暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
対モビルスーツ(違)戦。
ただ此奴は神代のガーディアンにしてはまだまだ弱い方です。
それでもライザ達みたいな特例以外が勝てる相手ではありませんが。
熱槍をとにかく叩き込む。
レントが最前衛で何とか戦ってくれている。ボオスも何度も斬り込んでいるが、ゴーレムはなんと剣筋を見抜いて、攻撃の威力を最大限に殺すような動きまでしている。タオもパティもディアンも同時に仕掛けているのに、である。
中に何個も脳みそが詰まっているかのような動きだ。
前衛組の総攻撃を弾き返しつつ、更には自由自在に可変する間合いで周囲を攻撃してくるだけじゃない。
時々背中から多数の飛び道具を飛ばしてくる。矢では無い筒みたいな形状だが、後ろから火を噴いて加速しているのが見える。人間の近くで炸裂するかも知れない。とにかく、近づけさせたら終わりだ。
クラウディアが即応して全て叩き落としているが、失敗したらどうなっていたことか。あまり考えたくない。
跳躍するゴーレム。
更に上から、クリフォードさんが猛襲。
熱魔術を集中的に浴びている場所にブーメランを叩き込む。だが、ゴーレムは、なんとシールドまで展開した。
弾き返されるブーメラン。
だが、それは。
熱魔術を喰らった状態で、打撃は受けたくないという事を意味している。
ゴーレムが背中から火を噴き、突貫してくる。
狙って来たのはフェデリーカだが。即座にセリさんが対応。植物の蔓でフェデリーカを掴むと、さっと逃がしていた。
だが、ゴーレムが全力で地面に突撃した破壊力は凄まじく、辺りに衝撃波を発生させ。全員を薙ぎ払う。
あたしも吹っ飛ばされて、壁に叩き付けられた。
立ち上がるゴーレム。
あの速度で地面に突っ込んで無傷とは。
それも、背中のあの火。
空を自在に飛びよる。
なるほど、神代の兵器。それも恐らく神代最盛期の兵器と言うだけの事はある。実力も、後代のものとは次元違いだ。
いきなり拳を分離し、飛ばしてくるゴーレム。
掠めただけで、また吹っ飛ばされる。
これは、あたしが攻撃の軸だと言う事に気付いているな。
レントが仕掛けて、続けての一撃はどうにか防いでくれたが。立て続けに吹っ飛ばされて、あたしも脳が揺らされている。
薬を飲み下す。
その間に、前衛が蹂躙されている。
ディアンへの集中狙いをやめたゴーレムは、全員にまんべんなく猛攻を叩き込んできている。
その凄まじさ。言語に絶する。
レントも、これ以上最前衛で防ぐのは不可能だろう。しかも飛んだ拳は、すぐに戻って手に装着されているようだ。
どうにか少しずつ回復して来たので、深呼吸し。
そして、熱槍を再度ゴーレムに叩き込む。
また熱槍かと、弾き返すゴーレムだが。
今だ。
パティが、ゴーレムの体を蹴って跳躍。それを見越したゴーレムが、シールドを発生させ。パティの一撃を防ぐ。
だが、その時に。
クリフォードさんの投擲したブーメランが、敵の一部を確かに抉っていた。
熱槍で金属を熱して、柔らかくしていたのが効いて来たのだ。赤熱した装甲が、軋みを挙げる。
ゴーレムが、全身から凄まじい熱気を噴き出す。
排熱か。
そんな機能もあるんだな。
多分熱攻撃対策というよりも、当時は凄い熱が飛び交う戦場で、それを防ぐためにつけた機能だった可能性が高い。
だが、それを待ってやる義理はない。
あたしが万を超える熱槍を集中したのを見て、ゴーレムが口をかっと開く。そして、こっちに熱線を投射してくる。
避けて。
叫ぶと同時に、あたしも熱槍を叩き込み、熱と熱が中途でぶつかり合う。
炸裂した。
爆風がとんでもない。あたしも必死に飛び退いて破壊力を殺すが、それも殺しきれるものではない。
また壁に叩き付けられる。
背骨が軋む。
血を吐く。
手強いな。それだけは認めてやる。狂った殺戮機械だが、強さだけは本物だ。
だがその狂った強さ。
誰のためにもならない。
誰も幸せにならない。
だからここで破壊する。
ハンドサインを出す。ゴーレムが、それこそ金属の塊となって飛んでくる。次の瞬間、あたしは冷気爆弾レヘルンの上位版。
改良型のレヘルンである、メルトレヘルンを投擲していた。
ゴーレムが、それを危険と判断したかも知れないが、熱の中を飛んであたしを仕留めに来たのだ。
それに対する完璧なタイミングのカウンター。先の先を読んでの行動。
対応できる筈がない。
ついでに、四つの爆弾を合成したツヴァイレゾナンスを、それぞれの特化火力では凌ぐように、爆弾は改良を重ねている。
炸裂したメルトレヘルンは、一瞬にして辺りの熱気を消し飛ばすほどの冷気と共に、ゴーレムを氷漬けにしていた。
全身に罅が入るのが見えた。
あたし達だって、霜が地面に走る状態で、風邪を引きそうな温度差に晒されているのである。
爆心地にいるゴーレムが、無事で済む筈がない。
ゴーレムの目が光る。
巨大な氷が砕けると、ゴーレムが凄まじい雄叫びを上げながら、更に動こうとするが。それまで前衛で盾になり続けていたレントが。一転攻勢。
ゴーレムの肩に、深々と大剣を突き立てていた。
全身が傷だらけになったゴーレム。
パティが突撃と同時に抜き打ちを叩き込み、左腕第二関節に大きな抉り傷を入れる。ボオスも、足に連打を叩き込み。タオと共同して特に左足を重点的に攻める。
跳躍したディアンが、ゴーレムの頭に斧を叩き込む。
だが、ゴーレムは全身を傷つけられながらも、全身を回転させ、集っている前衛組を追い払う。
更に例の飛び道具を多数放ってくる。
今までにない数で、あたしも熱槍で迎撃に掛かる。だが、数個が叩き落としきれない。
そこにクリフォードさんがブーメランを投擲。残りの飛び道具を、全部撃墜してくれていた。
炸裂する多数の飛び道具。
ゴーレムは速度を落としながらも、あたしに向かって突貫してきて。そして、拳を繰り出してくる。
紙一重。
必死に回避して、城の頑強な壁に、ゴーレムが拳を叩き込むのを見る。いや、ゴーレムはこんな時も命令を守っているようで、壁を壊さない。
首を動かして、こっちを見るゴーレム。口を開いているのを見て、それで悟る。
ぎざぎざの歯みたいになっている威圧的な口。
確かにこんな口を見たら、人間を常食しているという噂が流れるはずだ。なんというか、肉食獣のそれよりもおぞましい。熱線を投射するだけではなく、恐らくは威圧感を与えて、敵を怖れさせるためのデザインなのだろう。
レントが雄叫びを上げながら突貫。
狙っているのは足だ。
ゴーレムが防ごうとするが、回転して繰り出した腕を、パティが相手の勢いも利用して、斬る。
ついに二の腕にダメージを与えていた分も含めて、ゴーレムの巨大な腕が陥落して、地面に叩き落とされた。
すげえ。
ディアンが叫ぶなか、あたしは離れてと叫び。アネモフラムを取りだす。
ゴーレムが全身の冷え冷えの状態を、必死に解消しようとしているが、そんな時間を与えるか。
投擲。
防ごうと顔を上げて熱線を放とうとするゴーレムだが、頭にディアンとクリフォードさんが同時に、斧とブーメランを叩き込み。
一撃離脱する。
あたしが投擲したアネモフラムが。
ローゼフラムを凌ぐ超火力を、文字通りアネモネの花のように。
その場に咲かせていた。
ごっと、凄い音とともに熱風が吹き荒れる。とんでもない熱量だ。極低温に晒され、これを喰らって、無事で済むものか。
呼吸を整えながら、更に次の攻勢に出る。
ゴーレムが、全身から猛烈な風を放って、熱風を吹っ飛ばす。これだけ温度差に晒されて、まだ生きている機能が多数ある。とんでもない怪物だが。
そういうのと、何度も戦って来た。
今までに此奴の劣化版や、それ以上に強い魔物とやりあってきたのだ。
今更、遅れを取るか。
ましてや此奴は、城を破壊できないという縛りつき。
此処は奴のテリトリーだが。
力を封じる枷でもあるのだ。
無理に体熱を戻した影響で、千年以上の年月風雨にも耐えてきただろうゴーレムの全身の装甲が、砕け始めている。
あたしは、総攻撃と叫び。
自身でも、更に爆弾を取りだす。
コストが激甚だが、コストを惜しんでいては此奴を倒せない。
だったら全力でやるだけだ。
レントが突っ込む。残った腕を振るって、迎撃するゴーレム。しかし腕が一本になったのが厳しい。
レントも消耗しているが、パリィを成功させ。レントもゴーレムも大きく弾きあう。もはや動く巨城の面影なし。
此方も消耗がひどいが、それでもどうにかしてみせる。
あたしは鍵を展開。
幾つか準備してある、竜脈の力を吸った鍵。その一つを握りつぶす。
それによって、封じられた竜脈の力を、指向性を持って全員に与える。並みの魔術なんか比較にならない強化率。
切り札の一つ。
神代の連中の技術ではあるが。
技術に罪はない。
全員が加速。皆、体力の限界が近いが、それでも畳みかける。タオとボオスが、乱撃を叩き込み。
パティの一撃が、相手の胴体を深々と抉る。
まだ飛ばしてくる飛び道具を、更に凄まじい速度でクラウディアが打ち抜き、中途で爆破。
更にはクリフォードさんがブーメランを叩き込み、ゴーレムの肩が根元から外れていた。
「よし、ディアン、決めろっ!」
「おうっ!」
跳躍。
ディアンが、ゴーレムの頭上に。これだけ猛攻を浴びながらも都度反撃し、人間を遙かに超える関節の可動域で周囲を薙ぎ払っていたゴーレムが、ディアンの跳躍からの脳天割りに一瞬遅れる。
回転しながら叩き込んだ斧の一撃が、ゴーレムの脳天をたたき割る。
脳みそは出ない。
だが、明らかに何かしらの回路が露出した。それが、スパークしているのが見えた。
タオがディアンをキャッチして、素早く離れる。全員が離れるのを見て、ゴーレムもまずいと思ったのだろう。
シールドを張ろうとするが、その瞬間、セリさんの植物魔術で、巨大な蔓がゴーレムの体を錐となって貫いていた。
それでも動き、錐を砕いたのが最後の頑張りだっただろう。
あたしの投擲したツヴァイレゾナンスが、ゴーレムの至近に既に到達。
凄まじい絶叫のような音をゴーレムが挙げる。
何かの魔術詠唱だったのかも知れないが。
既にそれが発動する余地はない。
炸裂。
熱、冷気、雷撃、狂風。全ての攻撃が、一点に収束して、炸裂する。それが竜巻となって、ゴーレムの全身を覆い尽くし、破壊し尽くす。
ツヴァイレゾナンスの殺戮が収まった後、其処には既にただ人型の残骸を留めているだけのゴーレムが立ち尽くし。
多くの人をその拳で無慈悲に薙ぎ払っていただろう巨体は。
哀れな軋みを上げるばかりで、もう動く事も出来ず。
赤く威圧的に光っていた目は、光を失い。
鋭い歯が並んでいた口も、既にぼろぼろになっていた。
「とどめ、さしてあげる」
あたしが近付く。ゴーレムは、それを見たようだが対応しようにも、もう体が動かないようだった。
フルパワーでの飛び膝を叩き込む。
まだ立っていたゴーレムも、それで倒れる。
巨体が倒れ、森が揺動し。
そして、二度とゴーレムは動かなかった。
城から少し離れて。セリさんが作った植物の結界の中で休む。とてもではないが、アトリエに戻る体力がない。
みんなぼろぼろになっていた。あれだけの猛攻である。それも仕方が無い事だとは言えたか。
「悔しいが、神代の全盛期の兵器ってのは凄まじいな。 しかも今後、あんなのがまだ出てくる可能性が高いんだろ」
「もっと強いのが出てくるかもね」
「笑えるぜ……」
ボオスがぼやく。
あたしは、皆の手当てをするが、薬が尽きた。深手は回復したが、それでもちょっと厳しいか。
少し休む。
その間に、遠距離専門で戦闘していたセリさんが、後始末をしてくれる。
ゴーレムの体は、植物魔術である程度引っ張って来てくれていた。
分厚い金属装甲の内側には、やはり分からない機械がたくさんあった。どれもあの強烈な動きを実現するのに必要なパーツで、一つも無駄は無かったのだろう。
背中の部分は、熱放射をする事でこの巨体を飛ばすための燃料らしいのが入っていたが。猛毒だと一目で分かったので、触らないように促す。
もしも此奴が城を出て暴れ出していたら。
ネメドにある人間の集落は、全滅していただろうな。
そう思うと、戦慄する。
だが、そうならなかった。
全部仕留める事ができた。
だから、それで可とするべきなのだ。
後は、休んでから分解してアトリエに運ぶ。派手にぶっ壊したとは言え、解析できる分は解析したい。
腐るようなものでもない。
そのまま運んで行く。
爆発を引き起こす燃料については、これはこれで研究すれば、爆弾の破壊力を上げられるかも知れない。
とことん思い知らされる。
技術というのは使い方なんだな、と。
この燃料、何かを飛ばしたり、相手を殺傷したりするのに使うのだろうが。或いは何か役立てる方法が他にもあるかも知れない。
そう思うと、とても悲しくなる。
あたしも爆弾で魔物を殺傷しているが。
それはあくまで、身を守るため。誰かを守るため。その土地の生態系を守るため。
だがあのゴーレムを作った人間は、単なる悪意でゴーレムをくみ上げた。それは許される事なのだろうか。
金属の塊を順番に運んで行くと、フォウレの里ではまたやったのかと驚きの声が上がる。老人の戦士には、ゴーレムを見た事があった者がいるらしく、声を上げていた。
「し、城の主! 奴を倒したのか!」
「森に出て来ていたので仕留めました」
「そうか……。 奴に潰された仲間も、これで浮かばれるかなあ」
「……」
フォウレの里の人間を選択して殺す。
そういう機械人形だった。
そんな説明はできない。死者に対する哀悼を邪魔したくない。あたしは無言で一礼すると、ゴーレムの残骸をアトリエに運び入れる。
十回ほど往復して、ゴーレムの残骸をアトリエに。
その間に、デアドラさんが来たので、城の主を仕留めた話もしておく。
デアドラさんは、そうかとだけ言った。
恐らくゴーレムは、あの門の周辺だけを守っていた。
だから、余程の事がない限り遭遇もしなかったし。
以前多くの種拾いが殺された教訓もあって、近付かない範囲を設定しておけばいいと思っていたのだろう。
或いは気付いたかも知れない。
此奴を誘引して、倒した事に。
だが、それは説明しても詮無いことだった。
アトリエの内部で、手分けして更に解体する。装甲は殆ど駄目になっていたが、仕組みについては分かった。
もの凄い積層構造になっている。
複雑な構造、更には何カ所にも敢えて空洞の部分を作る事で、あらゆる攻撃に対応する仕組みだ。
人間用の鎧には、この仕組みは適応出来ない。
人間より何倍もでかいこのゴーレムの、しかも鎧では無く体そのものである装甲だから出来る仕組みだ。
ただ、盾としてなら作れるかも知れない。
あたしは、案を出しておく。
持ち運びはきついが、いざという時は自動で浮遊して、それで誰かを攻撃から守るための盾。
それは、あたしとしても価値があるものだと思う。
浮遊の仕組みそのものは別に難しくも無い。
夕方少し前に、ゴーレムの残骸と、城の後始末は終わらせる。これで、種拾いの人にも、城の中で戦闘があった事はばれないだろう。しかもゴーレムは、城を壊さないように戦っていたのだ。
余計に、である。
皆疲れているので、夜には先に休んで貰う。
ゴーレムを排除した事で、城の門について調査する事が出来る。最悪の場合、飛び越えてしまってもいい。
あの竜の紋章。
恐らくは、自己顕示からつけたものだと思って良いだろう。
舐めてくれたものである。
いずれにしても、自己顕示のためにあんなものをこさえたくらいだ。奧には本当の意味での門……。
オーリムへの門があるだろう。
みな、疲れたので先に眠らせて。あたしは栄養剤を口に入れながら、幾つかの調合案を出しておく。
寝息が聞こえる中、あたしはある程度で切り上げて。
一番最後に風呂に入って。それで寝ることにした。
流石に疲れた。
健脚とか体力が無限にあるとかいわれるあたしだけれども。流石にあんな凶悪なゴーレムを相手にすると疲れるし、何度も有効打を貰ったのだ。今の実力でなければ、頭を打って死んでいたかも知れない。
そういうものだ。
休むと、後は朝までぐっすりだった。
流石のあたしも、こんな日は夢を見る余裕も無い。
起きだすと、歯を磨いたり顔を洗ったりして。それから、外で体を動かす。
朝早くからあたしが起きて体を動かしている事はフォウレの里でも知られているようである。
それでボオスみたいに里に帰化しないかと誘いがこないのは、あたしが錬金術師で、直近に問題を起こしたアンペルさんがいること。
何よりも、魔物相手に圧倒的な戦果を上げていることが要因だろう。
知り合いになった老人が何人かいるので、軽く挨拶しておく。
まだ疑念の目を向けてくる老人もいるが。
特に息子や孫の敵討ちをした老人は好意的で、作物やら果物やらを分けてくれるようになっていた。
パティも起きてくる。
そして、並んで体を動かす。
パティも、昨日のダメージはもうないようだった。
「流石に鍛えてるね」
「いや、そもそも戦士として最前線に立つ私と同等以上のライザさんがおかしいんだと思います……」
「はは、そうかもね。 健脚だって、言葉を濁してフェデリーカも言ってたし」
「そうですね……」
フェデリーカは本音ではこう言いたかったのだ。
化け物、と。
まあそれは分かっているので、あたしも深く追求するつもりはない。
ただ、体の調整をするだけだ。
朝の調整を終えた後は、ゴーレムの残骸を解析しているうちに、皆起きてくる。低血圧のフェデリーカも、頑張って起きてくるようになってきている。
手早く朝食を済ませると、ミーティング。
その時には、全員すっかり目をさましている。
それはそうだろう。
フェデリーカでも、それなりの戦闘経験をもう積んでいる。
此処にいるのは、人類の中の精鋭のなかの精鋭。
恐らく、神代の錬金術師が部下として連れていたような精鋭でも、勝てると信じられる精鋭達だ。
「いよいよ今日、仕掛けるよ。 城の主といわれていたガーディアンはこれで滅んだし、何より頭巾に効果があることもこれで分かった」
勿論戦闘後、頭巾はフィーに回収してもらってある。
そのままにしておいたら、種拾いに気付かれる可能性があったからだ。
挙手したのはタオだ。
何とか時間を捻出して、城から回収した書物。更には、この里に伝わる伝承をまとめてくれていたのだ。
こう言うとき、クリフォードさんもいるのが大きい。
学者としてのタオと、実知識豊富なクリフォードさんが噛み合うと、研究は何倍も進むのだ。
アーベルハイムでは戦士として重宝しているらしいクリフォードさんだが。
タオが大学者になった頃には、多分その助手か相棒として名前が知られているとあたしは思う。
「分かってきた事があるので、報告しておくよ」
「タオの事だから、必要な話だね」
「うん。 ……まずあの城に最初からいた人々は、自分達をフォウレの民と呼んでいたようだね。 というよりも、この辺りにあった国がフォウレと言うそうだ」
「ロテスヴァッサみたいなものですね」
パティが分かりやすく言う。
今の時代、国家と言えるのはロテスヴァッサだけなので、「国」といえばそれしかないと学がない人間は思う。
だからパティの補足は必要になる。
「フォウレに攻めこんできたのは、フォウレの言葉によると「錬金術の民」。 竜の紋章からして、間違いなく神代の錬金術師集団で、あの群島を作った者達だろうね。 攻めてきた理由については、フォウレの方でも把握していたらしくて、どうも城の力を求めているようだ、ということだった」
「城の力、ねえ……」
「竜脈だよ」
その通りだ。
しかも竜脈は今も生きている。
その後、幾つかの話が続いたが、タオがまとめる。
「元々この地域では、その竜脈もあって、たびたびドラゴンが飛来したともある。 その被害を最小限にするためにも、あの城を作ったのだそうだよ」
「まて。 最小限にしても、フォウレの里は壊滅するくらいの被害が、定期的に出るって事か」
「それがおかしいんだ。 城を作る事で、被害は出なくなった。 民も喜んでいるって記載があるんだ。 つまり、本来は竜風なんてものは起きずに、被害も出ないようになっていたって事だよ」
「……」
つまり、何かあった。神代の錬金術師が何かやらかしたのか、それとも城を管理する人間がいなくなったからか。
それについては、まだ分からない。
兎も角、門の状態を調べて。
そして、アンペルさん達と、その向こうを確認する他無いだろう。
まずは門の状態からだ。最悪の場合は、そのまま向こうに攻めこんで、フィルフサの王種がいるなら首を取る。
ただこの状態でフィルフサが溢れていないので、そんな状態になっているとはとても思えないが。
それでも調査は必須だ。
「よし、ともかく現地を調べる。 仮説はあくまで仮説。 実際に現物を見て、それを真実に変えるよ」
皆が立ち上がる。
ディアンとフェデリーカ以外の全員が、対フィルフサ戦の経験者だ。
此処からは最悪の場合本気での死闘になる。
それを、誰もが理解していた。