暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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原作では存在しかわからない東の地。

本作ではシナリオにがっつり絡むのですが……まだそれは少し先の話になります。


1、東の地の話

事実上のバレンツの支配人になってから、クラウディアは各地を旅してきた。その間もライザとの文通は欠かさなかった。

 

綺麗になったといつも部下や取引先におべっかを使われるが。

 

あんまり男の人には興味は無かったし。

 

それにライザには言っていないが、お父さんの言葉はあながち的外れでも無かったのである。

 

そう、四年前の夏の冒険が終わった後。

 

お父さんが言った。

 

ライザが男の子だったら。

 

バレンツの婿に迎えたいのに。

 

クラウディアだって同感だ。ライザだったら、大喜びで妻になりたい。だけれども、クラウディアの性的嗜好はあまり興味が無いとは言え男が相手だ。本当に、世の中上手く行かないものである。

 

ともかく、クーケン島に渡り、バレンツの商会本部に早馬……正確には鳥だがとにかく飛ばす。

 

内容は東の地の情報をありったけ集めて欲しい、である。

 

フロディアが眉をひそめる。

 

「副頭取。 東の地に何か御用が」

 

「ええ。 色々とね」

 

「あそこは尋常な人間が赴くところではありません」

 

「それも知っているわ」

 

この地上で、もっとも危険な場所。まあ噴火中の火山とか、色々あるだろう。開けっ放しの門があったら、もっと危険だろうなとも思う。

 

だが、それ以外にもっとも、恒常的に危険な場所があるとしたら。

 

そこは東の地だ。

 

サルドニカなどに人が渡って来た土地。ネメドほどでは無いがとても暑い土地らしく、皆日焼けして肌は黒い……だけではなく、最初から肌が根本的に浅黒い。フェデリーカのように。

 

フェデリーカも東の地の人間の血が混じっている。

 

そして東の地の傭兵は。

 

たまにしか姿を見せないが、各地でその技量を重宝される。

 

というのも、あまりにも東の地は危険すぎるため。戦闘能力がなければ生きていけないのである。

 

ライザと一緒に、フィルフサの王種を筆頭に、恐ろしい魔物を散々倒して来た。中にはネメドで戦った超ド級の巨大魔物のような、驚天のものもいた。それらは神代の置き土産であろう事はこの間分かったが。

 

特にそんな凶悪な魔物が多数見られる場所こそ。

 

東の地。

 

その危険度は、商会の情報ではネメドの比では無いということだ。

 

「良い機会だよ。 東の地でも、人間の足がかりになる土地を、しっかり固めておかないといけないと思う」

 

「無謀です。 確かに今の副頭取とお仲間の戦闘力は極めて高いことは認めますが……」

 

「ライザなら大丈夫だよ。 ライザがいるなら」

 

「……お止めはしました。 ひとつ、決めておいた方が良いことがあると思います」

 

なんだろう。

 

小首を傾げると、フロディアは言う。

 

後継者、と。

 

そうか、そのレベルで危険なのか。

 

フロディアの実力は、今のみんなとそこまで大きく変わらないと思う。それがこんな事を言うほどだ。

 

少し悩んだ後、お父さんに手紙を出しておく。

 

これより用があって東の地に赴く。

 

万が一の場合は、後継者を選出して欲しいと。

 

まだ一線を退いたとは言え、一応バレンツの当主はお父さんだ。

 

これでまあ、致命的な事にはならないだろう。

 

ただ、お父さんに言われているのだ。

 

お母さんの病状が思わしくないと。

 

ライザの薬を送って貰わなかったら、とっくに死んでいただろうとも。

 

早く孫の顔が見たい。

 

最近は、そう露骨に手紙に書かれているようにもなっていた。分かっている。クラウディアも、自分で子供を産む気にはなれないし。何よりも血縁による相続制が如何にまずいかは、王都で見てきている。それ以外の場所でもだ。

 

だから、有望な子がいたら、養子に取りたい。

 

しかし、現時点ではそんな有望な子は、見つかっていないのも事実だった。

 

ともかく、東の地の今閲覧できる情報を集めて、そしてアトリエに戻る。他のみなも、それぞれ独自に動いている様だった。

 

アトリエに戻ると、アガーテさんが来ていた。

 

ライザの代わりに、ボオスくんが対応している。

 

ボオスくんは、四年前と違って、年長者には丁寧に接している。島の為を思って、傲慢になることは避ける気なのだろう。

 

「なるほど、火山にそのようなものが……」

 

「まだ俺たちが見つけ損ねた危険物があってもおかしくない。 危険な魔物はあらかた片付けては来たが、それでもアガーテ姉さんから火山には立ち入らないように、徹底をしてほしい」

 

「良いだろう。 護り手の方からも警告はしておく」

 

「それで、以前姿を見せた、魔物を統率している魔物の姿はあったのだろうか」

 

そういえば。

 

ライザが苦戦する程の魔物の大軍を率いていた、「悪魔」としか言いようがない存在がいた。

 

彼奴は、ずっと姿を見せてはいない。

 

「この辺りでは目撃していない。 人語を解している様子もあったし、危険極まりない魔物だ。 見つけ次第仕留める覚悟でいるが……」

 

「俺たちはライザの調合が終わり次第サルドニカに向かう。 それまでに見つけた場合は、護り手だけで処理せず、声を掛けて欲しい」

 

「いいだろう。 ザムエルがいたとしても、クーケン島の手には余る相手だ」

 

「ああ。 ライザがいなければ、俺も手を出す気にはなれない。 頼む」

 

クラウディアは買ってきた物資をコンテナに入れると、料理を始める。ライザがずっとぶっ通しで調合をしているので。

 

そろそろ休ませる必要があるだろうな、と思ったからだ。

 

ディアンに声を掛けて、風呂も沸かしておく。

 

ディアンはこんな時間から、と言ったが。

 

ライザが全力で調合をしていると、消耗が見た目以上に大きい話をすると、なるほどと頷いていた。

 

「クラウディアさんは細いが鋭くて、まるで弓矢の権化みたいだ」

 

「ふふ、褒めてくれているのね」

 

「もちろんだぞ。 熱操作はあまり得意じゃないけれど、任せてくれ。 少しは出来るんだ」

 

薪がいるかと思ったが、これは嬉しい誤算だ。

 

そのまま湯沸かしは頼み、料理を始める。

 

フェデリーカが戻ってくる。くたくただ。カラさんにしごかれたのだろう。パティもかなり息が上がっているようだ。

 

「二人とも料理をするよ。 手伝って」

 

「はい!」

 

「分かりました」

 

さっと手を洗い始める二人。ライザが用意した石鹸を用いてしっかり指先まで洗っている。

 

そして当然頭巾も着ける。

 

料理をするときは必須だ。

 

そのまま、魚料理を主体に、幾つかの料理を作っていく。仕上がり始めた頃に、レントくんも帰ってきた。タオくんも一緒だ。

 

クリフォードさんは、料理中に戻って来ていた。

 

クーケン島のバザーを漁りに行っていたそうだ。

 

バザーには古文書があることが多く、こういう辺境こそ穴場なのだとか。何冊か本をもっていて。

 

タオくんと手分けして調べ始める。

 

「コレは面白い資料だな。 だが……余り役に立ちそうには無いな」

 

「僕が買います。 本そのものは、小妖精の森のライザのアトリエに移しておきましょう」

 

「そうだな、此処はいつ沈むか分からんと言う話だったしな」

 

「二人とも、食事が終わったらにしよう」

 

それで、二人ともそろそろお昼ご飯だと気付いたようだった。

 

セリさんとカラさん、リラさんのオーレン族三人組も戻ってくる。アンペルさんも混じっていた。

 

どうやら潮に汚染された土地にも強い植物の研究をしていたらしい。

 

なるほど、まだまだ今の汚染除去の植物では力不足、というわけか。

 

だが、それも専門家の判断だ。

 

クラウディアにどうこういう資格は無い。

 

料理が仕上がった。

 

ライザの側にいるフィーを見ると、すぐに意図を察してくれる。そして、ライザが加わって、みんな揃った。

 

食事にする。

 

「ふー。 ずっと集中してた。 ありがとクラウディア。 そのままだと、倒れるまでやっちゃうからね」

 

「それでもフィーがいるし大丈夫だよな」

 

「分かってるねディアン。 この子は賢いから頼りになるんだよねえ」

 

「さ、熱いうちに食べましょう」

 

手を叩いて、みんなに食事をして貰う。

 

クラウディアも食べるが、やっぱりレントくんやライザの食事量が色々ともの凄いなあと感心する。

 

育ち盛りを抜けたからだろう。

 

パティは明らかに食べる量が減っている。

 

ディアンは意外と食べる量が多く無い。ライザと同じく、戦った後は信じられないくらい食べるのだけれども。

 

これは体の大きさとかが、色々と影響しているのかも知れなかった。

 

食事が終わると、東の地の資料をみせる。

 

バレンツでも、僅かな商人は東の地に出向く。

 

珍しいものが手に入るからだ。

 

それ以上に、危険が大きいのだが。

 

「フロディアが人が赴く場所では無いとまで警告してきたわ。 危険な土地だという事は理解していたつもりだったのだけれど」

 

「フロディアって、クラウディアさんの家にいるあの人だよな。 小さいが強くて、まるで抜き身の刃みたいだ。 あんな強い人が、そこまでいうのか」

 

「ええ、ネメドより危険だそうよ」

 

「……」

 

ディアンが考え込む。

 

ディアンとしても、自分が手も足も出なかった巨大な魔物達を屠ったライザの実力は、憧憬の対象ですらあるのだろう。

 

それと大差ない実力を持つと認識できているフロディアが、そこまでいうのだ。

 

それが如何に危険なことかは、すぐに理解出来るのだろう。

 

ディアンは決して頭は悪くない。

 

言動はちょっと独特だが。

 

「確かに東の地は王都でもアンタッチャブルでしたね。 危険な土地と聞いて武者修行に出た騎士が、一人も戻らないとか」

 

「俺も彼方此方でヤバイ話は聞いてる。 まだ足は運べていないんだが、本格的にやばそうだな」

 

地図を拡げる。

 

これはバレンツが所有している古地図を、新たに写したものだ。

 

東の地はそれそのものが独立した大きめの島で、中央部に山脈があり。それを境にがらりと気候が変わるらしい。南は温かく、北は途方もなく寒いとか。

 

主にサルドニカなどに来る人は、南の人であるそうだ。

 

北は、文字通り人外の地だとか。

 

南には幾つか街が存在していて。人外の地である東の地北部……現地では「奈落」と呼んでいるらしいのだけれども。

 

そこから来る魔物を防ぐべく、砦を幾つも作って常に戦っているという。

 

戦士はそういう社会だから、勿論地位が一番高い。戦士以外にもいい武器を作る鍛冶、皆を食べさせる農民、多くの子を産む女性など。

 

基本的に戦いに関与する人間が尊敬され。

 

年老いた人間は、足手まといになるのを避ける為に、サルドニカなどの別地方に移動するか。

 

もしくは技を若い人間に、命尽きる間で渡し続けるという。

 

具体的な話を聞くと。

 

本当に修羅の地なんだなと、戦慄してしまう。

 

「よし、調合に戻る」

 

ライザは動揺している雰囲気は無い。そのまま調合を再開する。背中に一応、聞いておく。

 

今後の行動の指針になるからだ。

 

「完成までどれくらい?」

 

「後二日くらいかな」

 

「分かった。 レントさん、稽古頼む!」

 

「おう。 パティも、後フェデリーカもやろうぜ」

 

ディアンと一緒に、皆わらわらと出ていく。

 

セリさん達のオーリム関係者も出ていったが、例の潮に強い浄化植物の研究のためだろう。

 

オーリムにも海はある。

 

海にフィルフサはいないそうだが、海近くにまで当然フィルフサは生息しているのであるのだから。

 

タオくん達も、本を抱えてアトリエを出ていく。

 

その間にクラウディアは、資料を確認して、必要になる物資を計算し始めていた。

 

 

 

夕食が終わった後、伸びをしているライザに言っておく。

 

「ライザ、東の地に行く時に、グランツオルゲンのインゴットを二十個、それと完成品の大太刀を二十振り、用意できるかな」

 

「グランツオルゲンのインゴットだったらもうあるよ。 大太刀二十は……サルドニカの調査のついでになるね」

 

「うん、それで問題ないよ」

 

「……東の地の人達が苦戦しているのは分かるけれど、何か目的があるんだね」

 

頷いて、説明する。

 

東の地では、各地で強大な魔物がいて、それを休眠に追い込むまで攻撃して「追い払って」いるらしい。

 

現在確認できているだけでも四種類、人間の手に負えない存在がおり。

 

その実力は、戦い慣れた東の地の戦士達でももう五百年……古代クリント王国の破綻以降も、どうにもできない状態だとか。

 

「東の地では、武器がもっとも喜ばれるんだって。 強靭なインゴットも。 それに、対魔物の肉弾戦を主眼に置いている東の地の戦術は長柄が主体で、大太刀は珍しい武器ではないらしいんだ」

 

「なるほど、有力者にこれをプレゼントして、その代わりって訳だね」

 

「そういうこと。 東の地を少しでも安全にしておこう。 ライザと私達だったら、出来る筈だよ」

 

「分かった。 そうだね。 フロディアさん達が大苦戦するような相手だ。 どうにかしておくべきだろうね」

 

良かった。

 

色々ろくでもないものをみていて、それで荒々しくなっても。

 

ライザはライザだ。

 

良い意味で変わっていない。

 

自慢の親友である。

 

話を終えると、後は休んで貰う。進捗はだいたい予定通りと聞くし、こっちとしてはもうやることもない。

 

明日はバレンツ商会の支部……クーケン島に出向いて。

 

少し仕事を片付けておこう。

 

それと、東の地に出向く事も、本部に連絡を入れておく。

 

クラウディアが実質上の頭である以上。

 

こういう手続きは必要だ。

 

一眠りして、起きだす。

 

もうライザは起きていて、外で体操をしているようだ。パティとライザがとにかく朝が早い。

 

クラウディアは伸びをして、顔を洗って歯も磨いて。

 

それで、朝の準備に取りかかる。

 

最近はフェデリーカはほとんどずっと外で鍛錬を続けているので、朝の支度はほぼクラウディアが一人でやっているが。

 

その気になれば音魔術の応用で、手数はなんぼでも増やせる。

 

ライザほどの神話級の実力では無いがクラウディアだって魔力量には自信があるのだ。

 

料理の下ごしらえを終えて、焼き始めた頃、みんな起き始め、食卓に集まり始める。パティが手伝うと言ってくれたので、一部の行程を手伝って貰った。

 

そういえば、ボオスくんがいないな。

 

料理を運んで、みんなに食べて貰いながら、確認すると。

 

レントくんが知っていた。

 

「ボオスなら、さっき訓練中に護り手の一人が来て、すぐに出かけて行ったぜ」

 

「クーケン島で何かあったのかな」

 

「ライザは此処で調合を続けて。 対応は私達でやるわ」

 

「うーん、でも島の地下の事とかだったら、私をよんでね」

 

もちろんだ。

 

食事を終える。

 

そして。すぐにボオス君が戻ってきていた。

 

「皆、悪いがすぐに出てほしい」

 

「何かあったんだな」

 

「ああ。 例の……悪魔みたいな魔物だ。 塔の方で目撃情報が出た。 彼奴は放置しておくと厄介だ。 仕留めておきたい」

 

「前見た時には複数いたんだよね彼奴ら。 数は」

 

ボオスくんは一体だと言う

 

ライザは、食事を終えると立ち上がっていた。

 

「行くか」

 

「……やむを得ないね」

 

タオくんも同意する。

 

それはそうだろう。

 

魔物を使役する魔物。それも状況からして、恐らく神代の関係者だ。いざ戦うとなったら、どれくらいの力を発揮するか分からない。

 

ライザが出るのが妥当だ。

 

塔に向かう。

 

途中、手強い魔物は殆ど見かけない。

 

ただ。渓谷まで出向いた時点で、風向きが怪しくなってきた。ライザが目を細めて、手を横に。

 

注意して、という合図である。

 

それだけで、皆気を引き締める。皆が周囲を警戒する中、最初に気付いたのはカラさんだった。

 

「おいでなすったようだのう」

 

「!」

 

全員が武器に手を掛ける。

 

向こうから歩いて来るのは、あれはなんだ。

 

あまりにも巨大な人間に見えるが、近付いてくると、それが次元違いの巨大さをもつゴーレムだと分かった。

 

生唾を飲み込む音。

 

ゴーレムは鎧で武装……というよりも、恐らく鎧そのものだ。

 

手には朽ちかけているが、巨大な剣を手にしている。何となく見覚えがあるのだが。少しずつ、分かってきた。

 

渓谷で朽ちていた巨大なゴーレム。

 

あれが動き出したのか。

 

恐らくフィルフサとの戦いに投入された、古代クリント王国の切り札。神代から存在していた負の遺産の一つ。

 

それが歩き来ている。

 

問題はそれだけじゃない。

 

霧が来る。

 

その霧と同時に、無数の人影。その全てがゴーレムだ。いずれも破壊されていた筈が、動いているのだ。

 

そして上空にあの悪魔みたいな魔物。

 

そいつは、じっと此方を見下ろしていた。

 

「何のつもり」

 

「我等は試しを与えるもの」

 

「試し……?」

 

「大いなる知恵にたどり着けるか、試しをするのが我等が役目。 故に我等はサタンと名付けられた。 古き信仰にて、人間が堕落することを促し、神への信仰心を失わないか試す存在と役割が同じであるが故に」

 

そっか。

 

やっぱりこの思考、間違いない。神代の存在だ。

 

それも、もうこの時代の言葉を完全に理解している。正直な話、いつこれらの存在が何をしでかしても不思議では無い。

 

「それで何を試すつもり」

 

「全てを捨てて研究だけを考えろ」

 

「どういうこと」

 

「ただでさえ劣等血統のお前達だ。 それを大いなる知恵の深奥に招こうと主は有り難く考えておられる。 だが劣等などが、雑念があってはそれも出来まい。 貴様の雑念が、あの未熟な人工島にあることは既に理解した。 ゆえにこれよりあの島を討ち滅ぼす」

 

そうか。

 

傲慢なだけじゃない。

 

本当に残酷なんだな。

 

もう神代の存在が、論外のレベルで邪悪で残虐だったことは分かりきっていたけれども。それでもこういう言葉を聞くと、ライザでなくてもはらわたが煮えくりかえる。

 

クラウディアは即座に矢を番える。

 

ライザは何も言わない。

 

放つ。

 

サタンとやらに直撃するが、クラウディアは悟る。効いていない。人間大のサイズだが、やはりとんでもなく強い相手だ。

 

わっと、大量の幽霊鎧、ゴーレム。そして巨人ゴーレムが、一斉に襲いかかってくる。ライザがすっと、あらあらしく印を切る。

 

同時に二万を超える熱槍が出現していた。

 

「ちょっとむかついたから、手荒く行くわ」

 

ライザが吠える。

 

同時に熱槍が。殺到する無数の人影を。

 

此処で愚かな戦いに巻き込まれて、それでやっと眠る事が出来た兵器達を。

 

文字通り蒸発させ。

 

焼き砕き。

 

吹き飛ばす。

 

巨人は全身に熱槍の乱打を喰らったが、それでもまだ歩いて来る。サタンを名乗った悪魔みたいな魔物は、じっと戦況を見ている。

 

クラウディアは音魔術の応用で、反射板を作り、跳躍。こっちをサタンが見る。その顔面に、さっきより大きな矢を叩き込んでやる。

 

魔術によるシールドか。

 

魔物が、五月蠅そうに此方を見るが。

 

ライザ以外はどうでもいいと考えているのが明白だ。話しかけてすら来ない。

 

「ライザ、あの魔物は私がやっつけるわ」

 

「分かった。 前衛、敵を防いで! 遠距離組は火力投射を続行! カラさん、クラウディアに協力してあげて!」

 

「心得た。 傲慢さは相変わらずなようだな。 粉々に打ち砕いてくれるぞ!」

 

さっと全員が散開する。

 

五百年前。

 

此処で何万人もアーミーの人達が、たくさんのドラゴンも、身勝手で冷酷なエゴのせいで命を落とした。

 

それを繰り返させる事はしない。

 

その走狗にされた幽霊鎧やゴーレムは、眠らせてあげなければならない。

 

何よりライザを侮辱したこと、万死に値する。

 

ライザの大事なものを踏みにじろうとしたこと、絶対に許さない。

 

クラウディアの全身が、怒りに燃え上がる。

 

魔力が、今までにない出力で、噴き上がるのが分かった。

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