意味深な事ばっかり言ってたら1000年後の未来に跳ぶ100人の英傑に選ばれた男   作:まだ早い

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10話:溜めも必要

 

「こう改めてまじまじ見てみると……私ってもの凄く可愛いわね」

 

 2日目もそろそろ終わろうとする中。

 村長ジャムランから貸してもらった空き家にて、最初の村の家には無かった鏡に映る自らの顔を自画自賛するアリスの姿がそこにはあった。

 

 そういえば鏡ってどうやって作るんだっけ? 

 こんな事、新世界に来るまでは疑問に思う事もなかったな。

 良い機会だし北の集落に着いたら調べてみようかな。そんな感じの本があるのかわからないけど。

 

 なんて思っていると、例によってカルロス君が。

 

「おいおい。確かにアリスが可愛いのはそうだけどよ。自分で言うか? それ」

 

「良いじゃない。事実なんだから。というか、この顔で自分が可愛くないなんて言ったらそっちの方が嫌みになるわよ」

 

 それは本当にその通り。

 なにせ前にも言ったけど、この人は僕の知る限り人類で2番目か3番目の美人だからね。

 美醜の基準は人それぞれとはいえ、ここまでぶっちぎっていると話は変わる。

 

 加えて言えば、自分を卑下するアリスなんて解釈違いだ。

 彼女はいつでも強気かつ自信満々であってこそなのである。

 

 まあ、自己評価が低いのに信じられないくらい強い英傑も居たけど。

 

「実際、アリスさんは凄い美人ですよね。非現実的なくらいに」

 

「そうだなあ。長耳族たちも男女共に美形が多いと思うが、アリスはちょっとレベルが違えよな」

 

 あ。僕たちの話を横で聞いていた孫娘がなんか凄く凹んでる。

 やっぱり孫娘ってカルロスに惚れてるんだね。知ってた。

 

 ちなみに、元村長のロリは外出している。

 挨拶回りが必要だとかなんとか。

 長耳族のお家事情でもあるのだろうか? 

 

「カルロス、あなたね……まあ私が際立った可愛さなのは事実だから、仕方のない話だけど」

 

「なんで今オレ呆れられた?」

 

「カルロスさんは置いておいて……フェルナンドさん。アリスさん程の美人って、他に居たのですか?」

 

「なんで今オレ置いておかれた?」

 

 ずううん……という効果音が聞こえるかの如く落ち込んでいる孫娘と、アホのカルロス君はともかく。

 

 ──ちなみに僕としては、どちらかと言えば生態の話として孫娘がカルロスに惚れているというのは非常に気になる話なんだけど……まあ、今はいいか。

 

「ふむ、そうだな。アリスの母親は君と瓜二つ……というより、アリスが女帝に瓜二つの美貌と称されていたと言う方が正しいだろうな」

 

「そうなの? まあお母様と私がそっくりだとすれば、順番的にそうなるのは当然なのでしょうけれど……」

 

 そう言ってからアリスは凄く微妙な表情をして。

 

「……『銀の暗黒女帝』なのよね……」

 

「あ、あはは……そうですね。その異名を持つ方と似ていると言われると複雑な気持ちになりますよね」

 

 苦笑いをするダークネス。

 確かに考えてみたら、よりにもよってあの女帝に似ているだなんて、旧世界における最上級の悪口になるな。

 いやまあ、誰もそんな穿った見方はせずに普通に彼女たち2人の美貌を褒め称えていただけなんだろうけど。

 

 すると、村への道中に話されたアリスの幸せ話を聞いていなかったカルロスが戦慄したような表情で。

 

「アリスの母ちゃんって『銀の暗黒女帝』とか呼ばれてんのか……? 一体何をやらかしたんだ……?」

 

「フッ……彼女もまた、新世界計画の参加者だからな。会えばわかるさ」

 

「あなたのせいで会うのが怖いのだけれど? ほんっとにもう……」

 

 よし。

 どうにか女帝の話を必要最低限するだけに抑え、人類最高の美貌を持つあの英傑の事は語らずに済んだな。

 彼女もまた、ネタバレの宝庫みたいな人だからね。

 いやまああの人に関しては、本人のスペックも100英傑の中で考えても恐ろしく高いから、副団長とは話はかなり変わってくるのだけど。

 

 なにせ彼女は世界最高の美貌と頭脳を併せ持っている化け物の中の化け物なのだから。

 ……とはいえあの人、あれで意外と……いや、今はいいか。

 

 とにかく。

 僕としては可能な限り勿体ぶっていきたい所存なのである。 

 

 いつものように何かぶつぶつ言ってる銀髪の何某の事は特に気にする必要はないしね。

 

 

 そして、その銀髪は次の話に移り。

 

「さっきあなたが村長と話していた、水色の髪をした女性ってどんな人なの?」

 

 うーん。やっぱり来たか。

 でもさっき考えたように副団長の話を詳細にしようとしたら、どうしても弟か騎士団の話になってしまうからね。

 それは避けたいんだけど……

 

「私は彼女とほとんど関わりはなかったが……優秀な魔法騎士だったと聞いている」

 

 とりあえず、いつものように時間稼ぎの発言をしながら対処法を考える。

 本当にどうしたものか。

 

「魔法騎士ですか。どうやらぼくとは違って1人で戦えるタイプのようですが……翻訳はどうしているのでしょうか? その方もアリスさんのように一瞬であれを習得出来るようなレベルなのですか?」

 

「ふむ。流石の彼女といえど、魔法においてアリスには及ばないだろうと思うが……」

 

 確かに、言われてみれば一体どうしているんだろうか。

 副団長が使っていた魔法はかなり特殊な魔法だったと聞いているから、それ故に汎用魔法みたいなのはそこまで得意じゃないのではなかろうかと思っているんだけど。

 

 アリスみたいに新世界の未知なる翻訳魔法を一瞬で習得し、そして改善まで出来そうな人物は、100英傑の中でも流石に数える程度しか思い付かない。

 1日あったとしても……いや、1日もあれば習得だけなら結構な人数が行けそうな気がしてきたな。

 なにせ人類最高の天才集団だからね。

 

 なんて考えていたら、ついさっきまで落ち込んでいた孫娘が。

 

「あ。この村から長耳族が1人着いて行ったと聞きました、ダークネス様にフェルナンド様。どうやらそのお方に命を助けられたとか」

 

 どうでも良いけど、孫娘がカルロス以外とまともに会話するの珍しいね。確か僕と孫娘と会話したのは狼狩りの時くらいだった気がする。

 ──と思ったけどまだ新世界に来てから2日目だったな。さっき確認したばかりなのに、中身が濃過ぎてつい忘れそうになる。

 

 まあ今日は1日目と比べたら衝撃的な出来事は少なかったけど、長耳族の魔法だったり文明だったり、ミルネンと孫娘が付いて来たり、旧世界からの続投を果たした狼と再会したり、アリスを弄んで遊んだりと色々あったからね。

 

 いや、そんな事は今は本当にどうでも良くて。

 重要なのは、話をどうやって副団長から逸らすかだ。

 

 うーん。とりあえず、さっき村で仕入れた話をしてみるかな。

 これからの方針を相談すべきとかなんとか言って。

 

 という事で。

 

「フッ……まああまり彼女の話をしても仕方あるまい」

 

「それは……考えてみると確かにそうですね」

 

「まあ、私もそれは理解出来るけれど……」

 

 頷くダークネスと渋々といった感じのアリス。

 うん。2人は一体どうしたのだろうか。

 まだ僕は副団長の話の代わりに何の話をするか言ってないのに。

 いつも通りありがたい話だけど。

 

 同じ事を思ったらしきカルロスが顔に疑問符を浮かべて。

 

「3人は一体何を言ってんだ……? エカテリーナ、わかるか?」

 

「い、いえ……私にはさっぱり……」

 

 ダークネスはそんな2人に対して、まるで学校の先生かのように指を1本上げながら。

 

「北の集落に向かうのは、多分その女騎士さん以外にもたくさん居るでしょうからね。とりあえずこの付近で1番大きな集落に向かうというのは、誰しもが最初にするであろう行動でしょうから」

 

 アリスが頷いてから。

 

「ええ。例えば北の集落に行ったのが10人居るとして、その中の1人だけの話をここで聞いて、その人は10人の中の誰だ? みたいになるくらいなら、実際に会ってから話を聞いた方が理解もしやすいでしょう?」

 

 カルロスの顔に理解の色が浮かぶ。

 僕も不敵に笑みを浮かべながら、そうだったのか……と理解する。

 

 確かに、アリスとダークネスの言うように僕たちが着く前に何人かは既に北の集落に集まっていると思うからね。

 10人には流石に届かないだろうとは思うけど……まあ、それは別にいいか。単なる例示だ。

 

「ああ、なるほど。確かにな。……なあ、エカテリーナ。これ、オレの頭が悪いわけじゃねえよな? 3人の頭が良すぎるだけだよな?」

 

「あ、あはは……そうだと思いますよ。お三方があまりにも賢すぎるだけかと……」

 

 いつものように引き攣ったように笑う孫娘。

 そういえば、僕がよく見る孫娘の表情はほとんどこれか『私なんて……』みたいに沈んだ顔のどっちかだね。

 やはり彼女は、可愛くてスタイルが良くて露出度の高い格好をしているエルフなだけの一般人枠って感じだ。

 それって本当に一般人か? 

 

 

 ──そんな冗談はさておき、僕には今日この場で1つ聞いておきたい事があった。

 

 お、ちょうど我らがロリが帰ってきたな。

 

「帰ったぞ。やれやれ……みな大袈裟に騒ぎ過ぎなのじゃ」

 

 そんな風に何やらぼやいている緑髪のじゃロリに対して。

 

「ミルネン。私は先程、村人から神獣という存在の話を耳にしたのだが、それは一体どのような生物だ?」

 

 村長ジャムランと会話する前に少しだけ言及したけど、買い物の為に村を歩いていた際に。

 

『そろそろ、北はあの時期よね……』

『そうね。あの神獣に……』

『可哀想に……』

 

 などという井戸端会議が為されているのを本当に偶然耳にしてね。

 

 僕はそれを聞いて、長耳族の奥様方も井戸端会議、するんだ……と思ったりしたのである。

 

 それはともかく。

 僕には神獣というか、一定以上の強敵を使って確かめたい事がある。

 その結果次第で今後の動向を決めようと考えるくらいには重要な事が。

 だからこそ、神獣とやらが村人からの話から想像されるような強大な生物であり、そして長耳族や人類に害を成す討伐対象であって欲しいと考え、質問したのである。

 

「へえ……随分と仰々しい名前ね。私も気になるわ」

 

「情報収集能力も高いのですね……やはり、フェルナンドさんもまた非現実的とすら言える程に高い能力の持ち主です」

 

 好戦的な表情をするアリスと全く聞こえない小声で何やら感心したように呟いているダークネスに反して、我らが緑髪ロリのミルネンは苦々しい表情をして。

 

「神獣……奴はワシら長耳族の影なる支配者じゃ。凄まじき肉体性能と高い知性を持つ獣。奴は1年に1度貢物を求めて来るのじゃが……それは……」

 

 何やら苦々しい表情をしながら言い淀むロリ。

 そんな彼女に対してアリスが。

 

「長耳族の命とか?」

 

 おお。凄いな。

 誰でも予想出来るけど聞きにくい事をあっさりと。

 

「……うむ。年に一度、生後1年に満たない長耳族の……それも魔力の素養を持つ生きた赤子を求めて来るのじゃ。ワシはそれを許せぬ。奴によって他種族の侵攻から守られている側面もあるという事実もな」

 

「では、神獣とは言わば生贄を代価とする長耳族の守護獣だという事でしょうか? そうなるとアリスさんには残念かもしれませんね」

 

 どうやらダークネスもアリスの事をバーサーカーだと思ってるみたいだね。

 今までの言動を考えたら当然である。

 実際、そこにいる銀の蛮族は何やら残念そうな顔をしているし。

 

 しかしロリは首を横に振り。

 

「いいや。殺してくれるならばそれが1番良い。兄上もそう漏らしておったよ。これまでならばともかく、集落が今の規模となった以上神獣は最早我々の枷でしかないと」

 

 おお。役に立たなくなったらポイどころか殺すのか。

 凄いな、この善良という言葉がロリの皮を被って歩いているような存在であるミルネンの兄たる族長は。

 

 いやまあ、赤ちゃんを生贄に求める割に役に立たないというなら、それは普通に殺したくなるか。

 

「それに、奴がなぜ神獣と呼ばれているのかというと、神玉と呼ばれる宝物が祀られた遺跡を守っているからじゃ」

 

 ロリは顔を憎々しげに歪めながら続ける。

 

「奴は決して我らを護ろうとしているわけではなく、他種族の侵攻云々は単なる結果論に過ぎぬ。加えて言えば、もし神玉を手に入れたならばそれは奴がいるより遥かに防衛に役立つじゃろう」

 

 遺跡。

 へえ……遺跡、ねえ。

 それに神玉か。

 起点は僕が奥様方の井戸端会議を何となく盗み聞きしただけの話だったのだけど、それが思っていたより面白くなってきたな。

 

「ふうん……良いわね。楽しみが増えたわ。今度こそ歯ごたえのある相手なら良いのだけれど」

 

 僕としても、先程言ったように一定以上の強敵と出会う事を望んでいる。勿論、そこの銀髪の戦闘民族とは違った理由だけどね。

 加えて、どうやらそこには僕の知らない事も多くありそうだし……うん。いいね。

 

「しかし、幾らお主といえどあの神獣は……いや、アリス殿に匹敵する存在が他にも居るならば或いは……」

 

 ミルネンはそう言って僕を見て来る。

 うーん。アリスに匹敵する存在、ねえ。

 

 いくら今のアリスが旧世界と比較して魔法の知識を失いかなり弱体化しているとはいえ、仮に今の彼女が2人必要になるくらいに神獣とやらが強いんなら、そいつがこんな南の地に居て、エデンを征服していない理由がわからなくなるけど……まあいいか。

 もし中央にはそれほどの強者が複数居るとするならば、それこそエデンがこうして原型を保っている理由がわからなくなるからね。

 

「アリスに匹敵するかどうかはともかく、10傑と呼ばれる者の1人が北の集落に向かっている可能性が高い。彼とアリスが合流したならば、大抵の相手は物の数にならないだろうな」

 

「10傑……アリスさんや例の2人を代表とした10人の内1人という事ですか。それほどの方が居るとしたら、確かに心強い」

 

 僕が10傑について解説する前にダークネスが推測をして来た。

 

 くっ……ここは僕が

『10傑というのは、100英傑の中でも特に優れた10人で〜』

 みたいな話をするはずだったのに……! 

 これだから賢い奴は、ちょっと油断しただけですぐ僕の役割を奪おうとして……!! 

 

「へえ……どんな奴なんだ? 強いってのはそりゃ想像出来るが」

 

「フッ……そう急くな。会えばわかるさ」

 

「ま〜たそんな風に言って……わかったわよ。確かに、そんなに強いならばどうせ明日にはわかる話だものね」

 

 ──今回僕は、あの最強の決め台詞である

『フッ……今、それを語るべきではないだろうな』

 は断腸の思いにて使わない事にした。

 毎日毎日使用してしまっては、必殺技にならないし意味深さも薄れてしまうからね。

 

 でも、やっぱり使いたい……! 

 あの言葉を使える場面を敢えて見逃さざるを得ない現状に耐えかねて思わず身体がウズウズしてしまう。

 だけど、ここはどうしても我慢しなければならないんだっ!! (決意の眼差し)。

 

 こうして僕は内心で血の涙を流しながら、2日目を終了した。

 






次回、あの女再び
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