不遇水魔法使いの禁忌術式 すごくえっち!   作:ニーガタの英霊

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この作品の世界観を教えてくれよ

─帝国暦400年 フラウム魔法帝国辺土 ドゥーナス諸島 セントール大砂漠『旧■■都■■■区■■周辺』─

 

「──ジさん ──ョージさんっ、ショージさんっ!!」

「んあ?」

 

 不意に呼びかけられた声に振り向く。

 そこには俺の袖を強く掴むサーシャの姿があった。

 

「あのぉ……大丈夫ですか、ショージさん。なんだか、鬼気迫るというか……」

「俺、そんな怖い顔してたのん?」

 

 サーシャは口にはしなかったか、首をまっすぐ振るい肯定する。

 

「そうかぁ……そっかぁ……」

 

 うん、まともじゃねぇな。どうにも冷静さを失っていたらしい。

 

「うっし、今日は休むか」

「えっいいんですか? まだ日が明けるまで時間はありますよ」

「いいよ、それよりちょっと冷静になりたい」

 

 俺はそういうと、スコップを使って砂を掘り出す。今まで何度も使ったこともあって慣れたものだ。

 日中はスコップで穴を掘って傾斜を作り、屋根に簾を敷いて日陰を作って暑さ対策をして、魔物が寝静まったタイミングを見計らって砂漠の奥へ進んでいった。

 

「なぁサーシャ。あの話をしていいか?」

「あのはなし?」

「ほら、天魔人とか大地人とか」

「ああ! 天地戦争ですね。ふふっ長くなりますよぉ」

 

 無邪気に笑うサーシャ。

 趣味に合う子は居なかったのだろうか、と考えるものの俺の時代で神話大好きみたいなやつは人格を疑われることを思いだす。ギリシャ神話とか昼ドラも真っ青やしなぁ。

 

 サーシャの話は一昼夜続いた。

 ところどころで俺が質問して、サーシャはそれに対して私見を含めた回答を行い、疑問を解消していく。

 

「ねぇ、ショージさん」

「なんだ、サーシャ」

 

 サーシャはどことなく言いづらそうに、けれど意を決して口を開く。

 

「帰れるといいですね……」

「……そうだなぁ」

 

 やりたいことがいっぱいあるんだ。

 漫画の続きとか、新作のゲームとか、進学とか就職とか。

 いっぱいあったんだ。

 

「なあ、サーシャ。明日俺がやることに何も言わずについてくることはできるか?」

 

 サーシャは首を斜めにして訝し気に俺を見つめる。

 

「えっと、内容にもよるんですけど」

「キューシュトゥの入り口を案内できるかもしれない」

「えっ……」

 

 その日中、俺たちはまっすぐ、北に向かって歩みを進める。

 

「しょ、ショージさん大丈夫なんですか!?」

「うん、たぶん大丈夫」

「た、たぶんって……日中は砂蚯蚓が」

「たぶん、それが間違えだったんだ」

 

 砂蚯蚓は獲物を捕らえるとき、地面の振動を感知して獲物を狙う。

 だからこそ、俺たちは砂蚯蚓対策として砂蚯蚓が活動する日中は移動を控えて休眠状態のときに移動を徹底することで魔物対策を進めていた。

 ここまで魔物と一体も出会っていなかった。だからこそ、俺は気づかなかった。

 

 砂の海が振動し、俺の目の前に大きな蚯蚓が顔を出す。

 

「すっ、砂蚯蚓っ!!」

 

 サーシャは杖を構え、俺の前に出ようとするのを制止する。

 

「お願いがあるんだ」

 

 俺は問う。目の前の砂蚯蚓に。

 

「コウキョまで案内してくれ」

 

 その言葉に、周囲の砂が隆起する。

 

「ショージさん、これは……」

「うん、多分なんだけどさ……」

 

 俺はため息をつきながらガシガシと頭を掻く。

 

「──俺、大地人みたいだわ」

 

 大地人は魔物を生み出し、それを使役した。

 妙だと思ったのは、今までの魔物すべてが可食可能であるということだ。魚でさえ、毒に当たって死んだという話は聞かないし、生物として毒をもつことはあっても調理過程で無毒化する生物が非常に多いということに違和感があった。

 

「魔物ってのは、大地人にとっちゃ家畜なんじゃねぇのか……っていうのが俺の推察なんだ。普通に考えて生物は大型化するとメリットよりも身体を維持するデメリットが多くなるんだ。だが、砂蚯蚓とか大蠍は碌に食料もない過酷な環境下で生きている。粗食に耐えられる構造をして、なおかつ戦闘能力を有する。拠点を守るための防衛装置でもあるんだろうな」

「それは……」

 

 その視点はなかったと、サーシャは顎に手を当てて考え込む。

 

「大地人の遺跡ってのは、地下にあるんだよな」

「ええ、ですからこの砂漠で探すのは非常に困難で……」

「地下に施設を掘り進めるのはいろいろな理由があるだろうけど、多分理由は防御、防衛のため。外敵の侵入を防ぐ……あるいは、避難場所であるシェルターの可能性が高い」

 

 やがて大蚯蚓の動きが止まり、大蚯蚓は地面に潜り、砂を噴き上げる。

 

「ショージさん、これって」

「ああ、地下への階段だな」

 

 コンクリートで覆われた、地下への通路。暗く、電気設備のない場所をランタン片手に突き進む。

 

「ショージさん、ここって」

「地下鉄だよ」

 

 駅の改札を抜け、ホームに向かうと、線路には一匹の砂蚯蚓が列車の代わりに待機していた。

 

「行くぞ、サーシャ」

「……」

 

 さすがのサーシャも驚きの連続で、閉口する。

 ぶよぶよとした砂蚯蚓の背にのりこむと、線路を進み、やがて大きなシャッターの前で止まる。

 

「ああ、やっぱり……そうか」

 

 大手町地下鉄を経由して、皇居の地下へ進み。

 大きなシャッターに描かれている文字は日本語。

 

「『東京シェルター』」

 

 旧首都(キューシュトゥ)、東京。

 大地人の神殿とは、かつての地球人の避難シェルターのことであった。

 

 違和感はずっとあった。

 ドゥーナス諸島があまりにも既視感のある姿をしていたから。

 オッシはかつての千葉県の銚子で距離的にも東京─銚子間の距離とほぼ一致する。

 

 それでも、俺は認めたくはなかった。

 かつての日本がこんな砂漠になっているなんて、信じられなかったからだ。

 

「なあ、サーシャ。天地戦争において、大地人は滅ぼされたんだよな」

「え、えぇ……」

「そうか、そうか……」

 

 いったい、何年が過ぎた。

 何が起きた。

 

 まだわからないことばかりで、信じがたいことの連続で頭がおかしくなりそうだ。

 

 それでも確定したことは一つある。

 

「俺の故郷は……もう、ないんだな」

 

 俺はもう、あの日々には帰れないということである。

 

 

 

─帝国暦400年 フラウム魔法帝国辺土 日本列島本土(ドゥーナス諸島) 『旧東京都千代田区皇居地下』 サーシャ・ルーニン─

 

「ショージさん……」

 

 何を彼に言えばいいのか。私にはわからなかった。

 慰めればいいのか、どうやって慰めればいいのか。

 

「さっ、行こうかサーシャ」

「え、えぇ……でもショージさん。大丈夫ですか」

「俺が大丈夫かって?」

 

 ショージさんは鼻で笑うように自嘲しながら口を開く。

 

「大丈夫ではない!」

「えっ……」

「急に異世界転移かと思ってたらよぉ、なんか人類文明滅んでるしよぉ……日本が砂漠化してるしよぉ……そもそも何年経ってるかわかんねぇしよぉ……なんかもう、精神的にいっぱいいっぱいで辛いしよぉ」

 

 ショージさんの気持ちは痛いほどわかると言えるほど、私は恥知らずではない。

 それでも自分が生きた時代から一人だけ取り残され、今までの人生からたった一人切り離された状況に置かれたとしたら。きっと、正気ではいられない。

 

「けど、それが俺が立ち止まる理由にはならねぇ」

 

 私は、驚いた。

 

「知りてぇんだ。俺は……この時代に送られた理由は何か。なんで俺が生き残ったのか、なんでみんないなくなっちまたのか。俺は知らなきゃならねぇ──絶望するのは、それからでも遅くはねぇ」

 

 ──生体反応確認、個人名日下部正治と判明。ドアハッチを開閉します。

 

 ショージさんはドアの前に立つと抑揚のない音声がショージさんを識別して、誰も入ったことがなかったであろう扉が開く。

 そこは白い回廊であった。真っ白な回廊を足元にある光が照らしだし、質素なつくりの扉が最奥に佇む。

 生命の息吹を感じさせないその場所をショージさんは黙々と進んでいく。

 

 扉を開いた先は広場であった。中央に噴水のようなものがあり、円状に広がるその空間は二階、三階と巨大な生活空間として広がっていた。

 

「……ショージさん」

「あぁ、なんか近づいてきてるな」

 

 足音と言うには機械的な音が私の耳を打つ。

 無意識に杖を構えるも、現れたそれは人の形をしながらも鉄でできたゴーレムのようであった。

 

『──初めまして、日下部正治。この数奇な出会いに感謝する』

 

 機械人形(ゴーレム)はそういってショージさんに声をかける。

 

『傍にいるのは敵性宇宙人のようだが、どうするのかね? 脅されているのであれば助けるのもやぶさかではないよ?』

「これでも命の恩人だよ。砂漠で死にかけてた俺を助けてくれた」

『コールドスリープ解凍による、心身の消耗だね……我々としてもこの日本本土の緑化にむけて努力をしたが、力及ばず、といったところだ』

「教えてほしいことがある」

『かまわないとも、我らが人類最後の男よ。私も、君と話したい。ファファファ』

 

 流暢にショージさんと話す機械人形。

 彼に連れられて私たちは施設の最奥へと向かう。

 

 そこは、何かを映し出す鏡面が何個も張り付けられた施設だった。

 その中央の椅子には白骨化し、白衣をまとう死体。

 

『私だよ、気にしないでくれ。残しているのはただの感傷でしかないからね』

 

 機械人形はそういって、自分から飛び出た線を小器用に鏡面につないでいく。

 

 そうすると、急に鏡面が輝きだし、一人の老人の姿が映し出される。

 

『ヴヘヘヘヘどうもはじめまして、戸田豪亜(とだごうあ)です』

「しらねぇな」

『それはそうだろう。キミが生きていた21世紀それから数千年後の人間だからね』

 

 口ひげを蓄え、頭頂部は髪が薄くなった小柄な老人。喜々としながらもその瞳には理知の輝きがある。

 

『それでは、昔話をしようか』

 

 

 

─帝国暦400年 フラウム魔法帝国辺土 東京地下シェルター ─

 

『2000年代、最初にそれに気づいたのはロシアの宇宙開発機関ロスコスモスだった』

 

 曰く、ほぼ高い確率で宇宙空間を飛来する隕石が地球に衝突するということだった。

 

『この隕石は地球の重力に引っ張られる形で円周回を行い、おおよそ20年ほどで地球に衝突することが判明した』

 

 このことにより、地球の各政府は対応を取られることになる。どうにかして人類を救わなければならない。

 

『地球人類は二つの方法を使い、この危機を回避することとした。一つは箱舟(アーク)計画。全人類の総力を以て巨大な宇宙開拓船を作り、地球外に生命活動可能な惑星を見つけ出す計画。もう一つは冥土(プルート)計画。箱舟計画に弾かれた地上に取り残される人類を生かすために、地下に巨大な防空壕(シェルター)を作り、地球再生の時までひっそりと生存し続ける計画だ』

 

 戸田博士はかつてこの世界──地球という場所で行われた壮大な計画を語り始めた。

 

『日下部正治、君はこの冥土計画の補完計画であるコールドスリープによる、唯一の成功者だ』




戸田豪亜
 戸田博士、トダーとゴア博士を合わせた忌み子。
 正治がコールドスリープされた数千年後の日本人であり、東京シェルターの指導者層にいた科学者。
 工学と生物学の権威であり、現行人類にとって必要不可欠な栄養を備えている砂蚯蚓や砂漠蜥蜴、大蠍を生み出した。
 天地戦争において、天魔人の禁忌術式を受けシェルター内部機能が破壊されたため住人と部下、研究員を安楽死させたあと、自身を電脳化。コールドスリープ計画で残された日下部正治に向けてすべての情報を託した。
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