暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
本作のライザはこれで五度目……正確にはもっと足を運んでいるのですが、正確には五箇所目のオーリムへの到来となります。
彼方此方で門を閉じてフィルフサとやりあっているのです。原作以上に。
門を潜ったあたしは、いつもの空間を抜ける感触を味わった後、地面を踏んでいた。柔らかい地面。
即座に場合によっては雨を降らせられるように、戦闘態勢には入っている。だが、この気配は。
フィルフサのものではないな。
周囲を囲まれている。いずれもリラさんセリさんと同等か、それ以上の手練ればかりだ。数は三十と言う所か。
オーレン族は男性も女性も優れた戦士だが。
あたしには、その年齢は分からない。
リラさんとセリさんが最初に出てきたのを見て、オーレン族の戦士達は困惑しているようだが。
セリさんが、先に名乗っていた。
「緑羽氏族のセリ=グロース。 帰還したわ」
「セリ=グロースだと!」
「人間の世界から戻ったのか!」
「ええ。 それも浄化の植物を携えて」
ざわつくオーレン族の戦士達。
だが、戦闘態勢は解いていない。
彼等の間から、小柄な女性が出てくる。オーレン族だが、少なくとも人間の目からは幼いように見えた。
だが、リラさんとセリさんが、即座に平伏する。
一瞬遅れて、ぞっとするほどの強い魔力を感じる。
魔力だけじゃないなこれは。
肉体も恐らくだが、とんでもなく鍛え込まれている。
最近はある程度力が分かるようになってきているが、全身が総毛立つとはこのことだ。キロさんと話している時に、炸裂する雷みたいな力を感じる事があるが。この人は、更にその上の力を感じる。
格好も他のオーレン族と違う。
オーレン族は、最初にリラさんと出会った時のような皮鎧を身に付けているか、もしくはローブを被っているのが普通だ。
だがこの人は、ゆったりとしたローブを着込んでいて、それがドレスみたいになっている。
戦闘向けの格好ではないようにすら思えた。
被っているのは、植物で作った冠だろうか。
周囲の反応からしても、この人が特別な存在であるのは確定だった。
「ふむ、どうやらセリ=グロースで間違いないようじゃな。 それでその錬金術師と人間達は」
「はい。 この者達と今まで三度、フィルフサの王種を討ち取りました」
「王種を三度……だと!?」
「私と出会う前にも一度、王種をこの者達は討ち取っているそうです。 人間の中にも、フィルフサをばらまき、悪行を働いた者どもに反発し、その所業を許せぬと考える者がいます。 錬金術師にもついにそれが現れました」
ざわつきが大きくなる。
騙されているのでは無いのか。
洗脳でもされているのではないのか。
そういう声も上がる。
まあ、無理もないか。
あたしは杖を地面に突き刺すと、両手を挙げてみせる。戦って一方的に鏖殺されるつもりはないが。
少なくとも戦意は無いことは示しておきたい。
「みんな、武器はおいて。 この人達がオーレン族だよ。 少なくとも、今は戦う意味も理由もない」
「分かったわ」
クラウディアが最初に弓を降ろすと、レントも大剣を地面におき。最後にしぶしぶという様子ながらも、ディアンも斧を地面に降ろしていた。
セリさんが、あたしとアンペルさんの事を紹介する。
ちょっと気恥ずかしい内容だったが。
問題は、その内容の中に、長老という言葉が含まれていたこと。あたしに対する言葉ではない。
周囲を見る限り、この辺りは巨大な河で囲まれているようだ。
これはセリさんが言っていた通り。
その川に囲まれた地域の中に、砦が作られている。ささやかな規模だが、それでもオーレン族がどう見ても数百人はいる。
人間より基本的にあらゆる点が優れているオーレン族が数百人となると。
此処は一大拠点だ。
聖地と言われていたグリムドルでさえ、復旧を続けても今でも四十人を超えていないことを考えると。
此処が如何に凄い聖地なのかは、よく分かるのだった。
何より、周囲に多数の植物がある。
空気も澄んでいる。
今まで足を運んだオーリムの土地にも、密林になっていた王都からいけた場所などもあるのだが。
それ以上に、オーリムらしくない。
空も、普通に青い。
遠くに行くと、色が異常だが。
「なるほどな。 錬金術師を今でも嫌っているそなたが、良き錬金術師とまで言うか」
「はい。 最初の頃は何度も寝首を掻こうと思いましたが。 今ではその気はありません」
「ふむ、良かろう。 わしが直接話を聞く。 そなたら、その荷物をまとめてついてくるが良い」
「分かりました」
話を振られたので。
荷車に武器類を積み込んで。それでついていく。
此処は丘のようになっているが、だからこそ降りる過程で見える。川の向こうにはフィルフサがいる。それも相当数だ。
これは、複数の群れに囲まれているのではないのか。
「ライザリンと言ったな。 後はアンペルであったか」
「はい。 ライザとお呼びください。 アンペルはあたしの師匠です」
「わしの名はカラ=イデアス。 この奏波氏族の最後の砦の長にして、オーレン族の総長老を今は務めておる」
「総長老!」
それは王様と同じか。
しかし、どういう理由で。確かにもの凄く強いようではあるのだが。
リラさんが、耳打ちしてくる。
「どう見ても千八百歳は超えている方だ。 人間の目からすると、子供に見えているのでは無いのか」
「千八百歳!?」
「大きな声を出すな。 彼女はお前を警戒し、観察しているし、感情も大きく揺れ続けている」
「……」
ずっとカラさんという方は、にこにこと微笑んでいるように見るが。
そうか、リラさんがいうのなら、そうなのだろう。
丘を降りると、頑強そうな木の壁がある。壁には魔術が掛かっていて、川とこの壁で、二重に防備を固めているのだろう。
それだけではない。
壁には、激しい戦いの跡が幾つもあった。
フィルフサの群れがあれだけ彷徨いているのだ。
それは川に仲間の死体を放り込んで道を作るとか、或いはスクラムを組んで橋を造るとかして、攻めこんで来る事は考えられる。
四年前のグリムドルの戦いでも、そうやって橋を造り、濁流をフィルフサは越えようとして来た。
連中は多分本能に従って動いている存在だが。
だからこそ、様々な状況に対して、動く事が出来るのである。
「激しい戦いの跡ですね。 神代の錬金術師達が放ったフィルフサが此処にも来たんですね」
「神代? ああ、あやつらを今はそう呼んでおるのか。 そなたらの世代からすれば、忘れていても不思議では無いし、神格化してもおかしくなかろうからな」
「千八百歳と言うと、当事者なんですね。 だとすると、すみません」
「いや、かまわぬ。 反応を見ていて悟ったが、少なくともあの連中のやったことを素晴らしいと思ってはいないようだしな」
カラさんはそう言って、見上げる。
周囲には巨大な木が幾つもある。木の上には住居と橋が架けられていて。基本的には、其処に住んでいるようだ。
それにしても巨大な木だ。
触ってみて気付く。
ごおっと、音が流れている。内部には、膨大な水が流れている植物なのだ、これは。
大木には似たような性質のあるものもあるが。
これは中に川があるかのようである。
なる程、豊富に水を蓄える植物を使い、それでフィルフサ対策にもしているわけだ。それに加えて、いざという時に備えて木の上で暮らしてもいると。
考え抜かれた集落だな。
はしごを上がって、上に行く。フェデリーカが泣きそうな顔をしたが、落ちても大丈夫なようにと、下にパティがつく。
まあ、この辺りはやっと最近戦闘にもなれてきたのだ。
こんなアクロバティックな住宅は、流石に色々と困惑してしまうだろう。
はしごを上がりきると、複雑な構造になっている。
なるほど、この地点からして死地になっているし。
更に言えば、周囲も似たような。登ってきた相手を迎撃する構えだ。
この辺りには戦闘の痕跡はない。
恐らく水際での撃退が成功しているのだとみて良い。カラさんの周りにいる護衛は、ずっと厳しい目で此方を見ているし。
観光気分ではいられないが。
そのまま、木で作られた吊り橋を渡る。敢えてこれは、重量に耐えられないようにしているな。
それが一目で分かる。
とにかく、戦う事だけを重視している住居だ。
彼方此方に上水と下水があるようだが。木に相当に水の供給は依存しているようである。
周囲の川はあくまで防御用。
あれを使って水を得るというのは、考えられないのだろう。
雨が降り出す。
この辺りは、雨も降るんだな。
そう思って、あたしは感心する。フィルフサの群れは、雨が降り出すと、かさかさとこの辺りから離れ。
住処に戻っていくようだった。
王都近辺で戦闘した群れは、苛烈な雨が降る地域に必死に適応して、それで強靭さを手に入れ。代わりに数の暴力を失った集団だった。
この辺りにいるフィルフサは。遠目に伺う感じでは、其処まで強い気配はない。
だとしても、数は多いだろうし。油断出来る相手ではないな。
そう思いながら、橋を歩く。
やがて、何度もはしごを上がり、地面が遠くに見えてきた辺りで、幾つもの住居が見え始めた。
住居の辺りは、非常に頑強に固められている。
てかこの木はまるで空を支える柱だ。
何抱えあるのかすら分からない。
背丈も、あたしの百倍はあるのではないか。
無言で、ついていく。奧に巨大な天幕があって、其処に案内される。手練れらしいオーレン族の戦士達に囲まれて、話をする事になる。
荷車は下だ。
だから、基本的に丸腰で話をする事になるが。
それでも、今の時点で、殺される気配はない。カラという人は、思った以上に人を見極めているようだった。
ともかく、どうしてここに来たのかを説明する。
順番に話をしていると、その間ずっとカラさんという人はにこにこと笑顔を崩さなかった。
周りのオーレン族の戦士達は、ずっと険しい表情だったが。
「なるほど。 あやつらが、島を浮かべたと。 その挙げ句、妙な鍵を渡して、それで謎を解いてみろと」
「今までの状況から考えて、明らかに何かしらの悪意があるとみて良いでしょう。 あたしは敢えて罠に飛び込んで、連中の本拠を突き止め、場合によっては粉砕するつもりで動いています」
「ふむ、その心意気や良し……と言いたい所だがな。 まだそなたらを信用する訳にはいかん」
「それはそうですよね」
まあ、それもそうだ。
フォウレの里の時と同じである。
ましてや、だ。
神代の頃には、錬金術師はフィルフサを生物兵器として用いていた疑惑がある。それを知っていたから、古代クリント王国の外道どもは、フィルフサを制御出来ると思い込んでいた可能性が高い。
もしもフィルフサを生物兵器として用いているのを間近で見ていたのだとしたら。
錬金術師は見敵必殺レベルの相手になるはず。
此処でこうして、話をしてくれているだけでも凄いと言える。
「時に白牙の少女よ」
「リラです。 総長老殿」
「白牙に生き残りがいたとはな。 しかも人間の世界に渡っていたとは」
「……復讐心から、飛び出してしまいました。 今では、門を閉じて回っています」
リラさんが少女扱いか。
リラさんの実年齢はまだ知らない。だが古代クリント王国の所業を知っているのなら、最低でも五百歳、いや七百八百年と年を重ねていても不思議では無いだろう。それが少女扱いである。
このカラさんという長老は、やはり相応の年を重ねている人なのだろうと、この対応でも分かる。
「そなたから見て、そのライザリンという錬金術師はどう思う」
「私がともに旅をしてきたアンペル同様に、真っ先に自分の先達に当たる錬金術師に対して、強い怒りを感じていました。 それ以降も、連中に対するあこがれは一度も見せていません。 常に強い怒りを見せています」
「ふむ……そうか」
カラさんは、すっと笑顔を消した。
それだけで、辺りが死地になったように思う。
それはそうだろう。
此処で袋だたきにされたら、多分死ぬ。
「よし、一つ試すか。 この集落から東に出て、南にくだったところに、フィルフサの王種が潜んでおる。 奴を撃ち倒せ。 奴の巣には、色々なものがある。 残されているというべきか」
「!」
「どうやってフィルフサの群れを撃破するのか、見ておきたいのでな。 やり方に関しては任せる」
「分かりました。 その代わりと言ってはなんですが……この土地で何が起きたかを含めて、色々その暁には聞かせてくださいますか」
くつくつと笑うカラさん。
やっぱり、いわれている通り、この人は子供に見える怪物だ。
とんでもない威圧感がある。
百戦錬磨というのも生やさしい経験を積んで来ているからだろう。その気になれば、即座にあたし達の首を飛ばしに来る筈だ。
感じる魔力量も凄まじい。
錬金術の装備なしでこの魔力だとすると。あたしが作った装備類を身につけたら、何処まで増幅されるのか。
「よかろう」
「総長老!」
「かまわぬよ」
配下のオーレン族の手練れ達が露骨に不安視するようだが、それでもカラさんは笑っている。
この様子だと、何かしら理由があるのかも知れない。
先に、開いている土地の提供を求める。
そんなものをどうするのかと聞かれたので、先にアトリエを建てたい事を告げると。更に不安そうにオーレン族の戦士達はするが。
カラさんは、平然としていた。
「分かった。 ただし、内部は視察させて貰うぞ」
「というか、いざという時は攻撃しやすい場所を指定してください。 此方としても、オーレン族の人々と争うつもりはありません。 今後の未来の為にも、少しでも敵意がないこと、役に立つ事は示しておきたいんです」
「そうか。 随分としっかりしておるのう」
カラさんが、案内してくれる。
木を降りて、川際。水を得ることも出来る場所。
集落の外側を流れる巨大な河だが、その支流が一部、集落に流れ込んでいる。
懐から出て来たフィーが、周囲を飛び回る。これはいいというのだろうか。空気もあっているのかも知れない。
「おや、そやつは。 懐かしいのう」
「フィーの一族を知っているんですか!?」
「秘密じゃ。 そなたらが成果を上げたら、その時には話す事にする」
まあ、それもそうか。
あたしは荷車をもってくると、手を叩いて、皆に指示を出していた。
「じゃ、アトリエを作るよ!」
アトリエを短時間で多数作り。毎回失敗があれば次の成功に生かす。それをやってきている。
だからあたしは、どんどん習熟してきている。
フェデリーカももう慣れたものだ。ディアンも既に、見稽古から参加する方に代わって貰う。
基礎にする石材を敷き詰め。
そのまま柱を立てる。
建築用接着剤を使うのは最小限。あたしは持ち込んでいる木材チップを、どんどん錬金釜で成形していき。
そのまま、くみあわせられる部材に変えていく。
足りない木材は、一度門を潜って、ネメドから持ち込む。其方にも朽ちている木材はなんぼでもある。
見る間に出来ていくアトリエ。
それを見て一番驚いているのは、アンペルさんだった。
「話に聞いてはいたが、凄まじいな。 どうしてお前が私の弟子を名乗ってくれているのか、不思議でならんよ」
「アンペルさん、この木を此処で切ってくれますか」
「ああ、任せておけ」
アンペルさんは空間ごと木をすっぱり切断。
それを見て、オーレン族が僅かに反応したが。
これくらいの固有魔術は、神代に使い手がなんぼでもいたはずだ。あたしにしても、固有魔術の熱操作なんか、別に珍しくもないのである。身体能力強化が一番多いが。熱魔術はその次くらいにはいる。
柱を立てて梁を組み。
アトリエの骨になる部分を作ると、壁を組み込んでいく。
建築用接着剤は使用は最小限。
使用する際には、入念に気を付ける。
更には、水を引く。上水用の設備も組み込む。排水用のも。排水は、一度しっかり汚染を排除してから、近くの川に捨てる。
現時点で相応の人数がいる。排水の量は馬鹿に出来ない。川を汚染するわけにはいかないのだ。
順番に作業をこなしていくが、皆手慣れてきている。
クラウディアが音魔術を使っているのは、どこかしらで異音が生じていないかの確認のためだ。
ディアンが無理に木材を持ち上げていたので、クラウディアが即座に気付いた。
レントがすぐに支援に回る。
「え、まずかったか」
「そのまま持ち上げていたら折れていたよ」
「うわ、すまねえ。 クラウディアさん、本当に細かい所まで見てくれるな」
「いいえ」
ディアンは素直に謝ると、レントと一緒に作業をする。
そのまま作業を進めて、扉や窓なども入れていき。調合した簡易寝台などを、内部に並べていく。
更に男女用の風呂を一つずつ作って、トイレも作り。
釜も運び込んで、それで終わりだ。
内部はそれなりに今回は質素に作った。技術力を見せつけるように、豪華にしても意味がない。
技術力を見せつけて、自分は神に等しいというような偉そうな態度を取っていては。
いずれ神代の連中と同じになる。
中を見て、カラさんはふむと一言だけ言っていた。しばし、子供みたいに興味津々の様子で見て回る。
護衛のオーレン族数人も、中を見て。
これをたったこれだけの時間で作ったのかと、驚愕していた。
「建築はそれなりに出来るので、必要とあれば誰かしらの家を直したり作ったりしますよ」
「ふむ、今回の依頼をそなたらが達成したら頼むかのう。 それにしても、寝台が少し多いようだが?」
「それは、今後一緒に戦う仲間が増える可能性があるからですね」
「そうか。 先の事まで考えておるのう」
興味津々に見て回る様子は子供にしか見えない。
或いはこの長老。
子供みたいな所も、相応にあって。それで余計にわかりにくい人物になっているのかも知れなかった。
ともかく、アトリエの内部は確認したカラさん他の人達は、一旦アトリエを出ていく。後はいきなり攻撃されないか、だが。
今の時点では、心配しなくても大丈夫だろう。
一旦休憩を入れる。
ディアンが、カラさんがいなくなって、それで冷や汗をどっと流していた。
「すげえ強い奴だ。 あのガタイで、レントさんより強いぞ彼奴。 魔力もライザ姉より更に上だ。 とんでもねえ。 まるですぐ側で、川が牙を剥いてるみたいだった」
「ディアンの表現はいつも独特だね。 ただ、あたしも同様に感じたかな。 オーレン族の総長老というだけあって、凄い人だよあの人」
「それでライザ、どうするつもり?」
「どうするもなにも、フィルフサの撃滅は最初から想定の範囲内。 しかも丁度良いことに、此処は雨も降る。 雨をある程度人為的に引き起こす事も出来るけれども、見た感じこの周辺のフィルフサの群れは、それほど大繁殖も出来ていないし、何よりオーレン族との戦闘で疲弊している。 潰すのは、今まで四度の戦いに比べて、それほど大変ではないと見た」
というか、確信したことがある。
去年王都近辺で戦闘したフィルフサの群れ。
あれが奇形的に強かったのであって。他のフィルフサの群れは、「蝕みの女王」麾下の群れに劣る程度の戦力しか基本的にはない。
それでも雨を降らせないと数という観点から非常に危険だったのだが。
此処は雨が普通に降る上に、オーレン族との戦闘で相当に数をすり減らしている。ならば殲滅の好機だと言える。
「一応水は外から持ち込んでいるけれども、使わずともやれると思う。 何より水害レベルの大雨を起こすと、後始末が大変だしね」
「いつも後始末は苦労するよな」
「うん。 此処は人も住んでいるし、出来るだけ被害は抑えたい。 だから苦労する事になると思う」
「大丈夫、もう私は負けません。 怖れません」
パティがとても頼もしい。
既に歴戦の戦士であるパティは、皆と並んで戦える。カウンター主体だった剣術も、今ではすっかり様々な戦技を加えて、戦闘に幅も出ているようだ。
では、先にディアンとフェデリーカに。
フィルフサとの戦闘の経験がない二人に、フィルフサとの戦い方をレクチュアする。
一応話は事前にしてあったのだが。
生物急所が存在しない事を、もう一度話しておく。コアを潰さない限り、フィルフサは死なないのだ。
いや、汚染された土壌から生えてきている時点で。
フィルフサは、コアを潰しても、ただ動かなくなるだけで、本当に死んでいるのかは分からないが。
「生態急所が存在しないのは、ゴーレムや何かと似ていますね」
「確かにそれは言える。 イキモノと思わないでやりあうべきだということだな」
「そうなる。 とにかく、今までの魔物とは異質の存在だからね。 魔術も効かない」
フェデリーカも青ざめながら頷く。
フェデリーカはとにかく皆の能力を舞ってあげてくれればそれでいい。無理に攻撃参加しなくても、皆の力を底上げするだけで、大きな戦略的価値があるのだ。
問題はディアンだ。
斧と言っても、大型の魔物相手に使うときは、どうしても急所を狙うのが癖になってくる。
だから、急所が存在しない事は、先に告げておかないとならないのである。出来れば、何度も。
後は実戦だ。
一週間で、一度フォウレの里には顔を出しておきたい。
此処での調査は長引く予感がある。
だから、彼方にも進捗は話しておきたいのだ。
それはそれとして。まずは、フィルフサの群れは叩き潰しておく。フィルフサの群れは、見かけ次第潰す。
やれるからには、やらなければならない。絶対の義務だ。
おろかな先人がやらかした罪は。
少しでもあたし達が、償わなければならない。出来るのだったら、やる必要があるのだった。