暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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ライザ1の頃からそうなのですが、アンペルさんって割と無茶を平気でする方なんですよね……

ただ3になってからはかなり性格的に余裕が出来たのか、以前のように激高すると口調が荒れることがなくなったように思えます。

原作世界基準でもアンペルさんは錬金術師としては異端も異端だったようなので、ライザという理解者兼最高の弟子が出来た事で、色々考えも変わったのかも知れませんね。


3、鉄格子ごしの再会

フォウレの里の主要な面子が、あらかた出かける。それで明確に隙が出来た。

 

漁村の方でも、フォウレの里の機具と森の幸については有り難くいただいているのである。

 

農村からもかなりの人数が出るらしい。

 

実はあたしも出てほしいと言われていたのだが。

 

その代わりボオスが出る。

 

ボオスはあたしの地元の次世代当主だという話をして。代理としては申し分ないことを既に周囲に話してある。

 

更にはフェデリーカにも出て貰う。

 

フェデリーカは陰謀の類は好きではないだろうし。

 

何よりも、サルドニカのトップだ。

 

これも既に話は通してある。

 

サルドニカのトップすら連れ回している。

 

そういう話を聞いて、最初はまさかと思ったフォウレの里の人間もいたようだけれども。フェデリーカが色々と証跡を見せて。

 

それで納得させた。

 

ついでに護衛としてレントとクリフォードさんとパティも出て貰う。

 

パティも王都の貴族令嬢だという話はしてある。

 

これだけの面子が揃っていることに、フォウレの里の面倒くさそうな老人達も流石に戦慄したらしく。

 

少なくとも、面と向かってあたしの文句は言えなくなった。

 

いくら何でも面子が凄すぎると疑念を最初を浮かべた可能性が高いので、だから実績を積んでからこういう面子だという話をして。

 

それで納得させたのである。

 

魔物を多数仕留めたのは、凄い面子が揃っていたから。

 

実際には違う。

 

順番が逆だ。

 

フェデリーカは職人としては一人前だが、戦士としてはまだまだだし。

 

パティは貴族令嬢というよりも、前線で命を張る純粋戦士としてのヴォルカーさんに鍛えられたから立派な心を持っている。

 

強いから偉いのではなく。

 

たまたま、あたしが関わった人間が、あたしと一緒に強くなった。

 

それだけの事だ。

 

フェデリーカが最初から偉くて強かったら。そもそも一緒についてくることはなかっただろう。

 

元々フェデリーカはサルドニカの二大勢力の傀儡に過ぎなかったし。

 

パティだって、あたしに会わなかったら、きっと王都で燻っていて。タオと婚約することもなかっただろう。どっかの適当な貴族に嫁がされていたのは、ほぼ間違いないとみて良い。

 

勿論あたしだって最初から戦力があったわけじゃない。

 

その辺の戦士以上の実力がある自信はあったが。

 

元々あたしは農家の娘で。両親共に普通の農民だ。

 

先祖を辿れば凄い戦士がいたというようなことも聞いていない。仮にあったとしても、あたしはその遺産で強い訳でもない。

 

貴種流離譚みたいなのが世の中では人気かも知れないが。

 

そんなものは大嘘なのである。

 

ともかく。戦力の大半を分けて、あたし達は今日は一日休みという事にする。

 

セリさんはずっとアトリエの側で薬草を栽培していて、今回の行動には関わらない。

 

タオもフォウレの里の人達とは関わらず、今日は日の当たる所でずっと読書をしていてもらう。

 

無論これらは陽動である。

 

あたしはタイミングを見て、クラウディアとディアンと一緒に動く。

 

クラウディアは音魔術での会話をするための係でもあり。書記でもある。

 

話す内容については、既に決めていた。

 

ディアンが呼びに来たのは、昼の少し前だ。

 

とにかく警備の人員が少なく、人がいなくなるのは実はこの時間だ。夜になると、むしろ警戒が厳しくなる。

 

何より験者はかなりの使い手である。

 

どんな風に話が漏れるか分からない。デアドラさんもそうだ。

 

この二人がいるだけで、失敗の確率が跳ね上がるのだが。

 

幸い二人とも、今は出かけている最中だ。

 

陽動に動いてくれている皆に感謝しつつ、あたしも動く。

 

験者屋敷の裏手。

 

その一角で、クラウディアが音魔術を発動。

 

事前に調べてあるが、此処は里からの死角になっている。

 

その分普段は警邏の巡回の道中にあるのだが。

 

今はそれも、昼飯で場を外している。

 

そして何より、今回は重要な会議であり。

 

更にあたし達がフォウレの里の警備で控えているという油断がある。

 

あれだけの魔物を仕留めて、更には小山のような、里ではアンタッチャブルになっていた巨獣まで仕留めた。

 

それもあって、戦士達は明らかに油断している。

 

その隙を突く。

 

ただ。どうも妙だ。

 

この隙、意図的に作られたものではないか。

 

まさかとは思うが、あの験者さん。

 

いや、それについてはいい。ともかく、今は悪い方の勘を想定して動く。ただ、問題が起きたときに警告してくるフィーが、懐でずっと大人しくしている。

 

だからあたしはそのまま、計画を動かしていく。

 

クラウディアが頷く。

 

音を届けられるということだ。

 

あたしは、呼びかける。

 

「アンペルさん、リラさん」

 

「ライザか。 わざわざすまないな。 近場に門がある事がほぼ確定していて、動くに動けなかった」

 

「あたし達を呼んでくれれば行ったのに」

 

「其方でも色々あったんだろう。 門の状態だけでも確認しておきたかったんだ」

 

まあ、言いたいことは分かるが。

 

もう少し弟子を信用して欲しいものである。

 

それだけの実績は積んできたつもりだが。

 

ともかく、話を続ける。

 

現在、アタックしている「扉」について。

 

神代の、かなり古い時代のものであること。扉を開けた先に、多数の錬金術師の夢の跡が散らばっていたこと。

 

更には、恐らくだが、神代に作られた兵器としての魔物が邪魔をして来ていること。

 

それらを順番に話す。

 

エミルと言う錬金術師が来ていたらしいと言う話もすると。

 

アンペルさんは食いついていた。

 

「エミルだって!」

 

「アンペル、声を落とせ」

 

「……すまない。 ライザ、先に出るための打ち合わせをする。 まずライザ、お前は門の状態を確認して欲しい。 フォウレの里で「種拾い」を行っている古城の内部に門は確定である。 これはリラが確認済みだ。 オーリムの植物があるのをな」

 

「なるほど。 実はセリさんが、この辺りから此方に来たらしいんです」

 

セリさんにしても、五百年以上前の話だ。

 

わざわざ覚えていないのも、仕方が無いのかも知れない。こっちの世界なんて、それこそどうでも良いだろうし。

 

オーリムの人……オーレン族からすれば普通はそうだ。

 

好き放題に侵略を重ねて来た此方の世界の人間の集落なんて、いちいち覚えて何ていないだろう。

 

「行き違いも過ぎるな。 良く聞いてくれ。 城の中には自動で警備する機械のようなものがあって、普段は魔物の反応ばかりで殆ど見向きもされていないが、人間が来た時だけは反応するようだ。 我々もそれに引っ掛かった。 探知のシステムは恐らくは魔術によるもので、人間の体熱を感じ取っているようだ」

 

「体熱ですか」

 

「そうだ。 人間の体熱はかなり特徴的で、他の魔物とは違う。 更に体熱の形状も感知できるようだ。 それを誤魔化さないと、城の奧へと進む事は出来ないだろう。 この装置は見て覚えた。 無力化する手段は……」

 

幾つかの話を聞く。

 

なるほど、「感知できる方向」があると。

 

そうなると、その装置の裏側からいかないと多分無理で。更には何かしらの方法で、熱探知を誤魔化す必要も生じるわけだ。

 

分かった。それだったら、やるべき事は幾つかある。

 

「それが分かれば対策できます」

 

「だろうな。 私は初見殺しに見事に引っ掛かった。 神代の装置がこうも保全されている場所は、滅多にないんだ。 更に厄介な事に、この里の人々は、神代に錬金術師とは違う方向の系統から技術を継承してきたとみて良い」

 

「……」

 

「既に聞いていると思うが、集めてくる種にも、彼等が作っている機具にも問題がある。 まずは城で種を集めて来てくれ。 それで種を改良する事で、恐らくは信頼を得られる筈だ。 私は機具そのものを改良する研究をしている。 技術が歯っ欠けになっていて、どうしても耐久性に問題が生じているんだ。 私の方でそれを直せば、交換条件として表に出られるはずだ」

 

両面作戦か。

 

アンペルさんは、既にほぼ研究を完成させているそうだ。

 

あたしも頷く。

 

ただそれには、まずは種の現物を見つけなければならないだろうが。

 

「フィー!」

 

懐のフィーが警戒を促してくる。

 

そろそろだな。

 

あたしは、ではまた来ると言い残して、その場を離れる。ディアンは不思議そうな顔をしてついてくるが。

 

暇そうな戦士が戻ってきたのを見て、ぎょっとしていた。

 

もう少し話し込んでいたら気付かれていただろう。

 

眠らせることは簡単だが。

 

記憶を消すのは難しい。

 

アトリエに戻る。その間、クラウディアは音魔術で気配を消すことに注力してくれていた。

 

アトリエの内部に入ると、それでやっと音魔術を解除。

 

フィーが懐から出て来て、周囲を飛び回る。

 

リラックスしたのだろう。

 

「ありがとフィー。 助かったよ」

 

「フィー!」

 

「フィーもすげえな! あの戦士、気配を消す隠行がかなり上手くて、俺も気付けなかったのに」

 

「この子は賢いし色々出来るんだよ。 会話くらいは理解出来ているから、迂闊な事はいっちゃだめだよ。 汚い言葉とか覚えさせたら許さないからね?」

 

ひっと悲鳴を上げると、こくこく頷くディアン。

 

まあ、それはいい。

 

ともかく、これで幾つも分かった。

 

ほぼ確定したが、エミルはアンペルさんの知人だ。同一の名前の別人物の線もあるが、百年ほど前には錬金術師の数が極端に減っていたこともある。

 

クラウディアの話によると、現在も少数だけ錬金術師を名乗る人間はいるという事だが。その殆どが、まともに薬も作れないという事だ。

 

そうなってくると、百年前に集められた錬金術師達は最後の精鋭だった可能性が極めて高く。

 

それらが何かしらの形で全滅した結果、錬金術はこの世からほぼ絶えたのだ。

 

それはこの世界で錬金術師が。いやオーリムでもか。働き続けた世界に対する陵辱そのものから考えると、ようやく来てくれた結果だとも言えるが。

 

錬金術そのものには罪がないことを考えると。

 

色々と複雑な気分でもある。

 

ともかく、話をまとめておく。

 

種拾いをする城に、出向く必要がある。

 

ディアンの他にも何人か種拾いの要員はいるらしく。それで魔物がいなくなった今、種を集めたいということだ。

 

ならば、危険範囲を避けつつ、種を拾う必要もある。

 

同時に、門の状態も確認したいが。

 

「ライザ姉、その探知する装置っての、俺分かるかも知れない」

 

「それは有り難いね。 種を拾う範囲にもあるの?」

 

「ある。 というか、フォウレの里の人間が種を拾いに行くのはそれぞれ決まった時間に里の許可を得てやっているんだ。 城の中も魔物だらけだからな」

 

「なるほどね」

 

そのタイミングでの人間の探知なら大丈夫、なのか。

 

いや、違うな。

 

恐らくだが、そんなものを未だに監視していると言う事は、何かしらの理由があると言う事だ。

 

「何かそんなものをまだ監視している理由に思い当たる節はない?」

 

「分からないけど、城の奧には主がいるらしいって聞いてる」

 

「主……」

 

「前に種拾いが皆殺しにされた事があったらしいんだ。 しかも、その主は荒れ狂って、しばらく城の中に立ち入りが出来なくなったらしい。 そういう事もあって、絶対にそこからは立ち入るなって話になったらしくてさ」

 

歯がゆいと、ディアンは言う。

 

確かにそいつは明確な害獣で、それを怖れているのではフォウレの里はいつまでも逃げ腰になるだろう。

 

とはいっても、今みたいな戦力が揃っているケースの方が珍しいのである。

 

ディアンは血気盛んで。

 

何でも出来る全能感に包まれている年頃かも知れないが。

 

大人になってくれば、それが如何に無謀なのか、分かってくるのでは無いかとも思ってくる。

 

験者を全面的に擁護するつもりは無いが。

 

まずは、皆と話して、それで落としどころを作るべきだろう。

 

後は一旦解散とする。

 

以降の話し合いは、皆が揃ってからだ。

 

あたしは色々と、ここしばらく得た素材などの確認をしておく。幾つも、調べるべきものはあったからだ。

 

ディアンは村に出て、子供達の相手をする。

 

アトリエ内部での打ち合わせについては絶対に話すな。

 

そう釘を刺してあるので、ディアンも口を滑らせる事はないだろう。

 

ディアンは不満があるからそれを口にはしているが、実の所本当の意味でのクソガキではない。

 

本当の意味でのクソガキになってくると、意味もなく暴力を振るって他人のものを壊して回ったり。

 

ただ面白いという理由で火をつけて回ったり。

 

他人を殺して回ったりする。

 

そういうものだ。

 

あたしの同年代にはそれはいなかったが、二つ上の世代のクーケン島にそれがいたらしく。

 

まだまともだったころのザムエルさんが、斬り捨てたらしい。

 

最後まで面白かったからやったとかほざいていて。

 

しかも口から泡を吹きながら、獣みたいにわめき散らしていたという。

 

そういうのが現実としていることを考えると。

 

しっかり考えているディアンは、まともな方だ。

 

調合をしていると、皆戻ってくる。

 

デアドラさんが、アトリエに来て、何かあったか確認してくる。あたしは何も特には問題が無かった事。

 

相談したいことがある事を告げると。

 

夜に来て欲しいと言われた。

 

やはりだが。

 

験者は知っていて。

 

デアドラさんも、それを共有しているのかも知れなかった。

 

 

 

夜になってから、あたしとボオスとクラウディアで験者屋敷に出向く。

 

夕食はパティとフェデリーカに任せる。パティは料理はあまり得意ではないのだが、まあ斬ったりするのは出来るので。

 

フェデリーカは料理は出来るが、力仕事はあまり得意じゃない。

 

とりあえずそれほど話すのに時間は掛からないと告げてあるので。

 

戻って夕食が出来ていなかったら、クラウディアが手伝うようだろう。

 

験者屋敷に入ると、老人が数人いたが。あたしに礼をして出ていく。前に、子供の仇を代わりに討った老人だ。

 

あたしも笑顔で送る。

 

出来ればいい関係は構築して、そのまま維持しておいた方が良いだろう。

 

験者は既に夕食を取ってきたらしい。

 

また、ボオスからちょっと聞いたが、話については基本的に既に皆で先に決めていたらしく。

 

ほぼ問題も無く進行したらしい。

 

あたしが魔物を片っ端から駆逐したこともあって、漁村も農村も精神的な余裕が出始めており。

 

それぞれ足りない物資についてはまとめる事もできていたし。

 

それを交換する事で、問題なく話は進んでいったそうだ。

 

験者も、それはある程度精神的に余裕はあるだろう。

 

機嫌次第で態度を変えるようなアホもいるが。

 

この人は、それについても違うとは言えるが。

 

「ディアンの種拾いに同行してもいいですか」

 

「随分とまた、急な話だな」

 

「いえ。 フォウレの里の皆に聞きました。 種について役に立てると思います」

 

「……君達がしてくれた事を考えると頼みたいのは山々だが、里の皆がその話を聞いたら、一気に態度をひっくり返す可能性がある」

 

まあそうだろうな。

 

ディアンがいたら噴火していたかも知れない。

 

そう思う。だから、あたしは連れてこなかった。

 

あたしは順番に説明をしていく。

 

「種について聞きました。 動力源として土に埋まっているものを拾ってくるらしいですね」

 

「うむ、それくらいは情報があるだろうな」

 

「ただ品質にばらつきがあって、拾ってきた時にまともな状態ではないものもあるとか。 機具にセットして使っていると、消耗もしていくとか」

 

「……その通りだ」

 

頷く。

 

そしてあたしは、咳払いした。

 

「使えない種を、使えるようにしますよ」

 

「何……」

 

「勿論現物をみないと何ともいえません。 ただ、場合によっては出来る可能性がある、とだけ言っておきます」

 

験者の心が動くのが分かる。

 

それはそうだろう。

 

フォウレの里は、テクノロジーという観点では王都より上だ。それが歯っ欠けで、資源が欠けていると言うだけで。

 

更に言えば、種が尽きれば、いずれそのテクノロジーも失われ。密林の中で暮らすだけの閉鎖的な一族だけが残るだろう。

 

そうなってくると、農村や漁村、鉱山街との連携も出来なくなり。

 

いずれ血が濃くなりすぎて自滅する。

 

フォウレの里の老人に聞かされた。

 

流浪の旅を何十世代も続けて来たのだと。

 

その話は恐らく嘘では無いだろう。

 

だが、流浪の旅を続けていたからこそ。フォウレの里の人々は、血が濃くなりすぎるのを避ける事が出来たのだ。

 

今はその流浪の旅が終わってしまったから。

 

また血が濃くなりすぎて、破滅する未来が来ようとしている。

 

験者はそれを避けるべく動いているとみて良い。

 

だから門外不出の機具を売っている。

 

「確実に出来るとは言いません。 でも、やってみても良いでしょうか」

 

「……そうだな。 君達のやってくれたことを考えると、賭ける価値はあるだろう」

 

「その様子だと、まだ何かありますか」

 

「里の皆を説得する時間が欲しい。 その間、絶対に余計なもめ事は起こさないでほしいのだ」

 

なるほどね。

 

何となく分かった。

 

この様子だと、やはり験者はあたしとアンペルさんが既に接触したことを知っているな。

 

だとすると、フォウレの里でも禁則とされている、城の奧に行く事は避けて欲しいというわけだ。

 

ディアンと一緒に種拾いに行くのは構わないと言われた。

 

ただ、と験者は言う。

 

「実は、元々種は土に埋もれていたものではなかったのだ」

 

「え……」

 

「元は城の中の一角に積み上げられていたものを、少しずつ使っていた。 それらがなくなって、土から掘り出すようになった」

 

「……」

 

考え込む。

 

そうなってくると、一体その種というのはなんだ。

 

どうにも色々と理解出来ない。

 

そもそもどうして「種」と呼んでいる。

 

機具を動かすにしても、その中枢部分については説明も受けていない。

 

アンペルさんは、恐らくそれを理解したとみて良い。あたしもまずは其処からと判断するべきか。

 

「貴重な外貨の入手法でもある機具の外への販売、更には出向いてのメンテナンスがフォウレの生命線だ。 外の血を入れないと、もうこの里はもたない時が来ている。 種が安定して入手できなくなると、それは加速するだろう。 ライザ殿。 ともかく、説得はするから、その間無体なことはしてくれるなよ」

 

「分かりました」

 

「里の老人には、貴方に感謝している者も多い。 それでも説得にはまだ数日はかかるだろう。 それだけは、把握しておいて欲しい。 くれぐれも早まった真似はしてくれるなよ」

 

頷くと、最敬礼してその場を後にする。

 

アトリエに戻りながら、軽く話す。

 

ボオスも、頭を掻いていた。

 

「ライザは完全に鬼札になりつつあるな。 俺らの常識的な範囲内で、できない事が思いつかないぜ」

 

「そんなことはないよ。 できない事はたくさんある。 もしも何でも出来るなら、殺された里の人達をみんな生き返らせるとか、やれただろうね。 それに……全能を気取ってた神代の錬金術師だって、それは同じ筈だよ。 もしも全能だったら、彼等は不老不死になっていただろうし。 何よりこの世界、こんな無茶苦茶になっていない」

 

「それもそうか。 お前も、昔と違って色々考えているんだな」

 

「ふふ、もうすっかり仲良しだね」

 

クラウディアがそうくすくすと上品に笑った。

 

後は、アトリエの中で話す。

 

種拾いに行く。

 

そう告げると、ディアンは跳び上がって、待ってましたと言うが。

 

ただ、こなす事が幾つもあるという。

 

「まず問題なのが、城の正面にも警戒装置があるってことなんだ。 験者様が問題を起こすなって言ってたって事は、城の正面からは入るなよって意味だ。 そうなると、湿地帯を突っ切って、城の裏手に行くしかない。 城の裏手に行くまでに、かなりの魔物と遭遇するはずだ。 あのとんでもなくでかくて強い奴も、多分縄張りにしてる」

 

「そうなると、またあんなのと対戦しなければならないわけだ。 ちょっとしんどいかも知れないな」

 

「いずれにしても、民に害なす害獣です。 斬り捨てましょう」

 

パティがそう言うと。

 

頼もしいとあたしは思った。

 

好戦的なのではない。

 

パティはちゃんと最前線に立ってそれを成し遂げる。

 

それにあの巨獣。

 

倒した奴もそうだったし、大人しいもう一体はともかく。残りの一体も、自然を確実に逸脱した存在だと判断して良いだろう。

 

だとすると、いずれにしても始末は必要になってくる。

 

人間が強かった古代クリント王国の時代までは、人間が森に仇なす害獣だったのかも知れない。

 

しかし今では、どういうわけか繁殖している奇怪な強力すぎる魔物が、そうなってしまっている。

 

或いは、今度こそ森と人が仲良く出来る好機が来ようとしているのかも知れないが。

 

まだそう言い切るのは早いか。

 

地図をタオが拡げる。

 

皆が集中した。

 

「まずは、城の正門に近づけないにしても、見るだけみておこう。 それで様式とか、いろいろ分かるかも知れない」

 

「おう。 タオさんはそういうの凄く詳しいな」

 

「僕はまだ実地に足を運び切れていないかな。 実物を見ているという点ではクリフォードさんの方が上だよ」

 

「はは、そうかもな。 未来の大学者にそう言われると、ちょっと照れくさいぜ」

 

頷くと、続ける。

 

まずは城の正門への道を確保する。

 

そして、その次だ。

 

タオが、森の地図を指で辿る。まずは森を抜けて、湿地帯まで出る。そこにいる魔物を始末して、先に。

 

湿地帯は色々とあるらしく、フォウレの里の人間も殆ど足を踏み入れないらしい。

 

狼の魔物も出るという。

 

あのフェンリルだかの同種の可能性も高い。同じかそれ以上の戦闘力を持っているとすれば、油断は出来ないだろう。

 

何より、大型の巨獣の事もある。

 

奴の戦闘力は文字通り次元違いだった。

 

あれも今回の調査で、駆除してしまう他には無い。

 

「森の奥に行くほど魔物が強いと言うような事はないと思うけれども。 それでも、注意するに越したことはないだろうね」

 

「それに、種も拾いに行く、か」

 

「そうなるね」

 

レントが懸念しているのは、現地のコンディションだ。

 

魔物だらけになっているのはほぼ確定だろう。

 

ただディアンが言うには、裏手から入る分には問題が無いらしいし。何よりも魔物を駆逐すれば。種をおおっぴらに回収出来るようにもなるそうだ。

 

ディアンも種拾いなので、何度も種を拾いに行ったそうだが。

 

ディアンが拾いに行った頃には、既に土の中に埋まっているのが普通だったのだとか。

 

そうなると、機具を昔は種が尽きるまで使い捨てていたのだろう。

 

贅沢な使い方をしていた、と判断するべきなのかも知れない。

 

セリさんが疑問を口にする。

 

「しかし妙な話ね。 恐らく門を私が通ったときには、その主とやらと遭遇しなかったし、何かしらの動力らしいものも存在しなかったわ」

 

「セリさんはそういえば、なんで古いことを知っているんだ?」

 

「そろそろ話すかな。 この世界の隣にはオーリムって世界があって、セリさんは其処の住人オーレン族なの。 オーリムには今フィルフサって危険な魔物が……フォウレの近辺の森の魔物が可愛く見える程危険な魔物が大繁殖していて、その事態には五百年前の古代クリント王国が関わってる。 それ以前の神代の錬金術師も関わってる可能性が高い」

 

いきなり疑うのではなく。

 

すげえとディアンは受け入れる。

 

色々面白い子である。

 

「それで爪の生え方が違ったり、手に羽毛があったりしたのか!」

 

「そういうこと。 怖くなった?」

 

「いや、セリさんはすげえ植物魔術の使い手だし、薬草の知識もすげえ! だから尊敬する!」

 

「ふふ、ありがとう」

 

セリさんも、少しずつ笑顔が増えているか。

 

ディアンについては、それほど悪くも思っていないようである。

 

咳払いすると、説明をしておく。

 

「あたしもアンペルさんもだけれども、フィルフサがこっちの世界に来ないように、門を探しては封じて、出来るようならフィルフサを潰して回ってる。 セリさんが通った門が、城の中にあるのはほぼ確定でね。 今も安全か分からないから、確認をしておきたいんだよ」

 

「そうだったのか。 アンペルさんもリラさんも、どうして必死になってて、捕まってまで調査をしようとしていたのか、やっと合点がいった!」

 

「里の皆には話してはダメだよ」

 

「おう!」

 

よし、これでよしと。

 

問題はこの次だ。

 

まだ分かっていない事がある。竜風という災害についてだ。

 

門が原因で竜風が起きるというのなら。今までクーケン島などでそれが起きていないのはおかしい。

 

或いは今までは起きていなかっただけで、今後起きる可能性もある。

 

いずれにしても、徹底調査が必要になる。

 

それは分かりきっているから、あたしもそれらについては調べて行かないといけないと考えていた。

 

ともかく、順番にやる事を決めると。

 

それで今日は切り上げる事にする。

 

あたしもちょっとだけ調合をして、調整をしておく。

 

実戦投入している爆弾は幾つかあるのだが。どれもコストが違ってくるので、それぞれに使うタイミングがある。

 

四っつの爆弾を合成したツヴァイレゾナンスはここぞと言うときにしか使えないほどコストが重いのだ。

 

増やすのに膨大なジェムがいる。

 

また、火焔氷風雷撃それぞれの爆弾の上位版であるものも、それぞれの特化火力については、ツヴァイレゾナンス以上になるように調整しておきたい。

 

あたしも錬金術をはじめて四年だ。

 

アンペルさんは天才天才と言ってくれるが。

 

自分が天才だなんて思っていない。

 

実際問題、あの扉は攻略できていないし。

 

色々世の中には分からない事だって多いのだ。

 

風呂に入って、後は切り上げる。頭を使う時間は、ある程度で抑えておいた方がいい。

 

既にアトリエは薄暗くなっているし、フィーも懐で眠っている。

 

これ以上遅くなると明日の朝にも響く。

 

明日からも、かなり厳しい状況が続く。

 

あまり体力を消耗する事はしていられなかった。

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