暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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此処でパティ合流です。

原作だと論文だの何だのでタオの行動に不備が多かったので(ぶっちゃけタオはサルドニカにライザと一緒に真っ先に行く必要性がない。 用事を片付けてからでも問題はなかったはず)、本作ではその辺りは改善して手間を減らしています。

パティとしてもしっかり用事を済ませてからの合流です。

ライザの関わる案件が下手をすると世界滅亡危機クラスである事はパティも前の事件他で身に染みているのです。


神木
序、合流


足を踏み入れた瞬間、空気が変わったのが分かった。密林の入口程度には昨日までも足を踏み入れていたが。

 

この辺りは、完全に人間の領域では無い。

 

この空気は、オーリムの。

 

それもフィルフサに制圧された地域に近い。

 

つまり、人間の敵地と言う事だ。

 

皆、それを理解して黙り込む。フェデリーカには、事前に布を咥えて貰った。舞いはそれでも出来るし。

 

何よりも、下手に叫ぶと魔物を呼びかねないからだ。

 

無言で全方位。勿論足下も上も警戒する。

 

そうしないと、いつ全滅してもおかしくないからだ。

 

前。

 

姿を堂々と見せたのは、巨大な猪だ。

 

後方からも数体。

 

基本的に猪は単独行動をする生物なのだが、恐らく此処ではそれではやっていけないのだろう。

 

じりじりと此方の様子を見ながら、間合いを計っている。あたしは、ハンドサインを飛ばす。

 

各個撃破だ。

 

先に手を出したのは、あたし達からだ。

 

セリさんが、植物操作。

 

近くにある毒のある木の実を操作して。それを炸裂させる。もろに毒のガスを浴びた猪のうち何体かが悲鳴を上げて飛び退き。その瞬間、全員で残った一体に殺到する。

 

かなり大きな猪だが、それでもこうなるとひとたまりもない。レントの剣撃を、元々分厚い頭で弾き返したのが最後の頑張りだっただろう。

 

首筋を通り抜けるようにして、ボオスが斬る。

 

それで。動脈から派手に血を噴いた猪が、竿立ちになり。

 

無防備な腹に、ディアンが旋回しながらの豪快な一撃を入れて。そのまま撃ち倒していた。

 

怒り狂った残りの猪が、突貫してくる。

 

あたしが熱槍を展開して、弾幕として打ち込む。それを無理矢理突破出来たのは一体だが。

 

そいつの鼻面に、クリフォードさんがブーメランを叩き込んでいた。

 

猪の突進は猪突の言葉通り凄まじいが、実はカーブも自在にこなす。其処に直撃させたクリフォードさんの技量は凄まじい。

 

蹈鞴を踏む猪に、クラウディアが乱射を浴びせて、ハリネズミになった猪がそれでも走ろうとして、倒れる。

 

残りは形勢不利とみたか、さがろうとするが。

 

既に上空に、あたしが熱槍を多数展開。

 

それを上から降らせて。収束させた奴が全身を貫いていた。

 

全て倒した。

 

死体を引きずって、一度安全圏まで逃れる。

 

入口付近でこれか。

 

この様子だと、密林に入らなくなったのも納得である。

 

死体を捌く。

 

猪は泥を浴びる事で寄生虫をとるので、毛皮は基本的に泥だらけだ。水を使って泥を流した後もかなり臭いが強い。

 

そこを煙で燻して、更に消臭剤をかけて臭いを取りつつ。

 

皮を剥いで、肉を切り分ける。

 

一見すると美味しそうだが、特に豚や猪の肉を生で食べるのは絶対にダメである。寄生虫の巣窟だからだ。猪は皮につく寄生虫は排除できるが、体内のは出来ないのである。これは豚も同じ。

 

即座に肉に火を通して、煙で燻す。

 

内臓も全てそうして処理する。食通ぶった人間が豚の内臓を生で食べる事があるが、最悪今度は自分の内臓に虫が湧く。それが現実である。

 

骨に関しては、砕いて運びやすくして。

 

そして、戦利品として、一度フォウレに持ち帰っていた。

 

肉も毛皮も、殆どはフォウレの方に分けてしまう。こっちとしても、食糧としての肉はありまあっているし。

 

この程度の魔物の毛皮だったら、別に大あわてで集めるほどのものでもないからである。

 

すぐに次に。

 

フェデリーカがもう、と泣きそうな顔をしたが。とにかく行く。

 

この様子だと、神木とやらに辿りつくのは骨だぞ。

 

あたしはそう思いながら、密林に赴く。

 

少しずつ、きりきりと刺すような空気になれていく。

 

大丈夫。

 

オーリムに最初足を踏み入れたときほどの炸裂するような危険は感じない。ここなら、まだいける。

 

だが、油断したら即座に死人が出る。

 

ともかく、警戒しつつ魔物を引き寄せて、少しずつ片付けて行くしかない。

 

大きな蜂が飛んできたので、即座に熱魔術で殺す。蜂は素材として使えるので、こうして回収しておくのだ。

 

熱に弱い弱点があるので、今ではこうして簡単に仕留められるようにもなっている。

 

そのまま周囲を探索していると、すぐに魔物が姿を見せる。

 

今度は触手多数で這いずっている、何だかよく分からない筒みたいな生物だ。セリさんが、即時で正体を看破していた。

 

「ウツボカズラの亜種のようね。 本来はただ獲物が落ちてくるのを待つだけの食虫植物なのだけれど」

 

「人間の大きさの三倍はありますよあれ……」

 

「片付けるよ」

 

言葉短くそう返して、すぐに戦闘に入る。

 

ウツボカズラの亜種は、触手で体を固定すると。いきなり大量の溶解液をこっちに飛ばしてくる。

 

凄まじい勢いで、とっさにセリさんが覇王樹で壁を作らなければ危なかっただろう。

 

そのまま散開して、全方位から皆で襲いかかる。

 

触手を自在に振り回して迎撃してくるウツボカズラだが。速度にものを言わせてタオが接近戦に持ち込み。

 

全身をズタズタに、一瞬で切り裂いていた。

 

どうと倒れるウツボカズラ。

 

だが、わらわらと同種らしいのが、奧から現れる。

 

どれもエサを求めているとみて良いだろう。

 

まあいい。

 

此奴は此処の魔物としてはそこまで危険な方じゃない。全部片付ける。

 

そうして、全て片付けて。

 

また魔物が現れて。

 

順番に片付けて。

 

手傷を受けて。

 

負傷者を治療しながら後退して。それで夕方近くまで交戦を続けた。

 

何度も行き来しながら、少しずつ道を切り開く。それでおかしいと感じる。

 

「違和感がある」

 

「どうしたんだライザ姉」

 

ディアンが興味津々に聞いてくる。皆、アトリエの中でめいめいに休んでいるのは、それだけ負担が大きいからである。

 

ちょっと洒落にならない。

 

それが皆の本音だろう。

 

ここの危険度は、今まで出向いた土地では、フィルフサに支配されていたオーリムにつぐものだ。

 

オーリムの場合は、覚悟も出来ているから、皆緊張状態を維持して。それで戦闘が終わったら、みんな死んだように寝て休んだものだが。

 

此処ではそうもいかない。

 

安全地帯とそうではない場所を行き来するから、どうしても逆に疲労がたまってしまうのかも知れない。

 

「密林の中に道があった。 密林の土壌がひ弱なことを考えても、あの道が、ずっとそのまま維持されているのは理由があると思う」

 

「そういえば……そうだね。 僕もちょっとおかしいと思った」

 

「俺はおかしいともおもわなかった。 そうか、やっぱりライザ姉達は色々と詳しいんだな」

 

「……皆、此処予想以上に色々あると思う。 気を付けて掛かろう」

 

思った以上に先に進めなかった。

 

これは厄介だ。

 

とにかく、少しずつやっていくしかないが。それもかなりの危険を伴うのは確実である。アンペルさん達があまり酷い扱いを受けていないのは分かっているのだが。それでも、門があること。

 

それがどうなっているか確認できていないということ。

 

それらの問題もある。

 

巨大マンドレイクがいた辺りを少しそれて北に行くと、ディアン曰く種を集める場所であるらしいが。

 

今は魔物が増えていて、近づけないとも聞く。

 

だとすると、やはり密林側から行くしかないだろう。

 

密林を一旦抜けて湿地帯に出て。

 

其処から回り込むという手もあるのだが。

 

いずれにしても、もっと地理情報が必要だ。一度今日は戻って、倒した魔物の素材をコンテナに入れながら、皆で話をする。

 

ボオスがぼやく。

 

フォウレで、入り婿に来ないかと言われてから、愚痴が増えている。

 

まあ気持ちはわからないでもない。

 

ボオスとしても、関係構築はしたいと思っているだろうし、突っぱねるわけにもいかなかったのだろう。

 

クーケン島を事実上回しているブルネン家の跡取りだと言って、それで納得して貰ったようだが。

 

「まだこの先、山みたいな魔物が最低三体いるんだろ」

 

「一体はどうにか戦闘を回避できそうだから、放っておこう。 問題は残り二体になるね」

 

「厄介だ。 出来ればそいつらも避けたい」

 

「そうしたいのは山々だけどね。 フォウレにいずれ攻めこんでくる可能性がある。 それに、フォウレだけではなくて、農村とか漁村も危ない」

 

第一に、そも竜風とかいう訳が分からない災厄が来る可能性があるのだ。それを考えると、今のフォウレの里の位置が適切だという保証すらない。

 

そもそも嫌な予感がプンプンする。

 

フォウレの里は、竜脈の真上にある。これは植物の生え方とかであたしにも即座に分かったのだが。

 

なんで竜脈を竜脈と呼ぶのかが、今でもよく分かっていないのだ。

 

神代からそう呼んでいたらしいのだが。

 

これについては、タオが解析しても理由がよく分かっていないらしい。つまり、油断は出来ないという事である。

 

もしも、竜風が竜脈に沿って起こりでもしたら。

 

それは色々と、洒落にならない。

 

「神木にまではまず到達するとして……そのあとアンペルさんと接触して打ち合わせをしたら、その二体の魔物をどうにか片付ける事も考えよう。 多分だけれども、この密林があまりにも危険すぎるのも、強力な主の存在が原因だと思うからね」

 

「ドラゴンと同等くらいには強いんじゃないか」

 

「ドラゴン!」

 

「俺たちは倒した経験もある」

 

ディアンが目を輝かせたので、レントが先に水を差す。

 

それはそれとして、確かに小さめのドラゴンくらいだったら、凌いでいる可能性は否定出来ない。

 

というか、あの巨体。

 

明らかに摂理をこえてしまっている。

 

どう考えても、普通に生じた魔物とも思えなかった。

 

「トレントの可能性はないですよね」

 

「違うな。 トレントはそんなに活発に移動しない。 だいたいトレントがいる森は、もっと静かで秩序が取れている」

 

「そうなると、戦闘は避けられそうに無いですね」

 

「残念ながらそうなるな」

 

クリフォードさんもそういう悲しい事実を突きつけてくる。

 

ということは、やりあわなければならないということだ。

 

それに二体のマスト撃破対象に加えて、フェンリルが存在している可能性が高い。それも複数だ。

 

だとすると、この森は本当に突破がしんどい。

 

まずは、最初の目標を。神木に到達することを目指す。

 

その先に色々とやることがあるが。

 

まずは其処からだ。

 

皆、早めに眠って貰う。

 

そしてあたしは、翌朝も。一番に起きていた。

 

 

 

伸びをして、体を動かしていると。

 

覚えのある気配が近付いてくる。

 

顔を上げると、背はあまり伸びないが。どんどん気配が大人びている、去年の王都での戦いで一緒に最後まで戦い抜いた戦友。

 

パティがそこにいた。

 

「ライザさん!」

 

「パティ! 王都は大丈夫なの? 今佳境だって聞いたけど」

 

「片付きました。 これでロテスヴァッサに蔓延っていた腐敗は一掃されます。 私はお父様に言われて、ライザさんの手伝いに来ました。 後……」

 

「タオもいるよ。 心配しないで」

 

良かったと、少しだけパティは表情が大人びている。

 

婚約者と一緒にいて大丈夫なのかとちょっと思ったが、まあ体制が変わったのならそれは大丈夫か。

 

王都で体制変更の主導をするのはヴォルカーさんだろうし、その支援をするのはあのメイドの一族だ。

 

今回の件で地獄に叩き落とされる貴族はいるだろうが、連中はずっと富を相続するだけで人類社会に何一つ貢献してこなかったでくの坊の集まりだ。そんなのが路頭に放り出されて、それで何か困る事があるのか。

 

魔物に押されている世界で、その現実を理解もせず。状況を改善も出来ず。自分達だけ安全な井戸の中に閉じこもって、自分達は優秀だ等と偉そうにほざいていた連中。

 

そんな連中は、一度痛い目にあうべきだろう。

 

だから、アーベルハイムが起こした変革については、あたしはむしろ歓迎的だ。

 

もっとも、これからアーベルハイムが何かできるとも思わない。

 

王都の上層部が変わったからと言って、周辺の都市が劇的に改善するとも、あたしは期待はしていなかったが。

 

それをパティにいうつもりはない。

 

「話は聞いています。 アンペルさんとリラさんが捕まっていて、此処でかなり大変な目にあっているとか」

 

「うん、それについても話すけれど、ちょうどその捕まっている場所が此処でね」

 

「!」

 

「アトリエで話そう」

 

大丈夫。周囲は確認している。

 

早朝と言う事もあって、誰も聞いていない。

 

フォウレの里の人間の探知能力については、ここ数日でしっかり確認してある。一番鋭いデアドラさんでも、多分今のは聞いていない。

 

アトリエに入ると、寝起きのセリさんがぼんやりしながらスムージーを口にしていたけれど。

 

パティを見て、顔を上げていた。

 

「久しぶりね」

 

「久しぶりです。 此方でも問題なく活躍出来ていますか」

 

「ええ。 此処にいる戦士達は、皆オーレン族の手練れと同じかそれ以上の戦士達よ。 私が必ずしも戦闘で主役を張るわけではないわ」

 

「そうですよね……」

 

パティが苦笑い。

 

皆がおいおいと起きだしてくる。タオも起きだしてきて、パティがわっと明るい顔になった。

 

それから、パティについて紹介する。

 

相手が誰だろうとパティはしっかり最敬礼をするので、好感が高い。

 

貴族というのは自分達の間だけで通じるような物差しを作って、それで相手との上下を決めるような所があるが。

 

パティに対して好感を抱いたのは、そういうことをしないという事にある。

 

あくまで最前線に立つ戦士として、常に命を張る。

 

そうすることで手本となる。

 

だから、パティに対して悪感情は湧かない。

 

まあ去年の頃はまだまだ未熟だったけれども。

 

今は戦士として、充分にあたし達と共に戦える段階にまで腕を上げているのだから。

 

「また強くなったな!」

 

「いえ、まだまだです。 うちのメイド長からは、三度に一本取れれば良い方なので……」

 

「その気持ち、立派だぜ。 自分を強いと思い込むと、其処で進歩が基本的に止まるからな人間は」

 

「はい!」

 

返事も気持ちが良いな。

 

貴族がこういう人間ばかりだったら、あたしも王都で不快なものはみないで済んだだろうに。

 

残念ながら、アーベルハイムの親子は、変わり者扱いで。

 

だからこそ、王都を変える必要があると気付いたし。

 

それで実行も出来たのだろう。

 

「タオさん、論文を郵送で良いので提出した方がいいと思います。 学術員の方で、いきなり旅行に行ってしまったと悪評が出ているらしくて……」

 

「リルバルト先生が共著の論文を出してくれると思うよ。 ただあの人は気まぐれだし、論文がいつできるか分からないけれど」

 

「あの変わり者の先生が王都を出た話は聞いていますが、共著の論文を書くような事があったんですか」

 

「まあ、ちょっとね」

 

軽くパティと話をする。

 

一番最後に起きだしてきたフェデリーカが、寝起きに弱くてぼんやりしていたが。目が覚めてきて、一人増えたのに気付いたらしくて。

 

それであわてて、身繕いをしていた。

 

二人はかなり立場が似ている。

 

年齢も近い。

 

あたしは提案して見る。

 

「二人とも、互いを名前で呼んでみたら?」

 

「えっ。 でも……」

 

「サルドニカの指導者ですよ。 私よりも立場的には上ではないですか?」

 

「馬鹿馬鹿しい。 あたしがそういう意味を考えてごらん」

 

そう諭すと、あっそうかとパティが顔に書く。

 

そして、フェデリーカも気付いて、咳払いしたようだった。

 

馬鹿馬鹿しい上下関係など必要ない。

 

年長者や先達には一定の敬意を払うべきだが。それ以上でも以下でもない。

 

此処では同じ、世界の危機に立ち向かう同志だ。

 

だから、二人は根本的な位置で対等である。

 

「え、えっと、フェデリーカ。 私の事はパティと呼んでください」

 

「分かりました。 パティ……でいいですか」

 

「はい、お願いします」

 

「ちょっとまだぎこちないな」

 

クリフォードさんがぼやく。

 

そして、その後は。

 

軽く談笑してから。朝のミーティングに移るのだった。

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