暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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4、どうにもなるものならないもの

何も無い空間に、建物だけが浮かんでいる。

 

大気がある惑星とは次元を異なる場所に、無理矢理大気を留め置き存在している空虚な城塞。そう、同胞の拠点。同胞が母と呼ぶものが存在する場所。自身の友が苦闘している場所。

 

そこに、パミラは足を踏み入れる。

 

ロテスヴァッサの混乱が一段落した。

 

影で動く事もそれほどなかった。まあ何人かの貴族は同胞で始末したようだが。パミラが手を出すまでもなかった。

 

以前はロテスヴァッサに集まっていた錬金術師共を駆逐する時に、パミラが真っ先に出たのだが。

 

既にロテスヴァッサには、そんな力もなかった。

 

玉座を降ろされた王は、無気力なまま屋敷で監視されて過ごしている。

 

ヴォルカーは現在積極的に立憲君主制の体制変更へと準備を進めていて。玉座には見向きもしていない。

 

新しい王についても、自分がなるという意思は希薄なようである。

 

まあ、形だけでも、いずれは玉座についてもらわないといけないが。

 

今回は、全体的な状況の確認のためにここに来た。

 

ガイアをはじめとする、同胞の中心も集まっている。

 

ただ、いつも出迎えに出てくるアインがいない。

 

見回していると、友の声がした。

 

「アインは体の調整を行っています。 久々に遊び疲れるほどに動いたこともあって、ダメージが隠しきれないほどに出ています」

 

「回復は出来そう?」

 

「ええ。 ただししばし掛かります。 まったく……進展できません。 もう少しデータをストレージから回収出来ないと、堂々巡りでしょう」

 

「……」

 

パミラは神格と呼んで良い存在だが、神格というのは存外不便で、自分の役割以外はまったく何もできないに等しい。

 

パミラもその辺りは全く同じ。

 

そもそも世界を見守る事。

 

それだけがパミラの神格としてのあり方。

 

だから本当は戦闘はそれほど得意でもない。いちおう戦えることは戦えるが、一応以上でも以下でもないのだ。それでも、ロテスヴァッサに巣くっていた腐敗錬金術師どもを薙ぎ払うくらいは出来るが。逆に言うと、それが限界だった。

 

ガイアが咳払い。

 

眼帯をしている彼女が咳払いをすると、同胞達が背筋を伸ばした。

 

「状況確認よろしいでしょうか、コマンダー」

 

「ええ、はじめてちょうだいねー」

 

「分かりました。 まずは……」

 

順番に説明。

 

まずはライザから。

 

ライザはフォウレの里周辺の度を超して強大化していた魔物をあらかた掃討。要注意の存在として同胞でも認識していた、「超巨大殲滅型」の人工魔物二体を含む、多数の魔物を仕留めたという。

 

更に、だ。

 

「ライザによるタイタン級蛮族殲滅ゴーレムの撃破を確認しています。 現地での偵察をしているロミィから連絡がありました」

 

「タイタン級を!?」

 

「凄まじい。 本当にいざという時に手に負えるのか」

 

同胞がざわつく。

 

まあ、それもそうだろう。

 

タイタン級。蛮族殲滅ゴーレムなどというように、神代の錬金術師達が、「劣っているこの世にいるだけ無駄な人間」を駆逐するためだけに作りあげた、対人殺戮に特化したゴーレムだ。

 

背中にブースターを搭載して高速での機動、小型の対人ミサイルを多数搭載、更には口からはレーザー兵器まで放つ事が出来る。単純な能力でも、フィルフサの将軍級を単騎で数体は仕留めるほどの実力を持っている。王種には流石に及ばない……といいたいが。

 

実はこの地を守っている、タイタン級の中でも神代の錬金術師が護衛用に構築した「聖地防衛用」とされているタイタン級の戦力は、フィルフサの王種以上。

 

パミラも遠くから一瞥したが、あれは勝てないと判断して、交戦を諦めた。

 

まだ掌握できていないこの土地には、そういう危険な存在がいるのだ。友が必死に掌握している土地を拡げているが、それも苦労しているのは当然なのだといえる。

 

「ライザはアンペルおよびリラと合流。 フォウレの人間を味方につけ、近場にある門を潜るつもりのようです。 門の向こうにフィルフサがいるのなら殲滅するつもりなのでしょう」

 

「現時点では、利害は完全に一致しているな」

 

「ああ。 敵にさえ回さなければ心強い限りだが」

 

「問題は、我々の存在を知ったライザが、どう反応するかだ。 それに、ライザが力に見入られた場合……最悪の事態になる」

 

口々に同胞が言う。

 

ガイアが咳払いすると、それも静かになった。

 

ともかく、話を続ける。

 

「奏波氏族とライザが接触した場合、更に多くの知識を得ることになります。 如何しますか、コマンダー」

 

「現時点では放置でいいわ。 もしも力に見入られた場合は、私と同胞の総力を挙げて討ち取る。 それだけでかまわないわー」

 

「……分かりました。 次。 東の戦況」

 

「はっ」

 

同胞の一人が、東の地の戦況について話し始める。

 

かなり戦況は悪いが、どうにか同胞と現地の戦士達が連携して踏みとどまっている。

 

フィルフサほどでは無いが、この土地は最後まで神代にも古代クリント王国に対しても頑強に抵抗し続け。

 

結果嫌がらせとして、多数の凶悪な対人殺傷用の魔物を放たれた。

 

その中にはくだんのタイタン級も混じっていたが。幸い今はその全てが沈黙している。沈黙させる過程で、膨大な被害を出し。同胞も多くのリソースを消耗したのだが。

 

それに自動繁殖する対人殺傷のためだけの魔物をばらまかれたのだ。現在でも劣勢なのは仕方が無い。

 

そして、それをやらかした連中と、同胞は関わりがある。

 

だから魔郷と言われる東の地で、今も。

 

戦い続ける人々を、支援しているのだ。

 

世界中の状況が良くない。

 

だが、もしも東の地の人間が全滅したら。その魔物が、どっと他の土地に流れ込んで行きかねない。

 

そういう現実がある。

 

だから、同胞は東の地を支援し続けなければならない。フィルフサの駆逐は最優先だが。それ以前に、この世界ではやらなければならない事が多すぎるのだ。

 

ただ、ライザ達が登場した事により。

 

四つものフィルフサの群れが、短時間で全滅して、王種も首を取られている。これはとても大きい。

 

だからライザを危険視すると同時に。

 

ライザと協力できないか、という声も上がるのだ。

 

「東の地は相変わらずか。 母よ。 やはり増援の手配をお願いいたします」

 

「しかし他の土地でもまだ手が足りていない。 東の地にばかりではなく、増援を手配して欲しい。 撃破を優先したい魔物がまだ何体もいる」

 

「それも分かっているが……」

 

「いずれにしても、ライザの監視が今は最優先です。 もしもライザが此処に来る事があれば……。 その時は良きにせよ悪きにせよ、ブレイクスルーが発生するでしょう。 その時に、方針を変えます。 それまでは、出来るだけ状況の維持で」

 

そう言われると、同胞達は素直に従う。

 

「母」の発言は絶大なのだ。

 

いつものかけ声を上げて、それで同胞は解散する。

 

それはそうとして。

 

パミラは、あるものを受け取りに来ていた。

 

それは、この土地で神を気取っていた錬金術師の一人。そいつが愛用していた「光の剣」こと。

 

己の魔力をエーテル化し、更に超高熱プラズマにして固定。

 

あらゆる物質を、情けなく容赦もせず切り裂く、最強の武器だった。

 

なお使い手の腕がどうということもないので倒され。今は友の手に渡っている。

 

「それをどうするつもりですか?」

 

「そうねー。 ライザが奏波氏族と接触して、考えが決まった頃に会いに行くの。 その時、ライザが世界の敵になると判断した場合は、これで斬る。 私達の味方になってくれそうだなと思った時は、これを渡す。 そのつもりよー」

 

「……分かりました。 いずれにしても、ライザが世界の敵になるかどうかは……貴方の方が正確に見極められるでしょう。 幽霊の神よ」

 

「ふふ、そうよね」

 

たくさんの錬金術師を、色々な世界で見てきた。

 

ライザは、多分まっとうな方だ。

 

そして、ライザなら。

 

この腐りきった世界を、一代で変える事が出来る。

 

ライザ以上の英傑が、発狂するほどの年月を繰り返しながら回して、やっと詰みを打開した世界も見てきた。

 

その世界ほど、幸いこの世界は詰んでいない。

 

だから、きっとどうにかなる。

 

パミラは、そう信じていた。

 

 

 

(続)







パミラさんが何者なのか、どういう存在なのか。

少しだけ此処で描写しています。

ネルケのアトリエを履修済だと今更かも知れませんが。
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