暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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人間が抗し得ない存在には、よく人食いという異名が与えられるものです。

完全にフォウレの里の管理を離れた古城には、そういう存在が住み着いていました。

其処は昔彼等の先祖がいた場所とは、もはや言えないのかも知れません。


伝承と真相
序、人食いのゴーレム


城壁はほとんど隙間もなく、つるつるだが。そもそもあたしは、跳躍に関してはそれなりに五月蠅い。

 

更にはセリさんもいる。

 

足場を植物魔術で作ってもらい、クリフォードさんと一緒に城壁の上に上がる。理由としては。

 

一番外の城壁である此処が。

 

密林の中の城を見るのに、一番良いからだ。

 

勿論、森の中にフォウレの里の斥候が来ている場合、見られる可能性はある。だから、気を付けなければならないが。

 

城壁の上に出るまでは良いが。

 

それ以上跳ぶのは厳禁だ。

 

城壁の上に出る。あたしの背丈の五十倍前後、というところか。

 

とんでもなく高い城壁で、王都のものよりも遙かに高い。それでいながらとても薄く、なおかつ頑強なのだ。

 

一部だけ破壊して。そして他には手をつけなかった。

 

この城を攻めたもう一つの文明。

 

恐らくは、クーケン島近くに群島を作った錬金術師と同じ連中……は。おそらく、内部のものを徹底的に破壊したが。

 

この構造体そのものは壊すまでもないと考えたのか。

 

或いは、見せしめにするために。

 

この城を作った人間達の誇りの結晶であるこの城の一部を、敢えて残していたのかも知れない。

 

あの群島の宮殿の地下にあった、死骸。

 

都合が良い奴隷として使えるという、ホムンクルスに対する説明。

 

それをエサに人間を釣ろうとする言動。

 

そう言った事からも。

 

神代の錬金術師に対する評価は、既にあたしの中で地獄の底にまで落ちている。

 

前は古代クリント王国の錬金術師は見つけ次第殺すとくらいまで考えていた。まあ、もう全部死んでいるのだが。

 

今は、神代の錬金術師がそれに置き換わっている。

 

勿論古代クリント王国の思想を受け継いだ錬金術師がいたら、生きたまま蹴り砕いてやるが。

 

神代の錬金術師は、それこそどれだけ残虐に殺しても、なんとも思わないだろう。

 

城壁の上で身を低くして、手をかざして内部を見る。

 

ふむ。

 

内側の城壁は更に高いようだが、これは外部が陥落しても、内部が頑強に抵抗するためだったのだろう。

 

ただ、砕かれていて、城壁は素通しで内側が見える。

 

そして最深部も。

 

最深部の扉がある周辺は、此処からだと見えないか。そして危惧していたことだが。城壁の一部にも、例の監視装置がついているようである。

 

フォウレの里にも、この上に上がれる人間がいたのか。

 

それとも、或いはだが。

 

もとの文明でそもそも配置していた装置なのかも知れない。

 

だとすると、そっちの方はフォウレの里でも見ていない可能性は否定出来ない。

 

ともかく、一度城壁を降りる。

 

クリフォードさんに意見を聞いてみるが。見た感じでは、この城壁群は守り側の作ったものであって。

 

主に内側が変えられている。

 

城壁でも、城の入口付近のものは置き換えられているようだが。

 

城の全てを造り替えるつもりは、攻めてきた文明……神代の錬金術師達にはなかったようだ。

 

出来なかったのでは無く、しなかったのだろう。

 

理由は、まだ何とも言えない。

 

そもそも竜脈だったら、此処だけではなくいたる所にある。

 

この文明を押し潰したとしても、なんの理由があっての事か、よく分からない。

 

とにかくそれを見定める必要がある。

 

皆と合流して、情報を共有。

 

更に慎重に、内部を調べる。

 

種の改良方法は既に昨日発見した。というか、そもそも錬金術の観点からすれば、改良なんてむつかしくもないし。兵器として無力化するのも簡単だ。

 

これにアンペルさんの機具の改良をセットにすれば、フォウレの里は当面やっていけるだろう。

 

それを交換条件に。

 

城の最深部の探索許可と、アンペルさんの解放を頼む。

 

験者は多分簡単に条件を飲んでくれる。

 

問題はフォウレの里の頭が硬い老人達だが。

 

それも恐らくは、もう相当軟化しているはずだ。

 

殺された者達の仇を相当に討った。

 

フォウレの里では逃げるしか無かった巨獣二体を仕留めた。

 

城に行けなくなっていた最大要因であった巨大マンドレイクも討ち取った。

 

農村、鉱山の街への交通も回復させた。

 

これだけ恩を売れば、流石に信用がーとか抜かしている連中も黙らざるをえない。人間はどこまでも恥知らずになれるが、フォウレの里の人間は、話が通じる。だからこそディアンは怒っているのであって。

 

話が通じない相手だったら、ディアンみたいな性格なら、里を出て戻らないだろう。それは若い頃の験者だって同じ筈だ。

 

クリフォードさんが、手早く城の図面を書き起こす。

 

タオもそれにあわせて、幾つかのアドバイス。ディアンも、一緒になって意見を出す。

 

「だいたいこんなところだね」

 

「扉がある辺りは、複雑な構造になっていて、正面からしか攻められないね」

 

「うん。 もの凄く念入りに守りを固められてる。 何かしらの理由があって、そうしているんだと思う。 本来は多分、接近すら出来なかったのだろうけれども。 神代の錬金術師達が、それを取っ払って、少なくとも正門は入れるようにしたのだろうね」

 

「後から来た人間が、好き勝手に荒らしていったわけだ。 古代クリント王国くらいまでは、勝った人間は負けた人間をどうしても良いとか言う腐った理屈がまかり通っていたらしいが、反吐が出る」

 

レントが吐き捨てると、皆頷く。

 

ボオス辺りは昔だったら皮肉混じりに反論したかも知れないが。ボオスも素は其処まで腐っていないのだ。

 

今は、素直にレントに同意できるようだった。

 

クーケン島の事を考えている事に関しては、ボオスだって同じなのだ。

 

今は、ボオスは真面目で、有能な指導者とは何かを真面目に考え。

 

王都の腐った習慣を目の当たりにして。

 

それを反面教師に、成長しようとしている。

 

「良いかなライザ」

 

「どうしたの」

 

タオが挙手。

 

そして、地図の一点を指した。

 

「城門を調べる前に、この辺りを調査させてくれるかな」

 

「別にかまわないけれど、多分此処の守り主は手強いよ」

 

「分かってる。 だからこそ。 どれだけ被害が出るか分からないからね。 僕達にも、城にも」

 

「……分かった」

 

城の一角に移動する。

 

其処は他と同じ箱だったが、タオが言うには、此処だけ表札みたいなのが外されているという。

 

結構内側で、普通だったら何かあった施設だっただろうに。

 

それも、新しく利用された気配もない。

 

内部にいた魔物は、もう既に処理してある。城の中の魔物は、一回目の侵入、それに今回で、とりあえず邪魔なのは片付けた。

 

内部は綺麗にただの箱になっていて、何も残されていない。

 

しばらく辺りを探ってみて、それでクリフォードさんが先に気付いた。

 

手を振って、皆を呼ぶ。

 

そして、タオと一緒に調べていて。

 

床が、いきなりスライドして。階段が出現していた。

 

「これは……!」

 

「隠し階段だ。 多分だけれども、最重要施設だよ。 それも守り側の。 攻め側が調査しても、多分見つけられなかったんだ」

 

「どうして今になって開いたんだろう」

 

「分からない。 とにかく内部に何があるか分からない。 レント、入口の守りを固めてくれる?」

 

レントが頷く。

 

このスライドした床が戻ろうとした時、食い止める人間が必要になるからだ。

 

セリさんも残ってくれる。

 

あたしはタオとクリフォードさん。パティとディアンもつれて、内部に。ディアンは役に立てるのかと思ったが。本人が希望したのだ。

 

他の皆は外に。

 

入口が問題なのと。

 

魔物が出た場合、ある程度の戦力がないと、防ぎきれないからである。

 

内部の階段はかなり深くに降りている。

 

階段は埃も積もっていない。

 

「北の里」も、動力を取り戻したら、勝手に換気を始めた事を思い出してしまう。あそこと同じだ。

 

此処も、そういう機能がついていて。

 

更に古い文明であった以上、その性能はもっと上、と言う事なのだろう。

 

魔物はなし。ガーディアンもなし。

 

かなり深くまで降りたが。

 

あれだけの巨大な城壁だ。この城の基礎部分は、かなり深い所までしっかり作られていたのだろう。

 

此処も、それと同じように作られていた。

 

ただ、それだけということだ。

 

「かなり深くまで降りて来ましたね……」

 

「パティ」

 

「すみません」

 

パティが口を塞ぐ。ディアンは、既に無言だ。

 

恐らく自分の先祖が此処を作った。それを知っているから、緊張しているのだろう。

 

かなり複雑な思いの筈だ。

 

種が殺戮兵器の成れの果てだと言う事を知った今である。

 

殺戮兵器を動力として機具を使い。それを神聖なものとしてあがめ奉っていた。それがどうしても、まだ腹の中で納得出来ていないのだろう。

 

だから、見たい。

 

そういう事なのだろうと、あたしは思う。

 

最深部に到達。大きめの部屋がある。其処には、複数の書物が存在していて。書物の体裁は、皮でもゼッテルでもなかった。

 

これは、なんだ。

 

タオとクリフォードさんが触った後、渡してくれる。

 

ふむ。

 

樹脂のような、そうではないような。ちょっと分からないが、てかてかしていて。それでこれは……生物由来の素材か。

 

ちょっと何とも言えない。

 

内部の文字は解読出来ない。ともかく、これは回収していく価値がある。

 

荷車を降ろすと、本は全て回収する。大きめの部屋だが、それくらいしか残されていない。

 

戦力になりそうなものは、最後の一つまで投入し。

 

人員も、最後の一人まで戦ったのだろう。

 

此処に残されたのは、きっと城の人間の最後の記録。

 

それすらも、此処を攻め落とした錬金術師達は、見つけた場合は嬉々として焼き払っていただろう。

 

あたしは無言で全てを回収すると、床を閉じる。

 

そして、一旦計画は変更。

 

アトリエに戻る事にした。

 

アトリエで、本を積み降ろし。これの解読は、ゴーレムを撃ち倒してからだ。

 

まだ朝二である。

 

この時間から、当初の計画通りゴーレムを倒すのは、それほど厳しくは無い。すぐに城にとんぼ返りする。

 

途中で、巨獣二体がいなくなったことで、縄張りが混乱している魔物を何体か仕留めるが。

 

目だって大物が減ってきている。

 

やはり、それぞれ何十年も掛けて、或いは百年以上も掛けて成長してきた魔物だったのだ。

 

倒せば簡単に替えはきかない。

 

だから倒す事に大きな意味はあった。

 

道塞ぐ魔物を片っ端から仕留めながら、城に。

 

そして、当初の作戦通り。タオとパティが誘引作戦を開始。城の外まで、引きずり出すことにするのだが。

 

其処でディアンが、挙手していた。

 

「俺も行く。 行かせてくれ」

 

「ディアン。 タフなのはいいけれど、誘引作戦には冷静さと撤退の見極めが大事だよ」

 

「分かってる。 ただ、話を聞く限り、セリさんが此処から来た時には、そいつは姿を見せなかったんだろ。 だとしたら、俺たちフォウレの人間が行く方が、姿を見せる可能性が高いと思う」

 

まあ、その通りだ。

 

しばし考えてから、許可を出した。

 

無理をしないという条件で、だが。

 

まずは、用意してきた頭巾を用いる。フィーに頼んで、監視装置に被せかける。フィーはしっかりやってくれた。人間の子供……いやもうそれ以上の知能はあるか。あたし達の言葉も理解出来ているのだから、それも当然だ。

 

「よし、良くやってくれたね、フィー」

 

「フィッ!」

 

「みんな、城の外まで退避。 タオ、パティ、ディアン、誘引頼むよ」

 

「うん、任せておいて。 パティ、護衛を頼む。 ディアンは別に気張らなくてもいいから。 敵を誘引したら、真っ先に城の外のライザ達の所まで走って。 ライザの作ったカモフラージュが失敗するとは思わないけれど、出来るだけあの装置には近付かないようにね」

 

タオが仕切るが、それで問題が無いだろう。

 

ディアンも本を持って来てはタオに読んで貰って、その博識さにいつも驚いていたのだ。ディアンは優れている相手を見抜く力に長けている。ちょっと表現が独特だけれども。だからタオの言うことも素直に聞く。

 

ディアンが暴れ者であっても。

 

クソガキではない良い証拠だ。

 

人の話を聞けるだけでも、相当にまともといえるのだから。

 

三人が陽動に出る。

 

あたし達は、事前の準備を済ませて、待つ。

 

やがて、ドンと大きな音がするのが分かった。周囲の森から、鳥が飛び立つ。無生物とは思えないほどの威圧的な音だ。無生物だから、かも知れない。

 

来るな、これは。

 

どうやら予想が当たったようだ。フォウレの里の人間を殺すように、ゴーレムは作られたらしい。

 

ゴーレムが錬金術の産物であり。

 

古いものほど高性能であるのは知っているが。

 

それにしてもこれは。

 

特定の種類の人間だけを追い詰めて殺すようにするというのは、ちょっと度が外れている。

 

作った人間の頭のネジは全て吹っ飛んでいたとみて良いだろう。

 

城の中から、凄まじい暴れる音。タオ達は無事だろうかと、心配になる。だが、タオがばっと飛び出してくる。

 

あたしは頷くと、続いてパティ、ディアンが飛び出してきたのを見る。

 

ディアンは頭から血を流していた。

 

奧から追ってくるのは、巨大な人型だ。

 

威圧的に、口の部分があって。ゴーレムとは思えない程、殺意に満ちたデザインをしていた。

 

今まで見てきた土塊の奴とは違って、金属製。それも幽霊鎧を思わせる。それが極限まで巨大化し、重量化した。

 

去年王都で似たようなガーディアンを何体もみたが、それらの全てをあわせたより多分此奴は強い。

 

追ってきたそれは、城の外壁付近で止まろうとしたが、落とし穴に思い切り落ちる。既に植物魔術を駆使して、作って置いたのだ。流石にこれは察知できなかったようだが、これで壊せるほど甘い相手では無い事も分かっている。

 

即座に全員、その場に展開。

 

体半分落とし穴に落ちたゴーレムだが、それで破損もせず、両腕を使って全身を余裕で引っ張り挙げて見せる。かなり大きめに作った落とし穴だったのだが。

 

それどころか、背中から何やら火を噴いて。それで中空に躍り上がって見せる始末である。

 

これはすごいな。

 

あたしはちょっと舌を巻いていた。

 

勿論この間にも、熱魔術を叩きこんでいるが。この城を破壊するような攻撃が飛び交っていた時代に作られたゴーレムだ。装甲が赤熱するくらいで、貫通するには至らない。

 

そしてあたし達を敵と見なしたのだろう。

 

凄まじい勢いでゴーレムは吠え猛っていた。

 

「ちょっとやそっとの剣撃は通じそうにもないな」

 

「まずは作戦通りに!」

 

「おうっ!」

 

ボオスがぼやくが、あたしは冷静だ。

 

とにかく大量の熱槍を浴びせる。

 

跳び上がったゴーレムが、何かを周囲に飛ばしてくる。それが危険なものだというのは分かりきっている。

 

クラウディアが即応。

 

速射した無数の矢が、全てを叩き落とす。着地したゴーレムは、それだけで大地を揺らしていた。

 

城の守護者。

 

ただし、後からこの城を奪い取った人間が。

 

この城に住んでいるものを皆殺しにするため、据え付けたもの。

 

つまり城の守護者であっても。

 

この城を作った人間を最大限まで貶め、滅ぼすために配置された、最悪の守護者といっていい。

 

だったら、たたき壊すだけだ。

 

拳を振るってくる。

 

人型と言う事もあって体の動きは柔軟だが、それ以上に関節が人間を遙かに超えて柔軟だ。

 

うなりを上げた拳ごと、上半身が回転。それも極めて滑らかに、である。

 

更に腕が自在に伸びて、間合いを好き勝手に変える。

 

これは難敵だなと、攻撃を紙一重でかわしながら、あたしは思うのだった。

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