暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
四年前とは手数も知識も違います。
ライザ達は総力で調査を続行。
そして、ついに邪悪のありかに手を掛ける事になります。
頭脳担当の三人がかぶりつきで解読作業を進めている間に。
あたしは手分けして、火山に出向いて魔物を片付けておく。
あたしやカラさんが出向くと魔物は逃げ散る。この辺りは、あたしが徹底的に強いのは駆逐したからだ。
たまにエリプス湖からサメとか強めの海の魔物が上がってくるが。
それも全て駆除してきた。
多分死の臭いが染みついていて。
強めの魔物も、此処には近寄ろうとしないのだとは思う。
それでも本能だけで動いている様な魔物は少数いる。
何よりもだ。
上質な鉱石が取れる。
皆に手伝って貰い、鉱石を集める。それらを持ち帰って、アトリエで加工する。インゴットを作り溜めておいて、かなりの分量をクラウディアに譲る。クラウディアも嬉しそうに受け取ってくれる。
火山でしか取れない珍しい植物や、特性が変わっている水も汲んできておく。これらもエーテルに溶かして分析すると、とても珍しい薬が作れたり、思わぬ用途が見つかったりするのだ。
いずれにしても、事故は避けるべきだ。
故に、土の中などにいる可能性がある魔物は駆逐するべく探すし。
皆の装備も刷新する。
セプトリエンを用いて少しずつ皆の装備は強化していくが。
何よりセプトリエンがそもそもとして、まだ完全に解析できていないのである。だから、順番に一つずつ進めていくしかない。
クーケン島に渡る。
エドワード先生の病院に出向いて、お薬を納品しておく。
更に質が上がって助かると、エドワード先生は嬉しそうにする。そして、弟子を取ったと紹介してくれる。
あっと声が出そうになる。
例のメイドの一族の人だ。
無表情な女性だが、ちゃんと頭を下げてくる。この人が弟子か。何か悪いことでも企んでいないと良いのだけれど。
この人達が悪事をしているのは、あたしは知らない。
だけれども、どうにもこの強力な力、みんな同じ姿、何かある。どうしても警戒してしまう。
「フローレンスだ。 とにかく筋が良くてな。 わしはちょっと体が怪しくなりはじめていたから、本当に跡を継いでくれるものが出てきて助かるよ」
「そうですね。 フローレンスさん、お願いします」
「此方こそ」
敵意は無いが。
感情も見えないな。
そう思いながら、薬について渡しておく。新しく開発した幾つかの薬。タオやクリフォードさんに聞いて、幾つかの病気の特効薬について調べ、作っておいたのだ。なくなった患者の人の骨片などをエーテルに溶かして分析し、何が病気の原因か調べた。もしも薬で治癒できるものなら、それで治してしまう。
「あの恐ろしい伝染病の特効薬だと……!」
「残念ですが、ちょっと自信が無いです。 ですから、まだ試験薬として扱ってください」
「ああ、分かっている。 最後の手段として使わせて貰うぞ」
他にも、効果がはっきり出ることが分かっている薬も納品しておく。
後は、だ。
クラウディアと一緒にバレンツの商館に出向く。一緒に来ているボオスと一緒に、軽くバレンツの販路や、今後扱う戦略物資、分かっている各地の情勢について説明を受けておく。
フロディアさんが紅茶を淹れてくれる。
あのフローレンスという人とうり二つだが。
まあ、それについてはもうどうでも良かった。
「第三都市、第四都市もかなり危ない状況なんだね」
「ええ。 機械が特にダメなの。 一度ライザには足を運んで欲しいの。 機械はもう、完全に技術が失伝しているから、ライザでないと多分直せないわ」
「うん、それは分かってる。 ただ……」
「ええ。 機械に頼りっぱなしではダメだね。 誰かが技術を再建して、動いている機械の仕組みを理解出来るように、機械を再現出来るようにならないと」
何千年も掛かるだろうな。
あたしはそう思う。
この世界は、人間がなんぼ生きていてももつ。それについては確信がある。
神代の頃……今の何十倍も人間がいた時代は、話が別だったと思う。だけれども、今の時代は。
人が世界を壊すよりも。
世界が直る方が早いだろう。
ただ、考え無しに人が増えたら、また神代が繰り返されるだけだ。
オーリムを踏みにじったカスどもと同じような連中が、なんぼでも湧いて出てくる事だろう。
まず、そこを解決しないといけない。
しかし人に増えるなともいえない。
難しい話だ。
「ボオスはさ。 このまま世界が発展して、神代がまた到来しないようにするにはどうしたらいいと思う?」
「……俺も神代の連中の反吐が出る有様には言いたいことが山ほどある。 それが、人間の思考の延長線上だって事も分かってる。 未来があるに違いないとか、責任放棄をするのも間違ってるだろうな。 強い奴が全部独占するのも、同じように何もかも間違ってるのも分かってる」
ボオスは、ため息をつく。
色々王都で学んできたのだろう。
結局人間は、ずっとずっと。長い間、進歩なんてしていないのだと。
だからこそに、ボオスはどうすればいいか、良い案はないとはっきり言った。
「もう少し人間が力をつけて、魔物と力が拮抗したら、こんなことにはならないのかも知れないね」
「なんともいえん。 その場合も拮抗が崩れたら、人間はまたなんどでも繰り返すだろう。 俺も一歩間違えれば神代の側に行っていた。 それは嫌と言うほど分かってる」
ボオスは多分、キロさんの事がずっと頭にある。
だから、神代の事は絶対にゆるせないとも考えてくれている。
だが、人は変わるものだ。
キロさんにボオスが会えなかったら。
今頃、立派な暴君になっていたのかも知れなかった。
「とにかく、今は苦しんでいる人を、助けられる範囲で助けよう」
「うん、分かってる」
クラウディアの言う通りだ。
後は島を見回って、問題が無いか確認もする。
家にも少しだけ寄った。
父さんの話によると、水の味はまったく問題が無いと言うことで、それはとても嬉しい事だ。
ついに完璧に仕上がったということだからだ。
実は、この水の問題が解決しない場合、余所から人を呼ぶためにクーケン島では無理な施策を導入する必要があったかも知れないという話も出ていて。
それが解決したのは。とても良いことだった。
アトリエに戻る。
途中、ボオスにも話しておく。まあ、クラウディアもいるけれど、いいだろう。
オーレン族と人間の混血に関する危険性だ。
ボオスは、その話を聞いて、最初は眉をしかめた。俺に何で話すという表情だ。
だが、程なくして青ざめていた。
あたしは突っ込むことはしない。
ボオスが何を考えているかは分かるし。それをああだこうだいうつもりもないからである。
ボオスはしばし黙っていたが。
あたしが人間とオーレン族の未来の為に色々と考えているという話をし。更には具体的な研究もしているというと。
大きく嘆息していた。
「神代にお前がいたら、全然この世界の今は違っていたんだろうな」
「さあ、それは分からないよ。 今の時点で神代の技術は解析できているけれど、神代という時代を作って、人間を飛躍させて過剰なテクノロジーを与えた存在がいたのなら、それはあたしより上の錬金術師だった可能性も高いからね」
「ライザ以上の錬金術師か。 その人が、もっとものを考えてくれていれば、神代の人達はあんな外道に落ちなかったのかな」
「……分からない」
カラさんから聞いた話を含めても、まだ神代には分からない事だらけなのだ。
まず、オーリムで狼藉の限りを尽くした連中が、この世界の全てを支配していたのかどうかも分からない。
それを考えると。
あの群島の宮殿の向こうには。
とんでもない怪物が潜んでいても、おかしくはないのだった。
丁度ぴったり三日が過ぎて。
タオとクリフォードさんが、本の解析を終えていた。クリフォードさんが、山積みになっているドーナツを躊躇無くもくもく食べている。アンペルさんのために用意された分もあるのだが。
流石のアンペルさんも、全部は食べきれないらしい。
何よりタオもクリフォードさんも、頭をフルパワーで動かして、糖分が足りていないようだった。
皆で集まって、話をする。
タオが、咳払いしていた。
「概ね状況がわかったよ」
「よし、話してくれ」
「うん。 まず勘違いしていたことがあるんだけれども、古代クリント王国がこの土地に門を開いたのは偶然じゃないんだ。 あの群島の出現は錬金術師の間で伝説になっていたらしいんだけれども……おおよそ五百年ほど前だね。 群島が出現して、古代クリント王国は解析に出向いた。 当時古代クリント王国の最高の錬金術師と呼ばれる人物と、研究チーム、アーミーの護衛と一緒に」
その人物は野心的で、早速この辺りを制圧して、もとの住民を全て追い出した挙げ句に、巨大な研究施設に造り替えた。
クーケン島もその一つ。
他にも世界各地に門はあるのだが、それらも此処での研究をベースに作られていったものであったらしい。
あの火山も。
研究施設の一つ。
古城もだ。
「続けてくれ」
「うん。 それでここからが大事なんだけれども、ある日群島は沈んでしまったらしい。 その錬金術師と護衛は錯乱したそうだよ。 そんな筈はない。 バカなって、ずっと叫んでいたんだって」
「……」
神代のカス共が何を目論んで群島と宮殿を作ったのかはまだ分からない。
分かっているのは。
恐らくだけれども、古代クリント王国の錬金術師。それも世界を制圧し、なんでも好きに出来るほどの権力と軍事力を持っていたものは、届かなかったのだ。
神代のカス共のお眼鏡にかなわなかった。
そういう事なのだろう。
それから狂気的に研究が続けられ。幾つかの成果が上がった。それが門の技術と聖堂の技術。
つまり門をコントロールし、更には開けるテクノロジーだ。
正確にはこれは神代の頃には普通に存在していたものだったらしいのだが、古代クリント王国では再生に成功した。
各地で実験が行われ。
そして、門が安定した結果。
古代クリント王国は、最低最悪の行為。
オーリムの植民地化。
それに、資源の略奪を開始。
結果としてフィルフサの大繁殖を招き。オーリムも此方の世界も、文字通り滅ぼしかけたのだ。
「火山の方では、どうもフィルフサのコントロールについて研究を更に進めていたらしいんだ」
「もともと摂理をねじ曲げて神代の奴らが滅茶苦茶にした生物なのにな。 人間ってのは、どこまでも落ちるんだな」
レントが吐き捨てる。
あたしも同意だ。
セリさんが、大きなため息をつく。
「私達も品種改良はするけれど、ここまで独善的で身勝手な事はしないわ。 まあ、報いが降ったのも当然だったのでしょうね」
「同感だ」
リラさんも容赦ない。
あたしも同感だし。
何より、この場に古代クリント王国の錬金術師がいたら、生まれた事を後悔するくらい残虐に殺す。
自制心なんか働かないだろうな、その時は。
「で、研究というと、例の……」
「うん。 フィルフサの王種についていたものだね。 狂気の源泉……」
「そんな名前がついているって事は、その悪い奴らも罪悪感はあったのかな」
「いや、この名前について、どうしてついていたのか説明があったんだ。 知能もない存在を都合良く踊らせるから狂気の源泉、らしいよ」
つまり罪悪感どころか、最大級の侮蔑か。生物に対しての。
ディアンは黙り込んで、青ざめてしまう。
ぶるぶるふるえているのは。今までに感じたことがないほど、怒りを覚えているからだろう。
あたしもだと。声を掛けておく。
頷くだけだ。快活なディアンが。フェデリーカでさえ、ぐっと拳を握りしめているほどだ。
人間を動物と区別する。
当たり前だが。この世界の人間は、そうすることで社会を作って来た。
だが、それは動物に対する敬意を忘れて良いことにはならない。
人間なんかたいした存在じゃない。
色々な世界の仕組みに助けて貰って生きている。だから動物にも感謝しなければならないし。
命を分けて貰っている事を、常に自覚しないといけない。
父さんはそんな事を言った。
確か、最初に仔牛をばらした時だ。チーズを作るのには仔牛の胃の中にあるものが必要で。
それを取るためにも、仔牛を殺さなければならなかった。
チーズは長持ちする大事な非常食だ。
自分になついている仔牛を殺すときに、父さんは表情がなかった。全てばらばらにして肉なども食品加工した後。
父さんは言ったのだ。
覚えておきなさい。
生命には常に敬意を払うのだと。
神代の連中は、畑と会話する境地に至っているとは言え、農民である父さんが自力で辿りついたごく当たり前の事にさえ辿りつけなかった。
本当に恥ずかしい奴らだったのだ。
大きく深呼吸して、タオに続きを促す。
「研究は知っての通り失敗したんだ。 フィルフサはまったくコントロールを受けつけなくなった。 サルドニカの辺りは更地になったし、他でも大きな被害が出た。 結局古代クリント王国は、アーミーの突き上げもあって、水でフィルフサを全滅させる作戦に出たんだ。 一連の事件を始めた錬金術師も、フィルフサの大繁殖には流石に強権を保持できなくて、ついにアーミーもろとも滅びる事になったらしい。 でも、それでも一部の人間は、狂気の源泉の調査を続けていた……」
「まさか」
「うん。 まだ狂気の源泉はあるよあの山に。 最終的に、錬金術師は全員アーミーに連れて行かれて、最前線でフィルフサに食い殺された。 だけれども、アーミーが封じた研究室がある。 自業自得の末路を遂げた錬金術師達だけど、この世界にしっかり呪いを残していったんだ」
なんて迷惑な連中か。
いずれにしても、探すしかないか。
そして、クリフォードさんがいう。
「恐らく場所は山頂だ。 俺が目をつけていた場所が怪しいだろうな。 ただ、どうやって研究室に入るのかが分からん。 皆、手を貸してくれるか」
「勿論です!」
パティが立ち上がる。
皆。同じ気持ちだ。
あたしも。
とにかく、クーケン島を古代クリント王国のクズ錬金術師の呪いから開放するためにも。全ての事を、決着させなければならなかった。
すぐに準備して、山頂に急ぐ。
今、昼少し過ぎだ。
移動しながら、カラさんが話を振ってくる。
「時にライザよ」
「はい」
「狂気の源泉の現物を発見したらどうするのじゃ」
「まずエーテルに放り込んで解析します」
これは当然だ。
まず、フィルフサをどうやってコントロールしていたのか調べる必要がある。そして、神代の錬金術師はそれに成功していた。
狂気の源泉は道具だ。
だからこそに、道具という名前の呪いを、破壊し尽くすには。解析が必要なのだ。
それを説明すると。カラさんはふっと笑う。
「クリントのものどもはこう考えた。 資源にもなり邪魔な者を掃除するための軍事力にもなるフィルフサを操作できれば、今以上の全てが手に入ると。 それは確定だろうが、ライザ、そなたはそうできるとしたらどうする」
「しません。 フィルフサは元々、無害な寄生生物にすぎませんでした。 もとの生物に戻す事を考えます」
「力はいらぬのか」
「自分の力を、倫理に従って使うのだったら良いでしょう。 他の生き物の存在を歪めた上に、借り物の力です。 そんなもの、使って粋がっていたのだとしたら、それは子供以下でしょうね」
あたしの喝破を聞いて。
カラさんはならばよし、という。
狂気の源泉は、できればまとめて破壊してしまいたい。それには、やはり解析が必要なのだ。
解析が終わったら全処分。
テクノロジーもろとも、この世から葬る。
フィルフサだって、もとに戻す方法を考えたい。本当に何もかも滅ぼして回るのが、フィルフサのあり方なのか。
フィルフサはただの寄生生物で、そもそもあの装甲が本体だ。
だったら、ただ寄生生物であることが、本来のあり方だ。
山頂に出た。
クリフォードさんが案内してくれる。山頂に出来ている花畑。墓場。前にも来たことがある。
此処を荒らすのか。
ちょっと気が引ける。
古代クリント王国の錬金術師共の墓場だったら、蹴り砕いてやりたいくらいだが。アーミーの人達の墓場の可能性もある。
一旦散って、調査を開始。
しばし、皆で無言で調べる。
ディアンが、口を尖らせる。
「あったまきて飛び出してきたは良いけど……ライザ姉。 何もわからねえよ」
「それなら、魔物の警戒に集中して。 こう言うときだから危ないしね」
「おう!」
墓場を離れるディアンは、ぽんぽんと跳んで岩の上に出ると、周囲を見回し始める。根は真面目な子だ。
暴れん坊なのも確かなのだろうが、それも敬愛する行者への反発から来たもの。弱い者いじめは絶対にしなかったという話だし、与太者の類とは違うと言う事だ。
そういえば、王都にいた義賊三人組も、ちょっと変わっていたな。
賊なんて名乗ってはいたけれど、実際にやっているのは立派な自警で、アーベルハイムでも信頼していた。
ああいう変わった人が、力を発揮できる環境が。
人間には必要なのでは無いのだろうか。
ディアンだって、立派な変わり者だ。フェデリーカやパティのような優等生とは違う。
だが、それで使い物にならないと社会が排斥するのでは、意味がないのではないのか。
そもそも……。
一旦頭を振る。思考の脇道は其処までだ。集中して、調査に戻る。
クラウディアは全力で音魔術を展開中。
フェデリーカも舞い続けている。
連日舞いの精度が上がっているようだが、それでもやっぱり疲れるのだろう。
タオとクリフォードさんは淡々と地面をまさぐって調べているが。アンペルさんは、意外な所から動く。
そして、アンペルさんがあっと声を上げていた。
「セリ=グロース。 来て欲しい」
「どうかしたの」
「この植物は」
「……!」
セリさんが黙り込む。しばらく、普通の草にしか見えないそれを触っていたが、やがて頷いていた。
アンペルさんが見つけたそれは、異常性のあるものなのか。
「それって……」
「オーリムの植物よ」
「!」
「それが此処に根付いているとしたら、そもそも実験用に植えたとしか考えられない。 土壌からして改良しているはずで、それの子孫が今あるとみて良いわ」
そうか、やはり此処の周辺に研究所がある。
それは間違いなさそうだ。
アンペルさんが手を叩く。
「タオ、クリフォード殿。 此方に来てくれるか」
「はい、アンペルさん」
「その話面白そうだな」
すぐに二人も乗ってくる。
あたしも何となく分かってきた。この墓場そのものは、手が入っていただけのフェイク。そうなると、恐らく。
盲点だった。
辺りの岩を、あたしも協力して徹底的に吟味する。
木を隠すなら林の中というが、その視点は忘れていた。
ほどなく付近の大岩に不審な点を見つける。レントとディアンが力任せに横に動かすと、ぐっとずれる。
そして、隙間からは。
闇への入口が覗いていた。
「これ、力任せにこのまま開けるのか。 俺でもきついぞ」
「いや、周囲を調べる。 動力を失って、扉が正確に閉まっていない状態だと判断できる。 錬金術師達は苦労せず出入りしていたはずだ。 何処かに出入りのための仕掛けがあるとみて良い。 それが無い場合は力尽くでいこう」
まあ、妥当な提案だな。
一旦休憩を入れてから、再度念入りに周囲を調べる。クラウディアが、妙な罅が入っている岩を見つける。
なるほど、大当たりだ。
罅が入った岩に偽装した隙間の中に仕掛けがあった。ただし動力が死んでいる。
古代クリント王国の錬金術師どもも、此処では相当焦って施設を作っていたのか、それとも二線級以下の施設だったのか。
それはわからないが。
ともかく、これで突破口は開けそうだ。
無言でタオが操作して、扉になっていた大岩がずれていく。動きがぎこちなくて、壊れかけなのが一発で分かった。
頷くと、あたしが大岩を蹴り砕いてしまう。
この研究所の中身は。
これから全て、取りだしてしまう。
すぐに全部回収して、それで研究する。地下にタオとクリフォードさん、それにアンペルさんとあたしで降りる。
狭い研究所だ。
無言で周囲を見回す。
薄暗い。
灯りが死んでいる、ということだ。
あたしがカンテラを操作して灯りをつけると、周囲にはしんとした闇の中に。本棚や、機材が散らばっていた。