品を乗せてフォウレに戻る。

 

フォウレでも、強烈な戦いが側で起きていると判断したのだろう。厳戒態勢に入っていたが。

 

ぼろぼろのあたし達が来たのを見て、ほっとしていたようだった。

 

あたし達は消臭剤で臭いを落とし。

 

それで、その後デアドラさんに、巨大マンドレイクの残骸の一部を見せる。遺品も。遺品は、やはり見覚えがあるものが多いようだった。

 

「よく仇を討ってくれた。 また、この言葉を口にする事になったな」

 

「あれは倒しておかなければ、いずれもっと大きな災いを起こしたと思います。 当然のことをしたまでです」

 

「そうか……。 遺品は此方で預かろう。 それぞれの墓に葬っておく。 ディアン」

 

「分かってる。 ちょっと休憩させてくれ」

 

ディアンがへばっている。

 

まあ、何度もあの巨大マンドレイクの蔓を喰らったのだ。生きているだけでも凄いのだが。

 

生存力を重点的に上げておいたのは正解だったな。

 

そうあたしは思った。

 

昼食をとって、それでディアンが葬儀に出てくる。その間。タオとクリフォードさんが、さっきの辺りを偵察に行ってくる。

 

特に手酷く手傷を受けていたレントも、既に傷は回復しているが。

 

体力の消耗が激しく。この状態で栄養剤を飲むのは好ましくないとあたしは判断したため。横になって貰っていた。

 

「ボオス、腕はもう大丈夫?」

 

「まあな。 これくらいは授業料だ。 それにしてもお前らと一緒にいると、いつ死んでもおかしくないぜ」

 

「それはまあ、相手が相手だしね。 フィルフサに比べればまだ殺意は低い方だし」

 

「そうだな……。 それでお前の方は大丈夫か」

 

まあ、平気だ。

 

かなり強かに傷ついた。実は右の鼓膜も破れていたのだが。それらも既に薬で回復した。

 

ただやはり、これ以上の無理は出来ない。

 

セリさんも魔力を相当に消耗したらしく、昼寝すると言い残してベッドに消えた。

 

どっちにしても、ディアンが葬儀から戻るまでは、少し休む。

 

タオとクリフォードさんが戻ってくる。スカウトは、二人ともしっかりしてくれていた。

 

「どうだった、東の方」

 

「雑魚は集まってきてるけれど、大物はいないね。 この辺りでも、かなり強力な魔物だったんだよあの巨大マンドレイク」

 

「ありがと。 じゃあ、一旦東はいいね。 二人とも、休んでおいて」

 

「今日はもう終わりか?」

 

クリフォードさんがそう言うが。

 

あたしは首を横に振る。

 

多分、休憩が終わり。葬儀が終わるのは午後二くらいだろう。

 

それならば、北の集落への道をある程度調べる事も出来る。

 

それに、漁村の西側も、色々問題があるという話だ。あたしが一日で家(アトリエの事である)を建てたと聞いて、漁村の代表がフォウレに来たそうだ。

 

デアドラさんは不愉快そうにしていたが。別にかまわない。

 

交渉はクラウディアに任せる。

 

あたしは問題を解決して。

 

それを恩として売る。

 

その時に、クラウディアがきちんと交渉してくれることで。

 

相手に舐められる事なく。

 

こっちの行動を、恩として売る事が出来るのである。

 

しばらく休憩していると、ディアンが戻ってくる。傷の方は問題ない。栄養剤を渡す。

 

「にが!」

 

「だけど体がぽっぽとしてくるよ」

 

「本当だ!」

 

フェデリーカが、ちょっと素直すぎる反応に、口を押さえて視線を逸らす。肩が小刻みに震えているが。

 

まあ、それは良いだろう。

 

ディアンは戦士としてはかなり優れているが、精神的には肉体年齢よりも更に幼いのだ。

 

「じゃ、行くよ。 こんな調子で、まだまだ魔物を退治しないといけないからね」

 

「ライザさんのタフネスは、本当に人外に近いですね……」

 

「フェデリーカ。 さっきの舞い、あれは?」

 

「は、はいっ! あれは冷気を収束させる冬の舞いなんですが、そもそも冷気が元からないと出来なくて……」

 

ああ、なるほど。

 

それで今回は好機と思って使った訳だ。

 

それにしても、あたしに戦慄するのは結構だけれども。時々素が出るな。そしてあたしにそれを気付かれると、小動物みたいにびびるのはやっぱり面白い。嗜虐心をそそられる。

 

ともかく、出る。

 

周辺にある集落を助けて、それだけ恩を売っておく。

 

フォウレの里でも、少しずつあたしに対する警戒を下げて来ている。

 

もう少しで、恐らくアンペルさん達と接触できるくらいまで、警戒度が下がる筈だ。

 

アトリエから出ると、老夫婦が来る。二人とも、もうだいぶ前に戦士として現役を退いたのが明らかだった。

 

礼を言われる。

 

巨大マンドレイクの腹から出て来た遺品の持ち主は、二人の息子と娘であったらしい。どっちもあいつに食われたということだ。

 

そうか。

 

涙を流している老婆を、お爺さんがなだめる。

 

あたしは、仇が討てて良かったと、それだけしかいえなかった。

 

こう言う悲劇は、世界中どこでも起きている。

 

少しでもその悲劇を。

 

減らしていかなければならないのは、間違いの無い事実だった。

 

 

 

そろそろ、この距離からだと気付かれるな。

 

そう判断して、ロミィは距離を取る。既にネメドに来ていたロミィは、ライザの様子を遠くから観察していた。

 

大雨を引き起こして弱体化させたとは言え、四度にわたってフィルフサの群れを全滅させ、王種を倒した今代の英傑だ。

 

更に実力を増している。

 

特にさっき倒していた超大型マンドレイクは、同胞の戦士達でも戦死者を出す事を覚悟する相手だったのだが。

 

勿論手傷を受けていたとは言え、それでも死者を出さずに倒していた。

 

今使っているのは、神代の道具で、人間の知覚範囲外から相手を観察するものなのだけれども。

 

ライザの能力は、既に人間の領域を超え始めている。

 

いずれこれでも、知覚されるだろう。

 

更には、ライザが使った装備品の性能もどんどん上がっているようで。特にあのクリフォードという男の勘は危険だ。

 

勘というのは総合的な五感情報からの閃きによるものなのだが。

 

これに魔術が絡んでくると、時にあり得ないものを察知する。

 

事実今までも、この道具を使っているときに察知された例が何回か報告されているのである。

 

油断は出来なかった。

 

通信装置を用いて、通信をしておく。

 

相手はコマンダーだ。

 

「此方ロミィ」

 

「パミラよー」

 

「ライザはフォウレでも快進撃を続けています。 同胞数人で当たる事を想定した魔物を、死者なしで倒していました」

 

「ふふ、どこか嬉しそうねロミィちゃん」

 

そうか。

 

そうなのだろうか。

 

ライザは幼い頃から知っている。

 

昔は妹のように可愛がっていた。

 

だが、錬金術師になったと知って。その時は静かな怒りを覚えた。錬金術師に対する敵意と怒りは、同胞共通のものだ。

 

祖であり希望でもあるアインが、どういう目にあったか。

 

今もどう苦しんでいるか。

 

同胞全員がそれを知っている。そもそもホムンクルスの技術が、奴隷を作る目的で作られた、極めて非人道的な事実も。

 

同胞の中に、錬金術師を恨んでいない者なんて存在していない。

 

だが、どうしてだろう。

 

荒々しい豪傑肌のライザなのに。今までの錬金術師とは違って、どうしてか見ていて怒りを感じないのだ。最初覚えた怒りも、今は消えていた。

 

それどころか、成長をどんどんしているのを見て、たまに嬉しくさえなる。

 

「観察を続けて。 不用意に気付かれないように、くれぐれも気を付けてねー」

 

「了解。 オーバー」

 

通信を切る。

 

そして、ロミィは漁村の雑踏に消えた。

 

この辺りでも活動している同胞はいる。状況次第では、緊密に連携して動かなければならなかった。

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