今、死のう。ミサキ   作:てね

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2000文字くらいあります


さよなら

 

 

 

『先生、今日会えませんか?』

 

先生にモモトークを送る。返事はすぐに来た。

 

『ごめん、今日は忙しくて』

 

『明日はどうですか?』

 

すぐにメッセージを送る。ウタハ先輩に借りている、この人の記憶を消せる銃は、近い内に返さなきゃいけない。すぐにでも使いたい。

 

『来週なら空いてるけど、何かあったの?』

 

『この前、先生にお伝えしたことについて話したいんです』

 

告白した件のことを、やんわりと伝える。暫く時間が経って返信が来た。

 

『告白の件なら私の答えは変わらないよ。付き合えない』

 

体の力が一瞬抜けそうになる。でも、今落ち込んでもしょうがない。

 

『わかってます。また告白するわけじゃありません。少しだけ時間が欲しいんです』

 

恥ずかしい私の記憶を消すだけでいい。すぐに終わる。

 

『わかった。今日の夕方にシャーレにおいで』

 

『ありがとうございます』

 

先生は何も気づいてない。私は記憶を消す銃を持ってシャーレに向かった。

 

 

 

 

シャーレ。エレベーターに乗って先生の元へ向かう。太もものガンホルダーに記憶を消す銃がある。使い方はウタハ先輩から聞いた。消したい記憶を思い浮かべながら、引き金を引く。それだけで記憶を消せる。

 

エレベーターが止まりドアが開く。様子を伺いながら、オフィスへ歩く。この前来た時と変わらない。シャーレのオフィスをこっそり覗く。先生がパソコンの前で事務作業をしている。

 

 

「…………」

 

 

ドアをノックしようとして、やめる。先生に会う資格がない気がする。どんな顔をして会えばいいかわからない。告白した私を軽蔑してる? 気持ち悪い? いや、先生ならそんなこと言わない。大丈夫。

 

 

「先生。こ、こんにちは」

 

「……やぁ。ちょっと待っててね。すぐ終わらせるから」

 

 

まだ仕事が終わってないみたいだ。私は部屋の隅のソファーに腰を下ろす。当番の生徒はいないようだ。部屋には2人きり。銃を使うには好都合だ。

 

それから30分ほどして先生が席を立つ。ちょうど居心地の悪さを感じてた頃だった。

 

 

「終わりましたか? 先生」

 

「まだ残ってるけど、ミドリを待たせすぎるのも良くないからね。先に話を聞こうと思って」

 

「そ、そうですか」

 

「うん、話せるなら話してほしいな」

 

「えっと、はい、そうですね……」

 

 

私が知りたいのは、あの時の告白をどう思ったかだけ。軽蔑したか、子供のささやかな失敗だと思ったのか。

 

…………。

 

いや、そんなこと知ってもしょうがない。私は、私は何がしたいんだっけ。先生の記憶を消す? 消した所でどうなるの。そんなことしても何の意味もない。

 

人の記憶を消すなんてやったらいけないことだ。

 

 

「どうしたの?」

 

「いえ、別に」

 

「……その太ももの銃、何?」

 

 

先生が警戒するように立ち上がる。先生は私から距離をとっただけだったが、私は先生が銃を取り上げようとしたのかと思って咄嗟に銃を抜いた。

 

 

「う、動かないでください!」

 

 

固まる。先生が手を上げる。降伏のポーズだ。違う、こんなことをしたかった訳じゃないのに。これじゃ、私が本当にダメな人間みたいじゃないか。

 

本当の私はもっと大人びているのに。先生の前でかっこよく振る舞えるはずなのに。私はいつも失敗してばかりだ。この前の告白もそうだ。あれさえなければ。

 

 

「ミドリ、こんな事をしてもどうにもならないよ」

 

「ごめんなさい。もう止まれないんです。こんな私を先生が好きになるわけないですよね。わかってます。軽蔑しましたよね。気持ち悪かったですよね。あんな恥ずかしい言葉ばかり言って、バカみたいですよね」

 

「そんなことないよ。ミドリは一生懸命生きてる。だから、その銃をおろして」

 

 

先生の声色が震えてる。この記憶を消す銃を本物の銃と勘違いしているのかもしれない。そんなに怯えないで。私は怖い人間じゃないのに。

 

 

「先生には、ダメな所をみせてばかりです。もう、どうでもいいです。こんな私がいるからいけないんです。先生は何も悪くないのに。私だけおかしな事をしてますよね」

 

 

銃口を先生に向ける。引き金を引いたら全部終わる。

 

 

「先生、教えてください。私のことどう思ってたんですか」

 

 

最後に先生の言葉だけ聞いて引き金を引く。先生は私に殺されると思っているのだろう。本音が聞けるかもしれない。先生の建前を抜きにした本音を聞きたい。きっと私のことをダメな生徒だと思ってるから。

 

 

「大切な生徒だと思ってるよ」

 

「…………。そうですか」

 

 

本当に消えたい。汚いのは私だけ。この記憶ごと消し去りたい。恥ずかしい過去をなかったことにする。

 

引き金を引く。ブォンと鈍い音が聞こえ、先生の頭に光線が当たる。先生は、ぼーっとしたまま動かない。

 

私はここに来なかったことになる。私は荷物を抱えてその場を離れる。

 

 

「さよなら先生」

 

 

 

 

自分がとんでもないことをしたのは分かってる。この銃は危険な代物だ。先生と私の出来事をなかったことにしてしまう。

 

でも、もう私の失態を知る人はいない。全てのしがらみから解放された。もう大丈夫なはずだ。これでよかった。それなのに私はどこか焦っている。冷や汗が止まらない。

 

私は何を焦っているの。何を後悔しているの。

 

わからない。先生に告白してから私はずっとおかしい。もう普通の人間じゃないみたい。そこまでして自分の失敗を隠したいのかな。

 

早く楽になりたい。先生に会いたい。一人で悩むのが辛い。私はいつも後悔してばかりだ。

 

 

 






早めに書き上げたい。
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