意味深な事ばっかり言ってたら1000年後の未来に跳ぶ100人の英傑に選ばれた男   作:まだ早い

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12話:迷惑すぎる男

 

「……妹から聞いてはいたが、どうやら随分と数が増えたようだな『白髪理系』殿」

 

 長耳族の族長による開幕第一声は、僕たちの人数が多い事に対する言及だった。

 うん。まあ正体不明の種族が3人だったのが、今になっていきなり7人に増えたらそれはびっくりして当然だろうね。

 

 というかアルベルは『白髪理系』って面白渾名をこの真面目そうな族長に対してそのまま名乗っていたのか……

 まあカルロスの『ラインハルト』よりは大分マシだけど。

 あれほど全員から総スカンを喰らう名前はなかなかあるまい。

 

 ──とりあえず族長の反応を見る限り、面白渾名3人組のリーダーはアルベルが担っていたらしいというのは理解した。

 まあそれは当然か。

 

 仮にギャルがリーダーをしていたとしたら僕はきっとショックで立ち直れなかっただろう。

 

 王子も旧世界の頃からそうだったけど、あまり自分から前に出るタイプではなかったし。

 まあ王子は人望がありすぎて、本人の希望はともかく結局最終的にはいつも自然と人々の中心になっていたんだけど。

 

「どうやら俺の名はアルベルというらしい。『白髪理系』のままでも構わんが」

 

 もしかして結構気に入ってるの? 

 副団長ラナリアもそうだけど、アルベルもこんな性格だったんだね。

 

「……そうか。アルベル殿と呼ばせて頂く。……貴殿らの事情は妹から大凡聞いている。我ら長耳族は貴殿らを歓迎しよう」

 

 当然、族長の横には緑髪ロリが陣取っている。

 君たち、随分と仲が良さそうだね。

 当時はあまり興味なかったから聞き流していたけど、なんか兄の方針に反対したとかなんとか言ってなかったっけ? 

 この街に来た時も、本当は嫌だけどお兄さんの優秀さを認めざるを得ないみたいに言っていたような気もするし。

 

 いや別にいいんだけど……やっぱり今となってはロリ兄弟の事がちょっとだけ気になってきたな。

 

 2人以外には、執事服を着た姿勢の良い老人が1人ドア付近で待機していた。

 執事とか執事服とかいう概念もあるんだね。

 それも気になるけど、流石にキリがないか。

 

「貴殿らには様々な物が入り用と聞く。満足はいかぬやもしれぬが、可能な限り用立てしよう」

 

 族長は18〜20歳程度に見え、僕がこれまで見てきた長耳族の中で1番カッコいい感じの青年だった。

 ちなみに、僕が見る限り長耳族で1番可愛い女の子はそこにいる我らが緑髪ロリである。僕に幼女趣味はないからどうでもいいんだけど。

 

 族長は長にしてはかなり若い年齢に思えるけど、まあロリの兄さんだしね。むしろ妥当な年齢なのかもしれない(?)。

 

 そして、そんな族長は僕たち7人に対してやけに低姿勢で接して来ているように見えるのは気のせいだろうか。

 

「まずは貴殿らの住居についてだが。7名ともなれば昨日の宿では狭かろう。それなりの規模の屋敷と使用人を確保した。仮の拠点としては問題ないだろうと考えているが、何かあれば言うといい」

 

 ……え? なんかいきなり屋敷と使用人を手に入れたんだけど。

 拠点として使っていいという事は、1日の話じゃないんだよね? 

 今までの2つの村のような、その日限定で空き家を貸すのとは話が全く異なるというかなんというか。

 

 加えて言えば、ロリが族長に話を通したのはほんの4時間前だったような……? 余程急がねばならない要因が何かあったのだろうか? 

 

「基本的な生活用品などは揃えている。他にも欲しい物などあれば、ここにいる使用人代表たるクリストフに申し付けるといい。可能な限り叶えよう」

 

 族長の言葉の後に僕たちに向かって頭を下げる、執事服を着た老齢の長耳族たるクリストフ。

 いかにも族長家お付きの執事長って感じで、とてもじゃないけどいきなり現れたよくわからない奴らに付ける人材には見えなかった。

 うーん。やはり何というか……

 

「今までを遥かに超えて随分と至れり尽せりのようね。『白髪理系』たちは余程あなたたちに何かをしたのかしら?」

 

『白髪理系』アルベルを見つめながら、アリスが皆が考えているてあろう疑問を代表して問いかける。

 ──今更だけど、白髪はわかるけど理系とは一体何なのだろうか。

 いやまあ今気にする話ではないんだけど。

 

「俺には特にそのような覚えはないが……確かに気になるな。族長。何故だ?」

 

 族長は一瞬目を閉じて、そして何やら覚悟をしたような雰囲気を出してから。

 

「貴殿らは、我らでは到底及びもつかぬ偉大な強者だと理解している。これは強き者への我らの敬意と受け取って頂きたい」

 

「ふうん……つまりそういう事ね。わかったわ。それなら、私からは何も」

 

 そう言ってアリスは口を閉じた。

 つまりどういう事なんだろう? 

 

 アリスが何を理解したのかよくわからないけど、僕から見るにどうやら族長は相当おビビりになられているご様子。

『白髪理系』が余程脅したりしたのだろうか? 

 

 確かに、アルベルならばこの集落ことティル・ナ・ノーグなんて瞬く間に滅ぼせるだろうけど。

 族長は軽く見る限りでもかなりの強者である事が伺えるし、少なくとも僕よりは強いと思うんだけど、さりとて『白髪理系』からすれば塵にも等しい弱者だろうからね。

 

「いやそれはお主ら2人が……なんでもない」

 

 何故か我らが緑髪ロリが僕とアリスを見て半ば呆れ顔で何か呟いた気がするけど、きっと気の所為だろう。

 アリスはともかく、僕はまだ族長に対して一言も発言していないし。

 こういう時に前に出て会話をするなんて、意味深な男の行動じゃないからね。今回は基本的にこのまま不敵な笑みをずっと浮かべながら黙っているつもりである。

 

 まあ、住居はともかく使用人はもしかしたら監視の意味合いもあるのかもしれないけど……とはいえ仮にそうだとするならば、族長は短慮のツケを支払う事になるだろう。

 ……って、こういう風に考えるのが彼をビビらせる原因なのかも。

 いくらなんでも頭の中がわかる筈はないけど、ロリの村で思わず殺意が漏れ出てしまった件のように、雰囲気から察せられる可能性はあるからね。

 

 族長はどうやら噂通りかなり賢い長耳族みたいだし。

 少なくとも、さっき考えたような愚行を犯す馬鹿には到底見えない。

 

 なんていう風にひたすら不敵に笑い続けながら考えていると、話は次に進み。

 

「アリスリーゼ殿らは神獣ジャガーノートを討伐せんと考えていると耳にした。事実だろうか?」

 

 まず族長の言葉に反応したのはアルベルだった。

 彼は何やら興味深い話を聞いたと言わんばかりの雰囲気で。

 

「神獣ジャガーノート? 何だそれは? 随分と面白そうな話だな」

 

 うん。やっぱりアルベルも戦闘狂だったね。

 まあ彼の旧世界での行動を考えたらわかりきっていた話でしかないけど。

 

 するともう1人のバーサーカーたるアリスが。

 

「後で説明するけれど、私の獲物だから手を出さないように。……ひとまず、族長の質問にはその通りだと言っておきましょう」

 

「なんか自分が見つけたみたいに言ってるけどよ、神獣の情報を手に入れたのってフェルナンドじゃなかったか?」

「カルロスさん、しーっ!」

 

 これまで黙っていたカルロスとダークネスが小声で何か話しているけど、全く隠れられていないぞ。

 銀髪の何某が思いっきり2人と、加えて何故か僕の事を睨み付けてるし。

 いや、本当に何で僕も睨まれてるの……? 

 100%とばっちりでしかないのだけども。

 

 しかし、考えに耽っているらしき族長はそれには気付かず。

 

「そうか……我としても、奴の討伐は望む所。しかし懸念が大きすぎて手を出せずにいたのだ。仮に倒せなかったとして、挑みし者が死すだけならばともかく、奴が怒りのままに一族を滅ぼしにかかるのではとな」

 

 族長はどうやら神獣に余程死んで貰いたいらしい。

 言葉から深い憎しみしか感じられないからね。

 

「故に、奴に挑むならば、貴殿らは我が一族とは関わりのない存在として扱いたい……と言いたい所だが」

 

 彼はまたもや一瞬目を閉じて。

 

「今こそ変革の時なのだろう。時流に乗らんとするならば……覚悟を固めねばなるまい。──我も貴殿らと共に参戦するとしよう」

 

 いや、凄いなこの長耳族。

 考えが柔軟すぎるし判断が早すぎる。

 

 族長って僕が事前に思っていたより遥かに優秀なんじゃなかろうか。

 さっき軽く触れたように、彼は歴代の長耳族の中で最も優れた存在だと噂話で聞いてはいたけど……まるでアルカディアの賢い人たちと会話しているかのような感覚を覚える。

 まあ僕は未だ一言も喋ってないけど。

 

「明日までの案内人として、クリストフに加え妹を付けよう。妹は未来の長耳族を背負う者。……何卒よろしく頼む」

 

「ふうん……そういう感じね。あなたも中々強かじゃない。思い切りの良さといい、気に入ったわ」

 

 ……?

 アリスは一体何を言っているのだろうか。

 ロリが族長から未来の長耳族を背負う扱いをされているのにもびっくりだけども。

 

「ねえねえ、ダークネスっち。アリスっちは何の話をしてんの?」

「族長さんはミルネンさんを人質に差し出したのですよ。価値を改めて示し明日族長さんが神獣ではなくぼくたちに付くという意思を表明するために。けれど、ぼくたちとミルネンさんは既に親しくしています。つまり、害されないと踏んだ上での人質という事ですね」

「はえーそこまで考えてんのか。すげえな族長は」

「加えて言えば、これからも事あるごとに族長さんはミルネンさんをぼくたちに帯同させ、ひいては長耳族とぼくたちの友好関係を深めていく腹積りでしょうね」

「あ〜だから族長さんは強かってことね。アリスっちもダークネスっちもあったまいい〜!」

 

 そういう事だったんだ……

 僕は笑みを絶やさないままダークネスの話を聞いて内心で納得した。

 いやあ、頭良い人たちのやり取りってほんと意味わかんないよね。

 解説のダークネス先生と生徒のラナリア及びカルロスには感謝の言葉しかない。

 

 でもダークネスの話ってつまり、族長による裏切りの可能性も示唆しているって事のような……? 

 僕の理解がまだ不足しているのだろうか? 

 

 まあ、その辺は頭の良い人たちに任せれば良いか。

『白髪理系』と『破壊の賢者』がいる以上、どうせ長耳族が何をしようと無意味なのだし。

 

 そして、毎度の事だけどアリスはこんなに頭がいいのに僕に対しては何故か節穴なんだよなあ。それが本当に不思議でならない。

 

「話は纏まったわね。……というわけで、それでいいわよね? 王子」

 

「……ええっ!? どうして僕なの!?」

 

 突然のキラーパスにめちゃくちゃ驚く王子。

 ちなみに僕もあまりにいきなり過ぎてびっくりしている。

 アリスは突然どうしたのだろうか。

 何か悪い物でも口に入れた? ゴブ茶とか。

 

「だってあなた、王子なのでしょう? つまり私たちのリーダーはあなたという事になるのだけれど」

 

「え、ええーっ!? 僕がリーダーをするの!? それに王子ってまだ全然そんな自覚ないというか……ううん。わかったよ」

 

 言われた瞬間は驚愕の意を示していたものの、直後に承諾する王子。

 こういうところ、流石だよね。

 凡人だったら嫌々と無意味に騒ぎ立てて時間を浪費する場面だろうから。

 けどこれって今ここでする話でもないような気がするけど……まあそこはやっぱりアリスって感じだ。

 

「ええと……アルベルとアリスは神獣を倒したくて、族長さんの許可も出たみたいだし……僕は特に問題はないと思うよ。倒した後の話はまた後日でいいんだよね?」

 

 王子の言葉に頷く族長。

 

 うん。そこで危険だから神獣を倒すのなんて辞めようとか言わないところも、やっぱり100英傑って感じ。

 

 流石は旧世界において、僕がアリスの他の主人公候補としてストーカー……ではなく、関わっていた英傑の1人である。

 

「へえ……王子、やるじゃない。どうやらその立場は伊達ではないという事ね」

 

「そうそう! カールっちってこう見えて決めるとこ決めるんよね〜! カッコいいぞ〜!!」

 

 感心したように漏らす無茶振り銀髪と、なんか面白おかしく褒めながら仕えるべき王子をツンツンするギャル。

 そんな3人を見た族長が。

 

「……これからの貴殿らの長はカール殿という事か? 貴殿が貴き立場だという事は理解したが」

 

「王子なんだし、そうなるでしょうね。……はあ。私はリーダーなんて柄じゃなかったし、良かったわ」

 

「えっと……僕はまあいいんだけど……アルベルは構わない?」

 

 王子がこれまで3人のリーダーだった『白髪理系』に問いかける。

 

「ああ。俺もアリスと同じく、リーダーをするより前線に立ちたい気性だからな。構わんよ」

 

 どうやら話はまとまったようだね。

 これからは王子が僕たちの中心となるみたいだ。

 

 それはいいんだけど……さりとて僕はこの話になってからというもの、アリスにとある事実を突っ込みたくて仕方なかった。

 だって。

 

「ふむ。身分の話をするならば、アリスも皇女なのだがな。それも女帝から次期皇帝として名指しされていた。加えて言うならば……いや、今それはいいか」

 

「おい。毎度毎度、急に私の情報をぶっ込むのやめろ?」

 

 皇女様、口調崩れてる崩れてる。

 

「ずっと意味ありげに笑ってて、ようやく喋ったと思ったら! しかも気になる場所で話を止めるし! ほんっとにあなたはもうっ!!」

 

 何やらお怒りのご様子。

 うん。やっぱり全く怖くないな。

 

 そんな僕たちのやり取りを見ていたダークネスとカルロスが。

 

「た、確かに……考えてみるとそうですね……本当にアリスさんはスペックがあまりに高すぎて、新たな情報が出る度に非現実性が増していきますね……」

 

「言われてみるとそうだな。なにせ『銀の暗黒女帝』の娘なんだもんな。アリスはあんま皇女様って感じじゃねえし、頭から抜けてたわ」

 

「「「『銀の暗黒女帝』?」」」

 

 渾名組3人の疑問の声。

 それを聞いたアリスはその長くて綺麗な銀髪を振り回して。

 

「あーもう! フェルナンドのせいで纏まってた状況が混沌と化したじゃない!! どうしてくれるのよっ!?」

 

「なんかまた雑魚脇役みてえな事……す、すまねえ! 悪かったって!!」

 

 た、楽しい……! 

 こんな風に、話がまとまった時に突然の僕の言葉で状況を混乱させるの、本当に楽しくて楽しくて仕方がないな。

 新世界で僕だけが記憶を持つ事によって生まれた意味深ムーブの新たな形の一つとも言えるだろう。

 

 是非これからも続けていきたい所存である。

 

 

 ──それにしても、身分……ねえ。

 何を以て高貴とするかは人によって異なるだろう。

 誰が世界一身分の高い存在かと言われたら、例えば最後の国『アトランティス』の王様を挙げる人も居れば『銀の暗黒女帝』を推挙する人も居るだろう。

 

 伝説の『神殺し』だと主張する人だっているだろうし、かの理事長こそ最高の貴人だという意見もあると思う。

 実際、王様は彼女には敬語で接していたけど、あの人自身は王様に対しても普通にタメ口だったからね。

 そしてそれに苦言を呈するような愚か者は居なかった。

 

 ただ僕個人の意見として、世界で一番身分の高い存在は誰かと言われたら……

 

 それは恐らく、そこで驚愕したような姿を見せているダークネスだろうと思うんだけどね。

 

 まあ、別にいいか。

 

 

 






次回は少し遅れるかもしれません。
非力な私を許してくれ。
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