今、死のう。ミサキ   作:てね

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ゲーム開発部の才羽ミドリが主人公です


さよなら先生
告白


 

 

 

(ミドリ視点)

 

 

先生に告白した5分後にもう私は後悔していた。私達は両思いじゃなかった。私が一方的に先生に好意を持ってただけ。

 

 

「大人と子供は付き合えないよ、ミドリ」

 

「…………」

 

 

衝撃と後悔で動けない。今までの私のアピールも大人っぽい振る舞いも全て自惚(うぬぼ)れ。先生と生徒は付き合えないと、ハッキリ振られた。

 

 

「傷つけてごめんね、ミドリ。これからも今まで通りの関係性でいよう」

 

「…………」

 

 

先生の前では絶対に泣かない。告白して振られた挙句、号泣する所なんて見せたくない。唇を噛み締め、黙って(うつむ)く。目がじわじわと曇っていく。我慢しないといけないのに。

 

 

「……1人に……してください」

 

「…………」

 

 

喉の奥から声を振り絞る。先生の足が遠ざかっていく。私はその場にへたり込んだ。

 

 

「ひぐっ……うえっ……」

 

 

子供のように泣きじゃくる。嗚咽が漏れる口を噛み締めようとするけど、唇が震えて情けない声が出るばかり。全身の力が抜けて動けない。

 

あぁ……告白しなきゃ良かった。

 

 

 

 

私は恋愛において強者だと思っていた。男の人を手玉に取るように、相手をドキドキさせる言葉を言える。お姉ちゃんと違って大人らしく振る舞える。そう思っていたのに。

 

 

『……きっと、これからゲームセンターに来るたび、それに、このぬいぐるみを見るたびに。先生のことを思い浮かべると思います』

 

 

あの発言も、

 

 

『たまにはお姉ちゃんと一緒にではなく私だけで先生を独占したいですね……あの……手! 手を繋いでもいいですか!』

 

 

あの発言も、全部私の勘違い。先生はドキドキなんてしてない。子供らしい行動だと思って笑っていただけ。恥ずかしい。全部取り消したい。

 

私が告白してきた時も、先生は最初から断るつもりだったんだろうな。頑張って言ったのに。勇気を出したのに。それなのに先生は私の気持ちに振り向いてくれなかった。

 

そもそも先生のことなんて好きじゃないし。告白されたら付き合ってあげてもいいかなって思ってただけだし。向こうから付き合おうって言わないからアピールしてあげただけだし。別に好きとか思ってない。

 

はぁ、なんで告白しちゃったんだろう。取り消したい。過去に戻りたい。

 

 

「……ただいま」

 

 

自分に言い訳しながら、ゲーム開発部の部室を開ける。もう夜10時だ。お姉ちゃん達は寝てるのかな。

 

 

「おかえりー。遅かったね」

 

「ミドリ! そなたを待っておったぞ……」

 

「これは……、恋愛シミュレーションゲーム?」

 

 

お姉ちゃん達はまだゲームをしている。丁度テレビ画面で可愛い女の子が頬を赤らめている。

 

 

「おぉ……! これってもう告白したら行けるんじゃない? 好感度もMAXまで行ってるはずだよ!」

 

「モモイ、今こそ最大のチャンスです! 想いを打ち明けましょう!」

 

「…………」

 

 

ゲームを見たくない。もう寮に戻ろうかな。

……いや、1人になりたくない。ここにいよう。

 

お姉ちゃん達の後ろ、寝ているユズの隣に座る。ユズが体をモゾモゾと動かす。

 

 

「ごめん、起こしちゃった?」

 

「ううん、大丈夫。……? 目、赤いけど、どうしたの?」

 

「これは……ちょっと色々あって……」

 

「そ、そうなんだ。えっと……、何か手伝えることとかある?」

 

「そっとしておいて」

 

「わ、わかった」

 

 

前の画面では、お姉ちゃん達が遊んでる。上手くハッピーエンドに分岐したみたいだ。現実は、ゲームのように上手く行かない。

 

 

『大人と子供は付き合えないよ、ミドリ』

 

 

先生の言葉が反芻する。子供扱いしないでほしい。先生と生徒が付き合うのって、そんなにいけないこと? 別に先生のことなんてどうでもいいけど。

 

ゲームみたいにやり直したい。あの告白もなかったことにしたい。今からでも取り消すべきかな。告白は演技で、本当の私じゃない。

 

せっかく自分をさらけ出したのに。油断した。隠しておけばよかった。

 

 

「ふーん、恋愛って案外簡単なんだね」

 

「うるさい、お姉ちゃん」

 

 

私はお姉ちゃんに八つ当たりして、部室を出た。

 

 

 

 

翌日。私は予算会議に出席していた。部長のユズが人前に出るのが苦手だから、私が代わりに出席している。

 

 

「この雷ちゃんは、椅子になるだけじゃなくて、自爆機能、護衛機能、カラオケ採点機能までついてる。更にランダムテレポート機能をつけたいんだ。もちろんお金はかかるけどね」

 

「ふーん、ちなみにその機能って何のために付けるのかしら?」

 

「愚問だね。ロマンがあるからさ」

 

「却下。次の部活は……、ゲーム開発部ね」

 

 

ウタハ先輩の予算申請が却下され、私の番が回ってきた。私達も部費を稼がないといけない。

 

 

「待ってくれ。まだ重要な機械を紹介してないよ。この忘却光線銃を使えば……」

 

「もう却下したから、話すことはないわ。次、ゲーム開発部」

 

「は、はい……。私達は、次のゲーム・オブ・ザ・イヤーに向けて新しいゲームを開発中で……」

 

 

言葉が止まる。忘却光線銃……? ウタハ先輩が持っている小型の銃を見る。

 

 

「エンジニア部のことは気にしないで。続けていいわよ」

 

「その目、私達マイスターが作ったこの銃に興味があるんだね? 正直になるといいさ。ロマンを追い求める気持ちは誰にも止められない」

 

「……いえ、そういう訳じゃないですけど。それは、記憶を消せるんですか?」

 

 

ロマンに興味はないけど、確認したいことがある。

 

 

「ああ、消せるとも」

 

「どんな記憶でも?」

 

「ああ、誰の記憶でも、どんな記憶でも」

 

「本当に消せるんですか?」

 

「今、実演してもいいよ」

 

 

ウタハ先輩がユウカに銃を向ける。

 

 

「な、何よ。嫌な予感がするから、やめ……」

 

 

ブォンと鈍い音と一緒に光線が放たれる。光は一直線にユウカの頭にぶつかった。

 

 

「あっ…………」

 

 

光が消える。ユウカは棒立ちしたまま動かない。

 

 

「エンジニア部の案を却下した、という記憶を消したよ。ユウカ、大丈夫かい?」

 

「……あら、ごめんなさい。ちょっと気が緩んでたわ。それで次の部活は……」

 

「エンジニア部だよ。私達の部活は……」

 

 

何事もなかったように、話が進む。本当に記憶がなくなっているみたいだ。他の部活の人も目を丸くして、ユウカを見ている。

 

 

「…………という訳で、私達には追加の予算が必要なんだ」

 

「ふーん、ちなみにその予算は何に使う気なの?」

 

「もちろん、ロマンを追い求めるために自爆機能を……」

 

「却下」

 

 

エンジニア部の案が再び却下されるのを眺めていた。

 

 

 

 

予算会議が終わった後。ウタハ先輩が私に近寄って耳打ちしてきた。

 

 

「ミドリ、君に渡したいものがある」

 

 

渡されたのは予算会議で使っていた銃。

 

 

「これ……、何ですか?」

 

「さっき見せた通り、対象の記憶の一部を消去する銃さ。まだ試作品だけどね」

 

 

まるで黒い拳銃のようだ。私はカチカチと引き金の部分を鳴らす。

 

 

「その銃は危険だからという理由でセミナーに没収されそうでね。一時的に預かってほしいんだ」

 

「私がですか?」

 

「ああ。君の眼を見て確信したよ。あれは、ロマンを追い求める眼だ。ミドリ、君からは強い想いを感じる」

 

 

別に大した考えなんてない。さっきはちょっと興味が湧いただけ。記憶を消せるなんて、都合の良さに驚いただけ。

 

 

「預かるだけならいいですよ。部室なら散らかってるから、隠しやすいかもしれません」

 

「ありがとう、頼んだよ。……ああ、それと銃を使用したデータがほしいんだ。試しに使ってみてほしい」

 

「試しに……ですか。別に使う相手なんて……」

 

 

使う相手なんていない、と言おうとした口が止まる。

 

 

「いるんだね、使いたい相手が」

 

「……い、いえ。いません」

 

「隠さなくていいよ。正直な気持ちに従って使うといい」

 

「いませんってば!」

 

 

もし、この銃を先生に使ったらどうなるんだろう。そんなこと考えたらいけないのに。私が告白した時の記憶を消したら。私の隠した気持ちを知る人は誰もいなくなる。

 

ああダメだ。衝動が止められない。先生。私、悪い子になってしまうかもしれません。

 

 

 






第1TPまで入れるの気持ちよすぎだろ!
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