暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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そこは洞窟でありながら。

フィルフサが守る重要な拠点でもありました。

そこでライザは知ります。

想像以上の神代の錬金術師の邪悪さを。


3、滅びの洞窟へ

悲鳴のような鳴き声とともに、将軍が倒れる。辺りにいた小鳥が、逃げ散っていくのが分かった。

 

オーリムでありながら、フィルフサ以外の生物もいる。

 

それが此処が、フィルフサに汚染されきっていない事を示している。

 

グリムドルでは、フィルフサ以外の生物はほぼ存在しないに等しかった。

 

移動中に、リスににた生物や。小鳥はたくさんみた。小鳥といっても、多分あたし達の世界にいるものとは違うのだろう。

 

虫もそれなりに見た。

 

姿が似ているのは、タオが言うところの収斂進化というものの結果なのだろう。

 

生物は環境に応じた最適解の形状があって。

 

それに似ていくそうである。

 

リスや小鳥は、多分こっちの世界の同じ種族とは違うものなのだろうが。いずれにしても、状況に応じて姿が似た、と言う訳だ。

 

将軍は、これで六体目だ。確認されていた洞窟への道を進んでいくと、何度も遭遇する。そしてやはり手強い。

 

群れが増えないように、オーレン族が間引いているのだろう。被害を出しながらも。

 

それを終わらせる。

 

少なくとも王種を仕留めれば、爆発的な繁殖は出来なくなる。

 

将軍だって、簡単に代替はできない。

 

確実に進んでいる。

 

そう自分に言い聞かせながら、あたしは進む。

 

洞窟の入口に、かなりの数が群れている。将軍を中心とした、強力な戦力だ。これは油断出来る相手ではない。

 

ハンドサインを出して、皆がさっと散る。

 

フィルフサの攻撃性は高い。気付けばすぐに仕掛けて来るだろう。だから、こっちから仕掛ける。

 

充分に準備が出来てから、あたしは無言で、爆弾を放り投げる。将軍の感覚器の動きを見て。

 

その反応が最大限遅れる瞬間を狙っての事だ。

 

まずはクラフトリオが炸裂し。

 

続けてアネモフラムが灼熱の花を其処に出現させる。立て続けに雷撃爆弾が複数炸裂し。更にはとどめに辺りをメルトレヘルンが凍結させていた。

 

魔力を媒介にして発動する魔術は、どうしてもフィルフサには通らない。

 

だが、こういった爆弾なら話は違う。

 

問題は爆弾にコストが掛かる事で。

 

コアクリスタルを用いて複製するにしても、ごっそり魔力を吸われるということだ。今のも、アンペルさんとセリさんとあたしで連携して投げたのだが。それでもかなり魔力をコアクリスタルに持って行かれた。

 

濛々とした煙を吹っ飛ばして、将軍が躍り出る。雑魚の大半は今ので消し飛んだが、やっぱり将軍は仕留められないか。

 

レントが躍り出て、鋭い角をもつ将軍の突撃を真正面から受け止める。それだけじゃない。

 

パティも出て、将軍の真横を通り過ぎながら、抜き打ちを叩き込む。

 

将軍の頑強な装甲に火花が散る。

 

わっと飛び出してくる生き残りのフィルフサ。体が半分になっていても、動いている奴も多い。

 

即座に乱戦になる。

 

洞窟を塞いでいた氷を粉砕して姿を見せたのは、二体目の将軍。

 

あの洞窟、やはり奧には王種がいるとみて良い。

 

「そいつは任せるよ!」

 

「おうっ!」

 

将軍が背中から展開した触手が、鞭のようにしなって辺りを薙ぎ払う。それをレントが可能な限り防ぎ、パティも何度も斬り払って見せる。

 

将軍の背中に、ボオスが剣を突き立てる中。

 

あたしは新たに現れた将軍に、出会い頭にフラムを放り込んで起爆。吹っ飛んだフラムの灼熱の中、走る。

 

突きだしてくる鋭い槍。更に、光。

 

将軍は遠距離攻撃手段をもっている事が多い。ドラゴンなどの空を飛ぶ相手への、対空手段なのだろう。

 

あの光は、かなり凶悪な遠距離砲とみた。

 

放つのを許さない。

 

槍を、紙一重でかわし、至近距離に。

 

将軍は間近に来たあたしに、それでも魔力砲を放とうとするが。

 

クラウディアの放ったバリスタみたいな矢が、横っ面を張り倒し。更にそれが立て続けに将軍の体を襲う。

 

ぐらついた将軍の姿が見える。

 

体中からさっきの槍を放つ事が出来るようだ。多数の触手が蠢いていて。口のある所に魔力砲が出ている。

 

また繰り出される槍。

 

それを脇で掴むと、あたしは気合とともに。踏み込み。

 

そして、将軍を持ち上げていた。

 

「おおう、りゃああっ!」

 

もがく将軍を、そのまま放り投げる。

 

背中から地面に落ちた将軍は、己の重量が原因となって、強かに体を傷つける。触手を使って必死に受け身をとろうとしたようだが。

 

地面に落ちると同時に、あたしはそのまま二回転して。回転の威力を乗せながら、回し蹴りを叩き込んでいた。

 

拉げる将軍の装甲。

 

其処に、ディアンが躍り出て。

 

上空から、斧の一撃を叩き込んでいた。

 

火花が散る。

 

ディアンが吹っ飛ばされる。

 

将軍の体が二つに割れると。体内からおぞましい数の触手が現れ。それが無理矢理体をひっくり返して立て直す。

 

だが、今ので見えた。コアだ。

 

ハンドサイン。クラウディアに、狙って欲しいと言う意味だ。

 

体内でコアを動かす器用な将軍もいるが、こいつはあっさりあたしへ接近を許したばかりか、放り投げられるような迂闊な奴だ。

 

多分出来ない。

 

そのまま、立て続けに飛んでくる触手をかいくぐって、至近に。将軍がさがる。

 

引いたな。

 

そのまま、ディアンとタオも攻勢に加わる。

 

洞窟の奧から、更にフィルフサが出てくるが、雑魚ばかりだ。セリさんが植物魔術で、まとめて空に吹っ飛ばし。

 

其処をリラさんが植物魔術で繰り出された蔓を足場に飛び、鉄爪と体術で、またたくまに仕留めていく。

 

もう一体の将軍も、レント達が押し込んでいる。

 

此奴は、此処で仕留める。

 

横薙ぎ。

 

あたしは跳躍して、それをかわしていた。

 

将軍はさがりながら、複数の触手を束ねて、「突」から「斬」に攻撃をいきなり切り替えたのだ。

 

攻撃パターンの切り替えは、野生の動物には有効かも知れないが。

 

フィルフサ戦を散々こなしているあたしは、二体のフィルフサが重なっている、なんて奴とも交戦している。

 

どうしても本能依存の戦闘をするフィルフサに、今更この程度で遅れを取るか。

 

今の一撃で、むしろ体勢を崩した将軍の横っ腹を、立て続けにクラウディアの狙撃が襲う。

 

更にあたしは踏み込みつつ、振るわれた多数の触手を掴んで、力比べと行く。

 

足腰を極限まで鍛え。

 

更に装備品で強化をガン積みし。

 

ついでにフェデリーカの舞いでそれを更に倍率を上げているからできる事だ。将軍が。軋みのような音を上げる。

 

まさか。

 

人間に、力勝負で拮抗するとは思わなかったのだろう。

 

とどめとばかりに、ディアンが斧を振るって、触手数本を薙ぎ払う。体を分割して離れようとする将軍だが。

 

その瞬間、コアをクラウディアの狙撃が貫いていた。

 

倒れる将軍。

 

虫のように、死んでもしばらく動いていると言う事もない。即座に動かなくなる。

 

飛びかかってきた猿のようなフィルフサを、回し蹴りで粉みじんに消し飛ばすと。すぐにもう一体の将軍を潰しに向かう。

 

もう一体はレントの猛攻でダメージを蓄積させていて。

 

今、アンペルさんの空間切断がコアに届いたらしい。

 

竿立ちになると。

 

後は倒れて、動かなくなっていた。

 

周囲のフィルフサが逃げ散り始める。とりあえず、これでいいか。すぐに怪我人の手当てに入る。

 

「ライザ姉、すげえな! あんなデカくて強い奴を相手に、正面から力勝負して、しかも投げ飛ばしたぞ!」

 

「お、お前……ますます人間止めてきてるな」

 

「足腰を上手く使っただけだよ」

 

ボオスにさらりと返すと、手傷を受けていた皆を集めて、手当てをする。その間、クリフォードさんが周囲を警戒してくれる。

 

今日は四日目。

 

今までに倒した将軍はこれで10丁度。

 

洞窟の中にも将軍はいるだろうが、この様子だと王種と分断して戦う事が恐らく可能だろう。

 

敵の密度が低い。

 

将軍も直衛の戦力を殆どおいていない。それだけオーレン族が消耗させていると言う事だ。

 

少し戻って、地図を作り直す。

 

この洞窟に来るまでに、気になる地点はかなりあった。後方からの奇襲を警戒すべき地点もだ。

 

それらを全て潰しながら進んだので、かなり時間は掛かってしまった。

 

一度戻り、見渡しが良い場所に戻る。

 

やはりフィルフサが彼方此方で彷徨いているのが見える。不愉快な話だが、やるしかない。

 

オーレン族の戦士が来る。

 

女性戦士で、フードを被っていた。フードを被る戦士は、どちらかというと魔術専門の戦士らしい。

 

リラさんのような肉弾戦派は、皮鎧の方が主体のようだ。

 

勿論普通に魔術を使ったのではフィルフサには通じないので、セリさんのように植物による代替攻撃や、或いは一旦何かを浮かせてそれで質量攻撃をするなどの、様々な副次的効果でフィルフサを狙うらしい。

 

これについては、将軍の残骸を持ち帰ると、時々オーレン族が聞かせてくれた。

 

「錬金術師、この辺りまでフィルフサを掃討したのか」

 

「はい。 どうにか、ですが」

 

「此処から上がった所のフィルフサも掃討できただろうか」

 

「恐らくは。 近くにフィルフサの気配はありませんので」

 

オーレン族は頷くと、一緒に来て欲しいと言う。

 

朱星氏族の戦士で、ディルさんというらしい。ディルさんは、小高い丘に出る。色々と、何か積み上げられている。

 

フィルフサがいないので放置していたのだが。

 

なんとなく分かった。

 

此処は、墓だ。

 

「此処には、フィルフサや奴らとの戦闘が開始されてから、倒れた戦士が埋葬されている。 一番激しかった戦いの頃の戦士が多いが。 それ以降もフィルフサには多くが殺された。 私の弟も此処に眠っている」

 

「何か、できる事はありますか」

 

「この辺りのフィルフサを掃討してくれ。 それだけを頼む」

 

「分かりました。 必ず」

 

まだたった五十歳だったのに。

 

そう呟くのを聞いて、本当に色々と厳しいんだなと思う。

 

オーレン族の成長速度は人間よりかなり遅いらしいが、それでも五十歳になると、人間でいう十二~三歳くらいの状態にはなるそうだ。

 

これはリラさんからもセリさんからも、同じ話を聞いている。生まれてから、成人するまでは、オーレン族はかなり早いという事だろう。妊娠期間が10年あるという話を聞くと、なおさらそう思う。

 

十二~三歳の子が戦場にかり出されて、そして命を落としたというのは。

 

訓練をしている暇が殆ど無いことを意味する。

 

孤立した集落とかだと、それくらいの年の子が、武器を持って魔物とやりあわされるのがよくあるようだが。

 

それと同じくらい、末期的と言う事だ。

 

気合が入る。

 

「色々文化が違って、めまいがしそうです。 でも、オーレン族で五十歳というのは、まだ子供と言うことですよね」

 

「子供も子供、やっと体が出来はじめる頃だ。 普通は戦場になど出ない」

 

「……なんとかしないと」

 

フェデリーカが唇を噛んでいる。

 

この子も色々とあったからか、それなりに気合が入り始めている。今でも結構びくびくしているが。

 

それでも成長している、と言う事だ。

 

ディルさんを送ってから、そのまま掃討作戦に戻る。まだ薬の余裕はある。地形を確認して、背後からの奇襲を防ぐためにも、ちいさなフィルフサの群れでも容赦なく叩き潰していく。

 

とにかく勢力圏を広げる事だ。

 

今までは、オーレン族は奇襲を主体にフィルフサを倒していたから、小規模な戦果を上げることしか出来なかった。出来の数は削れても、どうしても一度に倒せる数が限られていた。

 

希望はだから小さかったし。

 

皆、ぴりついていた。

 

此処に先に来た、恐らく神代の錬金術師どもが、相当な無法を働いたと言う事も要員なのだろう。

 

いずれにしても、とにかくやる事をやるだけだ。

 

洞窟入口まで戻る。この辺りは、かなり安全圏が拡がったが。遠くの原野には、まだ多くのフィルフサがいるのが分かる。

 

ウィンドルというこの聖地も、周辺を守るので精一杯。

 

いずれ、あの辺りにも遠征しないとダメか。

 

兎も角、一定の成果を上げないといけない。

 

フォウレの里の方でも、成果は期待しているだろうし。

 

竜風についても、突き止めなければならないのだ。

 

どうもフィーについても知っているようだったし、それについても聞いておきたい。

 

辺りの掃討作戦は終わったので、洞窟に。

 

ここからが。

 

本番だ。

 

 

 

洞窟の中は、見るからに危険な毒キノコが生えていたり。巨大な蜘蛛がいて、金色の糸を張っていたりした。蜘蛛は大きかったが、どうも攻撃性は小さいらしく。あたしが近付くと逃げていく。

 

蜘蛛の巣をちょっと貰う。

 

どうも普通の蜘蛛の巣と違って、もの凄く頑強なようだ。これはひょっとすると、強力な繊維に変えられるかも知れない。

 

巻き取って貰っておく。

 

「周囲の警戒、よろしく。 全方位」

 

「ああ、分かってる」

 

「……タオ、気付いたか」

 

「ええ。 これ、自然洞ではありませんね」

 

クリフォードさんとタオが話している。

 

どうもこの洞窟は、あらゆる意味で不自然だという。フィルフサが掘ったものかなとあたしは思ったが、それはちょっと考えにくい。

 

フィルフサは土壌を自分達の母胎に改造して、そこからフィルフサを作り出すのだけれども。

 

それには地表近くが適しているようなのだ。

 

ずっと交戦し続けたリラさんからも話は聞いているが、フィルフサはどうにも地下で繁殖するのでは無く、地上近くの土を母胎にする傾向があるらしく。地下に住み着くのはあまり多く無く。

 

あるとしても、将軍や王種が身を潜めるためであるらしい。

 

だとすると、この洞窟は何だ。

 

タオとクリフォードさんがおかしいと言っている事もある。

 

何か人為的な罠くらい、あるかも知れなかった。

 

無言で調べながら進む。

 

奧からフィルフサの群れが時々出てくるが、どれも蹴散らす。蹴散らすと簡単に言うが、毎回手傷を皆受ける。少しずつ、進む。

 

すぐには増えない。

 

爆発的な繁殖をするフィルフサだが、恐らくは此処ではそうはいかない。だから、念入りに警戒しながら進んでいく。土中だ。本当に、どこから来ても不思議ではないのだ。

 

大きめの気配。

 

少し広めの空間に出る。将軍がいるのが見えた。それも二体か。

 

どちらも、辺りをゆっくり警戒して動いている。

 

更に奧に強い気配。

 

どうやら、この奧に王種がいると見て良さそうだ。狭いし、戦闘を避けるのはかなり厳しいだろう。

 

そして将軍と王種が全力で暴れたら、ちょっと対応は難しいとあたしは判断していた。

 

「釣るよ」

 

「了解……」

 

さっと皆がさがる。フェデリーカも、パティが手を引いて後ろに連れて行く。

 

釣るというのは、敵を誘引すると言う事だ。洞窟の外まで引っ張り出して、其処で戦闘をする。

 

王都近郊でのフィルフサ戦でも洞窟内で厳しい戦いをしたが、それは出来れば何度もやりたくはない。

 

洞窟の崩落に巻き込まれて死んだりしたら、最悪だからだ。

 

後ろから、ハンドサイン。

 

問題なし、ということだ。

 

洞窟の地図は、既にタオ達が作ってくれた。あたしはしっかり逃げ切れるかちょっと自信がないが、それについてはタオが誘引してくれるだろう。

 

石を投げる。

 

将軍が反応した。

 

あたしがべろべろばーとして見せると、一目散に逃げる。即座に追ってくる将軍。追いつけそうな速度を保ったまま、あたしは洞窟内を走り上がる。タオが先行しているが。後方からは凄まじい、洞窟を踏み崩すような音が轟いてきている。

 

将軍だけじゃない。かなりの数のフィルフサが、追ってきていると言う事だ。

 

四つ足のフィルフサが追いついてきた。小型で、犬くらいの大きさだ。だが、口は鋭い牙がずらっと並んでいて、噛まれでもしたら足を丸ごと持って行かれかねない。

 

だから、食いついてきた所をひょいとかわして。踏み砕く。

 

そのまま走る。

 

また追いついてきた奴を、後ろ回し蹴りで粉々に消し飛ばす。

 

それでも死んでいない。

 

かまわない。

 

ともかく、動きを封じて、そのまま距離を稼げればいいのだ。走る走る。後ろから、どんどん追ってくる。

 

洞窟を飛び出す。

 

既に皆は、半包囲の陣形を組んで、其処を死地にしていた。

 

タオは先にそっちに加わっている。

 

あたしは振り返ると、まずは飛びかかってきた大型犬くらいのフィルフサを、回し蹴りで粉々にすると。

 

将軍が出てくるまで、一斉攻撃を浴びせて。小型フィルフサをまとめて袋だたきにする。

 

更に中型が出て来た所で一旦戦線を下げ、勝てそうだと思わせながら、少しずつさがる。将軍も洞窟から出て来たようだ。

 

見た所、それほど強い将軍ではない。

 

ただやはり、奧に王種がいるからだろう。

 

出てくるフィルフサが、相当に多い。

 

あたしは、空に投擲。メルトレヘルンだ。そして、冷気爆弾を炸裂させると同時に。フラム複数で、それを一気に蒸発させていた。

 

結果。

 

辺りに、高熱の蒸気がぶちまけられる。それで、フィルフサが悲鳴を上げてのたうち廻る。

 

勿論高温の蒸気をもろに喰らったというのもあるが。

 

大量の水を、一気に浴びたと言う事もある。

 

更に追い風になったのが、空模様だ。既に曇っていたのだが、雨が降り出す。大雨の中、今のでのたうち回っていたフィルフサが、次々動かなくなっていく。中型、大型のフィルフサも困惑している中、クラウディアの矢とクリフォードさんのブーメランが、次々に柔らかくなった装甲を打ち抜いていた。

 

突貫。

 

あたしが叫ぶと、皆が反転攻勢に出る。

 

あたしが狙うのは将軍だ。

 

将軍は、体勢を立て直すと、立て続けに光を放ってくる。着弾、爆発。狙う瞬間をよく見て、着弾点を見切っていたから回避できたが、もろに喰らったら即死だっただろう。そのまま、一気に間合いを詰める。

 

狙うのは、まずは一体のフィルフサだ。

 

巨大な眼球みたいなのをもっていて、それから今の光みたいなのを放ってきていた。多数の足を振るい上げて、あたしを迎撃しようとするが。

 

至近で跳躍。

 

踵落としを叩き込み、ガードに回していた多数の足をそのまま砕きつつ。

 

巨大な眼球のような構造体を、踏み砕いていた。

 

高熱の蒸気でダメージを受け。

 

更には雨で続けて大きなダメージを受けている状態だから、此処まで効果覿面だったと言える。

 

至近から、蹴り技のラッシュを叩き込む。

 

もう一体の将軍にはパティが肉薄。その将軍は大きな鎌みたいな腕を振るってパティとつばぜり合いをしているが、パティの方がどう見ても剣技では上だ。乱戦の中、確実にフィルフサが減っていく。

 

あたしも、目の前の此奴を仕留める。

 

気合一閃、フィルフサの装甲を蹴り砕く。ずり下がった将軍は、必死に手足を再生させて猛攻を仕掛けて来る。

 

何度も肌を抉られる。

 

接近戦だ。仕方が無い。それに、この状況。乱戦に持ち込んだ時点で、ある程度の手傷は覚悟している。

 

頬を抉られつつも、あたしは前に出て踏み込むと。防ごうと展開してきた触手を蹴り払って。

 

振り返りつつ、装甲の奧で光っていたコアを掴み。

 

そして引きちぎり、引っ張り出していた。

 

返せ。

 

そう叫ぶようにフィルフサが触手を伸ばしてくるが、そのままコアを握りつぶす。それで、フィルフサは動かなくなった。

 

呼吸を整えながら、他を見る。

 

パティは押し気味。よし、加勢して一気に決める。突貫。

 

将軍が一体倒れたことで、他の大型や中型が、露骨に混乱している。だが、数が少し多いのも事実。

 

悔しいが、今日はここまでだな。ともかく、此奴らを仕留めて、それで一度戻る事にするしかないだろう。

 

パティに押され気味だった将軍は、あたしが猛禽のように躍りかかると、それだけで逃げ腰になったが。

 

お前、逃げようとした動物を逃がしてやった事なんて、一度でもあったのか。

 

殺して嬉々として母胎にするべく土にすり込んで。

 

それで自分達の養分にしていたんだろうが。

 

手傷はむしろ体を熱くする。

 

ぶんと振るわれた鎌を、伏せながら回避。その伏せる動作すら、体を動かすためのバネに変える。

 

うなりを上げて繰り出した蹴りが、フィルフサの足を二本、まとめて打ち砕いていた。更にパティが剣を鞘に収めると。

 

がつんと、相手を唐竹に斬る。

 

そして唐竹に割れた裂け目に、立て続けに突き技を繰り出す。

 

この手の技は、二撃目が本命。

 

それを見事に生かした二連撃だ。

 

今のでコアを貫いたらしく、将軍が痙攣した後、動かなくなる。

 

後は、雑魚を掃討するだけだ。

 

雨が程なく止む。

 

荷車に移動して、薬を取りだして、手当てを始める。やはりみんな手傷を受けている。クラウディアも。

 

これだけの乱戦で、相手がフィルフサだ。どうしようもない。

 

「一度引き上げるよ」

 

「それがよさそうだ」

 

タオがぼやく。

 

リラさんも、正しい判断だと褒めてくれた。

 

アンペルさんが結構しんどそうである。

 

やはり、ずっと閉じ込められていたのが効いているのだろう。ただでさえ、アンペルさんは色々と年齢を誤魔化しているそうなのだから。

 

後で、アンペルさんに、加齢しなくなる薬の話をするか。

 

不死は無理だろうが、不老はあたしはもう実現している。

 

もしも今後、門を閉じて回るのだとしたら。

 

あたしに後を継がせるにしても、手が足りないだろう。

 

選択肢としてはありだ。

 

生のママの人間とやらが、どれだけ醜いかは。あたしもアンペルさんも、散々見知っている。

 

今更、「人間性」なんてものに、こだわる必要なんて、ないだろうし。

 

アトリエに戻ると、本格的な手当てと、風呂を順番にこなす。また、いつの間にかカラさんが来て、話に加わっている。

 

「洞窟の奧に強い気配があった。 多分あれがフィルフサの王種だよ。 明日、勝負を掛ける」

 

「ほう、もう洞窟の奧にまで辿りついたか」

 

「カラさん、何があるのかは見せてもらいます」

 

「そうせい。 その後、それを見てそなたらがどう思うかが問題よ」

 

そう。

 

判断次第では、オーレン族が総出で掛かってくるだろう。

 

頷く。

 

どれだけの人間の業が其所に込められているとしても。あたしは、逃げるつもりも、目を背けるつもりも。

 

ない。

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