暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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古代クリント王国の末路。

その断末魔の一部をライザは見る事になります。


火山の裏の顔
序、古代クリント王国の末路のあがき


オーリムで知る事になった生きとし生けるもの全ての敵、神代の錬金術師。その模倣者であった古代クリント王国。

 

今、クーケン島の近くにある古城を徹底的に調べて回っている。

 

前回も……四年前も此処は色々あって調べたのだが、今回はスペシャリストが何人も加わり。

 

更にあたし達の経験含む基礎スペックも変わっている。

 

見つかる。

 

色々と。

 

二つ目の研究所を発見。古代クリント王国の錬金術師達は、錬金術師の間でも階級を作っていたらしい。

 

しかも能力に寄るものではなく血筋でだ。

 

一番偉い錬金術師が、一番出来ると言う事もなく。

 

日記などを調べて見ると、愚痴が色々書かれている。

 

研究所は急いで放棄したらしい。

 

まあそうだろう。

 

西にある塔。

 

彼処で残されていた資料を見る限り、フィルフサの侵攻はあまりにも速かった。

 

サルドニカ近郊の状況を見ても、古代クリント王国の錬金術師共は複数箇所で凶行を働き。

 

その全てで失敗した。

 

ただ、クーケン島付近だけで錬金術師が展開していたわけではないだろう。それは分かっていたのだが。

 

それが裏付けられる内容になっていた。

 

雑多に積まれていた資料を持ち帰り、タオとクリフォードさんが解析する。

 

そして出た結論は。

 

古代クリント王国にとって、クーケン島近辺は実験場の一つ。

 

フィルフサを「養殖」して彼等は資源とし、それで色々とやろうと考えていたようなのだが。

 

クーケン島近辺では彼等の中で三番目くらいに偉いらしい人物が指揮を執って。

 

「麓の未開どもを全部処理する」ための兵器開発を進めていたということだ。

 

確かにクーケン島を兵器として空に浮かべるつもりだったことは塔で回収出来た資料からも分かっていた。

 

それにしても、どこまで傲慢だったのか。

 

ただ、資料を見る限り。

 

余り上手く行っていなかったようだ。

 

オーリムに行く前からだ。

 

「あの孔雀野郎。 大した実力もないくせに偉そうにしやがって。 ××の行程も出来ないことくらいは俺でも知ってる。 そのくせ地位が下の錬金術師を奴隷と思っていやがる。 自分より実力があると分かると謀殺までしていやがるのは誰でも知ってる。 真面目に仕事なんかしてやるものかよ」

 

そんな悪態が、日記に残っていた。

 

この様子では、こんな調子で何処でも机上の空論の計画が進んでいたし。

 

神代の模倣者に過ぎない上。

 

錬金術師としてもどうということのない連中が、過去の遺産だけを頼りにことを進めようとして。

 

それでフィルフサに食い荒らされた。

 

自業自得だが。

 

それにアーミーの人達や、他にもたくさんの人達が巻き込まれて、人間の大半が死に絶えることになった。

 

そう思うと、地獄で永遠にお前も灼かれていろ。

 

そういう言葉しか出てこない。

 

「グダグダだったんだな」

 

「古代クリント王国の実情も見えてくる。 錬金術師が事実上乗っ取っていたみたいだけれども、一部の錬金術師以外の人達は内偵を進めていて、実は大半の錬金術師は残された遺産を使っているだけで、ろくに錬金術も使えなかったことがバレかけていたらしい」

 

「それはなんというか」

 

ボオスが皮肉に口を歪める。

 

クラウディアが、さらりと厳しい事を言った。

 

「古代クリント王国の錬金術師達は、自分達がただ勝ち残っただけの幸運に恵まれていただけで、どうということもない人間だと内心では理解していたんだね」

 

「間違いないと思う。 オーリムに侵攻して資源を確保し、更にはその資源で戦略兵器を作って、絶対的な支配を確立しようとしていた。 それは、自分達の足下が崩れかけていることがはっきりしていたからなんだと思う」

 

「フィルフサに手を出さなくても破滅していたりしてな」

 

「可能性は高い」

 

レントの言葉に、アンペルさんが応じる。

 

何のことは無い。

 

人間の全盛期みたいに思われている古代クリント王国だが。

 

その実態はただ遺産を引き継いだだけの錬金術師が、いつ実態がばれるかびくびくしながら回しているもので。

 

憶病で無能な彼等が、自分達でむしろ足下を掘り崩し。

 

シロアリの塚みたいにいつ崩れてもおかしくない場所にしていた。

 

そんな程度の代物だったのだ。

 

何が偉大な古代王国だ。

 

呆れて失笑すら浮かぶ。

 

それに、あたしには思い当たる節がある。

 

孔雀野郎と言う奴だ。

 

感応夢で見た。

 

紅まで引いている錬金術師の中年男性。

 

奴隷化した人間を使い潰していた腐れ外道。

 

彼奴だろう。

 

錬金術師としても無能で、プライドが服を着て歩いているだけのくだらない奴だったんだな。

 

そう分かると、本気で苛立ってくる。

 

やっぱり血統による相続なんて、百害あって一利もないじゃないか。どうしてこんな制度が、古代から続いているのか。

 

手に入れた利権を手放したくないからか。

 

だとしたら、人間はずっとくだらないままなのだ。

 

三つ目の研究所も発見。

 

恐らく神代の古式秘具そのものだ。

 

隔離された別空間になっている。

 

連中の秘宝だったとみて良いだろう。内部はこれは、自己完結した生態系になっているのか。

 

空に日まで照っている。

 

トラベルボトルに近いが。

 

アレと違って、どうやら作り出せる空間は決まっていて。

 

その中の環境を安定させるようにしているようだ。

 

ゴーレムが動いて回って、動植物の世話をしている。動物の餌は、どうやって作り出しているのかよく分からないが。

 

小型の動物しかいないし。

 

それが増えすぎると、ゴーレムが間引いているようだ。

 

この一角にも資料がうち捨てられていた。

 

「神代から受け継いだ秘宝だが、実にくだらん。 神代の最も古い時代のものらしいが。 神代でも放置していた理由がよく分かる。 臭い草にどうでもいい畜生。 こんなものを研究しろというのは、事実上の左遷ではないか。 あの孔雀め、そんなに自分の中和剤より私のものが優れていた事が気にくわないか」

 

呆れた言い分が記載されている。

 

あたしは、大きな溜息を出していた。

 

少なくとも。

 

貴様らより何倍も価値があるだろうが。

 

そう怒鳴りたくなった。

 

神代でも初期のものとすると、オーリムに侵攻した悪鬼外道どもとはべつの錬金術師か、或いは初期にはこういう考えをもった錬金術師もいたのだろう。

 

一目で分かる。

 

これは自然環境の実験的な再現だ。

 

自然環境を知るために。

 

いざという時は、此処から環境を復旧するための。

 

それが古代クリント王国の錬金術師共には、分からなかったのだ。

 

「神代と言っても最初期は二千年前くらいになる。 知られていないだけでもっと古いかも知れない。 千三百年前にオーリムに侵攻した神代の錬金術師達は、或いは最初の頃の錬金術師の理想も思想も受け継がなかったのかも知れないね」

 

「偉大な開祖がいて、その遺産を食い潰していただけの可能性も高いぜ」

 

クリフォードさんがいう。

 

クリフォードさんによると、今まで見てきたものはどんどん時代を降る度に劣化コピーになっているという。

 

それにだ。

 

あたしを見ていると、特にそう感じるというのだ。

 

「幾つもの証言証拠からも、ライザを超える錬金術師は神代の錬金術師にはいなかったようだ。 だがこういうものをみていると……開祖は違ったのかも知れないな」

 

「なんだか悲しい話ですね」

 

パティが嘆く。

 

偉大なる王の話。

 

勇敢な貴族の話はいくらでもある。

 

だが、その子孫はどうか。

 

二代目まではその志が継がれることもある。

 

三代目まで継がれることも希にある。

 

だがそれまでだ。

 

特に高い理想や高潔な思想。優れた能力なんてものは、そうそう血筋で引き継がれるものではないのだ。

 

血統なんてそんなものだ。

 

何がロイヤルか。何がノーブルか。

 

ロイヤルは太古からロイヤルだったのか。違う。

 

ノーブルも同じ。

 

誰かが途中から名乗り初めて。

 

以降は血統で引き継がれているものにすぎないではないか。

 

今、幾つかの遺産を見ていて、あたしはそう再認識する。

 

そして、城を調査していて、分かってきた事も多い。

 

一度あたしは、モリッツさんとアガーテ姉さんの所に行く。古老も呼んでおく。

 

この間元公爵を斬った事で、モリッツさんはちょっとぴりついていたが、重要案件だ。いや、島の存亡に関わるから、最重要案件である。

 

古城について調べていて分かった事がある。

 

それは、あの古城が張りぼてで。

 

いつ壊れてもおかしくないと言う事だ・

 

「張りぼてだって!?」

 

「見てくれは立派ですが、結構突貫工事で作ったみたいなんです。 基礎部分を調べて行くと、彼方此方ガタが来ています。 全部まとめて崩落はしないと思いますが、城として使うなんてまあ無理ですし、いつ何処が崩れても不思議では無いですね」

 

「またそんな伝統を汚すようなことを!」

 

古老が声を震わせるが。

 

アガーテ姉さんが、いい加減になされよと言う。アガーテ姉さんも、もはや老害になり果てている古老には呆れかえっているようだ。

 

「ライザ達が実際に城を調査して分かった事です。 伝統という言葉を使うのでは無く。 実証にて反論していただきたい」

 

「屁理屈など知らぬ」

 

「屁理屈はそちらでしょう、古老」

 

「おのれえっ!」

 

モリッツさんはため息をつくと、古老を連れて行くようランバーに指示。

 

咳払いすると、アガーテ姉さんに指示していた。

 

クーケン島による人間には、城に興味を持つ者もいる。

 

崩落事故が起きるし魔物も出ると言う話をして、近付かないように徹底して欲しいと。

 

頷くと、アガーテ姉さんは護り手の詰め所に戻る。

 

モリッツさんは、あたしを恨めしそうに見た。

 

「わしはいつまでこんな憎まれ役をすれば良いのかな」

 

「ボオスは王都でも、今度の旅でも、色々な事を学んでいます。 ボオスが後を継いでくれたら、ではないですか」

 

「そうだな。 でもボオスが跡を継いでくれるだろうか」

 

「別に血縁者でなくてもいいでしょう。 ランバーはどうですか。 びっくりするくらいしっかりしていますが」

 

あたしを恨めしそうに見るモリッツさん。

 

やっぱりあたしが嫌いなんだとよく分かる。ただ、自分のお気持ちを優先しないだけで、随分と立派だ。

 

「不興を買った」だのが正当化される世界は。いずれバカみたいな崩壊を遂げる事になる。

 

個人の感情が。それも癇癪が。命や人生に優先されるような世界は。

 

それは、やがて滅ぶのが確定しているのだろう。

 

アトリエに戻る。

 

タオが、資料はあらかた解析したと教えてくれた。

 

「山の方の研究所に、本丸となるものを移した記録が幾つかでているよ。 多分あるとすれば、火の精霊王がいた辺りだろうね」

 

「よし、行くとしようか。 みんな、凄く暑いから、格好には気を付けてね」

 

火山を知らない組に話を振っておく。

 

幸いあの火山に、今も凶悪な魔物が出るという話はない。

 

火山が噴火でもしなければ。

 

この面子なら、遅れを取る事もないだろう。

 

ただ、火山はあれだけ不安定な環境だ。何かしらのヒントを取りこぼす可能性がある。

 

出来るだけ急いで。古代クリント王国の奴らのやっていた事を。もっと詳しく暴かなければならなかった。

 

あの群島の宮殿よりも、此方の優先度の方が上回る。

 

だから、そう動かなければならないのだ。

 

 

 

クーケン島の騒動を経て。

 

クリントどもの巣窟を見て。

 

それからカラは、借りた宿で魔術を展開してこの世界を探っていた。

 

オーレンでも最強の術師であることを自認しているカラだ。ある程度時間を掛ければ、世界そのものの情報を探ることが出来る。

 

それによって調べていたのは二つ。

 

既にこの世界にフィルフサが定着していないか。

 

孤島などに門があった場合、其処からフィルフサが大侵攻を行った可能性が生じてくる。

 

だから今のうちに、それについて調べておく必要があった。

 

それともう一つ。

 

「おらぬか……」

 

魔術を展開し終えると、カラは大きく嘆息していた。

 

此方の世界。

 

竜にとっての終の世界には、カラが知っているだけでも渡ったオーレン族が存在している。

 

その一人であるセリとはもう合流した。

 

リラともこうして合流できた。

 

もう一人、此方の世界に渡った変わり者がいたのだが。この様子だと、既に命を落としているようだった。

 

フィルフサの定着については、実はそれほど心配していなかった。何処かで決壊していたら流石にこの世界の弱体化しきった人間では対応できないのは分かりきっていたからである。

 

何処かしらの孤島が制圧されているかも知れないとは思ったが、それについても心配はなさそうだ。

 

いずれにしても大魔術を展開したので、流石のカラも疲れた。

 

最強の術者と言っても全盛期ではない。

 

衰えも出始めている。

 

体も随分縮んだ。

 

それに、だ。

 

ライザがくれた道具をつけて見て、思う。若い頃の力が戻って来たかのようだと。そんな風に考えるようでは、衰えたのだとやっぱり理解出来てしまうのである。情けない話ではあるのだが。

 

ふっと、カラは笑う。

 

そして、寝台で足をぶらつかせた。

 

ライザと共にいるのは、あの錬金術師共をおいつめた勇者達に勝るとも劣らない戦士ばかりだ。

 

知恵者も決して全知を気取っていた錬金術師共に劣っていない。

 

話していて、何度も学びを得た。

 

ライザに至っては、自力でオーレン族と人の間の問題に気付いていた。

 

どうしてこの世界で神代と呼んでいる時代に、ライザが生まれなかったのか。その時代は、錬金術がずっと身近だった筈。

 

そう思うと、運命の皮肉を感じてしまう。

 

ライザがいたのなら、あの馬鹿者どもをみんな叩き伏せて、それでオーリムへの侵攻など起こさせなかっただろう。

 

そうとも確信できる。

 

カラは自分を英雄ではないと思っている。

 

あの邪悪な奴らを追い払うことが出来たのは、あくまで奏波氏族のみなのおかげ。カラと一緒に戦った戦士はみんな死んだ。カラが力不足だったからだ。

 

ライザはあのリーダーシップも皆を引きつける力も、カラを瞠目させるほど。

 

ライザが嫌ではないのなら、奏波氏族のまとめ役を頼みたいほどだ。

 

だが、そうもいくまい。

 

カラは寝台に潜り込むと、眠る事にした。

 

明日。

 

クリントの馬鹿者共の住処を暴くのが楽しみであるし。

 

ライザがそれを、更に先に進めるための試金石にするのも確信できる。

 

楽しみでならない。

 

錬金術師の行動を、好意的に取れる日が来るとは思わなかった。

 

子供を産んだとき、こんなに未来を託せると思ったか。

 

もう遠い昔の事で、それは思い出す事が出来なかった。

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