暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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4、門を間近にして

何度もアンペルは危ない橋を渡ってきたが、今回もなかなかだ。幸い、里の人間が思ったより理性的だったおかげで、軟禁はされているがそれ以上の事はされていない。

 

特に験者は、今の時点ではアンペルと交換条件が何かあるのなら、出しても良いと思っているようだ。

 

先代の験者はずっと保守的な人間だったようで。

 

今の験者は、それに疑問を持って、里を出て彼方此方を旅して回ったらしい。

 

その結果、各地で暮らしていたフォウレの里の子孫を大勢連れ帰ったし。

 

何よりも歯っ欠けだった「機具」の知識もたくさん集めて来た。

 

先代の験者と今の験者は、必ずしも仲が良かった訳ではないそうだが。それでも実績もあって、験者になった。

 

一応他の験者候補もいたそうだが。

 

血が濃くなりすぎて相当にまずくなっていた状況もあり。

 

今の験者が、最終的に験者となることで落ち着いたそうだ。

 

事実、今の験者から悪い評判は聞かない。

 

若い頃は里の現状に憂いを持ち、それで外の世界で見聞を広めるという。こういう閉鎖的な集落の年寄りが聞いたら、眉をひそめそうな行動をしていたわけだが。

 

今はそういった年寄りとも仲良くやれている。

 

丸くなったというよりも。

 

むしろ色々な人間と接することで、上手く懐柔する方法を覚えたのだろう。

 

老獪になった、というわけだ。

 

アンペルは、そういうのは得られなかった。

 

ずっと年下の相手に対しても、どうしても上手く接する事が出来ない。

 

ライザは自分を立ててくれるが。

 

それも、とても有り難い事であると同時に、時々恐縮もしてしまう。ライザが褒めてくれるような人間ではない。

 

アンペルは親の事もよく覚えていない。

 

一世代暗殺者に追われていたこともあって、何処かで誰も信用していない所もある。

 

リラとの関係も、結局利害によるものだ。

 

「里が騒がしいな」

 

「ライザ達が大暴れしているからな。 恐らく種拾いとやらが再開できるようになったのだろう」

 

「それで、その機具の改良とやらは上手く行きそうか」

 

「こんなものは、どうにでもなる。 ライザが動力の改善をしてくれれば、半永久的に動くだろうな」

 

開いて見て分かったが。

 

この機具の知識は、本当に歯っ欠けだらけで伝わったのだ。

 

それはそうだろう。

 

ずっと放浪の民をしていたのだ。

 

その間、技術の伝承を成功させていただけでも凄い。それが中途半端になってしまっても、だ。

 

フォウレの里の民は、神代の生き残りだ。

 

ある意味、世界中の全ての人間がそうだとも言えるのだが。ただ、神代の技術を此処まで色濃く残している民はそうそういまい。

 

今まで放置されてきたのは、恐らくあまりにも散らばりすぎて、脅威になり得なかったから。

 

また、何か問題があっても。

 

その場で虫のように潰され、殺されてしまっていたのだろう。

 

この里からもう出たくないと考えるのも分かるのだ。

 

アンペルだって、錬金術を出来ると言う事で王宮に連れて行かれたが。行くべきではなかったと、今でも潰された利き腕を見て思うのだから。

 

ともかく、機具の改良は出来た。

 

改良というよりも、ただ元に戻しただけだ。

 

本来はこれが正しい設計だった。

 

ただ、そもそも兵器だった「種」を動力に使うような設計にしたから歪んだし。どうしてこうやって作ったのかを、論理的に伝えなかったから、更にどんどん歪んで、壊れやすくなった。

 

人間の技術なんてものは。

 

簡単に失伝してしまうものなのである。

 

「ライザは既に種を兵器だと見抜いているかもしれないな」

 

「ライザならとっくに気付いているだろう」

 

「なんだか自慢げだな」

 

「ああ。 私のような不肖の存在から見れば、輝くような弟子だ。 私はひねくれ者で、錬金術師に伝わって来た我等は神に近い存在で、全能に最も近い存在だから、世界を好き勝手にねじ曲げて良いという傲慢な思想に異を唱えた。 その思想をライザが受け継いでくれなかったら。 きっとライザは今頃、世界にとって最大の脅威になっていただろうな。

 

 世界にとって希望の光であり、超世の英傑に育ってくれたのは、私に取っては誇りさ」

 

そうか、とリラは気もなく返した。

 

アンペルも若く見せているが、実際は相応の年だ。

 

しかもライザにも共通しているのだが、若い頃の情熱を性欲で消耗しなかった、ということもある。

 

結局異性にも同性にも、ほとんど興味は無かった。

 

だからリラと上手くやっていけているのかも知れない。

 

そもそも人間とは生物としてのスパンが違いすぎるオーレン族であるリラも、それはそれで色々と思うところがありそうだが。

 

ともかく、なんとかリラと上手くやれているのも事実だった。

 

「よし。 後はライザが門を確認してくれれば、本格的に此処を出る事を準備しよう。 門そのものがあるのは間違いなさそうだ。 何しろセリ=グロースは此処から来ていたというのだからな」

 

「納得出来る話だ。 私のような例があくまで例外なのであって、生き延びているオーレン族がもしいるとしたら、まとまって過ごしているか、身を潜めているだろうからな。 キロ=シャイナスがそうであるように。 セリ=グロースは前者の例だったというわけだ」

 

「いずれにしても、フィルフサを早く駆逐し尽くして、そんな生活をせずとも済むようにしたいものだが」

 

「フィルフサの王種は簡単には出現しないことは分かっているが……厳しい路ではあるだろうな」

 

その通りだ。

 

だが、ライザがいるなら、きっと出来る。

 

そうアンペルも思うのだった。

 

さて、後は。

 

機具についての歪んだ設計を実際に直してみせるのは良いとして。

 

問題は何種類かある機具だ。

 

全部直して見せないと、多分信頼はされないだろう。

 

この里が、平穏に暮らしていくためには。

 

少なくとも、機具をこの歪んだ形から解放しなければならない。

 

そうなった時には。

 

きっと平和裏に。

 

アンペルの人生では珍しいくらいに平和に、問題が解決するはずだった。

 

 

 

(続)








原作だとアンペルさん、この話の近辺で随分強引で稚拙な動きをしているんですよね……

ライザと連携すれば簡単なのに、話をややこしくしてしまっています。

まあ、幾多の門を閉じてきた自信が足下を掬ったと考えても良かもですが。
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