暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
森を突っ切る。今回は、事前に城に行けるかどうかだけ確認すると験者に話してあるので。
城門を潜りさえしなければ、問題にはならないだろう。
安全を確保できたら、種拾いを開始できるかどうか、フォウレの里で判断する事になるのだろう。
色々手間も多いが。
ただ、城の中にはわんさか魔物がいるという話だし、それもまた仕方が無いのだろうとは思う。
まだまだ森の中で魔物が仕掛けて来るが、その全ては基本的に蹴散らして行く。森の魔物の強さや性質には慣れてきたが、やはりかなり危険だ。
真上から、多数の棘みたいなのが降ってくる。
クラウディアが即応して、殆どを叩き落として。
残りはレントとクリフォードさんが弾き返していた。
遠距離から、曲射して来ている。
あたしは跳躍して、今の曲射から、相手の居所を探し当てる。
なるほど、いた。
中空から、熱槍を叩き込み、爆破。燃え上がるそこが、魔物のいる地点だ。
着地すると、其方へ疾走。
途中で雑魚が数匹いたが、全て蹴散らす。魔物は基本的に全部潰す。それくらいしないと、この辺りの魔物は、人間を舐めきっていて、危険極まりないのだ。人間を怖れて貰わないとまずい。
見えた。
マンドレイクかなと思ったが、違う。
巨大な丸っこい魔物で、背中に多数の棘が生えている。恐らくは今の精密曲射で獲物を仕留めて。
その後に、ゆっくり食べるのだろう。
足は多数生えていて、頭はとても小さい。
動きは鈍重だが、体中が鱗で覆われていて、装甲はとても分厚そうだった。
雄叫びとともに、レントとディアンが同時に仕掛けるが、魔物はそれを正面から受け止め、弾き返して見せる。
これは、硬い。
魔物は文字通り丸くなると、転がって逃げだそうとするが、そうは行くか。
あたしが先に投擲した冷気爆弾が、魔物の行く先に壁を作る。
氷の壁にぶつかった魔物が、必死に右往左往するが、その時には既に、レントが力を溜めきっていた。
踏み込むと同時に、渾身の唐竹の一撃を叩き込む。
魔物の装甲も、これには絶えきれず、大剣が食い込んでいた。
力任せの一撃ではない。
太刀筋としては普段と同じ。
相手をどうすれば切れるかを見極めた上で、渾身の一撃を叩き込む大技だ。理論的には出来そうなものだが。
勿論簡単にできるものじゃない。
ぎりぎりと刃が食い込み、鮮血が噴き出す。
その食い込んだ刃に、跳躍したパティが完璧な突きを叩き込む。それで、魔物が鋭い悲鳴を上げて。
やがて、動かなくなっていた。
魔物を解体して、鱗を剥がして調べておく。この鱗、金属を含んでいる。前も見たことがあるような生態だ。多分金属を食べる事で、この鱗に含有させ。装甲を強化しているのだろう。
他にも魔術で装甲を極限まで強化しているとみて良い。
本来は防御にほぼ全振りしている魔物なのだろうが。餌を採るために、攻撃的に体を適応させた。
そういう存在なのだとみて良さそうだ。
興味深いといいながら、タオが魔物をばらしながらもメモを取っていく。その間、周囲を警戒。
ディアンももうバラすのには参加して貰う。
覚えると手際が良くて。すぐに教える事もなくなりそうだ。
フェデリーカはその間に火を焚いて、肉の燻製を作る準備をしている。なお、この魔物は。ディアンも見た事がないらしいので。持ち帰った後に、肉を分析してから状況によっては食べる事になる。
寄生虫がいる可能性は高いし、病気を持っている可能性もある。
何より肉に毒がある可能性が極めて高い。
だから、しっかり未知の魔物は調査してから解体して食べるのだ。
腹の中から出て来たのは、これは人間の残骸じゃないな。
恐らくだが、この辺りに人間が来ること自体が久々と言う事だ。今の初見殺しはかなり危なかったし。
とにかくこの先も、気を付けて進まなければならないだろう。
何度か魔物を仕留めて、それで道を作る。
城門に辿りついた、とみて良いだろう。
城の前には、かなり広い空き地が出来ていて、木が全く生えていない。それどころか、それなりに綺麗な小川があって、橋まで掛かっている。橋を調べるが、これは神代のものだと一目で分かる。
タオが特定していた。
「これはすごい。 1300年以上前のものだよ」
「1300年!?」
「神代と言っても色々時代があるが、そもそも古代クリント王国以前に、世界が一つの国家だった時期がある。 1300年前はその時期だな」
「なるほど、頑丈な訳だ」
あの群島に集っていた錬金術師達は、1000年より前の者は殆どいなかったようである。
そう考えると、1300年前というのは、神代の全盛期だったのかも知れない。
ともかく、橋の頑強さは調べておくが。
問題はそれ以外の事だ。
城門。
それとしかいえないものが、確かにある。
王都の城門なんて、これにくらべればみすぼらしい張りぼてに等しい。一目で強力な防御魔術が掛かっている事が分かる。ドラゴンのブレスでも、防ぎ抜くのではあるまいか。
門がこの中にあって、竜風が此処で起きるのなら。
城なんて、木っ端みじんになっているのではないのか。
そう思っていたのだが。そうならないのも納得である。
これは現在の建築云々の次元じゃない。
神代の、それこそ全盛期の建物。
それは竜風だかなんだか知らないが、生半可な攻撃で壊れるようなものではないだろう。
圧倒させられる。
「これは凄いね……」
「ちょっとまてライザ」
「うん?」
レントが疑念の声を上げる。
レントはあまり頭脳活動は得意ではないけれども、直感的にものがわかる事が結構多いのだ。
「こんな城壁で全域が覆われてるんだよな、この城」
「そうなるだろうね」
「裏手は破られてるんだろ。 一体誰がやったんだ? フィルフサがやったんだとする可能性もあるが……だとしたらフィルフサがこの辺りで既に大繁殖している筈だ」
「……そういえばおかしいね」
ちょっと考えてから、ディアンに聞く。
内部を知っているこの中で唯一の人間だからだ。
「ディアン。 この城の中って、彼方此方壁が破られてる?」
「おう。 裏手から真ん中くらいまではそんな感じだ。 彼方此方壁に穴が開いていて、自由に行き来できるぞ。 魔物もだいたいはそれで中に入り込んでるんだ」
「……妙だね」
「うん。 竜風って村が吹き飛ぶような災害なんだよね。 それにびくともしない城壁が、そんなに滅茶苦茶にされるなんて」
あたしでも、この城壁をぶっ壊せと言われたら、出来ないとはいわないが。やるにしても、総力戦になるだろう。
しばし考え込んだ後、タオとクリフォードさんに、辺りの調査をやってもらって。
それで一度、アトリエまで引き上げる。
とても、とても嫌な予感がする。
というか、予感で済んでくれればいいのだが。
この城、思った以上に色々あるのかも知れない。
そもそもフォウレの里の人が、この城のことを知っているのなら。どうしてこんな堅牢な城から追い出されたのか。
フォウレの里の人は、恐らく神代にこの城を作った人間。もしくはその関係者の生き残りとみて良いだろうが。
それにしても、一体誰が。
いずれにしても、タオとクリフォードさんが、深刻な顔で色々話し込んでいるのも気になってくる。
この二人にも分からないと言う事は。
この城そのものは、更に古いものなのかも知れない。
だとすると、あの橋は後の時代に作られたものなのか。
ともかく、分からない事が多すぎた。
アトリエに戻って、物資を補給したら、再度出る。
ここからが本番だ。
湿地帯まで抜け、城の裏手に出る。
其処からなら。
例の警備の装置をかいくぐり。城の中に、入る事が出来るはずだ。
験者の言葉で確信できたが、験者は現状だとフォウレが終わる事を理解している。
それに対する打開策も探している。
そのためには、あたし達との協力が必要不可欠なことも。
まずは、城に入って、「種」の現物を確保する。
次の段階に進むのは、その後だ。
(続)
この作品での世界における概ねの時系列を説明しておきます。
現在→人類は神代に比べて数十分の一まで減少。とっくに魔物の方が力関係では上。
500年前→古代クリント王国が割拠の時代を終わらせ全土を統一するも、フィルフサに手を出して壊滅。滅亡。フィルフサの拡散だけは防ぐものの、以降防戦一方になる。
1000年前~500年前→神代が終わって割拠の時代到来。神代の技術を使っての争いが始まるが、どんどん技術は衰える一方。自動兵器であるゴーストアーマーなどに、技術の劣化具合が如実に表れている。
1300年前→神代の中の大事件。この事件が数々の悲劇の転機となる。
3000年前→神代が開始。理由は後々明かされます。
4000年前→「???」の終わり。
これについては後々大事になって来ます。覚えておくと面白いかも知れません。