暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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ライザが原作でも手に入れた力は幾つかありますが、迅速な拠点構築がその一つです。

これが原作で猛威を振るう事になるんですが(流石にフィリスの時のような移動式アトリエではないほどにしても)、本作でも相応に猛威を振るいます。

これに「鍵」の力が加わります。

慢心からライザという鬼神を招いてしまったのが、神代の……万象の大典を作った連中の失敗だといえましょう。


2、三番目のアトリエと鍵

地図を拡げる。ボオスも来て。アガーテ姉さんにも来て貰った。これは、今回の件が、クーケン島に関わる問題だからだ。

 

短時間で地図を作った手際に、アガーテ姉さんは瞠目していた。

 

四年前はクソガキ集団だったあたし達の成長に、本当に驚いているようだ。

 

そろそろ自分は婚期を逃しかねないと、以前ぼそりとアガーテ姉さんがぼやいているのを見た事がある。

 

あたしは酒は殆ど嗜まないんだが。

 

珍しくつきあったときに、そんな事を言われたっけ。

 

ただ、島の方は大丈夫だと思う。

 

あたしは当面、この島は拠点の一つにするつもりだ。

 

バレンツとのコネを切りたくないからである。

 

アガーテ姉さんに結婚願望があるのはその時知ったが。

 

まあ、それにしても。

 

いずれにしても、クーケン島の戦力の要を、アガーテ姉さんが担い続けるのはそんなに長い間ではない。

 

それはアガーテ姉さんにとっても、良いことの筈だ。

 

「現在、分かってきた事を順番に説明します。 この群島は明らかに人工のもので、クーケン島より巨大な人工物だと判断して良いかと思います」

 

「人工のものか。 あれほど巨大なものが……」

 

「続けて良いですか」

 

「ああ、頼む」

 

アガーテ姉さんは。以降は聞きに徹した。

 

そのまま、タオが説明していく。

 

今、目をつけている島は幾つかある。

 

まずは、中心近くにある、あたしがアトリエを建てるつもりになった島。此処は高低差が大きく、塔のようなものがある。そして何よりアトリエを建てるのに充分な要地があって、地盤もしっかりしていた。

 

次が、その近くにある山のような形状をした島だ。

 

この島はドラゴンに近いサイズのワイバーンがいるのが既に観測出来ている。このワイバーンがあまり人間に友好的だとは思えない。

 

この群島全域に、竜脈があって。大気中に魔力が漏れている。

 

それもあって、魔物が寄って来ているのだろう。

 

そういう説明をすると、アガーテ姉さんは頷いていた。

 

ボオスがぼやく。

 

「いずれにしても、観光だのは論外だな」

 

「うん。 絶対に近づけないでよ。 水中から魔物に襲われて、ぱくん、それまでだろうからね」

 

「相変わらずだな。 分かっている。 海の魔物がわんさかいるという話で、バカがいたら脅しておく」

 

クーケン島の住民なら、あたしの武力は知っているし。

 

何より、海の魔物の恐ろしさは誰もが理解している。

 

海の魔物は陸の魔物に比べて大きさが段違いで、戦闘力もそれに応じて高いのだ。

 

大きめの商船ですら、たまに撃沈されるのである。

 

とてもではないが、それに安易に近付くわけには行かない。文字通りの自殺行為だからである。

 

クーケン島に来るような人間は大半が商人だが。

 

その商人達にも、海の魔物の説明で大丈夫だろう。

 

皆、船で来ているのだ。

 

海の魔物の恐ろしさは、充分に熟知しているのである。

 

もしもそれでも群島に近付く阿呆がいるなら、流石にそれは責任を持てない。

 

ただ、そういうのは。

 

一定数いるのだ。

 

それも、大きめの商会の御曹司だったり令嬢だったり、或いは貴族だったりするからタチが悪い。

 

そういうものなのだ。

 

「続くよ。 北側、南側に入れそうにない島が一つずつ。 この辺りに沈没船が。 この島は、かなり広めで、探索が出来そう。 この島は、サンゴがたくさんあった。 そして、この島だね」

 

タオが地図の西側に指を走らせる。

 

一番大きい島だ。

 

近くを通ったが、確かにビリビリ嫌な気配がした。

 

そして大きな宮殿みたいなものもあった。

 

恐らくが、これが本丸だ。

 

他の島にも何か得体が知れない危険性は感じたが。この島を、集中的に探索するべきだろうとあたしは思う。

 

勿論、他の島も調べるべきだが。

 

「気になった島は以上ですね。 ライザ、それでどうする?」

 

「腰を据えて調査をするために、まずはこの島にアトリエを予定通り建てる」

 

「またアトリエを作るのね」

 

「うん。 その後は、そこを拠点に、順番に周囲の島を調査していく。 そして、この宮殿を調べる」

 

そう戦略を口にすると。

 

アガーテ姉さんは、それでいいだろうと頷いていた。

 

「クーケン島は私に任せろ。 ライザがここ最近で納入してくれた装備もある。 島の自衛くらいは問題ない」

 

「ありがとうございます、アガーテ姉さん。 ボオスはまだしばらく掛かりそう?」

 

「ああ、ちょっと面倒な案件があってな。 ただ、二三日中には片付くだろう」

 

「それは良かった」

 

多分だが。

 

あれだな。

 

モリッツさんが、この間話をしているのを小耳に挟んでしまった。ボオスをどこぞの令嬢と結婚させようとモリッツさんは思っているらしい。

 

令嬢といっても貴族ので、王都の人間である。それも確か伯爵家とかいったから、恐らく相当に金に困っているのだろう。プライドが服を着ているような王都の貴族の無能ぶりは、去年たっぷり見せてもらった。

 

ボオスは当然断るだろうな。

 

キロさんの事が今でも好きだろうし。そういう点で、ボオスは大変一途である。その辺りは、恋愛ごとに興味ゼロのあたしも、敬意を払える。

 

モリッツさんには悪いが、ボオスにはそういうわけで政略結婚をするつもりはないし。

 

何よりもしもキロさんとボオスが結婚したら、それはそれでオーリムとの大事な転機にもなるはずだ。無能で将来性もない王都の貴族なんぞのコネよりも、百万倍も世界にとって有意義だろう。何度かグリムドルで接しているから知っているが、キロさんもボオスをそう悪く思っていないようだし。

 

ただ、そこで研究の途中である事が問題になる。やはり人間とオーレン族が子供を作る場合、母胎の影響が大きい可能性が高い。

 

悲劇を避ける為にも、研究を急がなければならないが。

 

「じゃ、解散。 レント、この木材、みんなと集めて来てくれる?」

 

「石材はいいのか?」

 

「石材は現地でどうにかする」

 

「分かった。 タオ、クリフォードさん、手伝ってくれ」

 

レントがすぐに出る。

 

クラウディアはアガーテ姉さん、ボオスと一緒にクーケン島に。クラウディアも、バレンツの代表として色々仕事がある。

 

セリさんは外に出ると、あたしが提供した畑を使って、薬草を育ててくれているようだ。

 

例の浄化用の植物は、種を持ち歩いているのと。

 

何よりセリさんの固有魔術で、まるごと格納できているらしい。

 

研究も出来れば此処よりオーリムで行いたいそうで。

 

今の時点では、研究するつもりはないそうだった。

 

皆に作業を任せて、あたしは淡々とアトリエを増やすための調合を行う。

 

ただ。問題はまだある。

 

アトリエを各地に建造した場合、コンテナにある物資をどうするか、だ。

 

コンテナは冷蔵する仕組みを使うから、傷む心配はないとは思うが。アトリエそのもの同士には物理的な距離が存在している。

 

空間をぽんと跳べれば。

 

いや、それは流石に高望みか。

 

ともかく、一つずつ問題を解決する。それは今も昔も、変わらない方針だった。

 

 

 

素材を集めて、調合をする。

 

木材は基本的に幾らでも採れる。ただし生木を切るのは得策ではない。また、無意味に木を伐採するのも同じだ。

 

レントは既にその辺りを知っているので、小妖精の森でいい木を見繕って来る。それらの伐採は任せる。

 

既にあの辺りだったら、遅れを取る者もいないだろう。

 

その間にあたしは、保存してある物資を確認。それぞれから、素材を集めて調合を開始する。

 

基本的にあたしは空間把握力には自信がある。

 

だから、島で見た敷地にどんなアトリエを建てるのか。どういう順番でアトリエを組み立てるのか。

 

それら全てを、頭の中で計算して、組む事が出来た。

 

ネジなどを作り、そして壁などを作る。それらはパーツごとに別れていて、組み合わせることで頑強になる。

 

調合しながら、形状通りに要素を分解し、組む。

 

ネジなどの力が掛かるものには、量産が出来るようになったゴルドテリオンを用いる。ちょっと贅沢かも知れないが、それでどうにかなるほどあたしの懐は寂しくない。そのまま調合を続けていると、レントがそれなりの木を持ち帰ってきた。

 

礼を言って、木を分解して、釜に入れる。

 

エーテルに溶かして、そして木材に切り替えて行く。

 

基本的に倒れたり立ち枯れたりしていた木を用いる。

 

それらの方が、実は曲がったりしないので、木材としては優秀だ。事実切り出した木材はしばらく寝かせておいて、水分を飛ばす必要があったりする。あたしの場合は、その作業が必要ない。

 

木材は一度エーテルに溶かして分解。

 

要素ごとに抽出し。

 

チップにして、形状を変えて出力。それを組み立てる事で、部材にしていくのだ。

 

頭の中に設計図があるので、そのまま淡々と作っていく。

 

「後同じくらいの枯れ木、二本よろしく」

 

「任せておけ」

 

「後砂利が少し足りないかな」

 

「了解」

 

レント達が行く。

 

セリさんが、不思議そうに作業を見ていた。

 

「見ればみるほど分からないわね。 エーテルを用いるという観点では、魔術の延長上にも思える。 だけれども、その先に複雑な才能を必要として、魔術の完全上位互換へと持ち込む。 この辺りの技術は、誰が始めたのかしらね」

 

「あたし達で言う神代の頃には錬金術があったのは確定ですね。 ただ……」

 

「ただ?」

 

「タオが見た本の記述によると、どうも神代の更に古い時代になると、錬金術よりも科学というものが主流だった時代があるそうです。 科学は誰にでも使えて、理屈さえ理解すればだいたい何でも出来たとか。 そういう意味で、科学も魔術の上位互換だったのかも知れないですね」

 

セリさんが腕組みする。

 

時々、薬草で作ったスムージーを出してくれる。植物操作の固有魔術を持つセリさんだが、それによるものだ。

 

味については、だいぶ良くなっている。

 

というのも、あたしが会う度に話を聞いて、砂糖とかを調合しているのだ。

 

砂糖は果実なんかからも作れるし、なんなら蜂蜜からも作れる。

 

これらを利用して、だいぶスムージーは飲みやすくなっている。

 

あたしも口にして。

 

それで栄養を頭に入れ直してから。

 

作業に戻る。

 

フィーは懐で、じっと周囲を見張っているようだ。あたしの邪魔になるものがないか。それともあたしが無茶をしていないか。

 

自分なりに出来る事を知っていて、それでやれることをやっている、という事である。

 

「ライザ、砂利を持って来たぞ」

 

「ありがと」

 

「それにしても、砂利なんかどうするんだ」

 

「基礎部分が脆弱そうだったから、砂利で補填する。 あの土だと、生物もいないだろうからね。 特に気にする必要はないよ」

 

てきぱきと動きながら、くみ上げた部材を整理して置いておく。

 

無言でレントがそれを持ち上げて、タオが手伝う。

 

クリフォードさんも、腕は太い。ばかでっかいブーメランをぶん投げて、百発百中させるのだ。

 

多分弓矢より、力がいるだろうあれは。

 

クリフォードさんも、手伝いをしてくれる。それだけで充分である。

 

「差し入れだよー」

 

「ありがとクラウディア」

 

クラウディアの声。振り向かずに、しばらくは調合に集中する。

 

砂利の要素から、幾つかの要素を抽出。

 

これで、効率よく固めるのだ。

 

幾つかの薬品に分解し。それらを混ぜ合わせる事で、ちょっとやそっとではびくともしない強烈な地盤の代わりに出来る。

 

更にこの中に、ゴルドテリオンの「骨」を入れる。

 

以前、脆弱地盤の土地に拠点を作る時に、苦労した経験があって。それでタオと相談して。古代にはそういう技法があったの聞いたのだ。流石に建築関連も、がりがりと知識を仕入れているだけはある。

 

この辺りの家屋は石積みだ。

 

だからそんな高等技術で作られてはいない。

 

というか、この技術を使えば、或いは見上げるような高さの建物を作り出せるかも知れないけれども。

 

今、それをするつもりはない。

 

今するべきは、フィルフサ対策。

 

各地の門がまだどうなっているか分からず、フィルフサが側で蠢いていて、しかも開きかかっている門があっても不思議ではないのだ。

 

それらの一つでもフィルフサに突破されたら、この世界は終わりである。

 

今回の件だって、その災厄を引き起こした古代クリント王国が模倣した存在。神代の技術によって引き起こされた事件である可能性が極めて高い。というか、消去法で此奴らくらいにしか出来る可能性がない。

 

だから、あたしは調査する。

 

何が何を目論んでいるかしらないが。

 

場合によっては顔面を蹴り砕く。

 

それだけの話だ。そのために、一つずつ準備をしていく。あたしは、そうやって。色々な苦難を乗り越えてきた。

 

ある程度調合が進んだところで、一旦お茶にする。

 

クラウディアが準備してくれたお菓子は結構減っていたようだが。それでもあたしが満足出来るくらいは残っていた。

 

お菓子を食べ終えて、ふと思う。

 

そういえば。

 

雑音みたいな声が聞こえると同時に、なんとなくのイメージが出来ていた。

 

それは鍵というか。

 

なんというか、そういうものだ。

 

なんとなしに作って見る。

 

作るのは、とても簡単だ。

 

エーテルで要素を抽出する必要があるが、別にそれほど難しい素材は必要としない。

 

錬金術では地水火風というのか。

 

まあ精霊王を見る限り、それに光闇も加わるのかも知れないが。

 

ともかくそれらの基本となるような素材。

 

土か草。

 

水。

 

空中に漂う細かな埃や、そらを舞うタイプの生物の羽根など。

 

それに極めて燃えやすいもの。脂などでもいい。

 

そういったものを調合して、作り出せばいい。

 

無言で、作り出す。

 

横からそれを見ていたクラウディアが、小首を傾げた。

 

「鍵?」

 

「なんだろうねこれ」

 

「えっ。 ライザ、どういうこと」

 

「最近雑音みたいなのが聞こえるんだよ。 声だと思うんだけれども、あの群島が出現する少し前くらいから聞こえはじめてさ。 それと同時に、これのイメージが浮かんできていたんだ」

 

大丈夫なのかそれと、クラウディアが視線で訴えかけてくる。

 

他の皆も、あたしが流されるように動いたことで驚いているようだった。

 

あたしは他人からの切っ掛けがあっても。

 

基本的に主体的に行動し、周りをぐんぐん引っ張る。

 

そういうイメージがあったかららしい。

 

そうだ。

 

確かに、あたしに鍵を作らせたのは、どういう意図だ。そうなると、この声。

 

神代の連中か。

 

可能性は低くないだろう。

 

ともかく、鍵は半透明で、手の中に収まっている。これをどう使うのかはちょっとなんとも分からないし。

 

そもそも一度にたくさん、それも簡単に作れる。

 

他の皆も触れる。

 

ただ、触ってみてクラウディアが不可思議そうに眉をひそめていた。

 

「魔術的な力を感じない? それも、とんでもなく強力な……」

 

「うーん、古くには錬金術の基礎とされていたような要素を使っただけのものだよ。 それに、そんなつよい力が?」

 

「貸してみて」

 

セリさんも、鍵を手に。

 

そして、目を細めて、じっと見ていた。

 

「セリさん、どうだ」

 

「……強い力を確かに感じる。 普通異なる要素ってのは殺し合うものなのだけれども、これは完全に相互補完してるわね」

 

「……嫌な予感がするね」

 

作ったあたしが、そうぼやいてしまう。

 

だが、これがもし、神代の連中が作るのを促したのだとすれば。

 

何かしらの目的があってしている筈だ。

 

とりあえず、手にはしておく。

 

ただ、連中の思惑通りに踊らされてやるつもりはさらさらないが。

 

鍵で少し気分転換してから。

 

残りの必要な部材を作りあげる。

 

徹夜かと思ったのだが、そんな事もなく。みながいる間に、作りあげて、荷車に分乗して積み上げることが出来た。

 

今のエアドロップには、それ相応の物資を詰め込めるのだ。また、去年の王都で苦労した事もある。

 

荷車は四台に増やしてある。

 

当然車軸などをゴルドテリオンで強化している、強力なものだ。最悪、これを用いて壁を造り、即席の野戦陣地にも仕立て上げられる。

 

今回は、二台と半分ほどで、部材は積み込み終えた。

 

エアドロップの推進力などを考えて、三台分を積み込むことは可能である。

 

これらの手際から考えて。

 

あたしはすっかりスランプを抜けて。

 

そして、手際も向上している事だけは、確かだった。

 

ふうと汗を拭うと、解散とする。

 

残りは翌日だ。

 

あたしはアトリエに残り、皆はめいめいクーケン島に戻っていく。タオはアトリエに来る度に本を大量に持って来ていたが。

 

それも、あと数回で終わると言っていたっけ。

 

それが終わったら、多分タオも実家から離れて、宿に泊まるのだろうな。

 

そうあたしは思った。

 

 

 

翌朝は、早くから全員で行動。今回はボオスにも加わって貰う。立ち会いもあるのだが。手数は多い方が良いから、である。

 

エアドロップに乗って、拠点を作ると決めた島に移動する。

 

エアドロップを珍しがってイルカが来るが、まあ触れあうのは厳しい。エアドロップは空気を充填して膨らませているので、外にちょいと顔を出したりするのは難しいのだ。また、魔物の結構大きいのが、こっちを伺ってもいる。油断したら、またたくまにぱくりといかれてもおかしくないのだ。

 

イルカ、か。

 

イルカはそれなりに賢い反面、網を破り魚を食い荒らすので、漁師の皆には嫌われている。イルカくらい、実際に接している人達と、なんとなしに知っている人で、感じ方が違ってくる生物は他にいないだろう。

 

あたしは困りものとして認識する派だ。

 

「イルカ、珍しいね」

 

「商船とかでは時々見かけるよな。 見ている分だけには可愛いんだがな」

 

「まあ、漁師とかをしていると、そうは言っていられないよね」

 

「そっかあ」

 

クラウディアが、レントとタオ。

 

あたしと同じようにクーケン島で育ち。漁の手伝いをした経験からも、イルカにはあまりいい印象を持っていない組の意見を聞いて。それで苦笑い。

 

セリさんは、ぼんやりと見ていた。

 

ボオスがぼそりと言う。

 

「この群島、いずれ沈んじまうんだろ」

 

「百年前に起きた異変が今回と同じだとしたら、そうだろうね」

 

「だとすると、魔物を全部駆逐したとしても観光には使えそうにないな。 このエアドロップを走らせて、イルカを見るツアーとか、それなりに金を取れると思ったんだが」

 

「まず護衛と、それと浅瀬に結構いる魔物。 それも大きいのをどうするかだね」

 

あたしが現実的な事を言うと、ボオスは分かっているとぼやく。

 

あたしから、こういう現実的な意見が飛んでくるとは、昔だったら考えられなかったから、かも知れない。

 

ともかく、島に着く。

 

その頃には、イルカは興味を無くしたか。それとも大型の魔物を嫌ったか、もういなくなっていた。

 

まだ朝方だ。

 

昼までに、アトリエを作る。

 

まずは、石材の切り出しについて。これについては、あたしが加わる。

 

他の皆は、まずは基礎からだ。

 

あたしが二つの液体をどう混ぜるかを実演して見せて、それで基礎を作ってもらう。

 

もともと塩水に浸かっていた土だ。

 

辺りには干涸らびた魚の死体なんかも散らばっているが。

 

飛んできた鳥や。島に生息しているぷにぷになんかが、ほとんど食い散らかしてしまったらしく。

 

もう、残骸はほぼ残っていなかった。

 

ぷにぷには、水中で元々住んでいたのだろう。

 

陸上でも平気というのは、たくましい話である。

 

「すげ。 建築用接着剤以上に頑強だな……」

 

「柱を立てるぞ!」

 

「おう、任せろ!」

 

皆、指示通りにやってくれているな。

 

あたしは石材を切り出す。此方はセリさんと。セリさんの植物操作魔術と組み合わせて、あたしが砕いた石材を、運んでいく。

 

熱魔術で石材を切り出していくのだが。

 

この辺り、水晶の類が多くて、クラウディアが物欲しそうにしていた。

 

そういえば宝石が大好きだったな。

 

そう思って、苦笑いである。

 

そのまま、石材を運んでいき。

 

基礎が固まった所で、床に敷き詰める。レントとボオスが二人で石材を運んで、指定通りの位置に組み合わせていく。

 

「これ、最初から何処に配置するのか、どう組み合わせるのかも考えて切り出しているのか。 それもこんな複雑な形状で切り出して、どう組み合わせるのかも考えて」

 

「空間把握はあたしの十八番だからね」

 

「いや、そうか……」

 

ボオスが渋面を作る。

 

あたしはどうしてだろうと思ったが、石材を運ぶのに加わっていたタオが、話してくれる。

 

こういうのは才能がものを言う分野。

 

ボオスはどうしても才能というのに欠けていて、努力で補っているという認識があるらしい。

 

だから、こういう才能を見ると、複雑になるそうだ。

 

ボオスには言ってはダメだよ。

 

そうタオに言われたので、頷いておく。

 

皆、手際よく石材を敷き詰めて、そしてレントが強度を確認。問題なし。そう判断してから、建築用接着剤で固定する。

 

この基礎、柱、石材の部分までは使い捨てだ。

 

此処から、木材で作った合板を用いて、壁、天井、梁、屋根などを組み合わせていく。窓もある。

 

これらも全てあたしが調合した。

 

どう組み合わせるかは頭の中に入っている。

 

最初にアトリエを作った時と同じだ。

 

組み合わせは可能な限り、接着剤を使わない。

 

部材を、がっつり噛み合うように作ってあるからだ。組み合わせるだけで、問題なくいける。

 

ドアの開け閉めを確認している内に、タオが屋根を作りあげていく。

 

屋根は基本的に石造りが普通のこの辺りの家屋でも木材を使うが。貧しい家だと、雑で雨漏りをしたりする。

 

あたしが作った部材は、油を塗ってあって、更には水が内側にしみこまないよう複層構造にしてある。

 

更に側にコンテナも作る。

 

これは冷気魔術で内部を低温に保つ事により。素材を長期間保存出来るようにしてある。

 

よし。

 

完成だ。

 

「アトリエ第二号、いや、第三号かな。 西の群島支部、完成!」

 

「魔法だなまるで……」

 

「同感だわ」

 

ボオスが汗を拭いながら、呆然とぼやく。

 

それに、セリさんが同調していた。

 

さて、此処からだ。

 

手を叩いて、あたしは皆の注目を集める。

 

「それでは順番に行くよ。 最初はこの島、あの塔がいいかな。 順番に調べて行って、最終的にあの大きな宮殿がある島にいこう。 足を運べそうにない、南北にある大きめの島は、調査は後回し……詰まるまでは放置しておこう」

 

「まずはアトリエの中で一休みしない?」

 

「……それもそうか」

 

クラウディアが、笑顔で圧を掛けてきたので、まあそれもいいかと思い直す。

 

大丈夫。

 

この面子だったら、あわてる事もない。

 

フィルフサの将軍でも、弱めの群れの奴だったら余裕を持って複数倒せる。雨なしで、である。

 

神代の連中が如何に強力であろうとも。

 

あたしも、今ならば。

 

そう簡単に、遅れを取るつもりはなかった。

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