不遇水魔法使いの禁忌術式 すごくえっち!   作:ニーガタの英霊

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科学……すげえ。感動するぐらい誰かの希望になってるし

─帝国暦400年 フラウム魔法帝国辺土 東京地下シェルター ─

 

「コールドスリープ……」

『そうとも、一種の不老技術。もっとも、成功するか否かはぶっつけ本番であり信用された技術とは言い難い代物ではあったがね』

 

 戸田博士は俺に向かってそう告げた。

 

「いくつか質問があるがいいか?」

『いいとも、何を聞きたいんだね?』

「なんで俺だったんだ?」

 

 コールドスリープされる前の俺はどこにでもいる高校生でしかなかったはずだ。そんな俺がそんな計画に参加する理由が疑問である。

 

『理由は明白だよ、君がこの計画において最適格だったからだ』

 

 戸田博士はそういうと、画面に青白い、何かしらのデータを復元する。

 

『まず第一に生殖能力。シェルターに隔離され、その数を多く減らした人類を発展させるためにはやはり生殖能力が重視される。君の生殖能力と精子基準値は常人をはるかに超える濃度を検出した。第二に体形だ。肥満体系であることは肉体に備わるエネルギーを多く蓄えているということだ。コールドスリープという環境下でどのような肉体の負荷がかかるかわからない状況を鑑みるに、ある程度脂肪をつけている状況が好ましいということだね』

「えっと、それってつまり」

『そうだ、日下部正治がすごくえっちだから生存できたと言えるんだ』

 

 サーシャの疑問に真面目な顔して何言ってんだこの爺。

 最低のタイトル回収だよ。

 

「俺が淫売の息子みたいじゃねぇか」

『君は淫売の男!』

「ぬかせ爺」

 

 ノリだけはいいなぁ、おい。

 

『なんにせよ、シェルター内という空間におけるインブリードの回避。より未来に向けての強い生殖能力を持つ人類の保護と保全。日本という国はサブプロジェクトとしてそれに賭けたというわけだね。我々がこうして滅びている以上、正しかったのは明白と言えるだろうね』

「だったら、なんで俺だけ──」

『君だけではなかったはずだよ』

 

 俺の反論に戸田博士は否の言葉を突きつける。

 

『北緯36度7分、東経140度5分。かつての茨城県つくば市、筑波研究学園都市内部の防災科学技術研究所。最先端の科学技術と防災技術を持つそこの地下深くに日下部正治、鯱山サナヱ、鬼川義生、宮下和香、九条紫苑、金田慎吾。六名が冷凍保存されていたはずだよ』

「……」

『残り五人、どうしたのかな?』

 

 戸田博士のホログラムがサーシャを冷たく見つめる。

 

「私が辿り着いたとき、遺跡の最奥にはすでに開けられて中身のなかったのが二つ。半開きになっていてミイラ化していた死体が二つ。一か八かで動かして、生き残ったのがショージさんです」

『もう一人は?』

「すでにこと切れていました。おそらくですが……まともに起動したのは二つだけということですね」

『なるほどね。外的環境を知らせるセンサーの不具合を起こしていたのを叩き起こしたということだね』

 

 戸田博士は、やりきれないようなため息をついてサーシャに問を投げかける。

 

『死体はどうした?』

「使いました。ショージさんを助けるために」

「えっ?」

 

 俺なにかされちゃいました?

 

『なるほど、君ららしい……天魔人。否、デウカリオンの末裔……』

「新出単語をふやすんじゃない!! 俺が話についていけないだろうっ!!」

「えぇ……」

 

 サーシャは困惑して、訝しむ。

 なんじゃぁその目は、俺が話についていけない馬鹿みたいじゃないですか。

 

『デウカリオンを知らないのかい?』

「しらにゃい」

『……なるほど、コールドスリープ計画は箱舟計画より前なのか。ならばその反応は致し方ないだろう』

 

 戸田博士は、納得したかのように目を見開く。

 

『箱舟計画の一番艦ノア、そして二番艦デウカリオン。かつて人類が外宇宙の果てに生存圏を目指し旅立った人類の片割れ……そして今の人類の祖だよ』

 

 戸田博士はそこまで言って、自嘲するように笑った。

 

『滑稽じゃないか。地球を捨てた者たちが地球に戻ってきて、地球に残っていた我々を皆殺しにしたんだ……随分とまぁ、やるせない話だとは思わないかね、日下部正治』

 

 それを喜劇と笑うにはあまりにも血なまぐさく、悲劇と言うにはあまりにも重すぎた。

 

「……爺、アンタは」

 

 恨んでいるのか、そう言おうとしたとき。博士は首を横に振るった。

 

『口惜しいとは思う、恨みは持っていなかった。あの時の私にあったのは強い敗北感と後悔だよ。日下部正治、私はね折れてしまったんだよ。私は諦めてしまった人間なんだ』

 

 人を救いたかったと戸田博士は零した。

 このくらい地中の中で、いつか人類が日の当たる太陽のもとに出られるようにと願い、耐え、学び。緑豊かなかつての地球を取り戻そうとした。

 

『百年、私は早く生まれてくるべきだった。そうしたら、もしかしたら私たち在地人類はもっといい未来があったのかもしれない』

 

 でもそれは、もしもの話だった。

 

『結果は変えられない。取りこぼした過去には戻れない。だから日下部正治。命というのは掛け替えのなく、美しく、大切なものなんだよ』

 

 彼は、科学者だった。

 人類の発展のために、未知を探求し、より良い世界を模索する。

 たった一つの頭脳を武器に、世界を拓くどこまでもまっすぐな科学者だったのだ。

 

『日下部正治。私はね、君に生きていてほしいんだ。生きて、足掻いて、笑って、強くなって……幸せになってほしいんだ』

 

 だから、戸田博士は残したのだ。

 小さな可能性に賭けて、自分が死んでたった一人で孤独の中にいて。

 この苦行のような滅びたシェルターの中で待ち続けた。

 

『──ありがとう、生きていてくれて。たったそれだけで科学者(私たち)は十分報われた』

 

 ただ、その一言だけを言うためだけに。

 

 たった一人の大地人の祖であり。孤独なひとりぼっちの魔王。

 この地球に残った全人類によって生かされた人類の希望、それが日下部正治という人間だった。

 それが、すべての真実であった。

 

 そして、博士が言葉を言い切ったタイミングで施設が大きく揺れる。

 

「どわーーーっ!!?」

「きゃっ、い…いったいなにが」

『……そうか』

 

 地下シェルターは大地の奥深くに存在する。

 巨大な隕石から逃れ、生き残るために科学技術の粋をもって作られた地下施設であるシェルターは並みの攻撃では傷つくことはない。

 

『禁忌術式か』

 

 ただ、一つ、禁忌術式を除いて。

 

「──原子核融合・超光新星(アトミック・ノヴァ)

 

 サーシャはそれを知っている。

 火属性の禁忌術式であり、こと破壊力と貫通力を持ち合わせた膨大な熱と爆発を巻き起こす神の炎。

 

 百の国を焦土に変え、放射能という目に見えない毒をまき散らし、帝国の敵を民衆ごと焼き払った帝国の聖域。

 

 砂嵐となったモニターが復旧し、広間を噴水のあった広間を映し出すカメラが、そこにないはずの晴天を映し出す。

 

「──嘘」

 

 黒一色で染めた壮麗な服とマント、整髪剤でオールバックでまとめた黒髪。頬髯はまるで獅子のように勇ましく、口ひげは上を向くカイゼル髭。

 その瞳は爛々と輝く黄金に彩われていた。

 

「──竜魔公ドラクリア」

 

 竜魔公ドラクリア・ロックアップはノイズを走らせるカメラを握り、口を開く。

 

「迎えに来たぞ、我が娘サーシャ。我が望みを叶え、世界を救うのだ」

 

 なんなんだよこの展開はよォーーー!!




火属性禁忌術式『原子核融合・超光新星(アトミック・ノヴァ)
 原子力核融合による超小型の超新星を巻き起こす禁忌術式。
 この術式で鬼龍こと竜魔公ドラクリアは魔法帝国の敵を滅ぼし、帝国を中国大陸、モンゴル高原、朝鮮半島、東南アジアにかけての大帝国にするに至った魔術である。
 こいつを敵国に照射するだけで土地は死に、放射能汚染を引き起こし、他国との緩衝地帯を無理やり作り出す戦略魔法であるが、割とポンポン打つ。
 本来の威力は帝国全土を焦土に出来るが、そうすると地球の地軸がおかしくなって世界が滅亡するためツァーリボンバ程度の威力になっている。
 キチゲェに刃物である。
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