暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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原作でもそうですが、交流があるのに、フォウレの里近辺の人は普通と変わらない格好をしています。

これはフォウレの里のルーツに原因があるのもあるんでしょうが。

周囲の集落の人にも関係者がいるのが普通だと考えると。「相当に気合が入った」人だけが、フォウレの里で暮らしていると見て良さそうですね。


2、廃山

あたしが頭を蹴り砕くと、ゴーレムはそれで動かなくなる。数体のゴーレムは、これで片付いていた。

 

夕方少し前だが、このくらいで良いか。

 

幸い、辺りに強力な魔物の気配はない。この辺りの道には、それほど魔物もいないようだった。

 

密林を抜けるまではそれなりに魔物がいたのだが。

 

或いは、密林の生活に特化している魔物が多く。この辺りは、ゴーレムなどの錬金術師が作りあげたものが、未だに動いているだけ。そういう状態なのかも知れなかった。

 

「一度切り上げるよ」

 

「勾配がきついです……」

 

「なんだだらしないなフェデリーカ」

 

「みんな体力ありすぎなんですよ……!」

 

ディアンは平気そうだが。フェデリーカは涙目だ。背負うかと言うと、流石に首を横に振られた。

 

まあいい。

 

ともかく、坂を下りる。この辺りは、密林が途切れてしまっている。

 

理由については、わからないでもない。

 

ここは、鉱山だったのだ。

 

恐らくは露天掘りで、ある程度豪快に掘っていたのだろう。時期がいつ頃かは分からないが。

 

古代クリント王国時代だったら、密林なんて切り開いていただろうし。それを考えると、もっと前。

 

多分神代から、古代クリント王国による全土統一の間だろう。

 

鉱山というのは、どうしても出るものによっては汚染と無縁ではいられない。

 

この辺りは、土もかなり汚染されているようで、植物が生えないようになっているようで。

 

急勾配の坂道に、昔作られた街道の名残らしいものがあって。其処を狙って来る魔物に対処すれば良いし。

 

魔物の質も、密林に出るものほどではなかった。

 

密林に入ってから、数体の魔物を蹴散らし、始末する。それからアトリエに到着。皆に先に休んで貰って、あたしはクラウディアとボオスと一緒に。験者屋敷に。進捗を軽く話に行く。

 

験者はだいぶ態度が柔らかくなってきていた。

 

「ライザどの。 本当に助かっている」

 

「ありがとうございます。 さっき、北にある集落への道を見てきましたが、今の時点では大した魔物はいませんね」

 

「頼もしい話だ。 デアドラ、そろそろ森の中にある幾つかの聖地への安全確保を頼んではどうか」

 

「……そうですね。 これだけの活躍を見せられると、それも考慮しなければならないでしょうね」

 

村の空気は、明らかに変わっている。

 

今までは敵討ちを考える事も出来なかった魔物を、あたし達が次々に仕留めて葬っているのだ。

 

天を焦がす炎と、時ならぬ冬を操るらしい。

 

そんな噂を里でしているのを聞いて、苦笑い。

 

まあ、あながち間違ってもいないか。あたしの能力でやっているのは炎だけで、冬は錬金術の道具によるものだが。

 

それをいちいち説明するつもりもない。

 

「ともかく、先に聞いていた北の集落への道のある程度の安全確保、漁村の西のある程度の状況確認。 これらはやっておきます。 農村の方はどうですか」

 

「農村に嫁ぐことが決まっていた娘が、明日輿入れする。 逆に農村から此方に入り婿することが決まっていた青年が、明日此方に来る予定だ」

 

「それはめでたいですね」

 

「フォウレの里は既に聞いているかも知れないが、血が濃くなりすぎている。 漁村とも人の交換はしているのだが、それでも厳しくなってきている。 ある程度政略結婚の要素もあるが、ちいさな集落しかないこの辺りで、人が連携してやっていくのはそれも必要なのだ。 理解をしてほしい」

 

分かっている。

 

そうあたしが言うと、験者さんはそうかとだけ、寂しく言うのだった。

 

ディアンがいうようにこの人は世界を旅して回った経験があるのなら。この今のフォウレの状態を良いとは思っていないはずだ。

 

それに、である。

 

外に出て、デアドラさんから話を聞く。

 

「ライザどの。 相談があるがいいか」

 

「はい」

 

「既に聞いているだろうが、この地では百年ほどに一度、竜風という災いがある。 災いの内容は、突如として凄まじい風が吹き荒れ、森が一部消し飛んでしまう、というものなのだ」

 

「……なるほど」

 

ディアンは竜風の内容を知らなかったが、そういうものか。

 

まあ、今は真に受けるのは危険かも知れないが、ともかくそういうものだという事は把握した。

 

しかしそうなると、やはり竜風はフィルフサ関連ではないのか。

 

この辺りに門があるのは、セリさんがこの辺りから此方の世界に来たと言う事でも確定なのだが。

 

竜風とやらと門が無関係なのかそうではないのか、ちょっと何とも言えない。

 

あのエンシェントドラゴンの西さんの言葉が、どうしても気になるのである。

 

一応今の話を聞く限り、台風のようなもののようだが。

 

「密林が拡がっているとは言え、建材に向く植物は驚くほど少ない。 それに前の竜風があってから、時間が経っている事もある。 この村は、今竜風を受けたら、ひとたまりもなく壊滅して、多くの死者が出るだろう」

 

「あたしは何をすればいいですか?」

 

「今すぐは別に何も必要はない。 だが、いずれ建物を頑丈に強化して、竜風に耐えられるようにしてもらいたい……。 それについては、追って頼みたいところだ。 報酬として、此方もある程度便宜は図ろう」

 

「分かりました」

 

デアドラさんは頷くと、験者屋敷に戻る。

 

クラウディアが音魔術で、周囲に音が漏れないようにすると。帰りながら歩く。

 

「今の話、信用していいと思う? ライザはどうかな」

 

「うーん。 多分嘘はついていないね。 少なくともデアドラさんは、そういうものだと認識していると思う。 言い伝えでそういうものだと聞いているのかも知れない」

 

「しかし妙だな。 毎日これだけじゃんじゃん雨が降る場所だぞ。 台風程度の事なんて良く起こるだろうに。 それに百年に一度起きるというのも、また不可解だ。 そんな定期的に来る台風なんてあるか?」

 

「二人には話しておこうかな。 王都近郊の門、おかしいと思っていたんだよ。 あれって洞窟の中にあったけれど、どうしてあの辺りにあった国家が、門の存在に気付くことが出来たのか」

 

確かにおかしい。

 

そう二人も頷く。

 

持論を述べる。

 

門が出来るとき。何かしらの条件があると、大きな災害が起きるのではないのかと。

 

エンシェントドラゴンの西さんは、随分と後悔していた。北の里の人間の面倒を見たのも、それが理由だったのだと言っていた。

 

後悔の理由はなんだ。

 

門を作っただけが原因ではあるまい。もしかすると、門を作る時に、大きな災害が起きるのかも知れないと。

 

「そうなると、百年に一度だか、この辺りで門が出来ているのか?」

 

「いや、それはないと思う。 ただ……無関係とも思えない」

 

「ライザ、一度みんなと共有しよう。 アンペルさんと話が出来たら、いい意見が聞けるかもしれないね」

 

クラウディアの言葉には同意できる。

 

ともかくアトリエに戻ると、夕食にする。燻製肉が結構あるので、別に困る事もないし。

 

魔物を退治したことで、フォウレの里の人々もだいぶ態度を軟化させていて、かなり食糧を差し入れしてくれる。

 

ディアンが食べられるものかどうか一目で見分けられるので。

 

あたしも、不安は無かった。

 

明日の話をする。

 

明日は、農村とのダブル婚姻がある。その行き来する二人を、きちんと護衛してからがあたし達の仕事だ。

 

「もう大丈夫じゃないのか?」

 

「いや、念の為。 こう言うときのために、あたし達は安全経路を掘ったとも言える。 それで、そこを大事な役割と人生での転機をもった人達が本当に通れたのであれば、それは大成功だと皆に見せる事が出来るでしょ」

 

「本当にライザ姉は色々考えてるんだな!」

 

「ディアン。 調子に乗るから、そういうほめ方は止めておけ」

 

苦虫を噛み潰すボオス。

 

まあ、あたしも同意見だが。敢えて言う事もないか。

 

ともかく、翌日までしっかり休む。それで鋭気を養って。翌日は、早朝から出て、農村への道を何度か見張る。

 

途中でクラウディアが音魔術を全力展開して、周囲の魔物の動向を探る。やはり、もう縄張りは落ち着いていて。余程の事がない限り、ある程度実力がある戦士や、人間の集団には仕掛けてはこないようだ。

 

ボオスに花嫁行列を呼んできて貰う。

 

フォウレの里から、着飾った花嫁が来る。ちょっとこう言う集落での花嫁にしては年が行っているが。それは恐らくだが、農村にいけなくなった時期から、三年くらいが経過しているからだろう。

 

まあ、充分に結婚適齢期の範囲だし、子供だってこれから作れる。

 

あたしとは縁がない人生だが、まあこれも人の人生だ。

 

あたし達が警護し、農村に花嫁が向かう。花嫁の家族も、あたし達に何度も礼を言っていた。

 

そのまま、農村に到着。宴には参加しない。今度は、農村からフォウレに向かう青年を護衛する。

 

こっちも結婚するのにはちょっと年が行っているか。

 

戦士としてはダメだが、そもそも手先が器用で、職人として期待されている人物であるらしい。

 

それなら、フォウレとしても歓迎なのだろう。

 

フォウレがあの機具という独自の機械を作って売っていることを考えると、なおさらと言える。

 

こっちは特に行列を作る事もないので、そのまま護衛していく。

 

青年はディアンと面識があるようだった。

 

「物好きだなラウドのあんちゃん。 みんな戦士ばかりだし、職人はどうしても肩身が狭いぜフォウレは」

 

「確かにそうかもしれないね。 だけれども、験者様もそもそも職人のなり手が少ないって困っていただろう。 僕は戦士としてはひ弱だが、職人としてはある程度の事が出来るからね」

 

「そっか、人それぞれの生き方って奴なんだな」

 

「そういうことだよ」

 

フォウレの里には、朝二にはつく。

 

礼を言われたが、あたし達はこれからが本番だ。

 

農村から戻る花嫁の親族一同は、明日の朝に護衛すれば良い。勿論フォウレの方でも行われる宴には参加しない。

 

ディアンも、宴は退屈だと言っていた。

 

まあそれはそうだろう。

 

あれがだめこれがだめの里だ。しきたりが色々多くて、楽しく騒ぐというわけにもいかないのだろうから。

 

そのまま、フォウレの東を確認。

 

相変わらずラフレシアだらけで、まだ魔物の群れが跋扈しているが。此処のは物わかりがいいらしく。

 

この間の巨大マンドレイクを倒した所を見ていたからだろうか。

 

あたし達が出向くと、さっと逃げていった。

 

調べるが、危険な魔物の痕跡は無し。

 

こっちを伺っている連中は、少なくともあたしに恐れを為す程度の魔物だ。

 

或いは密林の奧はもっとヤバイのがいて、そういうのから逃げてきた此処で、更に問題を起こしたくないだけかも知れないが。

 

いずれにしても、魔物の事情なんかしらん。

 

仕掛けて来たら潰すだけだ。

 

ともかく、北の集落に向かう。

 

黙々と歩いていると、陽がそろそろ直上に来そうだ。更には、いきなり雲がすっ飛んできて、大雨が降る。

 

密林がない場所だと、大雨は色々と致命的だ。土壌が完全に露出しているこの辺りは、毒物を垂れ流しである。

 

一応。傘は持ってきてあるが、そんなものよりも魔術で防いでしまう方がはやい。

 

あたしが熱魔術で防御のドームを作り、雨を防いで先に進む。これだと、水が流れ込む川は、汚染で酷い事になっているのではないだろうかと、心配になる。

 

何よりこの辺りの様子を見る限り、ここで鉱山を掘っていた人間は。周囲の環境を無茶苦茶にするどころか。

 

働く人間を使い潰す事を平気でやっていたことも、一目で分かる。

 

最低の連中だったんだな。

 

そういう言葉しか、出てこなかった。

 

無言で周囲を確認し。

 

たまに姿を見せる魔物を片付ける。

 

やはり上澄みは密林の方に行ってしまっているらしい。だいたいこの辺りでは、エサもいないだろうし。

 

この汚染物質まみれの中だ。

 

暮らしやすいとも思えない。

 

それでもエレメンタルの類は出たが、幸い大物もいない。数度の戦闘を更にこなして、昼過ぎには集落に到達していた。

 

集落は段々になっていて、これは元々集落ではなかった場所に、後から人が住み着いたのだなと一目で分かった。

 

人が来た。

 

それを見て、何人かの戦士が、長を呼びに行く。

 

ディアンが前に出ると。此処にも知り合いがいるようだった。

 

「おお、ディアンじゃないか!」

 

「グスタフのじいさん、ひさしぶりだな!」

 

「じいさんというにはまだ若いわ」

 

はっはっはと豪快に笑う老人。

 

いや、違うな。

 

やっぱり此処、環境が悪いんだ。だから老けるのが早い。

 

過酷な集落だと、三十くらいで老婆のように老ける女性がいるが、その類だ。男性でも同じ事は起きる。多分五十に達していないのではあるまいか。

 

鉱山は堀りかけで放棄されたのが、近くで見るとよく分かる。だが、この辺りから見ると、良いこともあった。

 

鉱山からの汚水は、途中で流れを変えて、下にあるため池に流れ込んでいる様子だ。これなら、ため池周辺だけに汚水をため込む事が出来るか。ため池の色は凄まじく、とても飲める状態じゃない。

 

いずれ、対策はしなければならないが。

 

海や他の川に無作為に流れ込んでいる様子がなくて、それだけは安心した。

 

里長が来る。

 

多分フォウレで問題視していた里の東……ここに来るなら通らなければならない辺り。彼処に住んでいた魔物が、此処の人達を通れなくしていたのだろう。

 

その話をすると、里長はぱっと顔を明るくした。

 

それにしても、皆姿は殆ど王都の人間と変わらない。

 

フォウレの人だけが、異文化にいる感じだ。

 

「まさかあんなとんでもない化け物を倒すとは……」

 

「ともかく、何人かつれて見に来てくれ。 通れるようになったから、物資のやりとりとかもしたいだろ」

 

「ああ、そうだな。 確かそっちでは機具だか作るのに、鉱石がいっただろ。 今なら余ってるし、格安で売るよ」

 

「そういうのは俺わかんね。 里で験者様と話してくれ」

 

それと、巨大マンドレイクの腹から出て来た遺品で、フォウレの者のものではない代物については、保管してあるそうで。

 

それも見に来て欲しいと、ディアンは頼んでいた。

 

以外とディアンは、外では社交的なんだなと感じる。

 

或いはだけれども、暴れるだけの子供というイメージは、フォウレの内部でのものなのかも知れない。

 

港でも暴れ者という認識はされていたようだが、それでも嫌われている雰囲気はなかったのだ。

 

クラウディアがバレンツの人間だと説明して、鉱石について聞いて来たらしい。

 

この辺りでは水晶が名産で、他にはよく分からない鉱石ばかりが出るとか。

 

「実物は見せてもらったけれど、バレンツでも扱っていないわ。 ただ、神代で掘られていたとなると……」

 

「何か強力な鉱石の可能性はあるね。 ただどうしてそれを掘らなくなったか、が気になるけれども」

 

「……」

 

セリさんが考え込む。

 

今は、分からないか。

 

ともかく、鉱石を見せてもらう。幾つか錬金術で使うものもあったが。なんというか、どれも系統が違う。

 

タオが小首を傾げた。

 

「これらは多分系統が違う鉱石だね。 現在の文明は、神代の錬金術師の作った流れをどうしても汲んでいるんだ。 だから、錬金術で重用される金属が、世界的にも価値があるとされているんだよ」

 

「ああ、それは何となく分かる。 それでどう系統が違うんだ?」

 

「うーん、神代の文明の具体的な内容は僕にも断言は難しいよ」

 

「俺に見せてみな」

 

様子を見てきていたクリフォードさんが来る。

 

そして、しばし見て、断言していた。

 

「ああ、これはロマンに欠ける鉱石だ。 正体が分かった」

 

「どういうものなんですか?」

 

「兵器に使うものだ。 一度神代のかなり古い時代の遺跡で加工工場の跡を見たことがある。 人間を殺す事にしか使えない、寂しい鉱石さ」

 

なんでも毒性が極めて強いとかで。鉱石強度は高くなく、しかも加工は難しいので、後代ではほぼ相手にされなくなっていったものらしい。

 

「どうやってか体内に入るようにして、それで炸裂する仕組みにする兵器として使われていたらしい。 相手の体内にさえ入ればほぼ確殺出来るとかで、それほど大きな威力も必要なくて、それで使われていたらしいな」

 

「なるほどね……毒性が強いのも納得か」

 

「ただ、兵器化する際には圧縮していたらしいから、そのまま辺りの空気を吸う程度だったら即死とまでは行かないはずだ」

 

そうだろうな。

 

だけれども、周りの人達がこう老け込んでいる理由もよく分かった。

 

幸いと言うべきか。今ここで鉱物を掘っている人は、この鉱石にはほとんど興味を見せていないらしい。

 

ずっと昔に鉱山として使われていた事が、此処に新しく住んでいる人にまで害を与えていると言う事か。

 

少しだけサンプルを貰う。

 

クリフォードさんは何も言わない。

 

あたしが対人殺傷用に使ったりしないことを知っているからだ。

 

あたしもその信頼を裏切らない。

 

他にも、この辺りで取れる植物などを貰っておく。水晶も。クラウディアは相変わらず宝石を見ると嬉しそうだが。

 

水晶なんて、実はその気になれば作れるようになってきている。

 

宝石なんてそんな程度のものだ。

 

クラウディアに言うと、大量に作って寄越して欲しいとか言い出しそうだから、今は秘密にしておくが。

 

一応、去り際に鉱山の人達に、鉱物に毒があること。

 

この鉱物が露出している辺りは、埋めてしまった方が良いことは告げておく。

 

それを聞いて、納得したらしく。あわてて里長は埋めに掛かっていた。

 

あたしも、直に触るつもりは無い。触ると粉末が大量に指につくし。安全だとは思えなかったからだ。

 

帰路を行く。

 

魔物はこの環境では暮らしづらいのか、殆ど姿を見せない。

 

密林に入ると途端に姿を見せるので、ちょっと苦笑い。

 

まだ幸いあの巨大マンドレイクの死で縄張りが混乱している様子で。あたし達に仕掛けて来るほどの大物は、それほど多くは無かった。

 

それでも、一応周囲を確認して、掃討作戦を行っておく。

 

ラプトルの群れがかなり多い。

 

それも極彩色の奴もいるし、それ以外にも迷彩色の奴もいる。

 

恐らくは環境に合わせて体を適応させているのだが。

 

ラプトルという魔物が、もしも神代に作り出された存在だったら。

 

ひょっとするとだが。

 

状況に合わせて、多数のラプトルが作られ、各地に放たれた可能性も否定は出来ないだろう。

 

群れで動き、組織的に狩りに来るラプトルはやはり脅威だ。

 

見つけ次第片付けてしまう。

 

この間逃がした群れも見つけたので、残念ながら駆逐させて貰った。

 

それである程度ラプトルを間引いてから戻る。

 

絶滅までさせるつもりはない。

 

だが、人里に近かったり。

 

これだけ街道の近くに縄張りを作っているような群れは、いかしておく訳にはいかなかった。

 

アトリエまで一度戻る。

 

疲れている人も多いので、一度解散する。クラウディアに水晶の大半は渡してしまう。ボオスが、鉱山の里への道が開通したことを、ディアンと一緒に言いに行く。

 

ディアンは見ていると、少なくともフォウレの里の子供には嫌われていないし、慕われているようだ。

 

単純に武力が高いのが理由だろう。

 

一方で、大人には相当に煙たがられている。

 

既に大人の戦士と同等以上の力もあるし。

 

年齢的にも子供とも言いがたいからだ。

 

非常に扱いが難しい年頃で。それは験者やデアドラさんが扱いに困っているのもよく分かるのだが。

 

例の鉱石を釜に放り込んで調べていると、先にボオスが戻ってくる。

 

代わりにタオがディアンと一緒に出ていき。それを見て面白そうと思ったのか、クリフォードさんも。

 

店を調べに行くらしい。

 

こう言うところだと、秘境らしくとんでもない掘り出しものがあったりするそうで。

 

二人とも、一旦はそれを目当てに。

 

本当は、アンペルさん達との接触を図るために、里の様子を確認しにいくそうである。

 

二人とも相当な手練れだ。

 

任せておいて大丈夫だろう。

 

代わりに戻って来たボオスが、興味深いことを教えてくれた。

 

「ライザ、ちょっと小耳に挟んだんだがな」

 

「どうかした」

 

「ああ。 どうやらフォウレの住民は、元々流浪の存在だったらしいぞ」

 

「おかしくないよ。 辺りの人達はみんなロテスヴァッサやサルドニカと殆ど風習が違わないでしょ。 北の里の人達とおなじようなものかもね」

 

ふむ。

 

この鉱石、どうも妙だ。

 

元々毒物として作用するというよりも、最小要素まで分解して見ると、単純に劇物なのだと思う。

 

最小要素まで分解すると性質が大きく変わるものというのは結構多く。

 

例えば今吸っている空気とか、その辺にある水とか。

 

最小要素まで分解すると、極めて危険なものとなって牙を剥く事がある。

 

今我々が生きていられるのは、適度なバランスに自然が保たれているからであって。

 

それが理解出来ない時点で、人間は万物の霊長などとは程遠いのだ。

 

この鉱石も、元々はそれほど危険な代物ではない可能性が高い。神代の人間によって悪用されたのか、或いは。

 

ボオスの話はまだ続く。

 

「いや、それも変な話でな。 元々この辺りに住んでいた人間が、古代クリント王国くらいまでは迫害から逃れて、ずっと各地を流浪していたらしい。 それが古代クリント王国の破綻後にこの地に戻って来て、元々の住処のすぐ近くに居を構えたそうだ」

 

「元々の住処に戻らなかったの?」

 

「それが俺も引っ掛かった。 ただ、これについては詳しく話を聞かないとダメだろうな。 それも、今の段階では無理だろう」

 

頷く。

 

あたしも、マルチタスクで作業をこなしながら、その話を聞いて。ちょっと思うところがある。

 

この鉱石だって、目の仇にするのではなく。

 

本来だったら、ちゃんと使う方法があるかも知れないのだ。

 

無言で色々試す。他の最小要素を加えて確認して見る。

 

反応が激しく、釜の中でぼこぼことエーテルが泡立つ。レントが側であわてた。

 

「お、おい、大丈夫か!?」

 

「エーテルは制御してるから大丈夫。 水を分解したとき、爆発しそうになった時があって、その時に比べれば全然」

 

「そ、そうか……」

 

「水がそんな恐ろしい事に!?」

 

フェデリーカがぼやく。

 

遠い目をしていた。

 

水ですら安全ではないのなら、何が安全なのだろう。そういうあきらめが、目にも宿っていた。

 

反応が一段落する。

 

なるほど、分かってきた。これは何かしら反応を穏やかにさせるものと組み合わせれば、地上に露出しているこの鉱石を毒物ではなくすることが出来る可能性もある。

 

鉱山のほうにある分はもう里の人達が埋めに掛かっているだろうが。

 

流れ出た分はそうはいかない。

 

そうそうに対処がいるだろう。

 

順番に反応を試していると、フィーに呼びかけられる。時間か。

 

とりあえず切り上げる。

 

もうみんな揃っていて、夕食の準備が出来ていた。

 

夕食を取りながら、タオの話を聞く。

 

タオによると、里の態度はかなり軟化してきているらしい。多数の魔物を撃ち倒し、殺された戦士の仇もとったことが大きいようだ。

 

だが後一押し欲しい、ということだった。

 

「明日、漁村の方を見に行くつもり。 漁村の西側ね」

 

「あっちは橋が落ちていたり、魔物も強いぞ。 しかも橋の先には例の禁足地があるんだ。 だから、橋が落ちたのをそのままにしているんだ」

 

「なるほどね。 橋、直しておこう」

 

「橋までなおせるのか! すげえぞライザ姉!」

 

相変わらずの新鮮な驚き方だ。

 

苦笑いしながら、夕食を食べたら風呂に入って寝るようにいい。

 

そして、あたしも研究は今日はここまでと切り上げていた。

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