「――っていうことになったが、お前さんはそれでいいかい?」
「は、はい! 構いません!」
イオロスとの調整を終え、改めて俺に問い掛けてきたヴィンフリートに対し、俺は
ここからは彼が交渉の相手だ。一旦、イオロスの前を辞去して、彼と話の続きをすることになるのだろう。……と、俺は思った。
「よし。じゃあ話を聞こうか」
「はい!」
ヴィンフリートはそう言って、俺をじっと見つめた。
「………………」
沈黙が流れた。
てっきり、どこかに移動するものと思ったのだが、誰ひとりとして動く気配がない。このとき、リタは俺の隣で、こてんと首をかしげていた。
ややあって、ヴィンフリートが口を開く。
「……何もったいつけてんだよ。早く話せよ」
「えぇっ! ここでですか!?」
慌てて問い返したところ、ヴィンフリートの俺を見る目が、やや残念な感じに変わった……ような気がした。
「当たり前だろ。いちいち移動する意味がどこにある?」
「い、いや……さっき報告って言ってたから、どこか
そう。先ほどのイオロスの話では、ヴィンフリートが俺から情報を引き出して、それを彼に報告する、という段取りになっていた。
その疑問に対する、ヴィンフリートの答えはこうだ。
「ただの二度手間じゃねぇか」
「そりゃそうですけど」
隣のリタも、うんうんと
……あれ? これ、俺だけ流れ読めてなかったってこと?
――ま、まあ、合理的と言えば、そうなのかな……。
どこか
「……それでは、お話しします。俺たち
†
生まれ変わる前、前世の地球でこんなアニメを
勇者の家庭教師を名乗る男が、
今回、大型の飛行船で
結界の効果は、妖精の大幅な弱体化。陣地に囚われた仲間たちは、空を飛ぶことはおろか、ふつうに立って歩くだけでもつらそうな様子だった。一方で、人間たちは結界内を平然と歩き回っていたことから、妖精のような生物に特効を持つものだと推測される。
地に打ち込んだ杭の本数によって、結界の大きさが変わるようだった。未確認だが、結界の強さも変わるのかもしれない。十本の杭が打たれたときには、集落内の広い範囲が結界に変わっていた。
†
「……あの結界が、竜族にどれほどの効果を及ぼすのかは明らかではありませんが、俺たちのように弱体化させられるとしたら、軽視して良いものではないでしょう」
「そんな魔道具を持ってやがるのか……」
俺があのとき見た魔道具とその効果について語り聞かせたところ、その場の三名の風竜族は何ら口を挟むことなく聞き入っていた。
ヴィンフリートも
「……なるほど、確かにそれは警戒して
幸いにして、ヴィンフリートはあの魔道具の脅威をしっかりと認識してくれたようだ。
ヴィンフリートが
そこで、俺は次のように言う。
「いずれにせよ、俺は仲間を助けるために人間たちの拠点に潜入するつもりでした。その過程で、やつらの持つ魔道具についてもより多くの情報が得られましょう」
「いいねぇ。そいつは気になる情報だ」
打てば響くような反応だ。
話が早いのは助かる。……仲間たちを助けるために、どれだけの時間的
「なかなか有益な話だったぜ。じゃあ、今度はこっちの出せる戦力の話だな」
ごくり、と俺は
ヴィンフリートの裁定によって、囚われた
(リタ以外に、一、二頭の竜がいるだけでも、話は全然変わる)
竜はこの世界で最強の一角だ。
リタのような若竜が一頭では何とも言えないが、それが成竜を含む二、三頭ともなれば人間らにとって大きな脅威になるだろう。
ヴィンフリートはぶつぶつと小声で何かを
「……そうだな。とりあえず、成竜が
ヴィンフリートの挙げた数字を聞いて、俺は自分の耳を疑った。
「――はい……?」
風竜は、俺が最初に思ったよりもずっと気前が良かった。
(これ、人間側は
†††
それからはトントン
ただし、後で風のうわさを聞いたところ、人間たちの間で俺に不本意な二つ名がつけられたみたいだ。
「
なんと懸賞金まで設けられたというから、恐ろしい話だ。……それも、悪賢そうな似顔絵のおまけ付き。
いつか人間の世界も旅してみたいと思っていたんだけど……。これじゃあ、顔を出して人前に出ることはもう難しいかもしれない。
ともあれ、今回の風妖精の危機は、風竜族の協力のおかげで解決した。
これからは風竜族を含め、他の空の種族たちとも手を取り合っていく必要がある。
人間が空の世界へ進出してきた以上、今後は彼らを始めとする地上の民たちと関わらざるを得ないだろう。
それが本格的になる前に、空の種族全体で意思統一できていることが望ましい。
そのために、これから風妖精と風竜族が合同で他種族らとの交渉に臨むことになった。――が、なぜかその使者を務めるのは俺、ということになっている。
この点に関しては、俺以外の全ての風妖精と風竜の間で完全に意見が一致している。
正直、逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。……どうしてこうなった。
――これは、俺が〈空の盟主〉と呼ばれるようになる日から、
(了)