暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
ロミィは遠隔で監視を続ける。ライザ達が群島へ移動を開始。メモを取っていると、来たのはガイアだった。
同胞の中では、コマンダーであるパミラの次に偉い存在。
勿論偉いとは自称していないが。
最古参の同胞である。
苛烈な戦いを経てきた戦士である。
ガイアの同期の同胞も存在していたらしいのだが、もう生き残っていない。主に東の地での激戦と、フィルフサの駆除が要因だ。
同胞一人を増やすのにも母のリソースを使う。
母は今。リソースをフルに使っているし。ライザが到達するまでそう時間もないのが分かっている。
だからこそ。
その支援は、全同胞でしなければならなかった。
「ロミィ、問題はなさそうか」
「はい。 ライザはどうやら次の段階に進みそうですね」
「そうか……」
知っている。
母のいる空間だが、その座標は現在。この世界で、正確に手に入れる方法がない。
古代クリント王国などでも座標は秘匿されていたらしく、それが滅んだ後は既に誰にも知られなくなっている。
つまりだ。
ライザはこのままだと、座標を知る事が出来ない、ということになる。
しかしあのライザだ。
どこから突破口を開いてくるか分からない。
「それで何か問題が」
「……東の地でベヒィモスが出た」
「!」
「三百年ぶりの目覚めだ。 最悪のタイミングだが対応しないと東の地の人間は全滅に追い込まれる。 幾つかある管理されている門も、管理が極めて難しくなるだろうな」
ベヒィモス。
東の地に残された、神代の忌み子の一つ。一つである。他にも幾つも邪悪が残されている。
その実態は神代の錬金術を用いた生物兵器で、一説にはフィルフサとは違う方向から進められたアプローチによる殲滅兵器……それもフィルフサのように、「土地にいる邪魔な生物を全部駆除する」というものではなく。
エンシェントドラゴンなどの強力な魔物が、団結して人間に対抗してきた場合、ねじ伏せるために作られたもの。
いずれにしてもその戦力は絶大。
フィルフサの小型の群れに匹敵する戦力を持つと言う。
しかもフィルフサの群れは王種を潰せば良いのに対して、此奴は兎に角タフで、休眠に追い込むのが精一杯。
更に厄介な事に、実は複数がいるのでは無いかと言う説まである。
前回の対応では、同胞二十三人が命を落とし、それでも休眠に追い込むのが精一杯だった。
此奴のデータは最重要セキュリティだったらしく。
母でも到達は出来ていないのだ。
「これより五十二名の同胞を各地から招集し、対応に当たる。 コマンダーはライザへの対応に残るそうだが、私は現地で指揮を執る」
「ご武運を」
「ああ……」
ガイアが残像を作って消える。
嘆息すると、ロミィは監視に戻る。
ライザは群島のアトリエに移ると、早速準備を始めたようだ。監視しているだけならまあそれでいいのだが。
問題は、その実力が連日上昇していること。
既に20を超えているライザだ。この状態でまだまだ伸び続けるというのは驚異的ではあるが。
しかしあれほどの規格外だと、不思議では無いのかも知れない。
しかも、だ。
側についているオーレン族の老人。
それが、時々こっちを見るのである。
カラだったか。
あれはもう、ロミィの監視に気付いている、と判断して良さそうだった。
さて、どうしたものか。
今監視に使っているシステムは、神代には成層圏と言われたよりも遙かに上に存在している。
それで気付くとなると、正直お手上げであるのだが。
それでもやるしかあるまい。
もういっそ、同胞の目的を告げて、協力を頼んでもいいのではないのかと思うのだが。ライザを警戒する同胞も多いし。
何より錬金術師が今まで積み重ねてきた業が深すぎる。
ライザが例外と言っても。
変節したらどうするのかという懸念は、どうしてもあるのは仕方が無い事だと、ロミィも思う。
嘆息すると、監視装置から一旦離れ、宿を出る。
クーケン島の一角である。
すぐにバザーに出ることが出来る。
しばらく無心に商売をしながら。
これはやっていて楽しいなあとロミィは思う。だが、やっていて楽しい事をやっていられるほど。
この世界は甘くないことも、分かっていた。
(続)
「同胞」から見ても極めて危険な存在であるライザ。
利害が一致しているから今の時点では生還していますが、殺そうという意見も多く出ていました。
今ではその意見は出ません。
ただし、良く思っていない「同胞」も多くいます。
理由は伏線で撒いていますし、まあお察しです。この世界の錬金術師は、それだけ業を積み重ねてきたのです。