狭間の時   作:龍牙

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序章 03

(ここは……)

 

暗い部屋の中、テーブルと椅子がいくつも置かれた……広さから言って電車の車両の中を思わせる部屋。窓の外には見慣れた緑の空と砂漠が広がっていた。

 

寮の部屋に案内され眠ったところまでは覚えているのだが……

 

「成る程、大体分かった」

 

シャッター音が聞こえてそちらを振り返ると暗闇の中に二眼のトイカメラを持った男性がいた。

 

「どうやら、俺の役割はここの管理人としてお前を導く事らしい」

 

内心、男の言葉に『いや、こっちは何もわからないんだけど』と思いながら話を聞いていると、男はテーブルの上に二十一枚のカードを並べる。

 

「壊れた時の列車(デンライナー)、これは、この世界の未来を物語っている」

 

そこで一区切り置くと、

 

「後一年以内に、この世界の時は崩壊する」

 

「はぁ?」

 

男の言葉に惚けた声を上げる。当然そんなことを言われてしまってもそう反応するしか無いのだが。

 

「そして、その運命は確定している。……本来、それをどうにか出来る『ワイルド』を宿した奴にはこの世界を救えない」

 

四季が突然の言葉に飲み込めないまま、男は言葉を続けていく。

 

「先ずはこれを覚えておけ。時の崩壊がお前達の世界に起こる滅びとやらだ。そして、それは後一年以外に起こる」

 

「そして、それを止める事が出来る力を持った奴はいる。だが、そいつには世界を救うことはできない」

 

そう言って男はテーブルの上に広げたカードを裏返していく。置かれたカードは0の愚者から20の審判までのカードのみ、一枚『ⅩⅩⅠ 世界』のカードが存在しない。

 

「ユニバースの力は人との繋がりによって誕生する。だが、そいつは今人との繋がりを完全に拒絶している」

 

そう言うと男は広げたタロットカードを四季の元に投げ渡す。すると、受け取ったカードから絵柄が消えていく。

 

「それはどうやら人の愚かさ、と言う奴らしいな」

 

他者に傷つけられ、他者を拒絶し、他人とのコミュを拒絶する『誰か』は全ての繋がりを拒絶した。

故にこの先に力の成長もなければ、その歩みの先に生まれるユニバースも誕生しない。

そう告げられる中で審判のカードに何かの影が浮かぶ。

 

「どうやら、ワイルドと言う力を与えた奴はそれが人の選択ならば、と諦めたらしい」

 

そう、その結果がこの世界の未来の停止。時の列車と言ったこの場所が廃墟のようなのはそれが原因なのだ、と告げる。

 

「だが、諦めてない奴もいた。それは仮に『母なる海』とでも呼んでおくか」

 

『母なる海』、この星で生まれて死んだ全ての生命の蓄積が意思を持った存在であり、ありとあらゆる生命の源……いわばこの星の魂そのものらしい。

 

「つまり、人の意思は滅びを受け入れたとしても、星の魂は滅びを受け入れていない。と言うこと、ですか?」

 

「お前も大体わかったか」

 

ゆっくりと男は四季の持つタロットカードと自身を指差す。

 

「『母なる海』はその為に新たにお前にワイルドと言う力を与えた。」

 

そこで、『だが』と言葉を続ける。

 

「お前のワイルドは星の魂が並行世界の星の記憶から作り出したのが英雄達を増した力だ。そして、それはお前の成長と共に目覚め成長して行く」

 

その言葉と共に二十一枚のカードは一枚の透明なカードへと代わり、四季の手に収まる。

 

「そのカードはクリスタルカード、お前の力であると同時に、ここに来るための鍵でもある」

「そして、これが一番重要なことだ。お前の力はユニバースには至れない。いや、言ってみればそのカード一枚一枚がユニバースであるとも言える」

 

クリスタルカードに白紙のカードが写っていく。

 

「なら、星の魂は何がしたいんだよ? 何の為に俺に力を与えたんだ?」

 

「星の魂がお前に望んでいるのは世界を救うことじゃ無い。人を救うことだ」

 

その言葉の意味を理解する。

 

「オレが救えるのは世界じゃ無い……」

 

「そうだ、お前は人を救え。この世界を救う資格を持ち、人に裏切られる、人に傷つけられ、人を拒絶している、誰かを救え」

 

世界を救う為にたった一人を救え、何ともロマンチックな事だと思う。

たった一人の希望になる事、それが四季に星の魂が望んだ事だ。

 

「そろそろ時間だ。じゃあな、また会う事もあるだろう」

 

男の言葉を機に四季の意識は遠ざかって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い石造りの監獄の中、彼女は虚ろな目で檻の外を眺めていた。

目の前に広がるのは裁判所。議長席に座る鼻の長い男が何かを言い、青い服の男女が記録を取っている。

 

(まただ)

 

変わる変わる証言席に立つ誰か。

 

誰とも分からない顔が黒塗りにされた男が彼女を罵倒する。

 

誰とも分からない顔が黒塗りにされた子供達が彼女を嘲笑う。

 

血に汚れた男が彼女に呪いの言葉を吐く。

 

母が、祖母が、祖父が自分を否定する。

 

 

 

……深雪が冷たく自分を侮蔑する。

 

 

(みんな嫌い……)

 

 

 

虚な目で外の声を聞き流しながら彼女……朝田詩乃は無気力に全てを拒絶する。

目の前の証言台には彼女に関わった誰かが立ち、彼女への呪いの言葉を告げる場所。

 

(……彼は現れなかったな……)

 

ふと、四季の事を思う。証言台には四季は立たなかった。その程度の浅い関係だからだろうと思う。

 

(……もう嫌……)

 

心を閉ざし、全てを拒絶すれば、後はこの時間が終わるのを待つだけだ。朝になれば終わる。そして、この時までの1日が始まる。

 

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