暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

96 / 200



寄り道はしたものの、更に手がかりを増やして三度目の群島奧の宮殿への挑戦です。

原作でも大変です。何度も来なくてはいけないので。

しかし現場百回と言いますし、ある意味調査としては正しい行動ではありますね。


鍵は目覚める
序、三度目の到達


群島は沈んでいない。こいつが今沈むと、神代の錬金術師共の所に辿りつくための手がかりがなくなる。

 

あいつらは滅ぼし尽くさないとダメだ。

 

だからこそ、調査を急がなくてはならない。

 

アトリエに荷物を移すと、すぐにエアドロップ二つに分乗して、宮殿に向かう。エアドロップは更に改良している事もある。速度は更に出る。

 

カラさんは子供みたいにきゃっきゃっと喜んでいたが。

 

大きめの魔物が寄ってくると、魔力で威嚇して追い払っていた。かなり大きなサメが、カラさんの視線を受けただけで逃げていく。

 

まあ、ある意味痛快ではある。

 

「またイルカがいますね」

 

「数が増えているね。 ただそうなると……」

 

実はイルカは、生息地域では漁師に嫌われている。

 

魚を食い荒らすし、実際に接してみると性格もあまり良くない。遠くから見ている分には可愛いのだが。

 

まあ、別に殺す事もないだろう。

 

今懸念するのは。

 

イルカを餌にするような、更に大きな魔物の攻撃。エアドロップごと食われるようなことは避けないといけないが。

 

今の時点で、そんな強烈な気配はない。

 

この辺りが水深も浅い事もある。

 

巨大な魔物は、多分入れないと見て良かった。

 

宮殿がある島に。

 

何度か掃討作戦をやった事もある。とりあえずもう手強い魔物はいないが、ちらほら魔物は見かける。

 

鳥も見せかけだけの木にとまって羽を休めているようだ。

 

まあ、無害ならいい。

 

宮殿の奧へ。

 

ずっとカラさんは、宮殿を見ていた。

 

「カラさん」

 

「間違いないのう。 わしが以前見た、錬金術師共が作ったのと同じ建物よ。 我等こそ絶対、我等こそ正義。 我等は何をしても許され、我等に逆らう事は許されぬ。 我等の言葉は常に正しく、我等の理屈に沿わない方が間違っている。 我等こそが万物の霊長、知識の深淵に至りしもの。 我等だけが「人間」である。 数多の凶行に立ち向かった我等に、奴らがそう演説した。 その目は狂気も無く、奴らの「常識」を述べているだけだった。 よく覚えておるよ」

 

「本当に最低な奴らですね」

 

「ああ……」

 

カラさんはそれきり黙る。

 

あたしも、それ以上話を聞くつもりもない。

 

無言で宮殿の奧へ。

 

ディアンが物珍しそうに周囲を見ていた。

 

「ライザ姉。 すっげえ悪い奴らがこれを作ったって聞くし、それは事実なのは俺も分かるんだ。 だけど、この建物は……なんだかちょっと格好いいなって思っちまう。 俺は、バカなのかな」

 

「……建物そのものには罪はないからね。 こんな綺麗な建物を作った人間なら、心が綺麗だと思うと間違いだって言うだけだよ」

 

「なんだかなあ……」

 

ディアンは上手く言語化できないようだ。

 

ディアンは独特の例えを使うが、それで頭が悪いかというとそうでもなく、普通に的を得た事を言っている。

 

だが、今日は歯切れが悪い。

 

困惑しているのだろう。

 

世界を二つ焼き尽くしかけた大罪人どもが作りあげたものが、格好良いと感じてしまうことに。

 

「ライザ姉の作る道具って、いつも凄いと思うんだ。 強いし強い。 でも、この建物にも同じ事を感じる。 すまねえ。 すげえ失礼な事を言っていると分かっているんだけど、嘘はつきたくねえんだ」

 

「正直で結構。 別にあたしは怒っていないよ。 さ、先に進も」

 

ディアンを促して奧へ。

 

何かしらの仕掛けがあるのか、魔物が入り込んでいる様子もない。魔物避けの仕組みがあるのかも知れないが、まだ分からない。

 

階段を上がってエントランスの奥に。

 

形状的にあり得ない橋の先に。

 

まだそれはあった。

 

開いたままの扉。側には巨大な石碑。

 

そして、空っぽの空間だ。

 

「石碑を調べる前に、まずはあの空っぽの部屋をもう一度漁ろう。 アンペルさん、お願い」

 

「ああ、分かっている。 エミルはあの空間の調査に二年掛けたようだ。 その成果について、正しいか確認をしておく」

 

アンペルさんが前に出る。

 

死が見えている状態での二年は、健常者の二年とは価値が違う。

 

何もかも失ったエミルという人に残されていたのは、本当にこの群島と宮殿の調査だけ。それは、親友を売り渡した人間には、最大の罰だったのかも知れない。

 

レントは扉の前に。ディアンにも、扉が閉じそうになった時のためにその場に待機してもらう。

 

タオも部屋の調査に入るが、クリフォードさんは石碑を正確に写し取り始めた。他のみなは、宮殿の各地に散って、魔物やトラップへの警戒を始める。クリフォードさんが完璧に石碑を写し取るのを確認。

 

相変わらず凄いなと思う。

 

伊達や酔狂でトレジャーハントをしているからこそ。

 

本気でトレジャーハントを極めることが出来た。

 

努力以上にたのしんできたからだ。

 

楽しむために他の全てを犠牲にして来たからだ。

 

だからこの人は、スペシャリストになった。それをあたしは尊敬する。神代の連中はにやつきながら指を指して笑うのかもしれないが。そんなのは即座に頭を蹴り砕いてやるだけだ。

 

「ライザ、私は問題なしだ」

 

「タオ、そっちは?」

 

「僕も大丈夫!」

 

「俺はもう少し掛かる。 ちょっと待ってくれな」

 

クリフォードさんは器用に石碑に這い上がると、構造を完璧に写し取ってくれている。それどころか、ロープで自分を吊るし。

 

背後や下部なども、徹底的に見落としなく石碑を調べてくれている。

 

実に助かる。

 

アンペルさんとタオが部屋を出たので。レントとディアンはフリーになる。

 

皆には。この宮殿の島の魔物を片付けに出て貰う。あたしとタオ、カラさんだけが残って、クリフォードさんの作業を待つ。

 

「調べて見て分かったが、上部や側面にも神代の文字が掘られていやがる。 それも、後から掘られたものじゃねえなこれは」

 

「全部可能な限り写し取りお願いします」

 

「おう」

 

「……そうだ」

 

クラウディアを呼び戻す。

 

そして、音魔術の観点で、石碑を徹底的に調べて貰う。クリフォードさんが作業を終えたタイミングで入れ替わって貰う事になる。

 

クリフォードさんが。複数の写し取りに使ったゼッテルをまとめ、その場を離れると。代わりにクラウディアが、音魔術で石碑の構造を完璧に解析してくれる。

 

そうすると、石碑の下部接着面にも、文字が刻まれているらしいことが分かってきた。なるほど。

 

可能な限り丁寧に再現して貰う。

 

空中に作り出した文字を、クリフォードさんが丁寧に写し取り、向きなどをしっかり確認して、それで調査を一度終える。

 

流石にちょっと疲れた。

 

皆が戻ってきた。

 

そこで、鍵を試す。

 

皆が見守る中、石碑に鍵を具現化し、差し込んでみる。すっと鍵は入ったが、次の瞬間である。

 

あたしは飛び退き、クラウディアとカラさんが反射的にシールドを展開。音によるシールドと、魔術による防御壁。

 

鍵が、爆発四散していた。

 

簡単に正解に辿りつかせると思うか。

 

そう嘲笑っている顔が見えるようだった。

 

「ライザ、大丈夫!?」

 

「問題ない」

 

多少は怪我したが、そんなのは作りおいてある薬もあるし、身に付けている装飾品の自動回復機能もある。

 

その程度でどうにかなるほどあたしは脆くできていない。

 

しかしこれは。

 

本当に悪意の塊みたいな構造だな。

 

ひょっとしてエミルという人は。最後にこれを試して死んだのではあるまいか。ゴーレムを連れ込んだのがエミルと言う人なのは、この島に最初に来た時に襲いかかってきたゴーレムもそうだし、手記にも記載があったから、ほぼ間違いないとみて良い。

 

アンペルさんの話によると完全な研究者型の錬金術師だったそうで、戦闘能力は皆無に等しかったらしいから。

 

これをもし試したのなら、即死だっただろうな。

 

薬を傷口に冷静に塗りこみながら、あたしはそう思った。

 

「フィーッ!」

 

「珍しく怒っていやがるな」

 

フィーが石碑に毛を逆立てているのを見て、ボオスが言う。

 

フィーは何かしらと闘争することがそもそも生物的に向いていない。恐らくは、カラさんが言った通り、ドラゴンとともにいるのが本来の生態だったのだろう。

 

だとすると。

 

あたしの側にいて。

 

あたしを慕っているのは。

 

本来の習性も関係しているのか。

 

あり得る話ではある。

 

ドラゴンと一緒にされるのはかなり複雑な気分ではあるが。

 

それに、ドラゴンと一緒にいても、神代の連中の前には無力で捕まってしまったというのも分かる。

 

ともかく、この成果だけでも充分だ。

 

「よし、戻ろう。 今の成果だけで、これからやるべき事が分かった」

 

「本当かよ」

 

「凄いですね……」

 

レントとフェデリーカがぼやく。

 

一方パティは、去年のことや。それから何度か対フィルフサで共闘したこともあるからだろう。

 

そこまで驚いてはいなかった。

 

 

 

アトリエに戻ると、あたしは順番に説明していく。

 

「あの石碑が竜脈とつながっている事は分かった。 そして恐らくだけれど……本当に大事だったのは側面や見えない場所に刻まれている文字だったんだと思う。 それこそが、恐らく「座標」の正体だね」

 

「なんだって!?」

 

「間違いない。 俺とタオで文字を解析したが、明らかに意図的に並んだ数字の列だったからな」

 

それもかなり複雑な代物だったという。

 

そしてもう一つ問題だったのが。

 

石碑に鍵を刺したときに、あたしは石碑正面の文字が幾つか光るのを見た。ディアンもそれを見ていて。

 

なんとディアンは、どれが光ったか完璧に覚えていたのだ。

 

ディアンが指した文字列を解析すると、タオがあっと声を上げる。

 

「これ、呪文詠唱だ!」

 

「そういえば街道や古城にも、呪文詠唱が刻まれた石碑があったよな」

 

「うん! それもこれはもっと洗練されてる! そして完全に丸写ししても機能しないように、わざと文章の中に紛れ込ませているんだ!」

 

昂奮したタオが叫ぶ。

 

あたしは頷くと、やるべき事を決めていた。

 

「まず最初にやるのは、石碑のコピーだね。 恐らくだけれども、奴らの根拠に出向くには門を開けないといけない。 この石碑には凄まじい竜脈からの力が、一瞬とは言え流れ込んでいた。 そして石碑の本来の役割は、一時的に門を開けることのコントロールなんだ」

 

「古代クリント王国の聖堂の役割を、あんなちいさな石碑だけでこなすのか!」

 

「いいえアンペルさん。 奴らの技術だったら、もっと小さく出来たと思う。 あたしもどうにかしてみせる」

 

「……おぞましい程の技術だ。 確かに人類の全盛期を作ったのも納得出来る、過剰すぎる力だ」

 

アンペルさんが戦慄したが。

 

あたしも同じ意見だ。

 

正直これは、人間が踏み込んではいけない領域の技術にすら思える。たまたまオーリムが狙われただけで。資源などでもっと魅力的な土地があったら、奴らはそれを踏みにじっていただろう。

 

そういえば、奴らより早くオーレン族と接触した種族というのは。

 

もしかすると、別系統の錬金術を極めた、別世界の人間だったのかも知れない。

 

そう思うと、オーリムに侵略が入ったのは、いずれ避け得ない運命だった可能性すらある。

 

救えない話だ。

 

あたしは続ける。

 

「続いてやるのは、圧倒的な魔力に耐えられる鍵の作成。 これは恐らく、何かしらの特殊な金属でのコーティングが必要だと思う。 グランツオルゲンで……といいたいのだけれども。 ちょっと今作れるのだと強度が足りない」

 

「鍵を金属で覆うのか」

 

「うん、そうなる。 それと、更になんだけれど……」

 

石碑のコピーを作り、魔力を流し込んで鍵を完成させると、恐らくは空間に穴を開けることが可能になると思う。

 

問題はその先だ。

 

あの石碑の座標は、本当に奴らの根拠地のものなのか。

 

それを確認する手段が必要になってくる。

 

「石碑の呪文詠唱のこの部分。 これは恐らくなんだけれども、その地点の座標を読み取るものだと判断していいと思う。 それはつまり、まずは座標が正確かを、この詠唱の部分から抽出した情報から作り出した鍵を用いて、各地で座標を計って、それで解析する作業が必要になるという事なんだ」

 

「つまり彼方此方を回って、座標の傾向を調べて行かないといけないってことだね」

 

「うん。 それにもう一つ……」

 

これが重要なのだが。

 

奴らの拠点の座標が分からないのだ。

 

石碑に奴らが此処ですよと記載してくれるとも思えない。どこかで見つけ出さないといえないだろう。

 

「順番に整理するよ。 最初に石碑の内、座標抽出を行う呪文詠唱と魔力の吸いだしを切り出したものをあたしが作って、それをどうにか道具にするよ。 この簡易版の石碑に魔力を流して鍵を差し込んで、座標の抽出を行える道具を作成する」

 

これがスタートラインだ。

 

これに関しては、今から着手する。

 

問題はその次からである。

 

「次は鍵を強化する素材と、座標の情報を集めること。 そして、何よりも……奴らの根拠地の座標の確保になるね」

 

「素材が大問題だね。 セプトリエンから作った金属でもダメなんだよね」

 

「……とにかく情報を集めよう」

 

これらが全て揃ったら。

 

奴らの根拠地に殴り込みが可能になるだろう。

 

アンペルさんが手を叩く。

 

「皆、ライザがまずは調合を終えるまでは我々も出来る範囲で情報を集めよう。 鍵をまず物理的に守る金属についてだが、硬い事よりも柔軟性が重要だろう。 その上で、今ライザが作ったグランツオルゲン以上の強度も欲しい」

 

「アンペルさん! 俺、心当たりある。 強くて柔らかい、だけど強い金属!」

 

「何……!」

 

「うん、間違いないと思う」

 

ディアンが心強いことを言うと。

 

フェデリーカも挙手していた。

 

「そろそろサルドニカの状況を見に行きたい所です。 サルドニカ辺りも、座標を調べるのには必須なのでは……」

 

「そうだね。 この辺り、サルドニカ付近、ネメド……それにウィンドルも良いと思う。 ウィンドルの他に、グリムドルのデータも欲しいかな」

 

「統計としては母集団のデータは出来るだけ拡大したいな。 それ以外の土地だと……王都は少し遠いか」

 

「サルドニカの先で、少し遠回りになるのだけれど……東の地という場所があるの。 どうも商会の情報だと、非常に危険な土地なのだけれども、でもそこからなら少し遠回りになるけれど、ネメドに向かう船が出ているよ」

 

頼もしい。

 

皆が話をどんどん進めてくれている。

 

あたしは腕まくりをすると。

 

気合いを入れていた。

 

さ、やるぞ。

 

まずはあたしが、座標を調査するための道具を作りあげないと、話はそこで躓いてしまうのだから。

 

気合いを入れているあたしの横で、フィーがふんすと少し荒い鼻息をつく。

 

あたしが全力で調合をする。

 

だから無理をしないように見張る。

 

そう、覚悟を決めているようだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。