暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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手がかりを得て、クーケン島に戻るライザ達。

アンペルさんとカラさんを加えたことで、更に頭脳面での強化が図られています。

群島の奧への再挑戦ですが……その前に幾つか雑事を片付けなければなりません。


3、クーケン島の騒雑

クーケン島に戻る。

 

以前結婚すると言っていた女性が指輪をつけている。どうやら結婚していたらしい。久々に会うと、他の人の人生は色々と変わっている。

 

あたしは面白いなと思う。

 

一旦解散。

 

クーケン島でやる事がない人もいるが。

 

やる事がある人の方が多いのだから。

 

あたしは一旦実家に戻る。

 

今回は、パティが一緒に来る。あたしの家が農家である事。農家で本格的に仕事をしたことがあまりないこと。

 

それもあって、見ておきたいのだそうだ。

 

パティは貴族制を終わらせるつもりであるという。

 

急激な改革は上手く行かないから、一度に全てを変えるつもりはないそうだが。

 

それでも少しずつ、血統なんていい加減な代物で社会上層に立つ人間を決める制度を改めて。

 

最終的には、出来る人間が抜擢される仕組みにするつもりだそうだ。

 

パティ自身もロテスヴァッサの次期女王になるつもりは別に今はなく。

 

もっと適した人間がいるなら、その人間に最高指導者の座を渡すつもりなのだとか。

 

極めてストイックで感心する。

 

農家での一日を見て過ごすのも、その一環。

 

だから、あたしも父さんと母さんにパティを腕利きの騎士として紹介し。将来のために農作業を教えて欲しいと頼んだ。

 

父さんはノリノリである。

 

すぐに畑との会話の仕方とか教え始める。まあ、父さんは農民を極めた人だから、それでいいのだろう。

 

母さんは農作業の一日の流れとか、家畜の扱いとかを教え始めるが。

 

父さんの境地には混乱していたパティも。

 

母さんのやり方は理解出来るようで、すぐに一緒に作業を始めるのだった。

 

あたしも多少は手伝うが。

 

錬金術で使った肥料の提供とか、水の状態についてを確認する。父さんはかなり良くなって来ているというが。

 

僅かにこのままでは味が落ちること。

 

そして遠くで発売する場合、その僅かが少しずつ大きな影響を出す事を説明してくれた。

 

なるほどね。

 

あたしはパティを任せて、すぐにアトリエに。

 

淡水化装置の更なる調整をして、サンプルの水を幾つか作る。

 

更に精度を上げる。

 

そうすることで、グリムドルの水に近づける。

 

実はウィンドルでも水は調べて見たのだが。どんなに細かい要素まで調べても、水は水であって。

 

オーリム固有の成分、というものは存在していない。

 

ということは、あたしたちの世界の水を調整する事で、同じものは作れる筈である。それが分かっただけで大進歩。

 

分からないと言う事が分かれば、それは大進歩なのだ。ましてや分かるというのはもっと大進歩。

 

それが今のあたしには分かる。

 

幾つかのサンプルを作成。

 

さっそくもっていく。

 

更に微細に調整出来たものだ。これなら、父さんも納得するかも知れない。ダメなら、更に調整する。

 

それだけの話である。

 

パティは堆肥の扱いをしていたが、前に「北の里」や王都の地下で慣れているからか、結構平気そうだ。

 

それもあるが、手を汚すことに関する嫌悪感がなくなったのかも知れない。

 

王都では改革の過程で血を流しもしただろうし。

 

そういう意味では、もうパティは立派な大人だ。

 

父さんに水のサンプルを渡す。

 

七つ渡したサンプルの内、一つで父さんは手をとめていた。

 

「ライザ、これだ。 ほぼ完璧だ」

 

「これだね。 分かった。 今日中に淡水化装置を調整するよ」

 

「ああ、頼むよ。 これでクーケンフルーツはもとの味になる。 味が落ちることもなくなるだろう」

 

頷くと、あたしはアトリエに。

 

回収用の部品をすぐに調合。

 

島の地下に潜るべく、ブルネン邸に行く。ブルネン邸では、何か揉めているようだったが、今はいい。

 

優先順位はこっちが先だ。

 

島の地下は、今日も薄暗く静かだ。あたしが作った淡水化装置は、汽水湖であるエリプス湖から塩水をくみ上げ、飲み水へと変える。

 

古代クリント王国が作った人工島であるクーケン島は、あたし達が気付くのが遅れていたら完全沈黙し、破滅していた可能性も高い。

 

それどころか、島の水はオーリムの聖地グリムドルから奪ったものだった。

 

今も古老には反発している者もいるが。

 

いずれにしても、淡水化装置は誰かが作らなければいけなかったし。

 

その内何百年かする前に、クーケン島を自力で修復するための技術を開発するか。もしくは引っ越しをしなければならない。

 

そもそもこの島は、古代クリント王国に奴隷として使い潰された人々の屍の上に出来ている。

 

その大量の亡骸も、既に荼毘に付した後だが。

 

いずれにしても。

 

此処は島で、語り継いでいかなければならない場所だ。

 

しばし無言で調整をする。

 

本当に微細な調整だが、ついでに濾過用のシステムなどにも一通り手をいれておくとする。

 

黙々と作業をしていると。

 

外の方での騒ぎが大きくなってくる。

 

騒いでいるのは、誰だろう。

 

声は聞いたことがないが。

 

ともかく、作業は終わり。

 

寿命を克服したあたしだが。それでも当面は、この装置の修理は請け負うつもりである。ただ、五十年とか過ぎたらどうしようか、と思う。

 

年を取らない魔女。

 

そんな風に言われるかも知れないな。

 

まあ別にその時はその時だ。

 

王都近郊の遺跡でも、長寿に成功した錬金術師が協力していたようだった。倫理的にも褒められた人ではなかったが。

 

それでも、やっていく方法はあるだろう。

 

地下を出ると。モリッツさんが頭を下げている後ろ姿が見えた。スーツを着た厳ついおじさんが、大股でブルネン邸を出ていく。

 

すっかり執事が板についているランバーが、ハンカチを渡している。

 

「無茶を言ってくれる。 なんだあの貴族は」

 

「どうしたんですか」

 

「ライザか……」

 

モリッツさんは、苦虫を噛み潰したような顔をした。苦虫という虫については見た事がないが。

 

ともかく。あたしにも関係することらしい。

 

「城のことは知っているだろう」

 

「ええ、まあ」

 

「あの貴族は王都から離れた人物らしいのだが、あれを新たな居城にしたいとか言っておってな」

 

「無理ですよ。 魔物の巣窟ですし、追い払っても幾らでも来ますし」

 

即答。

 

そもそもあの城は、古代クリント王国の研究所兼アーミーの基地だった可能性が高いのである。

 

建物部分はかなりの場所が駄目になっているし。

 

どんな仕掛けが隠されていてもおかしくない。

 

何よりも、人里と離れ過ぎている。王都でぬるま湯に浸かっていたような貴族の配下の傭兵や、お抱えの騎士なんて。

 

突っ込むだけ魔物の胃袋に直行だ。

 

「死にたいなら行けばどうぞと返さなかったんですか」

 

「それが古い契約書を出されてな。 あの城は、名義的に自分の財産だというんだ」

 

「ああ、王都でよく見ました。 実効支配もしていない土地を、自分のものだと言い張る貴族ですね」

 

まだパティが掃除していなかった生き残りがいたのか。

 

じゃあ、あたしが捻って……いや、パティに相談する方が良いだろうな。

 

先にその貴族の名前を聞いておく。

 

リドレッド公爵、か。

 

一応公爵ってのは一番偉い貴族で、王族と血縁関係があるケースも多いそうだが。

 

まあ王族自体がどうでもいい存在で、国政にはもはや全く絡んでいないし。

 

そんなのの血縁を自慢するなんて。

 

まあ虎の威を借る狐がいいところ。

 

いや、もっと格が下か。

 

「王都で大改革があったのはもう聞いていますよね。 貴族に肩入れしても、意味はもうないと思いますよ」

 

「分かっている。 ただ、とんでもない金額を提示されたんだ。 5000万コールだ」

 

「……」

 

「多分実際にその金も持ち込んでいるんだろう。 そんな金をばらまかれたら、クーケン島が……周りの集落も含めて無茶苦茶になる。 金は確かに稼ぎたいが、金額がありすぎると、誰も彼もおかしくなるんだ」

 

モリッツさん、意外とまともな経済感覚があるんだな。

 

まあ王都と地方とでは物価が違う事を知った上で逃げてきた貴族なんだろう。それだけは。頭がある程度回るようだったが。

 

そういえば、気になる事がある。

 

「その人、フロディアさんと似たメイドさんをつれていませんでしたか」

 

「フロディアというとバレンツの? そういえば一緒にいた男装のメイドが、不自然なくらい似ていたな」

 

「なるほど、だいたい分かりました。 あたし達でこの件、ちょっと調べて見ても良いですか」

 

「あまり無茶をしてくれるなよ。 古老共と違って、わしはお前さんの事は認めてはいるが。 力が大きすぎて時々怖いんだ」

 

そっか。怖いのか。

 

まあこっちとしても、怖れてくれるくらいのが丁度良い。

 

家に向かう。

 

水が改善したか、父さんに調べて貰うのと。

 

パティに、この件を投げるためだ。

 

 

 

夕方にみんなを集めて段取りを決めて、パティが提案した方法で片をつけることにした。

 

まあ、そもそもモリッツさんが言っていたように、あんまりにも巨大な資本を持ち込めば、周囲の経済が滅茶苦茶になる。

 

勿論何とか公爵はそれを理解した上で行動している可能性が高く。

 

しかも例のメイドの一族が側にいる。

 

王都での大掃除の時に、メイドの一族はアーベルハイムに全面協力したと聞いている。それが側にいると言うのは。

 

つまりそういうことだ。

 

早朝、まずは貴族が滞在している島の外から来た人間用のホテルを囲む。そして、何とか公爵がホテルから出て来て、何か控えているメイドに言おうとした瞬間。

 

足を止めて。

 

真っ青になっていた。

 

「パ、パトリツィア殿……」

 

「お久しぶりです、リドレッド公爵。 王都からいち早く逃げ出した鼻が利く貴方が、こんな所で私とばったりとは。 運命というのは分かりませんね」

 

「ア、アンティラ!」

 

公爵がメイドさんを呼ぶが。

 

その人、あたしらでも視認するのがやっとの速度で、パティが姿を見せた瞬間に消え去っていた。

 

やっぱり強いな。

 

パティが自分の所のメイド長と、三回剣の勝負をして一本取れれば良い方と言っているのを聞いてはいたが。

 

側で見ると、納得出来る。

 

一族揃って、とんでもない実力だ。

 

パティが大太刀に手を掛けて前に出る。公爵の後ろには。レントが既に威圧的な壁を作っていた。

 

「違法奴隷の死体が貴方の屋敷の地下で見つかっています。 それだけではない。 依存性の高い毒性が強い薬物も売りさばいていたようですね。 救貧院から子供を買って、口に出来ないような事もしていましたね」

 

「わ、私は貴族だ! 生まれついての支配者だ! だから力無き汚らわしいものに何をしてもいい! そういう権利を持っているのが貴族なんだ!」

 

「違います。 まあそんなことを相続だけで貴族になった貴方に言っても無意味でしょう。 貴方には死刑以外ありません。 此処で死ぬか、王都で死ぬか、どちらかを選びなさい」

 

腰を落とすパティ。

 

返事次第、対応次第では公爵の首を飛ばすつもりだ。

 

小便までもらした公爵は腰を抜かして、動けなくなる。その恰幅の良い体はただの飾りか。

 

ボオスが事前に人を手際よく遠ざけてくれていたのが良かった。

 

まあ人の首が飛んでも問題は起きない。

 

しかもクラウディアが音魔術で、周囲と音を遮断もしている。

 

つまり此処で、公爵が泣きわめいても、誰も気付かないし。

 

断末魔の悲鳴を上げても。

 

子供がそれを聞いて、心に傷を負うこともない。

 

レントもいるから、さがることも出来ない公爵どのは。

 

やがて、奇声を上げて、パティに掴み掛かろうとして。両手を即座に切りおとされ。返す刀で首を飛ばされていた。

 

おお。

 

もう容赦なし。迷いもなしか。

 

似たようなのは散々斬ってきたんだろうな。

 

すぐに公爵が使っていた宿の部屋に踏み込む。昨日のうちに、あたしが宿の主人(顔見知り)に事情を話し。

 

他の客には、別の部屋に移って貰ってある。

 

みんな身内の田舎だからできる事だ。

 

みんな身内で窮屈なこともあるが。その強みもある。

 

昔はいやで仕方が無かった田舎の部分だが。

 

今はこれでいいとも思っていた。

 

王都も此処とは違うだめな所はたくさんあった。サルドニカも、フォウレの里も。それに、多分今は見ていないが、ウィンドルにもあるのだろう。

 

だから、良い所を利用していけば良い。

 

神代の錬金術師にさえ、技術という利用次第ではまっとうに使う事が出来るものがあるのだ。連中そのものは駆除が必須だとしても。

 

だから今は。

 

ある程度そういう風に考えられるようになっていた。

 

部屋の中を確認する。クラウディアが、すぐに書類を見つけた。というよりも、あのメイドの一族の人だろう。

 

あの人が、あたし達の移動先を知った上で、あの腐れ公爵を此処に誘導した可能性もある。

 

調べて見ると、金は確かにたんまりもっていたけれど。

 

5000万コールなんてとてもとても。

 

金に換えられないような、形だけ所有している領土の書類だとか。再建だとか。実際に使える金貨は、100万コールというところか。

 

いっちゃあ悪いけれど。

 

その程度の金だったら、あたしだってもっている。

 

なんなら王都に出向いて換金できるものを捌いたら、その十倍くらいの現金を作れるだろう。

 

勿論クーケン島が滅茶苦茶になるからやらないが。

 

「後でアーベルハイムの手の者を寄越して回収しておきます。 王都で取り逃がした犯罪者の処理を手伝わせてしまってすみません」

 

「いいえ。 それにしても、あの様子だとよっぽど上手に逃げたんだね」

 

「あの公爵だった男は、ライザさんが王都を離れた直後に行方を眩ませていました。 残念ながら、王都にそんな相手を追う余裕は無く。 いずれ追っ手を差し向けて捕まえる予定でしたが、工数を省けて助かりました」

 

「俺の方から、顛末は父さんに伝えておく。 死体は無縁墓地でいいな」

 

パティも頷く。

 

まあ前時代の亡霊だ。しかも相続だけで地位を得て、好き放題に邪悪を堪能した人間である。

 

パティが軽く昨日の打ち合わせで話してくれたが、家族まで見捨てて自分だけ逃げたそうである。

 

そんな輩。

 

無縁墓地に入れるだけでもラッキーと思って貰うしかないだろう。

 

宿の前は既に片付けも終わっていた。

 

アガーテ姉さんも護り手も、与太者の処理には慣れている。当然殺す事も。実はアガーテ姉さんも、あの公爵だった人物は不遜な態度と傲慢な行動を見ていたらしく。場合によっては護り手で介入するつもりだったそうだ。

 

パティが軽く話す。

 

もと公爵というのは内密に、と。

 

まだロテスヴァッサ王国という政治体制は存在していることにしておいた方が良い。誰も必要としていないが。正式に存在が消えたことを発布するのは地固めをした後で良いと言う事だ。

 

そうしないと余計な混乱を招く。

 

そういう事だった。

 

一通り片付けると、家に戻る。今回は見ていると先に断言していたカラさんが、あたしの家の前で待っていた。

 

勿論全部見ていた、と判断して良いだろう。

 

「また随分と、くだらぬ事をしているな」

 

「此方の世界はずっとこんなです。 これでも古代クリント王国が滅びてから、ある程度マシになったそうです」

 

「血統で財産を引き継いで、血統での相続を絶対化するからそうなる。 わしは側近に血縁者を置いているが、あれらに長老の座を渡すつもりは無い」

 

「オーレン族はオーレン族と争わないって聞いていますが、本当ですか」

 

カラさんは、しばし黙り込む。

 

こっちを見たとき。

 

カラさんの顔から、表情は消えていた。

 

「わしらの感覚で何世代も前。 オーレン族の間でも、争いがあったそうだ。 若い世代の者達が知らぬのは当たり前だがな。 まだあの錬金術師どもがくるずっと前。 この世界とは別の世界から、別の知的生命体が来た事がある。 ドラゴンが開けた穴を通ってな。 その知的生命体はわしらとかなり遠い存在で、出自も違ったのだろう。 あの錬金術師どもとも違っていて、とにかく穏やかで温厚な種族だった。 その種族との出会いもあって、先代の長老は初動を謝った」

 

なるほどな。

 

そんな優しい種族と出会ったことがあったのなら、今度もと考えるのは不思議では無いんだろう。

 

そして、争いの引き金にもなったのか。

 

「優しい民の生活は平穏だった。 ああいう生活をしたい。 そういう者は一定数どうしても出た。 それらの者は、オーリムの過酷な生活を嫌だと言いだした。 結果争いになった」

 

「それでどうなったんですか」

 

「少数の民は優しい文明の元へ去った。 其方でもよくやっていると良いのだが、わしにはどうなったかは分からん。 その文明は、今になって思うとあの錬金術師どもよりも更に進んでいたようにも思える。 オーリムを傷つける事はなく、汚染させるような真似は一切しなかった。 それに複数の種族で構成されていたようだ。 それらの種族が争わずになかようやっていけておる。 そんな世界だったのだ」

 

そうか、そんな風に文明は進歩しうるんだな。

 

だとしたら、神代から続く人間の世界は、どうしようもないように思えても仕方が無いだろう。

 

あたしも此処をそんな世界にしたい。

 

丁度良いので、話をしておく事にする。

 

オーレン族と人が、種族として近いと言う事実。

 

そして交配して、子供が出来る可能性があるという事も。

 

カラさんは驚かなかった。

 

あたしは順番に説明をする。

 

母胎に負担が大きくなりすぎるので、実際に性行為して子供を作る事は非常に危険であることも。

 

それらを説明し終えると。

 

カラさんは、静かに言った。

 

「それに自力で辿りついたのか」

 

「はあ、まあ」

 

「それでそなたはその事をどうする」

 

「今は無理でしょうね。 だけれども、何千年もあと。 フィルフサをオーリムから駆逐……出来ればもとの虫に寄生するだけの植物に戻して、オーレン族が静かに暮らせる土地に戻して。 此方の世界でも、今日駆除したみたいな世界の寄生虫を全部この世から排除して。 それで、他の種族と共存出来るように……そのままの人間では無理ですね。 何とか、考えないといけないですけど。 でも、「その先」に。 未来があるのなら、あたしはあがいてみたいと思っています。 人間とオーレン族がともにある世界を実現したいんです。 だから……研究を進めています」

 

そうかと、カラさんはあたしを観察していた。

 

分かっている。

 

カラさんに嘘はつけない。嘘をつくつもりもない。

 

カラさんも、あたしが嘘をついていないことを、気付いているようだった。

 

「そなたはもう人間を捨てておるな。 それはその理想のためか」

 

「ええ。 「後の世代に継ぐ」なんてのは、神代の錬金術師の思想がそうだったように、悪いものしか継がれないです。 血縁が絶対だったら、親兄弟で殺し合うこの世界になる筈もない。 あたしは寿命をもう捨てました。 自分のおなかで子供を育てて産む気もありません。 誰かにこの理想を引き継ぐつもりも。 仲間は、その都度造れば良い。 ただ、この理想は……神代の錬金術師のような連中を二度と出さないためにも、あたしがもたないといけないんです」

 

もしも生身であればいずれ魂が腐るというのなら。

 

あたしは生身を捨てよう。

 

魂はどうしても腐るというのなら。

 

その先に行くだけだ。

 

あたしは神代の錬金術師の、自分は神だという思想の末に、暴走して世界を食い尽くした愚は絶対に二度と許さない。

 

だから。

 

あたしは人間を止めても。

 

神になるつもりはないのだ。

 

「まあいいだろう。 そなたがもしも神を目指しているのであったら、この場で殺し合うつもりだった。 勝てないにしても、相討ちになるつもりであったよ」

 

「……カラさんは、充分に強いですよ。 今のあたしにも、勝つ事は十分に可能だと思います」

 

「そうだろうかのう。 まあそういうことにしておこう。 いずれにしても、よきものを引き継ぐ事が不可能だというのはその通りだ。 良き錬金術師ライザよ」

 

頷く。

 

カラさんは、ふらりと何処かに消える。

 

以前アンペルさんとリラさんが借りていた場所。彼処にセリさんもお邪魔しているようだが。

 

其処にでも行くのかも知れなかった。







原作ではただのバカ貴族だったんですが、まあ本作ではこういう末路です。

此奴のアホな依頼で無駄な魔物退治をさせられて、げんなりした人も多いのでは。
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