空の上。島が浮かんで鳥かごのようにガラスで一つ一つがおおわれている。
中央には一つのテーブルがあり、そこにはお茶菓子と紅茶のにおいが漂っている。
円形のテラスのような場所の周りには花壇があり、それぞれの季節の花と木が植えてある。
かちゃり、と。
庭園にあるステージの方向から聞こえる歌声を聞きながら、お茶を飲んでいる三人の姿があった。
曲が響く。
二人しかいない雲の上の庭園で歌が流れる。
聴こえる声は五つ。僕とミクと女の子の声が三つ。
声が聞こえているだけで姿は見えない。だけど、
どこでどの動きをしているかわかる。どんなふうに歌っているか手に取るようにわかる。
それは僕だけじゃない、みんなだって同じらしい。
楽器を弾く時でも、踊るその時でも、思いを伝えるその表情さえも。
その一切を見ることも、触ることもできない。
それでも、僕は伝える。
歪でも互いの生きる意味となるように。
顔も名前もどこにいるかなんて知らずに僕は自分とみんなを繋ぐために歌う。
あたしはミクと、姿の見えない誰かと歌を歌う。
声しか聞こえなくてもあたしたちはお互いに何を伝えたいのかわかる。
誰かのために歌いたかったあたしを肯定してくれた。
一人だったあたしに手を伸ばしてくれた。
どんなに否定されたってもあたしは構わない。
みんなが肯定してくれるから。
あたしはみんなが伸ばしてくれた手を離さない。
だから次は、
あたしがみんなに手を伸ばす番
だからあたしはこの手でその想いを弾いて歌う。
空の上にある庭園。
見えない誰かとともに私は歌い、踊る。
聞いてくれる人たちのためにステージの上で歌った声で。
姿形が見えなくても関係ない。
みんなが伝えたいことがわかるから。
味方なんていなかった。
家に帰っても一人だった。
それでも、私の辛かったものから振り切ることが出来たのはみんなのおかげだから。
泥だらけになっても、どんなに傷が出来ても、汚れたなんて言われても。
外から声を投げつける知らない人たちじゃなく、綺麗と言ってくれたみんなために私は歌う。
日の差す庭園で私は歌う。
顔も知らなくて姿の見えない好きな人たちと。
色がなかった。
私には何もかもがあったけどそれだけはなかった。
世界のすべてが本当にモノクロってわけじゃなくてそう感じるだけ。
楽しくなかった、何もかもがつまらなかった。
簡単に何でもできてしまう、それだけで理解されなかった。
だけど、みんなはそれを”すごい”って言ってくれた。
肯定してくれた。
理解してくれた。
たったそれだけで私の世界は変わった。
いろんな感情があふれて止まらないのが初めてだった。
私に色を与えてくれたみんなに何ができるかわからないけど、今はただ。
みんなのためにこの感情を歌う。
ミクからここは僕らの思いでできた場所と言われた。
本当にそうだった。
僕は、
あたしは、
私は、
私は、
誰かを最後まで守りたかったから。
誰かに手を伸ばしたかったから。
誰かの特別になりたかったから。
誰かと理解り合いたかったから。
呪いでも共依存でも、
何を言われたってもいい。
今は。これからは。
ここにいるみんなとずっと一緒に歌を紡いでいたい。