暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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4、全てを見てきたもの

カラはそもそも最初からオーレン族の総長老になった訳ではない。当然の話だ。激動の時代を生き延びた。

 

ただそれだけが理由だ。

 

もっと優れた賢者は幾らでもいた。

 

もっと優れた戦士だって幾らでもいた。

 

だが、それらの全てが命を落とした。オーレン族はみんな生真面目で、だから最前線に立った。

 

強い者が、基本的に最前線に立つ。

 

当たり前の事をやってきた。

 

それに対して、奴らは違った。

 

勝つためには何をしても良いと本気で考えている。

 

それどころか、自分達の利益になるなら、何をしてもいいとすら本気で考えている。

 

捕獲した奴らの一人の頭を直接覗いて。それらが確認できたときには。

 

既に事態は取り返しがつかない事になっていた。

 

大きな戦いになった。奴らを追い払うことまでは成功した。

 

だが奴らが腹いせに残していったフィルフサはどうにもならなかった。追い払った奴らを追撃する余裕も無く。

 

以降は人員をすり減らしながら、フィルフサを仕留めていくしかなかった。

 

オーレン族は年を経ていくと、やがて背が低くなり、子供の様に縮んでいく。それでも戦いを続けられるように、魔力は落ちないし、筋肉だって減らない。元々普通の生物の筋肉とは造りが違うので、細く見える事もあるが。それはそれ、これはこれ。

 

カラの能力は、若い頃から衰えていない。

 

ただ、やはり頭の方はどうしても衰え始める。

 

最近はどうしても好奇心が子供の様に湧いて出る事があって。

 

周囲の側近達に、戒められることも多いのだった。

 

最終的には、幼子のようになってしまい。同時に免疫系がそろって狂い初めて。死んでしまうのだが。

 

まだそれには、数百年は時間はある。

 

その間は、長老として。カラは生き続けなければならなかった。

 

ライザリン……ライザと呼んで欲しいと言っていたか。

 

あの錬金術師の娘とある程度話して分かってきたことがある。

 

今までも、情報は断片的にえていた。

 

それで、錬金術師が、極めてエゴイスティックで。自分さえ良ければどうでもいいという思想を、ずっと引きついている事は理解していた。

 

五百年ほど前に二度目の侵略を仕掛けて来たクリントとかいう国家集団を裏から操っていた錬金術師どもも同じ。

 

そやつらに気を許すな。

 

そう風羽の伝令を飛ばしたときには既に時おそし。更にフィルフサによる汚染は拡大する事になってしまった。

 

もう同じ過ちは繰り返せない。

 

これ以上この世界がフィルフサに汚染されたら、どうにもならないだろうし。

 

総長老の家に戻る。

 

側近二人が、じっと待っていた。

 

ちなみに、側近だが。血縁的には孫に当たる。カラも既に失ってはしまったが、夫がいたのだ。

 

夫ににて口うるさいので、時々閉口するが。

 

ただ、自分の老いによる精神の変化も自覚しているので、口うるさくても従うようにしてはいた。

 

なお、血族だから側近にしているのではない。

 

単に、歴戦の戦士の生き残りが、それだけ少ないのである。

 

「長老。 またあの錬金術師の様子を見に行っていたのですか」

 

「おう。 どうやら今の時点では、ライザというあの錬金術師、今まで見てきた者どもとは異質よのう」

 

「そう見せかけているだけの可能性は」

 

「わしを誰だと思っている」

 

そう指摘すると、二人とも黙る。

 

カラがただ笑顔で話しかけているだけだとでも思ったか。

 

ライザの思考は読んでいる。

 

その師匠であるらしいアンペルのも一緒に。

 

それによると、どうもライザという娘は、錬金術の技術だけは引き継いだが。

 

自分の好き勝手に世界を弄くりまわして良いというエゴイスティックな思想については、一切引き継がなかったようである。

 

これはアンペルも同じらしい。

 

錬金術師という者達に脈々と引き継がれてきた、全能感とエゴ思想。

 

奴らの文献などを見る限り、そもそも奴らが神代と呼んでいた時代には、性欲が強い方が優秀だとか。欲望のまま振る舞う事が格好良いだとか。そういう思想が錬金術師だろうとそうでなかろうと関係無く蔓延していたらしく。

 

それらの思想が、錬金術師の全能感とエゴを育てたようだというのは分かったが。

 

どうも人間もあれから。特にクリントとやらのせいで、フィルフサによる大被害を受けて大きなダメージを文明に受けたようで。

 

結果として、ああいう思想の変化が起き始めているのかも知れない。

 

まあ、何とも言えないが。

 

「それで、如何するのです。 例のものまで、ライザリンは恐らく到達するでしょう。 王種を倒せるだけの実力があるのは明白ですが」

 

「その後に聴取をする。 反応次第では首を刎ねる」

 

「御意……」

 

「ただし、場合によってはこの世界からフィルフサを一掃し、フィルフサを撒いたあやつらを片付けるための力になるかもしれん。 それは周知しておけ。 わしとしても、この世界をどうにか出来るのであれば、それは利用するつもりよ」

 

眉をひそめる側近二人だが。

 

ともかく今は、順番にものを片付けて行かなければならない。

 

伸びをする。

 

普通オーレン族は睡眠を必要としないのだが。

 

年を経ると、オーレン族は眠るようになりはじめる。

 

カラもそうだ。

 

二百年ほど前、睡眠が欲しいという欲求を覚えて、愕然とした。脳を半分ずつ眠らせて幾らでも動けるオーレン族が。

 

これが老いかと焦ったし。

 

同時に、これも運命かと諦めもした。

 

ただ、フィルフサをどうにかしてから死にたいという欲求だけはある。それが為せるなら、どうなってもかまわない。

 

ライザという者は、その鍵になりうる。

 

ならば、利用する事も。

 

場合によっては、考えなければならなかった。

 

 

 

(続)







いわゆるのじゃロリババア枠のカラさんですが、オーレン族からは老人に見えるようです。これは原作通りの設定です。

年を取ると縮む種族なのかも知れないですね。

だとすると子供とはどう見分けをつけるのだろう……






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