聖剣学院のシャドームーン 創世王を継ぐ者   作:究極の闇に焼かれた男

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第二話:遭遇/少女の目覚め

 

 

 

 

「……あ、行き止まりですか?」

 

 

通路の奥へと進んでいたシンとリーセリア達は、巨大な壁の前へと辿り着いた。 巨大な壁を見てレギーナは顔を顰めながらそう呟くと、リーセリアは眼前に立ちはだかる巨大な壁を見上げ、即座に違う事に気付いた。

 

 

「扉、のようね──」

 

「とりあえず、壊して見ますか?」

 

「待て、何か書いてあるぞ」

 

 

物騒な台詞を呟くレギーナを静止し、シンが声を掛けながら杖の光明を扉に翳した。

 

扉の表面には所々が読めなくなっている文字が刻まれているが、古代の遺跡に精通しているリーセリアも見たことの無い文字だった。

 

 

「セリア、読めるか?」

 

「ええっと、古エルフの言語……それとも、精霊の……」

 

 

小型の解読端末を取り出したリーセリアは、表示された画面を素早くタップし始める。

 

 

「どうしたんですか?」

 

「──この扉、まだ生きてるわ」

 

「生きてる?」

 

「扉のシステムが稼働しているって事か? つまり、この扉は古代の魔術装置の様だが……解析するのに時間が掛かる感じか?」

 

「うん、少し」

 

 

シンの言葉にリーセリアがそう答えたことにレギーナは肩を竦め、軽く息を吐いた。

 

 

「では、辺りを警戒して来ますね」

 

「ええ、お願い」

 

「シンはセリアお嬢様の側に居てね」

 

「任された」

 

 

そう言い残すとレギーナは手をひらひらと振りながら、通路を戻って行く。 その場に残されたリーセリアは扉の解析を、シンは腰に差したサーベルに手を添えながら周囲の警戒を行い始める。

 

 

(ここまで来る途中、〈ヴォイド〉と遭遇しなかった。 普通の遺跡なら既に遭遇しても可笑しくはない。 そう考えると、扉の奥に何か居るのは間違いなさそうだな……)

 

 

ここまでの道中を思い返すシンは内心そう考えながら周囲を見渡している中、リーセリアは端末を操作しながら扉に刻まれていた未知の古代文字の解析をしていた。

 

データベースの中に、類似した文字の構造がある筈だ。

 

扉の奥には何があるのだろう。 不思議と惹かれるものがあったリーセリアは扉に刻まれた文字に触れた。 その瞬間──

 

バチッと、魔力の閃光が弾けた。

 

 

「え──?」

 

「ん? どうしたセリア──って、扉が開いた!?」

 

 

リーセリアの声に反応したシンが振り返ると重い石の扉が、音を立てながらゆっくりと開き出していた。

 

シンとリーセリアは目を見開きつつも、中の暗闇を所持していたライトで照らした。

 

 

「あれは、何……?」

 

「巨大な結晶体と、剣の様に見えるが……あんな物は見たことが無い」

 

ライトで暗闇の中を照らすと、中には岩壁の中に不気味な輝きを放つ、巨大なクリスタルが埋め込まれており、その近くにはサーベル状の持ち手をした、赤く輝く刀身を持つ一本の両刃の剣が台座の上に墓標の如く突き刺さっていた。

 

すると、2人の持つ端末がけたたましい警報音を鳴らした。

 

 

「魔力反応……?」

 

「その様だが、こんな数値を叩き出すなんて初めてだ!?」

 

 

2人は魔力を感知する端末に視線を向けると、端末にはエラーと吐き出していた。

 

〈限界数値(カウンターストップ)〉──理論上は有り得ない数値を叩き出している端末に2人は驚いていると、やがて端末はフリーズした。

 

 

「フリーズした!?」

 

「どうやら、俺達はとんでもない何かを見つけたらしい……セリアは結晶体の方を頼む。 俺は、あの剣について調べる」

 

「わかったわ」

 

 

そう言うとリーセリアは石壁の中に埋め込まれたクリスタルへと近付き、シンは台座に突き刺さっている剣に近付くと、ゆっくりとサーベル状の柄に触れた。 ──次の瞬間だった。

 

 

「っ!?」

 

 

シンの指先が柄に触れると、突如として剣が光を帯び始め、そのままシンの身体の中に入り込む様にして消滅した。

 

 

(き、消えた!?)

 

 

剣が消滅した事にシンは慌てて周囲を見渡すも、幾ら見回しても台座に突き刺さっていた剣は影も形も見つからず、その事にシンは困惑する。

 

 

(今のは何だったんだ? あの光、セリアが気付いた様子も無かった。 俺にしか見えなかったのか……だとしても、あの剣が忽然と消えたのは何故だ?)

 

 

予想外の事態にシンは思わず思考の海に耽けそうになるも、それより早くリーセリアが名前を呼ぶ声が聞こえてくる。

 

 

「シン、こっちに来て!」

 

「どうした、セリア?」

 

「この中に人が!?」

 

「なんだって!?」

 

 

その言葉にシンは急いでリーセリアの元に駆け寄り、石壁の中に埋め込まれたクリスタルに視線を向ける。

 

シンがクリスタルに視線を向けると中に、薄らとしているが人の姿のようなものが見えた。

 

 

「っ!? 嘘だろ、本当に誰かいるぞ!?」

 

「何とかして助けないと!」

 

「とりあえず、壊せないか試してみるぞ!」

 

 

シンの言葉にリーセリアは、ホルダーから拳銃を抜き放ち、シンは制服の内ポケットから散弾銃を抜くと、2人はクリスタルを壊すべくトリガーを引くのだった。

 

 

 

──────────

 

 

 

(……何だろう、凄く煩い音が聞こえて来る?)

 

 

〈棺〉の外から聞こえて来る謎の騒音を耳にして、ふと目を覚ました少女は自分が〈死都(ネクロゾア)〉の地下霊廟で眠りについていた事を思い出す。

 

 

(もう、千年も経ったのかな……?)

 

 

闇に閉ざされた視界の中で、少女は思考を巡らせる。

 

棺の中で眠っている間、少女に意識は一切なかった。

 

"不死者の軍勢が人類の英雄"によって打ち破られ、"魔王軍最後の拠点"である〈死都〉が陥落したあの日から、少女の時間は止まっていたのだ。

 

 

(転生の儀式は、成功してる。 これなら、"彼女"と交わした最後の約束を果たせる。 それに"彼の剣"を受け継ぐ者を探しにも行けるかな………あれ? そう言えば、彼の"聖剣"の気配が無いような?)

 

 

不意に思い出した少女は、眠りにつく前に共に長き眠りにつかせた友である1人の王から託された"聖剣"の気配を感じ取れない事に疑問符を浮かべていると、近くから懐かしい気配を感じ取った。

 

 

(ああ、そんな所にいたんだ。 それにしても、彼の剣が独りでに動いてる様な……もしかして、"彼"の後継者が現れた?)

 

 

そう思った瞬間、少女の意識は急激に覚醒していく。

 

 

(もし本当にそうだったら早く"彼"の後継者に会わないと……それにしても、さっきから聞こえるこの音は何だろう?)

 

 

少女は外から自身が眠りについていた棺を叩く音に顔を顰めながら、外の音に聴覚を集中させる。

 

 

(人類語、みたいだね。 ふむ……流石に千年も経てば、言語体系も多少は変化するか)

 

 

少女は指先を闇の中に伸ばし、〈言語理解〉の呪文を唱えると、一瞬目の前が光る。 少女は転生後の肉体でも魔術が問題なく扱える事に安堵した。

 

 

「銃弾を弾くなんて、ただの石じゃないわね」

 

「だったら対物徹甲弾でやるぞ!」

 

(言葉の意味は分からないけど、思った通り、棺を破壊しようとしてる。 墓所荒らしの類い…にしては、"彼"と似た気配を感じる。 ────一先ず、棺の外に出ないと)

 

 

そう結論付けた少女はすっと手を伸ばすと、直後に派手な音を立てながら少女が眠りについていた棺──ダーク・クリスタルは激しく砕け散り、衝撃が放射状に放たれ、目の前の人影の一つが吹っ飛ばされそうになる。

 

 

「っ!? セリア!!」

 

 

吹っ飛ばされそうになる人影に向けて、もう一つの人影は声を上げながら即座に動くと、吹っ飛ばされそうになっていた人影を抱きしめながら地面に倒れ込む。

 

千年の時を経て蘇った少女…否、〈魔王〉は、辺りを睥睨し始める。

 

 

(地下霊廟の空気は何一つ変わってないね……一先ず、わたしの眠りを妨げていたのが誰か確かめないと)

 

 

そう思いながら魔王は、視線の先で蹲る二つの人影に視線を向けるのだった。

 

 

 

──────────

 

 

 

「ぐっ……(何だ!? 一体何が起きたんだ!?)」

 

 

シンは少し前までリーセリアと共に石壁の中に埋め込まれたクリスタルを破壊するべく銃撃を行っていた最中、突如としてクリスタルが内側から砕け散るようにして爆発を起こしたのを思い出す。

 

 

「(全くの予想外だった。 まさか、あの奇妙な結晶体が爆発を起こすなんて)……セリア、大丈夫か!?」

 

 

クリスタルが爆発を起こした事に混乱するも何とか冷静さを取り戻したシンは、爆発する寸前に庇ったリーセリアに視線を向ける。

 

 

「……っ……う、くっ……!」

 

「良かった、特に目立った怪我はしてないな……それより、今直ぐにでもレギーナと合流して脱出しないと──っ、そこに居るのは誰だ!!」

 

 

リーセリアを抱えようとした瞬間、背後から感じ取った気配にシンは腰に差していたサーベルを抜きながら振り返った。

 

 

「…っ……君は……!?」

 

 

サーベルの切っ先を向けながら振り返ると、そこには1人の小さな少女が立っていた。

 

右眼が紅で左眼が紫のオッドアイ、濡れ羽色の髪をした10代前後と思しき少女が目を見開きながらシンを見つめていた。

 

 

「……〈創世王〉」

 

「創世、王………ッ!?」

 

 

少女が小さな声で発した名前をシンは無意識に復唱した次の瞬間、突如として激しい頭痛に襲われる。

 

 

「ぐうっ……(クソッ、今度は何なんだよ!?)」

 

 

激しい頭痛に襲われたシンは歯を食いしばりながら、意識が飛ばないよう必死に耐え続けていると、脳内に奇妙な光景がフラッシュバックし始める。

 

 

 

──────────

 

 

 

荒れ果てた大地を埋め尽くす軍勢と、それを率いる英雄達を前にサーベル状の柄と赤く輝く刀身を持つ一振の聖剣を手にした1人の王が立っていた。

 

 

『ほぉ、また性懲りも無く攻めてきたか……神々の傀儡と成り果てた愚者達が幾ら束になろうと、〈創世王〉である我に勝つ事は不可能だと知れ!』

 

 

そう言うと、〈創世王〉は手にした聖剣を横一閃に振り抜くと、赤く輝く刀身から巨大な斬撃波が飛ばされ、迫っていた軍勢を一太刀の元に消滅させた。

 

 

『この程度の実力で支配者を名乗るとは、神々とは何と他愛もない存在か。 真に支配者を名乗るならば、この〈創世王〉を打ち倒してみせるがいい!』

 

 

〈創世王〉は手にした聖剣を天に掲げながら声を上げて叫ぶと、その声に共鳴するかの如く天地が震えるのだった。

 

 

 

──────────

 

 

 

「っ……俺は、一体……?」

 

 

意識を取り戻したシンは額から冷や汗が流れるのを感じながら呼吸を落ち着かせると、視線を上げると少女がシンを見つめたままの状態で立っていた。

 

 

(夢、だったのか……?)

 

 

先程まで目にしたものが現実だったのか、或いは夢だったのか分からずに困惑するシンだったが、気を取り直すと一先ず自分に視線を向けてくる少女の対応に当たる事にした。

 




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