暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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更に追撃です。

歴史の生き証人の口から、どんどんおぞましい事実が明らかになっていきます。

原作でも、神代は間違いなく歴代アトリエシリーズ最悪の錬金術「士」集団ですが。

本作でもそれは同じです。


1、フィルフサの正体

カラさんの所に出向く。

 

カラさんは木の上にある住居で待っていた。オーレン族の見分けはあたしには殆どつかないのだけれども。

 

リラさんが言っていた。

 

恐らく左右に侍らせているのは、血縁者だろうと。

 

普通だったら親ではないかと思うところだが。カラさんが総長老だという話は聞いているから。

 

恐らく子か孫なのだろうと、今は推察できる。あの見かけで経産婦と言う訳だが。まあ、それは別にどうでもいい。

 

笑顔で待っていたカラさんの所で、順番に説明をしていく。

 

「神代の錬金術師……この言い方じたいが嫌になってきました。 何かしらの他の言い方があれば良いのですが」

 

「連中は基本的に自己神格化をし、それを周囲も受け入れていた。 故に、それ以外に悔しいが呼び方はないのう。 わしらはただ錬金術師とだけ呼んでおったが」

 

「……分かりました。 ともかく神代の者達が何をしたのか、把握してきました。 順番に説明します」

 

彼処で行われていたのは。

 

生命に対する冒涜だった。

 

神代の錬金術師は、錬金術を極めたと自称していた。それだけ強大な国家を支配して、当時全盛期を迎えていた科学といわれるテクノロジーを錬金術に取り込み、最強最大の力を手に入れていたのだ。

 

人間の世界を好き放題に支配した彼等の野心は当然外に向いた。

 

そしてオーリムに来た。

 

オーリムでどうやってオーレン族と仲良くしたのかは分からない。そういう仕事の人間にやらせたのかもしれない。

 

いずれにしても、彼等は執拗に「猿」とオーレン族の事を呼んでいた。ログに猿共という罵詈雑言が散々残されていた。

 

オーリムで彼等が見つけたのがフィルフサ。

 

それは、本来は今の凶悪な殲滅生物などではなかった。

 

「元はフィルフサは、ただの冬虫夏草の一種でした」

 

「冬虫夏草?」

 

「はい。 虫などに寄生する植物……恐らくそれに近い存在です。 虫を食い荒らして芽を出すことから、冬は虫夏は草という意味から、そう呼ばれています」

 

「面白い呼び方をするものであるな」

 

カラさんが興味津々の様子で話を聞く。

 

フィルフサについては、最初は無害な……勿論寄生される生物にとっては死病に等しいが。

 

本来は、ただの寄生植物に過ぎなかったのである。それもターゲットは一部の虫に過ぎなかったのだ。

 

それを、錬金術師達は、徹底的に弄くった。

 

「フィルフサは強い魔力を持つコアを中心に、体を広げていく性質を持っていました。 その性質を極限まで拡大化し、あらゆる生物を取り込む性質まで与えた結果。 「母胎」と呼ばれる土に生物の要素を取り込み、そこから生物の長所を掛け合わせた凶悪な殺戮生物が誕生したんです。 フィルフサの本体はコアではなく、コアはあくまで体をつなぎ止めるためだけのもの。 フィルフサは、あの外殻そのものだったんです。 王種というのは、フィルフサの群れという巨大なフィルフサ全体のコアそのもの。 神代の外道どもにとって管理しやすいように、生態を根元から弄られたのがフィルフサという存在なんです」

 

「……続けよ」

 

「はい。 フィルフサの性質は強い魔力を帯びた外殻にある事に注目した錬金術師達は、それを更に改良。 魔術そのものをほぼ受けつけない存在にしました。 それだけじゃありません。 コアを維持するために魔力を必要とする性質に着目した彼等は、フィルフサに制御装置まで取り付けました」

 

狂気の源泉。

 

そう神代の錬金術師どもは呼んでいた。

 

何故狂気の源泉なのか。

 

それは簡単で、「狂気を発しているとしか思えない連中と似たように操れるから」だという事だった。

 

ログに残されていた。

 

ログには会話の内容が残っていたのだが、制御装置をどう呼ぶかという会議で。数名の錬金術師が、素で狂っている猿共と似たような所から来たのと同じだから、狂気の源泉で良いだろうとかほざいていた。

 

これだけで不快感が全身を焼き払いそうだが。

 

ともかく、丁寧に説明していく。

 

「フィルフサを作り出した彼等は、他にも似たような要領で様々な魔物を作っていました。 彼等が何故魔物を作ったのか。 それは彼等にとって「見ていて気分がいい世界」を作る為でした」

 

頭がクラクラしてくるが。

 

本当だ。

 

神代の人間達は、自分にとって気にくわないもの。

 

例えばちいさな虫。蠅やゴキブリなど。そういったものから。

 

自分が見ていて不愉快だと思うもの。

 

臭い植物だの動物だの。或いは、自分から見て劣っている人間だの。そういうものを丸ごと根絶やしにして。

 

全て更地にするつもりで、様々な兵器を作った。

 

例えば蠅とかは、あたしだって好きじゃ無い。だけれども、ああいう生物は自然にある汚物を分解して、迅速に処理する役割を持っている。あたしみたいな農家の関係者だったら、誰だって知っていることだ。肥や堆肥には虫が当然湧くが、そうすることでむしろ健全な栄養に変わるのである。

 

それすら、「見ていて気持ちが悪い」だの、「うざい」だのという理由で、全て抹殺しようとした。

 

自分達が神を気取っていたからだろう。

 

神代の錬金術師達は、作りあげた魔物には、神々の名を象ったものや。或いは古代に生きていた彼等の美学に沿った美しい生物の名前をつけた。

 

ラプトルがそうだ。

 

ラプトルはずっと古くに生きていた、古代生物であるらしい。姿も形もそれに似せて、ラプトルと神代の錬金術師は名をつけたのだ。

 

フェンリルもそう。

 

フェンリルというのは、ログに出て来たが、古くに存在した宗教の魔物の名前らしい。神すらも食い殺す強大な狼という存在らしく。

 

彼等は得意げに、最強の狼の魔物が出来たと思って。フェンリルという名前をつけたのだろう。

 

フィルフサについては、現地名をそのまま採用したようだが。

 

これはオーリムの人間が、無害と信じている生物に蹂躙されて滅ぼされる様子を、笑って楽しみたかったから、というのが理由らしい。

 

反吐が出る。

 

タオが、何度か落ち着いて、と声を掛けて来る。

 

分かっていると、あたしは静かに返す。

 

皆が側にいる。

 

だから、安易にブチ切れることもないが。それにしても、こんなのと同じ生物であることが恥ずかしいほどだ。

 

結論から言うと、神代の錬金術師は。

 

「過ごしやすい世界」のために世界を改造しようとした訳ではない。

 

自分の美的感覚に沿った世界に全てを変えるために、フィルフサや魔物を作り出して、全て更地にするつもりだったのだ。

 

魔物が現在、此方の世界で繁殖しているのもそう。

 

神代の錬金術師に取って、自分達以外の人間なんて全部生きている価値もない存在だったのだ。

 

故に皆殺しにして、土地も全て更地にして。そしてその後に、新しい世界を創造し、文字通り神になるつもりだった。

 

その思考の全てが、あのログに残されていたのだった。

 

「許せません。 絶対に」

 

「そうか。 そなたはあの者どもと、随分と思考が違っておるのう」

 

「同じにならなくて良かったです」

 

「……分かった。 どうやら本当に違っているようじゃの。 では、わしらが何を見てきたかも話すとしよう」

 

カラさんが右手を挙げると。

 

側近二人が、不満そうにだが顔を見合わせ、そして少し下がった。

 

本来は、場合によってはあたし達全員を皆殺しにするつもりだったのだろう。気配からそれはわかっていた。

 

だが、その気が無くなった、ということだ。

 

あたしの怒りを即座に読み解いた。

 

この人にはそれくらい出来ると言う事である。

 

魔術の究極にまで到達しているのだろうし、それも無理はない。今度は、カラさんが話し始める。

 

「あの者達は、門から現れた。 最初は好意的に振る舞っていた。 だが、徐々に本性を現し始めてのう。 我等のことを猿と呼び、現地の生き物を無為に殺戮して周り、川や土を汚染して回った。 先代の……わしの前の総長老は温厚な人でな。 文化が違うのだから、ある程度大目にみようと言って、軽挙妄動を戒めた。 だがそれを見て、連中は更に図に乗った」

 

ああ。

 

あまりにも容易に想像できてしまう。

 

世の中には、率先して人が嫌がるような仕事。掃除などがそうだが。それをやる人間を見下す存在がいたり。

 

優しい存在を馬鹿にして回る輩がいるが。

 

それと同レベルだ。

 

「やがて連中は、我等の前に来て宣言した。 ついに竜脈の秘密を解き明かした。 別世界へも自由に行く事が可能になったと。 更に、我等は今真の神になったから、ひれ伏し奴隷となれともな。 その時点で、ついに総長老も決断せざるをえなかった。 戦う事をな」

 

「竜脈の秘密……ですか?」

 

「そういえば、あの城も竜脈の強さが問題になっていたようだったが……」

 

「ああ、竜脈と言っておったな。 確かにこの土地には強い竜脈があるにはあるが」

 

そういえば。

 

古代クリント王国の技術と最初に触れたのも、多分竜脈と関係するあの石碑だった。

 

ひょっとして。

 

神代の連中が求めていたのは、そもそもとして竜脈だったのか。竜脈を利用していた一族だったのではなく。

 

まず、竜脈が先にあって。其処に吸い寄せられていた連中であったのではないのか。

 

これについては、調査がいるな。

 

そうあたしは思う。

 

兎も角、である。

 

オーレン族と神代の錬金術師達は、そこで決裂し。

 

戦いが始まったと言う。

 

「錬金術師共は恐るべき武器を持っていてな。 全てを焼き尽くす炎の牙や、あらゆる守りを切り裂く光の剣を我等に振るった。 だが我等も自然の守護をしてきた一族。 それに対して、苛烈に戦った。 錬金術師は優れた技術や武器を持っていたが、それぞれの身体能力は大した事がなくてな。 我等も総力を挙げて対応したこともあり、大きな犠牲を出しながらも、徐々に奴らを追い込んでいった。 倒されるときに奴らは絶対にあり得ないという顔をいつもしておった。 愚かしい話だ。 人間である以上、死ぬときは死ぬのに、自分にそれはあり得ないと思い込んでいるのが一目で分かった」

 

「神代全盛期に勝ったんですか!?」

 

「ああ、損失も凄まじかったがな。 奴らは敗色濃厚と悟ると、フィルフサをばらまき、そして更には門の向こうに消えた。 門の向こうに攻めこんだが、そうしたら其処には空に浮かぶ不思議な街だか城だかが存在していてな。 其処での死闘が最終決戦となった……といいたいところだが。 其処でも支えきれないと悟ると、奴らは仲間を見捨てて、戦いになった区画を切り離して逃げよった。 流石に空間を切り離されてしまうと、我等もどうにも出来ずに、後は見送るしかなかったのよ」

 

「……」

 

味方を見捨てて逃げた、か。

 

傷つきながらも勝利したオーレン族を待っていたのは、大繁殖を始めたフィルフサだったという。

 

これが、千三百年前に起きた惨劇の真相。

 

あたしは、大きな溜息が出ていた。

 

以降、オーレン族はオーリム中に拡散したフィルフサと戦闘を続けている。五百年前までは、それでもどうにかできていたのだが。

 

古代クリント王国が此処と違う場所から再度侵入。

 

複数箇所で水を奪い、フィルフサを更に大繁殖させた事が切っ掛けとなって、今ではオーレン族も此処くらいしか大規模な拠点がない状態になってしまっていると言うことだった。

 

アンペルさんが、頭を下げる。

 

「先達がろくでもないことは分かっていたが、本当に申し訳なかった。 謝って済むことではないのは分かっている。 だが、頭を下げさせていただきたい」

 

「私も」

 

その場で土下座する。

 

タオは、何も言わずに、その場でじっとしていた。

 

しばしして、カラさんは言う。

 

「かまわぬ。 そなたらは、あの者どもとは違う。 あの者どもの代わりに謝る理由などはない」

 

「……分かりました。 その言葉に、甘えさせていただきます」

 

顔を上げる。

 

カラさんは、だがと。

 

続けて言う。

 

「ただし、今後もあの者達と変わらずにいられるかは分からん」

 

「そうですね。 それはそうかも知れません」

 

カラさんが、側近二人を指で招いて呼ぶ。

 

耳打ちしていたが。

 

二人は驚いて、顔を上げていた。

 

「正気ですか総長老!」

 

「正気も正気よ。 それに、フィルフサの王種を我等はこの千三百年で何体仕留める事ができた? この者達はここに来て数日でそれを成し遂げた。 今風羽の伝令をやっているが、他でも似たような事を成し遂げている可能性が高い。 ならば、この者らと連携して動くのが早い。 ひょっとすれば、フィルフサを根絶することが可能かもしれん」

 

「……」

 

違うな。

 

それも理由の一つだが。

 

この人の真の目的は、あたし達が神代の錬金術師と同じになった時。即座に殺す事だ。

 

それは分かっている。

 

だからあたしも、分かった上で話を受ける事にする。

 

「わしはそなたらと行くぞ。 かまわぬか」

 

「かまいません。 歓迎します、オーレン族の賢者カラさん」

 

「うむ……」

 

カラさんが、ひょいと立ち上がる。

 

そして、アトリエに案内せいという。

 

アトリエでの道でも、幾つかの話をする。

 

さっきは黙ってずっと聞いていたが。やはり、先の話を裏付ける話ばかりだった。

 

フィルフサは本来、ちいさな虫を覆ってしまう病気として認識されていたこと。装甲は確かに対魔力という観点で非常に有効で、場合によってはフィルフサによって死んだ虫を集めて、装甲を作った事すらあったということも。

 

それが神代の錬金術師の手で殺戮兵器として出現した時には、オーレン族の戦士達も驚いたという。

 

驚くべき巨大な生物たちが住まうこの世界でも、非常に危険な脅威であったからだ。

 

フィルフサは短時間でこの世界を蹂躙し。大きくて強くても繁殖力に劣る生物を次々食い荒らし、自分の身へと変えていったそうだ。

 

更にはこの辺りには。

 

最低でも八つの王種に率いられた群れが存在している。正確には、この間あたし達が一つ潰したから七つだが。

 

この七つの群れを潰さない限り、当面の安定は来ないだろうとも。

 

アトリエに戻る。

 

カラさんがこれから一緒に行動すると説明すると、反対意見は出なかった。カラさんはというと、色々興味津々に見回して、ベッドでぽんぽん跳ねたりしているが。

 

リラさんが、呆れ気味のボオスに言う。

 

「総長老ほどの年齢になると、好奇心が強くなってくる。 それでああいう行動に出ることもあるのだ」

 

「なるほどな。 少し年の取り方が俺たちとは違うんだな」

 

「まあ、私達の中でも、年を取って背が縮む人はいるにはいるけれど」

 

クラウディアが不思議そうに小首を傾げる。

 

ちなみに、オーレン族は二千年を超えて生きる事はないそうだ。つまり、カラさんは既に人生の折り返し地点まで来ている訳で。

 

あと何百年かで命を落とす。

 

それまでには、このフィルフサに汚染されたオーリムをどうにかしたいというのも、本音なのだろう。

 

そうだ。

 

もう一つ聞いておく事があった。

 

フィーを見せる。

 

カラさんは、フィーを見ると、そうだったなと頷いていた。

 

「宥めの精じゃな……」

 

「宥めの精。 それがフィーの本来の名前なんですね」

 

「そうなる」

 

エンシェントドラゴンの西さんの残留思念と会話したときに、何とかの精と言っていたっけ。

 

それとも一致している。

 

それはどういうものなのかと聞くと。

 

順番にカラさんは話してくれる。

 

「ドラゴンは幾多の世界を渡る生き物でな。 年を経ると、最後の世界に出向くべく、この世界を訪れる。 ドラゴンは竜脈に降り立つと強い魔力を集め、そして最後の世界に渡るのじゃ」

 

「え……」

 

「その時に、宥めの精がドラゴンの周囲に集まる。 流石に世界を渡るとなると、とんでもない被害が起きる。 そのドラゴンによる災害を最小限に抑えるためにな。 ドラゴンは安らぎを得て、そして最後の世界に飛ぶ」

 

「ちょ……ちょっと待ってください!」

 

待て、待て待て。

 

今の話を総合すると、つまり。

 

「最後の世界」というのは、恐らく間違いなくあたし達の世界だ。

 

つまり死期を悟ったドラゴンが、死ぬために訪れるのがあたし達の世界と言う事か。

 

エンシェントドラゴンの西さんが、世界に災いを呼んでしまったと言っていたのは、それが理由か。

 

アンペルさんも絶句している。

 

自然門は、そうなると。

 

死を悟ったドラゴンが、竜脈に沿って飛び。此方の世界に来るために開けていたものだったのだ。

 

ドラゴンに何かしらの関係がある事は分かっていたが。

 

まさかそういう理由だったとは。

 

「そ、そんな事だったのか……!」

 

「なんじゃそんなに驚いて」

 

「アンペルさんの生涯をかけた研究が、自然門についてだったんです。 人為的に開けられた門はどうにか出来るとしても、突然開く自然門については対策のしようが無い。 だから、せめて開くパターンについて調べたいとアンペルさんは調査を続けていて」

 

「それは残念な話であったな。 此方の世界に渡って来ていれば、わしから聞くことが出来ていたのに」

 

アンペルさんは、少し一人にしてほしいと言って、フラフラとベッドに消える。

 

それぞれのベッドは外から見られないようにドアもつけてあるので、閉じこもることも出来る。まあ色々と生理反応とかもあるので、一人になりたい事もある。そう判断して、つけておいたのだ。

 

リラさんがあたしを見るが。

 

しばらくは放っておいた方が良いと思うと告げておく。

 

「宥めの精……フィーの一族に、何かあったんですか?」

 

「……奴らは、竜脈の力を解析し、門を自由自在にすることを目論んでいたようでな。 その過程で宥めの精は乱獲され、皆殺しにされた。 一部の卵はどこかに運び去られたようだが」

 

「その一つがフィーです」

 

「そうか……それは何とも運がなかったな。 奴らが宥めの精を殺戮し始めた頃には、奴らに対する不審も強くなりはじめていた。 もっと早くに手を打つべきだったと、わしは後悔しておるよ」

 

カラさんは。

 

先代の総長老。

 

神代の錬金術師達との総力戦で命を落とした先代と考えが似ていて。融和策を最初は支持していたそうだ。

 

だが、戦闘となると真っ先に敵に突っ込んだのも総長老であったらしい。

 

此方の世界の指導者は、人間の世界の指導者と違って、行動で責任を取っていると言うわけだ。

 

なんともまた。

 

色々と、人間と類種であっても違うものだなと、呆れてしまう。勿論人間に対して呆れている。

 

パティが、信じられないと吐き捨てる。

 

パティはフィーと仲が良いから、余計に不快感が募ったのだろう。

 

とはいっても、神代の連中が名前と裏腹に、悪魔と言う存在にもっとも近かったのは事実だ。

 

神を名乗るような輩こそ。

 

やはり悪魔に一番近いのだろう。

 

今でもふわっとした概念でしか悪魔と言う存在は残っているが。

 

そのふわっとした概念に、ぴたりと神代の錬金術師が当てはまるのは、皮肉極まりない話だ。

 

人の肉を貪り喰う匪賊ですら、連中に比べれば小物に過ぎない。

 

ともかく、くだらない鍵遊びであたしに何か仕掛けて来ている神代の連中は、殲滅する。

 

咳払い。

 

ともかく、順番にやる事を決めておかないといけない。

 

「カラさん。 しばしこの近辺を調査させてください。 その過程で、フィルフサを始末します」

 

「うむ、フィルフサの群れをもう一つ二つ減らして貰えれば、わしがいなくてもこの里を守りきれるだろう」

 

カラさんも賛成か。

 

地図をタオが拡げると、カラさんはてきぱきと指さす。

 

まず潰した研究所の南側。其処に一つ。事前に話を聞いていた、里の北東に一つ。

 

里の西は群れが多く、合計五つ。

 

ただし、里の西にまだ美しい水を出している水源と。竜に対する記念碑が存在しているという。

 

フィルフサが多く。それらを守るのはかなり難しい状態であり。

 

フィルフサが多い事もあって、駆除にはいつも被害を覚悟する状態だとも。

 

だとすると、まずは一番強力な群れを潰すべきか。

 

「雨が降る日は分かりますか?」

 

「うん? 雨程度で力の差は埋められんぞ」

 

「分かっています。 それでも少しでも敵が弱体化する日を狙って仕掛けたく」

 

「そうじゃな……三日後と言う所か」

 

だとすると、先にやるべき事がある。

 

あたしは、タオと頷いていた。

 

「ドラゴンが門を通るのは、次はいつ頃になるか、どういう被害が出るか、分かりますか」

 

「うん? どういうことよ」

 

「実は、門を通った先に集落があって、ドラゴンが門を通るときに起きる災厄を「竜風」と呼んでいるんです。 既に彼等はその原因を忘れて久しく、建物を頑強にして耐えるくらいしか出来ない状況で」

 

「なるほどな。 で、その者達は、あの錬金術師どもとはどういう関係じゃ」

 

流石に鋭いな。

 

あたしは、順番に説明する。その錬金術師達に追われて、世界中で散り散りに暮らして。それでやっと戻って来たのだと。

 

それを説明すると、流石にカラさんも、黙り込む。

 

人間の中にも、神代の錬金術師の被害者は多い。それを理解してくれたようだった。

 

「分かった。 確認して見よう。 元々ドラゴンの中でも、そなたらの世界に飛ぶほど年老いた個体はそう現れん。 だが、前回から見て、そう遠くない時の先に現れてもおかしくはあるまい」

 

フィーを一瞥するカラさん。

 

一個体だけでは、増えようがない。

 

そう視線が告げていた。フィーの同族をどうにかして増やせれば、竜風などと言う災害に、苦しめられる人は出なくなるのに。生物の中には無性生殖を出来る存在もいるが、フィーがそうだとは、あたしには思えなかった。

 

門を自在に開けるという行為の先に何を目論んでいたかは分からない。だが神代の錬金術師に何かしらの切実な理由があったとは思えない。むしろ富も名声も、それどころか嗜好品、欲求のぶつけ先、何もかも思い通りだったはずだ。自分達がやりたいようにやるために、多くの命を無碍に奪ったわけだ。

 

ディアンも呼んで、軽く話をしておく。

 

ともかく、フォウレの里に一度戻って、説明はしておいた方が良いだろう。

 

一つずつ、順番に問題は解決するしかない。

 

アンペルさんはまだいじけていたが。しばらくは、そっとしておこう。そうあたしは思った。

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