暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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ネメドに……少なくともフォウレの里近辺に住まう超ド級の魔物は現時点で三体。

一体は攻撃性が薄く殆ど問題になりませんが、もう一体は違います。

そいつはその気になれば単騎でフォウレの里を潰す事が可能です。文字通りの物理的な意味で。

放置はしておけないのです。


1、巨獣再び

森の中でじっとしているそれは、前に見た巨獣と姿がある程度似ていたが。違っているようにも思えた。

 

小山のような巨体には苔むしていて、体から触手が多数生えているが、それはどちらかというと頭足類のものに似ていて。吸盤があり。吸盤には無数の牙。そして、体中に目。体を裂くようにして、存在している巨大な口。

 

足は多数存在しているが、小山のような体の下にあるようで、見ている範囲ではナメクジのように動いている。

 

ただし、その速さは、ナメクジの比ではないが。

 

あいつか。

 

ディアンを追って、城の近くまで来た奴は。

 

手をかざして、観察する。

 

触手を無作為に振るって、近くの木をなぎ倒して道を作っている。途中で見かけた魔物は触手で絡め取り、まとめて上の口に運んでいる様子だ。

 

魔物は逃げ惑っているようだが。

 

多数の目が魔物を睨むと、金縛りのように動かなくなり。倒れた所を触手で掴んで、無造作に口に放り込んでいる。

 

タオが、体勢を低くしながら言う。

 

「厄介だよあれ。 多分拘束系の魔術だ」

 

「それもあの巨体の強大な魔力から繰り出されるというわけだ。 この間の巨大な奴よりも、強いんじゃないのか」

 

「対人殺傷力は高いかも知れないね。 この間のは、何もかも破壊して回るのに特化した感じだった」

 

レントにそう応じるタオ。

 

どっちにしても、随分と迷惑なのを作りあげてくれたものだ。

 

あれに関しては、自然発生したものではあるまい。

 

確定で誰かが作りあげたものだと考えて良い。

 

だったら、その不毛な存在を。

 

此処で終わらせるしかないだろう。

 

作戦を提案。

 

かなり強引な作戦だが、此奴に関しては長期戦が不利だ。巨体から来るとんでも無いタフネスもあるし。

 

何よりあの金縛り。

 

見ていると、多数の魔物相手に同時に発動している。

 

そして、かなり大きなラプトルが、手も足も出せずにバタンと倒れている。

 

それは人間なんかが喰らったら、ひとたまりもないという事だ。

 

ディアンは良く逃げられたなと思ったが。

 

それは森の間をかいくぐりながら走って、魔物の視線がディアンを捕らえるのを避けたのだろう。

 

「鍵はクラウディアだよ。 もしも第一段階の作戦が失敗した場合は、第二段階に移行するから」

 

「分かった」

 

倒すための鍵は幾つかある。

 

見ていると、視線があって数秒、金縛り発動まではタイムラグがある。

 

今のあたし達にとって数秒の猶予はかなり長い。

 

ただし、あの触手、巨体、パワー、それそのものも全てが危険だ。あの巨大な口に放り込まれたら即死だが。それ以前の問題だ。触手に捕らえられたら、その瞬間に握りつぶされてしまうだろうし。

 

フォーメーションを組んで、それで。

 

仕掛ける。

 

GO。

 

あたしが叫ぶと同時に、クラウディアが全力で魔力を展開。背中に魔力が翼を形作る。

 

そして、放たれた多数の矢が、一斉に巨獣の目に着弾。

 

巨獣は即応。

 

即座にシールドを展開して矢の直撃を防ぐが、矢が着弾したことで、視界を塞がれている。

 

突貫するレントとボオス、パティとタオ。更にはディアン。

 

唸りを上げる触手。

 

レントが、雄叫びを上げながら、それを弾き返す。一撃、二撃。だが、パリィするたびに、凄まじい勢いで地面に罅が入っている。それだけの破壊力、ということだ。レントが受けきった直後、パティがボオスが、それにタオが、触手に斬り付ける。ディアンもそれに続こうとするが、やはり無理は出来ず。触手がうなりを上げるのを見て、飛びさがる。

 

良い判断だ。

 

下手に怪我人を増やされるよりは、その方が良い。

 

戦闘ではむしろ憶病なくらいでいいのだ。

 

フェデリーカはずっと舞い。

 

あたしは詠唱を続けながら、順番に爆弾を投擲する。

 

触手はそれらにも的確に対応。爆発する前に魔力壁を展開。更には触手で掴んで、自爆覚悟で防ぐ。

 

今回は、冷気中心で攻める。

 

触手が凍ると、巨獣は悲鳴を上げて、そして柔軟に体を回転させる。森の中にいながら、多数の人型とともに、回転する魔獣の目を正確に狙い続けるクラウディア。セリさんも、あたしの隣で詠唱を続ける。

 

クリフォードさんが上空に躍り出る。

 

投擲したブーメランが、うなりを上げてクラウディアの放った矢と、別方向から巨獣の目を強襲。

 

突き刺さり、派手に血をぶちまけさせた。

 

しかし、恐ろしい色の血だな。

 

赤いとか赤黒いとかじゃない。

 

青い。

 

あんな色の血というのは、海の一部の生物みたいだ。或いはそれもそうかも知れない。普通の生物のルールなんて、あの作られた破壊者には通用しないだろうし。

 

悲鳴を上げながら、魔物が荒れ狂う。

 

触手が暴れ、辺りを滅茶苦茶に薙ぎ払う。

 

まずは小手調べだ。

 

パンとあたしは胸の前で手を合わせると、二万五千の熱槍を中空に出現させる。

 

まずは空中から、一点に収束するタイプの包囲収束型。それを巨獣へとぶっ放す。巨獣は多数の目でそれを確認したのだろう。

 

さて、どう反応するかとみていると。

 

触手を同時に動かして、即座にシールドを展開。炸裂する飽和攻撃に対して、全てを完璧に受けきってみせる。

 

だが、その瞬間。

 

相手の懐に入り込んだボオスが。二刀を振るって、触手の一本を滅茶苦茶に切りさいなんでいた。

 

そのまま、飛びさがる。

 

派手に血を噴いた触手が、動きを鈍らせる。そこに、セリさんの植物魔術が、周囲から多数の巨大な根を出現させ、巨獣を貫く。

 

触手が引きちぎられて、宙を舞い。そして、地面に叩き付けられていた。触手は切り離されても動いているし。

 

まるで大木が倒れたような凄まじい音である。

 

「クソッ! ライザ姉のあんな魔術でも、防ぎ切るっていうのかよ!」

 

「想定内だ! とにかく攻撃を続けろ!」

 

ディアンの悪態を、レントがたしなめる。

 

今ので、巨獣も此方の脅威を最認定したようである。多数の根を、触手で押し返すと。クラウディアの猛攻を受けて金縛りを使えない状態ながらも、それから別行動に出て来た。

 

多数の目が、鈍く光っているのが見える。

 

まずいなこれは。

 

「レント、さがって! 他のみなも!」

 

誰もがさがった次の瞬間。

 

いきなり、地面が派手に陥没する。一瞬前まで、パティがいた辺りを中心に、四角に。二十歩四方ほど。

 

何だ今のは。

 

それだけじゃない。立て続けにそれが来る。

 

巻き込まれた場所は、木なども一気に地面に叩き付けられて、真っ平らになっているようだった。

 

魔力によって圧殺しているのかこれは。

 

違う。

 

多分、前にタオが言っていた、引力という力だ。

 

ものというのはそれぞれに引っ張り合う力を持っていて。ものが大きいほどその力は強くなる。

 

神代にあった理論書に書かれていた本だ。

 

あたし達がいる世界が、球体ではないかという説は古くからある。まあクーケン島からも見えるのだが。確かに水平線とかは若干丸みを帯びている。船に乗って移動したことは何度もあるから。

 

海で、そうやって水平線が丸みを帯びているのは見た事があるし。

 

遙か遠くの船が、マストから見え始めるのも見た事がある。

 

だとすると、どうして下にいる人間は墜ちないのか。

 

それは、そもそもあたし達のいる世界が引っ張っていて、それで足を地面につけていられるからだ。

 

そういう理屈であるらしい。

 

この巨獣、それを自在に使っている。

 

ということは。

 

ふわりと、巨獣が浮き上がる。

 

そらそうだ。自分にも当然適応出来るということだ。

 

浮き上がった後、凄まじい速度で。自由落下の何倍もの速度で、巨獣が地面に自分を叩き付けてくる。

 

辺りが、文字通り、何もかも粉砕されたのは、その瞬間だった。

 

巻き込まれた。

 

吹っ飛んで、何度か地面に叩き付けられて。跳ねた。

 

フィーは守りきった。

 

立ち上がる。

 

辺りの森が全壊している。

 

それだけじゃない。地面が砕けて、川の水が入り込み始めている。こいつ、本当になんでもやる気だ。

 

もう魔物と呼ぶにすら値しない。

 

破壊の権化。

 

人間の悪意に極めて似ているそれは、もうこの世界に存在していいものじゃない。

 

この悪意、あの「蝕みの女王」に似ている。

 

そしてこの魔物が思考して、それをやっているとは思えない。

 

金縛り。

 

今の瞬間で、クラウディアの攻撃が途絶えたのだ。

 

触手が振るわれる。

 

皆、倒れていたり動けなかったり。

 

まずいなこれは。

 

だが、クラウディアが、倒木の中で立ち上がり、再び飽和攻撃を開始。目を塞ぐ。目を塞いで、二秒後に触手があたしのいた辺りに着弾。だがその時には、既に横っ飛びに逃れていた。

 

クラウディアも、ペースを上げる。

 

多数の矢を、それでも防ぎ抜いて見せる巨獣。

 

触手を振るって、今度は大量の土塊が辺りに浮き上がる。それを、必死に耐えている前衛組みに叩き付けて来る。

 

レントがいち早く立ち上がると、倒れている皆に声を掛けながら、自分が中心になって防ぐ。

 

パティがタオを引きずって、土塊に潰されるのを防ぐ。

 

フェデリーカが、立ち上がって、舞い始める。前よりも舞いの効果が弱いが。それでも何とかするしかない。

 

クリフォードさんが、再び跳躍。

 

ブーメランで、別角度から目を潰す。

 

巨獣の触手をかいくぐっての、文字通りのスナイプだ。

 

巨獣が再び悲鳴を上げて、そしてクリフォードさんを狙うが。クリフォードさんは戻って来たブーメランを掴んで、空中機動に近い形で逃れる。喰らったら瞬時に地面に叩き付けられて潰れたクーケンフルーツになっていただろうクリフォードさんは、綺麗にその魔の手から逃れていた。

 

セリさんが、詠唱完了。

 

ブチ切れてる。

 

まあそうだろう。

 

森の守護者が、こんな光景を見たら、それはブチ切れる。

 

手を地面に突くと、大量の植物が、巨獣に絡みつく。同時にあたしは、ツヴァイレゾナンスを巨獣の頭上へと放り込んでいた。

 

どっちにも対応できない。いや、対応して来る。だが、こっちは更にその先を行く。

 

巨獣は、体中を大量の根やら蔓やらに絡みつかれつつも、触手を振るい。ツヴァイレゾナンスに対して、四方八方からあの圧力を掛ける。

 

爆発前に潰れるツヴァイレゾナンス。

 

だが、それでいい。

 

あたしも、汗を飛ばし。

 

額の血を拭いながら。

 

大きく息を吐いて、最後の詠唱を続ける。

 

「全てを焼き払う光の星よ。 全てを押し潰す闇の星よ。 今一つになりて、その破壊の烈光を、敵に向けよ。 今日の天気は、何もかもを打ち砕く、烈光と。 何もかもをかき消す、闇の槍。 その二つ、無数に降り注ぐものと知れ」

 

突撃。

 

そう、あたしは思考すると。

 

フェデリーカの舞い。

 

あたしの身に纏っている装備。

 

更にあたし自身の魔力を全部投入しての、新技の発動に移る。

 

今のツヴァイレゾナンスの無効化で、巨獣の防御に隙が出来る。だが、あたしの魔力の高まり。収束している魔力光を見て、それでも巨獣は冷静に動き、口を開いて凄まじい雄叫びを上げる。

 

無言でパティが抜き打ちを叩き込んで、目の一つを抉りさる。

 

タオも、同じようにして、残像を作りながら目の一つを抉り取っていた。

 

ボオスもだ。

 

ディアンは、振るわれている触手の一つに、斧を体ごと叩き付ける。

 

少しずつ、それで巨獣が乱れて。

 

あたしは、全力での攻撃態勢に入る。

 

あたしの背後に、魔法陣が出現。

 

クラウディアの翼と同じ。魔力が形為している。その魔法陣に出現する熱槍。二十。

 

その全てが、収束型熱槍であり。一つずつが、熱槍千を収束した火力がある。そしてあたしは、頭の血管を切りながらも、手元に二万の熱槍を収束させ。

 

そして踏み込むと同時に、最後の詠唱の一節を唱えていた。

 

「穿ち抜け、滅びの槍! フォトン・クエーサー!」

 

まず最初に、二十の熱槍が、順番に巨獣に突貫する。それに対して、巨大なガラス板のような魔力防壁を、巨獣が展開してみせる。

 

あたしの奥義発動を見て、全員が逃げる。それでいい。これをまともに喰らったら、誰も助からない。

 

立て続けに、ぶつかっていく熱槍。その勢いは、あたしが踏み込みながら投擲する熱槍と同じだ。

 

巨獣のシールドが、次々に正面からぶつかる熱槍に晒され、そして一枚目が砕ける。二枚目の負荷が上がり、赤熱して砕ける。三枚目が、同じようにして砕けた瞬間。

 

最後の一撃。

 

本命の収束熱槍が、残り二枚のシールドを瞬時に粉砕。

 

無防備な魔物に直撃し。装甲を貫通。

 

体内ではじけて炸裂していた。

 

あたしは、今まで集める事を主眼にしていたが。

 

着弾地点内部で、この熱槍は炸裂する。

 

結果、体内から焼き尽くされた巨獣は、文字通りの断末魔の絶叫を上げていた。

 

触手が内側から焼き千切られる。

 

足が砕けて、炎に包まれながら、めいめい勝手に動き。それぞれが爆ぜたり、焼けとけたりする。

 

目玉も内側からの炎に灼かれて、吹っ飛ぶ。

 

巨獣の体の彼方此方が、内側から破れて。炎が噴き出す。逆に言うと、破壊をこいつはその程度まで抑える程に頑丈ということだ。

 

「とどめ、いくよ!」

 

クラウディアが、空に矢を放つ。

 

多数放たれた矢は。中空で一つになると。

 

そのまま、地面を穿つ烈光になって、巨獣に真上から襲いかかる。

 

更にパティが腰だめして、納刀。

 

踏み込むと同時に、立て続けの四連撃を浴びせていた。

 

瀕死の巨獣の全身を、それらが穿ち。

 

全てが収まったとき。

 

既に、巨獣は命を手放し。地面にて、燃え焦げる生きていた肉塊へと変わり果てていた。

 

 

 

手当てを終える。

 

森の手当ても、セリさんがしている。セリさんは、相当に機嫌が悪い。話しかけない方が良いだろう。

 

ちょっとあたしも、それについては同意だ。

 

自分が住んでいる場所を、此処まで無茶苦茶にするか。

 

エサなんて何処でも取れるという驕りから来ている行動か、それとも単に生物兵器として作られたからで、何も考えていないのか。

 

どっちにしても、いくら何でもこれはおかしすぎる。

 

こんな存在を作りあげた神代の連中は、何を考えていたのか。

 

ただ、静かな怒りが、わき上がってくる。

 

とにかく、傷を治す。

 

あたしも右手の指が何本か逆側に曲がって、骨がグシャグシャになっていたので。薬を塗り込んで、無理矢理治す。

 

今ぐっぱぐっぱとしているが、大丈夫ではある。ただ、これは今日は戻ったら、もう寝た方が良いだろう。

 

荷車に積み込んできた薬を全部使い切るつもりで、皆に投入。

 

この間の巨獣とは少し方向性が違ったが、手強い相手だった。皆、手酷く怪我をしていたが。

 

それでも手足を失うようなことにならなそうなのは、良かったとしか言えない。

 

パティが髪の毛が乱れていて、完全にそのまま降ろしてしまっている状態になっていて。

 

結ぶのに使っていた髪紐を、残念そうに見ている。

 

「それ、直すよ」

 

「本当ですか、ありがとうございます」

 

「誰かにもらったもの?」

 

「はい。 うちのメイド長から」

 

そうか。

 

パティの鬱屈した感情については、あたしも何となく分かる。もう顔も覚えていない実の母親よりも。

 

幼い頃から側にいて、武芸百般や他の生きていくための術を叩き込んでくれたあのメイド長の方が親として慕える相手だというのは分かる。

 

メイド長、と呼んでいるのも。

 

ヴォルカーさんが。新しく妻を迎える気が無いから、なのだろう。

 

この子はため込む傾向があるので、たまにはガス抜きも必要になるし。周りがそれとなく支える必要もある。

 

そういう意味では、タオは実は完全に失格だったりするのだが。

 

まあ、それはもう仕方が無い。

 

ともかく今は、手当てを勧めていく。

 

セリさんの傷も見せてもらう。

 

セリさんの全裸は見た事がないが、腕と足以外にも羽毛が何カ所か生えている事は知っていた。

 

男衆から見えないように、影にいって。其処で諸肌を脱いで貰って、手当てをする。

 

青白い肌は、やはりオーレン族と人間とでだいぶ違う。色白な女性よりも、更に青白い。

 

幸い、薬は同じように効く。

 

手当てをしていくと、セリさんは大きなため息をついていた。

 

「この薬がなければ、何人かは手足を失っていたでしょうね」

 

「ええ。 良い方向に使えば、こうやって人を救えます。 技術は悪じゃありません」

 

「分かっているわ」

 

セリさんは、今でも錬金術も、錬金術師もきらいだ。

 

幸いあたしやアンペルさんの事は嫌っていないようだから、それは有り難いと思ってはいるけれども。

 

そもそも錬金術師がオーリムでやってきた事。

 

セリさんが今まで仕留めてきた身勝手な錬金術師達の言動を考えると、それも仕方が無いのだろう。

 

手当てを終える。

 

クラウディアの当世具足は、また何カ所かやられてしまっていた。あの超凶悪ボディプレスの余波を受けてのものだ。

 

今になって思うと、あれはあの巨獣でも流石に連打は出来ないものだったのだろう。

 

クラウディアの当世具足を外して、手当てを済ませる。当世具足は、後で直してしまう。これは、今日明日はアトリエに篭もりっぱなしになるだろう。

 

仕方が無い。

 

あの巨獣を仕留めて、その程度の消耗で済んだのなら、マシとするべきなのだから。

 

皆の手当てを終えた頃には、セリさんも森の手当てを終えて。なんとかこの辺りは森として形になっていた。

 

「セリさん、満足ですか?」

 

「いえ。 そもそもこの森が全体的にいびつよ。 散々変な形で手を入れられたから、なのでしょうね」

 

「しかしそうなると、誰がこの森を。 フォウレの里の人達の先祖でしょうか」

 

「なんともいえないわ」

 

セリさんとしては、パティの言葉にそうとしか応じられないのだろう。

 

他の魔物も、今の怪獣大決戦を目にして、近寄る気にはなれないようだ。それでいい。魔物に必要なのは、人間への恐怖。

 

それで、無駄な破壊と殺戮は避けられる。

 

もう少しこの辺りの魔物を間引いておきたい。そうしないと、パワーバランスがまた簡単にくずれて、不幸なことになる。

 

魔物だって生きていると言う人もいるかも知れないが。

 

人里を潰すような襲撃をする魔物は、殺処分するしか他に無い。

 

会話が通じるような魔物だったらそれで良いのかも知れないが。

 

そういう訳にはいかないのだから。

 

アトリエに戻る。

 

巨獣の二匹目を仕留めた。証跡を見せながら、それをデアドラさんと験者に報告しておく。

 

デアドラさんは感謝してくれた。

 

やはり、あの巨獣は危険極まりない相手だったのだろう。

 

まああんな風におやつ感覚で辺りの生物を手当たり次第に貪り喰い。

 

森を気分次第で潰して回るような存在。

 

あたしだろうが誰だろうが。

 

許せないと思うのは、自然な事だと思う。いや、そう思いたいのかも知れない。

 

「ライザ姉の新技、すごかった! 五枚もあったあの巨獣の展開したシールドを、ブチ抜いたんだ!」

 

「それは凄いな。 魔術についての講義を、この里でもやって欲しいほどだ。 この里の手練れでも、ライザ殿には到底及ばないだろう」

 

「そう言ってくれると嬉しいんですが、実の所あたしだけでやった技ではないので……」

 

「……そうか」

 

まあ、錬金術の力はデアドラさんも験者さんも見ている。

 

深く追求してくることはなかった。

 

そして、此処からだ。

 

ついに、城に入るための関門は突破した。後は、森にいる強力な魔物。サルドニカ北で交戦したフェンリルと同等以上の奴が複数いる可能性がある。

 

パティが参加したとは言え、簡単には倒せないだろう。出来れば遭遇しないように祈るしかないが。

 

ともかく、一つずつやっていくしかない。

 

アンペルさんも、アンペルさんの方から努力してくれている。

 

あたしも、それを無駄にしたくはなかった。

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