暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
すぐにあたしは群島の調査に出るつもりだったのだが、状況が変わる。
あの元公爵のもっていた書類から、看過できないものが見つかったのである。
それは五百年以上前の古文書。
それによると、あの城の更に奧。
火山。
火山には所々集落があったが、そこにどうやら研究所があるらしい、と言う事が分かったのだ。
分かったのは全くの偶然。
クラウディアが調べてくれた内容から判明した。雑多にあった書類の中に、不可解なものがあり。
それをタオに回したところ、古代クリント王国時代の研究所の可能性が高いと言う事が判明したのだ。
しかも、あの古城より規模が大きいようなのである。
考えて見れば、精霊王がいたという事もある。
あの火山、最初から何かしらがあって。
古代クリント王国は、活用していたとみるべきなのだろう。
すぐに出る事を決める。
群島については、ちょっと後回しだ。
少し遅れて、対岸のアトリエに全員が到着。アンペルさんとリラさんが最後だった。アンペルさんは、目の下に隈を作っていた。
「すまん、手記の解読で手間取っていてな」
「エミルと言う人のものですか」
「ああ。 あとすこし、肝心なところが非常に複雑な暗号になっている。 それも暗号を重ね掛けている可能性が高い」
「それ、書く時本人が一番苦労したんじゃないのか」
レントが呆れる。
あたしも同意見だ。
リラさんも呆れていた。まあ、この辺りはもうどうしようも無い。今更アンペルさんが変われるとはあたしも思わない。
人間なんて、簡単に変わるものじゃない。
「まずは城からだね」
「クーケン島からも見えていましたが。 正直、王都にある王城と規模が変わりませんね」
「だから公爵が欲しがったんだろうよ」
ボオスが吐き捨てる。
後始末で大変だったのだろう。
最近はすっかり有能な執事をしてくれているランバーに負担を掛けてしまったのも、頭に来ているのかも知れない。
ランバーも子供が出来てから以前腑抜けを演じていたとは思えない程しっかりしている。あたしも何度も感心させられた。
「じゃ、こっちから。 この辺りの森は危険な魔物はいないけれども、それでも油断はしないようにね」
「随分穏やかな森じゃな。 頂点捕食者の気配がない。 いや……頂点捕食者はライザか」
カラさんが随分なことを言うが。
最近魔物が顔を見るだけで逃げ散るのを見ると。
その認識は正しいのかも知れないと思って、苦笑いしてしまった。
森を抜けて、山道に入る。
この辺りは建築用接着剤でがっつり固めてある。もう落石の心配は無い。周囲を警戒しながら進むが、流石に余裕もある。
この辺りの魔物は、護り手に頼まれて時々退治するのだが。
あたしが出張る事は、殆ど無いくらいだ。
山道を抜けると、砦が見えてくる。
この砦は竜脈があるのもあるのだろう。既に魔物が完全に住処にしている。ワイバーンは出る事もあるのだが。
ただあたしが出向くと、さっと距離を取って逃げてしまう。
そこまで人間はまだ止めていないつもりなのだが。
まあ戦闘を避けられるのなら良いことだ。
「フィー!」
懐からフィーが顔を出す。壁の方を見ている。
即座にクリフォードさんとタオが動く。二人とも、フィーの力は信用しているのだ。そして、クリフォードさんが、さっそく見つける。壁にスライドするタイプの鍵。鍵といっても魔術的なもの。
王都近郊でよく見たものだ。
タオとああでもないこうでもないと弄っていると、やがて壁が開く。どうやら、此処にもまだ調べられていない研究所があったか。
山に行く前に、まずは見ていくべきだろう。
「あ、良いですか」
フェデリーカが挙手。
どうしたの、と聞くと。試してみたい事があると言う。
舞い始めるフェデリーカ。
神降ろしを擬似的にすると言っていたが、その新しいバージョンだろうか。しばしいつもと違う円運動を中心とした舞いを見ていると。
やがて扇を放り投げたフェデリーカが、喝と叫んでいた。
周囲の空気に、色がつく。
フェデリーカが、大きく肩で息をついている。
なるほど。空気の流れが一目で分かると。
ついでにこれは、有毒ガスも見えるようだ。こう言うタイプの強化が掛かる舞いは。それはそれで有り難い。
「レント、入口頼むよ。 皆も周囲の警戒よろしく。 タオ、クリフォードさん、アンペルさん、いこう」
「任せておけ。 何が来ても簡単にはやられねえよ」
頷く。勿論信頼しているから、背後を任せるのだ。
そのまま奧に。
やはりこの手の場所は構造が似るらしい。どんどん地下に降りて行く。空気はよどんでいるが、毒ガスではないようだ。
広い場所に出る。
錬金釜。
神代のものと比べると洗練されていない研究施設。
古代クリント王国のものに間違いない。
ひょいと、カラさんが顔を出す。
「クリントとか言う外道共の住処か」
「タオ、どう見る」
「間違いないね。 ただこれは何を研究していたんだろう」
困惑するタオ。
周囲にあるのは、なんだ。触らない方が良いな。
錬金術の道具もあるが、それ以外のものはわからない。クリフォードさんが、こう言うときは強い。
錬金術の道具については、あたしが知らないものもアンペルさんが知っている事があるのだが。
やがて、分かったとクリフォードさんが言う。
「これは見た事があるな。 ようやく思い出した。 古代クリント王国の遺跡、それも後期のもので見た事がある!」
「なんですかこれ」
「実は去年までは分からなかったんだが、今は分かる。 これは水に浸かってグズグズに崩れたフィルフサの甲殻だ」
「!」
なるほど、ということは。
タオが見つけて来る。手記だ。
さっとタオが中を読む。暗号化もされていないようだった。
「どういう内容?」
「実験は失敗した。 此処だけではなく全ての試験場でだ。 準備してきたものがフィルフサに通じない。 皆食い殺された。 小型の個体では効果があったのに、どういうことだ」
「……オーリムでフィルフサを増やした後、逃げ込んだ連中の研究所だったみたいだねこれ」
「オーリムに侵攻した当時から使っていたみたいだね。 日記を見ると、如何にオーレン族を騙すか、フィルフサを増やす計画を進めるか、議事録が残されてる」
そっか。
とりあえず調べたら此処は潰してしまおう。
あたしは、話を聞きながら、そう思った。
何度聞いても腹が立つ。
古代クリント王国の錬金術師共は、滅びるべくして滅んだ。それがよく分かる資料がまた見つかったのだった。
(続)
意外な所から意外な情報が出現です。
早速ライザ達は、それらを調査に向かいます。何処に手がかりがあるか分からない以上、手当たり次第に調査していくしかないからです。
群島は逃げませんしね……